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医療費控除とは?医療費控除のしくみと高額療養費制度との違い、いくら戻るか計算方法も解説

2019年8月10日

医療費控除とは、年間の医療費(自己負担額)が10万円を超えた場合に確定申告をして納めた所得税と住民税を還付金として払い戻す制度です。本記事では医療費控除のしくみ、高額療養費制度との違い、医療費控除の計算のしかた、世帯合算や確定申告をする際に注意すべき点などについて解説いたします。

医療費控除は税金を軽くしてくれる

医療費に関する制度に、「医療費控除」があります。

読者2
読者2
高額療養費制度みたいに、医療費が戻ってくるんでしょ?

と勘違いしやすいのですが、両者は別物です。

高額療養費制度は、自己負担の上限を超えて払いすぎた医療費をあとで戻してくれる制度です。

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高額療養費のしくみについて|公的医療保険

公的医療保険では医療費の自己負担額割合が定められており、さらに、高額な医療費を支払うことになった場合に、高額療養費制度(高額医療費支給制度)があります。高額療養費制度とはどんな制度でしょうか? 高額な ...

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これに対して、

医療費控除は「去年は医療費がたくさんかかりましたね。たいへんだったでしょうから、所得税や住民税を安くしてあげますよ」という制度

です。

こちらは税金が軽くなるしくみであって、医療費は戻ってきません(計算した結果、払い過ぎた税金が戻ってきます)。

いずれにしろ、大きくなった医療費の負担を軽減するよう、わたしたちをフォローしてくれる点は同じです。

家族全員分の医療費を合算して申告できる

医療費控除とは、どういうしくみになっているのでしょう。

医療費控除は誰でも申請できるわけではなく、基準が決められています。

1年間(1月1日から12月31日まで)に10万円以上の医療費を払った人が対象です。
(ただし、その年の所得等が200万円未満の人は、その5%の金額以上の医療費支払い分が対象になります。)

健康保険を使った診療なら自己負担は3割ですし、10万円に届くケースはめったにないような気がします。

しかし、この10万円は家族全員分を合計していいのです。

お父さんが風邪で内科を受診し、お母さんは虫歯の治療で歯医者通い、息子は捻挫して整形外科にかかった……。

1年を通しての話ですから、こんなこともありませんか。

これらを全部足せば、10万円を超える場合も少なくないといえます。

ココがポイント

高額療養費制度の世帯合算とは違い、医療費控除は夫婦が共稼ぎで別々の健康保険に加入していたとしても合算できます。

医療費として認められている範囲は、かなり広く設定されています。

治療費、入院費、手術代、処方された薬代はもとより、高額療養費では対象外となっている入院中の食事代や通院のための交通費も含まれます。

おまけに、もうひとつ見逃せないポイントが。

病院には行かなくても、街なかの薬局で風邪薬や胃腸薬を買う機会ってありますよね。じつは、こういった市販薬も対象になっています。ただし、ビタミン剤のように病気の予防や健康増進が目的で購入した薬は、対象から外れます。

さらに詳しく

セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)といいます。セルフメディケーション税制と通常の医療費控除は併用できないため注意が必要です

医療費控除の計算は簡単!所得税と住民税、いくら戻る?

まずは医療費控除の申告の対象額を計算してみよう!

税金が絡んでくるとなれば、複雑な計算式をイメージするかもしれません。

でも、医療費控除の計算は非常に簡単です。

医療費控除として申告できる額 = 実際に支払った医療費の合計額 − 保険などで受け取った金額 − 10万円


この引き算で出た答えが医療費控除の対象となる金額です。

上限は決められており、最高で200万円です。

ところで、ちょっと計算式に注目してください。気がつきましたか。

かかった医療費のすべてが控除の対象にはなっていません。

高額療養費で払い戻された分や、民間の医療保険から受け取った給付金は差し引かれます。
同じ医療費がかかっていても、補填された金額によっては医療費控除が受けられないケースも出てきます。

1年間に20万円の医療費がかかったとして、具体例で見てみましょう。

世帯の家族構成:共働き夫婦
A(世帯主)年収500万円 医療保険入院日額1万円
B(Aの配偶者)年収300万円 医療保険の加入なし
C(AとBの子)医療保険の加入なし

  • A 入院・手術(自己負担額):15万円、医療保険からの給付金:9万円
  • B 風邪などの通院治療:2万円
  • C 風邪などの通院治療:3万円

医療費控除の計算は下記の通りとなります。

計算結果

15万円 − 9万円 + 2万円 + 3万円 ) − 10万円 = 1万円

(注)保険金などで補てんされる金額は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引きますので、引ききれない金額が生じた場合であっても他の医療費からは差し引きません。

医療保険で受け取った給付金は、給付金を受け取る原因となった医療費から差し引くだけで、それ以外の医療費から差し引くことはしません。

そのため、この世帯の場合は、1万円が医療費控除の申告の対象の額となります。

なお、医療保険に加入していなかった場合は、

計算結果

( 15万円 + 2万円 + 3万円 )− 10万円 = 10万円

となり、10万円が医療費控除の申告の対象の額となります。

所得税からの還付金の金額を計算してみよう!

