死亡原因が自殺の場合は生命保険はどうなる?死亡保険金が支払われるケースとは?
自殺で生命保険(死亡保険)に加入している人が亡くなった場合、生命保険の死亡保険金は支払われるのでしょうか?
この記事では、日本の自殺に関するデータを交えながら、死亡原因が自殺の場合に保険金が支払われるケースと支払われないケースについてわかりやすく解説しますので、この記事を読んで正しい知識を確認しておきましょう。
もし、悩みや不安があればひとりで抱え込まず、公的機関をはじめとした相談窓口の利用もぜひ検討してください。

この記事のポイント
- 保険金を目的とした自殺や免責期間内の自殺では、原則として生命保険の死亡保険金は支払われない。
- 自殺が原因でも、免責期間(待機期間)経過後で、経済的困窮が自殺の要因ではないと推測されるなどのケースに当てはまれば死亡保険金が支払われる可能性はある。
- 死亡保険金の支払い条件は契約内容や状況次第となるため、保険会社各社の規定や保険約款などで確認するとよい。
死亡保険金を受け取ることができる生命保険の種類とは
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死亡保険金が受け取ることができるのは生命保険(死亡保険)です。生命保険(死亡保険)には、主に以下の3種類があります。
- 終身保険
- 定期保険
- 収入保障保険
終身保険
終身保険は、保障期間(保険期間)が生きている限り続く、一生涯の死亡保険です。
例えば、死亡保障額200万円で30歳で加入した終身保険は、40歳で亡くなっても、80歳で亡くなっても死亡保険金の200万円が支払われます。
貯蓄性があるため、保険料は定期保険や収入保障保険よりも高い傾向にあります。いわゆる「貯蓄性保険」「掛け捨てではない保険」と表現されることもあります。
途中解約した場合に、解約返戻金が支払われます。契約して間もない場合には、解約返戻金はないか、あってもごくわずかです。

関連記事:終身保険の選び方・見直し方とは?保険料を節約する方法をFPが解説
定期保険
定期保険は、保険期間(保障期間)を一定期間に区切って、必要な期間だけ死亡保障を備える死亡保険です。
大きな死亡保障額を、必要な期間だけ、安い保険料で備えることができます。
例えば、死亡保障額1000万円で30歳で保険期間(保障期間)10年で加入した定期保険は、40歳までに亡くなった場合には死亡保険金1000万円は支払われますが、42歳で亡くなった場合には保険期間(保障期間)が満了しているため支払われません。
原則、解約返戻金がないため、保険料は終身保険よりも安い傾向にあります。「掛け捨て」とよく表現されます。
途中解約した場合に、解約返戻金はないか、あってもごくわずかです。

関連記事: 定期保険とは?そのしくみと特徴やメリット・デメリット、活用方法を徹底解説
収入保障保険
収入保障保険は、定期保険のひとつで、保険期間(保障期間)を一定期間に区切る部分は変わりません。
一方で、収入保障保険は契約直後をピークに、死亡保障額が徐々に下がっていき、死亡保険金も年金形式で受け取るという特徴がある死亡保険です。
一般的に、死亡保障額というのは徐々に下がっていく傾向にあります。
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関連記事:収入保障保険の選び方・見直し方・選ぶ際の注意点や保険料の節約方法
日本における自殺の現状
厚生労働省自殺対策推進室および警察庁生活安全局生活安全企画課によれば、令和6(2024)年中の日本における自殺者の数は20,320人でした。これは統計開始以降、過去2番目に少ない数であり、前年比では約1,500人減少しています。
また、男女ともに自殺者は年々減少しており、令和6年では男性は3年ぶり、女性は2年連続の減少となった一方で、男性の自殺者数は女性の約2.1倍となりました。
また、自殺の原因としては「健康問題」が最も多く、自殺者の約6割にあたる約12,000人がうつ病やその他の身体の疾患を理由に自殺しています。
死亡原因が自殺の場合で死亡保険金が支払われないケース
「被保険者の死亡原因が自殺の場合、保険会社は死亡保険金を支払いをしなくてもよい」と法律で定められています。
保険に関する法律は、「保険業法」と「保険法」の2つがあります。
保険業法は、保険会社が保険事業を行なっていく上で必要なことに関する規定で、保険法は、契約者と保険会社との契約のルールについて定めたものです。
上記の「死亡原因が自殺の場合、死亡保険金を支払いをしなくてもよい」という内容は下記の通りになります。
(保険者の免責)
第五十一条 死亡保険契約の保険者は、次に掲げる場合には、保険給付を行う責任を負わない。ただし、第三号に掲げる場合には、被保険者を故意に死亡させた保険金受取人以外の保険金受取人に対する責任については、この限りでない。
一 被保険者が自殺をしたとき。
二 保険契約者が被保険者を故意に死亡させたとき(前号に掲げる場合を除く。)。
三 保険金受取人が被保険者を故意に死亡させたとき(前二号に掲げる場合を除く。)。
四 戦争その他の変乱によって被保険者が死亡したとき。
ただし、保険法では、保険金の支払いの責任を負わないとしているだけですので、死亡保険金を支払う保険会社もあります。
死亡原因が自殺による死亡保険金の支払いについては、保険会社ごとに死亡保険金支払いの規定が異なっているのが実態です。
一般的には、契約直後から1年から3年程度の一定期間の免責期間(待機期間)を設けて、免責期間内に自殺で死亡した場合には死亡保険金等の支払いをしないとしている保険会社が多いようです。この場合、免責期間を過ぎていれば、自殺でも保険金が支払われる可能性があります。
しかし、あくまでも可能性の話であるため、死亡原因が自殺の場合は死亡保険金は支払われないと考えて頂くほうがよいでしょう。
特に、下記の2つについては支払われない可能性が高くなります。
- 保険金を目当てにした自殺
- 免責期間内の自殺
死亡保険金を目当てにした自殺の場合、借