還付金の金額は、課税所得額によって所得税の税率が異なるため、その人の課税所得額によって異なります。

下記は、所得税の速算表です。

所得税の速算表(平成27年分以降)

課税される所得金額 税率
1,000円 から 1,949,000円まで 5%
1,950,000円 から 3,299,000円まで 10%
3,300,000円 から 6,949,000円まで 20%
6,950,000円 から 8,999,000円まで 23%
9,000,000円 から 17,999,000円まで 33%
18,000,000円 から 39,999,000円まで 40%
40,000,000円 以上 45%

※出典:国税庁 No.2260 所得税の税率

平成25年から令和19年までの各年分の確定申告は所得税と復興特別所得税(原則としてその年分の基準所得税額の2.1パーセント)を併せて申告・納付をすることになっており、医療費控除の確定申告を行うことで所得税及び復興特別所得税が還付される可能性があります。

ここでは復興特別所得税については考慮せず計算をしてみましょう。

さきほどの世帯について、A・B、夫婦どちらで医療費控除の確定申告をしたほうがいいのか試算してみましょう。

【医療費控除額が1万円だった場合】

計算結果

Aの所得税率は20%:1万円 × 20% = 2,000円(所得税からの還付金)
Bの所得税率は10%:1万円 × 10% = 1,000円(所得税からの還付金)

【医療費控除額が10万円だった場合】

計算結果

Aの所得税率は20%:10万円 × 20 % = 2万円(所得税からの還付金)
Bの所得税率は10%:10万円 × 10% = 1万円(所得税からの還付金)

以上のことから、Aのほうが還付金が多いことがわかります。

つまり、

ココがポイント

医療費控除の確定申告は所得税率が高いほうで行うのが得だということがわかります。

住民税の還付金はいくらになる?計算は可能?

住民税は、前年度年収に対して課税されるものであるため、所得税のように還付金という形ではなく、翌年度の住民税が軽減されます。

いくら軽減されるのかについては計算ができます。それぞれ下記の通りとなります。

【医療費控除額が1万円だった場合】

計算結果

1万円 × 10% = 1,000円

【医療費控除額が10万円だった場合】

計算結果

10万円 × 10% = 1万円

ここまででまとめると、

世帯主であるAで医療費控除の確定申告を行った場合、

【医療費控除額が1万円だった場合】所得税:2,000円+住民税1,000円=合計3,000円

【医療費控除額が10万円だった場合】所得税:2万円+住民税1万円=合計3万円

が最終的に戻ってくることになります(住民税は翌年度の住民税から軽減の対象)。

還付金はいつごろ振り込まれる?

税務署の窓口で確定申告を行った場合、還付金の振り込みまでの期間は2月〜3月ごろだと約1ヶ月から1ヶ月半程度とされています。

また、電子申告の場合は、3週間程度とのことです。

特に、2月・3月の所得税等と消費税及び地方消費税の確定申告期間中は、大量の申告書が提出される時期ですので、還付金の支払手続にはおおむね1か月から1か月半程度の期間を要することをご理解ください。

※ 自宅や税理士事務所からe-Tax(電子申告)で提出された還付申告は3週間程度で処理しています(e-Taxで1月・2月に提出された場合は、2~3週間程度で処理しています。)。
ただし、申告内容が誤っていたことにより、改めて申告書を作成し、提出した場合は、e-Taxで提出した場合であっても、上記期間で処理されないことがあります。

還付金の受け取り方法は?

還付金の受け取り方法は、確定申告を行った本人の預貯金口座に直接振り込みをする方法と、ゆうちょ銀行の窓口または郵便局の窓口で受け取る方法があります。

預貯金口座への振り込みを選択した場合、振り込みの時期になると所管の税務署から「国税還付金振込通知書」(はがき)が届くので確認をするようにしましょう。

確定申告をしないと控除は受けられないし還付金は戻ってこない

さて、医療費控除を受けるためには、確定申告が必要です。

自営業者やフリーランスの人には確定申告はおなじみですが、会社員にとっては縁遠い存在かもしれません。

不慣れな作業は少々面倒に感じるかもしれませんが、税金が戻ってくるものですし、最近は手続きもWebでできるなど簡単になってきています。

10万円を超えるかどうかは1年が終わってみないとわかりません。医療関係の領収書は大切に保管しておきましょう。

うっかり確定申告を忘れたというときも大丈夫。過去5年分までは遡って申告ができます。

ところで、確定申告の時期には気をつけたいことがあります。

ココに注意

「払いすぎた医療費を還付しますから、手続きをしてください」という連絡がきたら、間違いなく還付金詐欺です。

医療費控除であれ高額療養費であれ、自分で請求をしてはじめて受け取れるしくみになっています。

未納分のお金については役所も払ってくださいと督促をしてきますが、払いすぎですというお知らせは絶対によこしません。また、手続きに費用がかかることもありません。うかうかと乗らないようご用心を。

まとめ

医療費の負担を減らすしくみには、医療費控除もあります。前年の医療費が10万円を超えた場合は、所得税や住民税が減税されます。

家族全員の医療費を合算でき、通院のための交通費や市販薬の購入代金も含まれます。

ただし、高額療養費の払い戻しや医療保険の給付金は差し引いて計算します。

医療費控除を受けたいときは確定申告をしましょう。

その他、生命保険料控除などを組み合わせることで節税できるといいですね。

  • この記事を書いた人

矢野 康介

ファイナンシャルプランナー、トータル・ライフ・コンサルタント(生命保険協会認定FP)。大学卒業後、日本生命保険相互会社に新卒入社。法人営業として、一部上場の建築会社及び製薬会社を担当。その後、外資系生命保険会社にて保険事務、コールセンターの統括業務を経験。保険業界での経験は約20年にわたる。

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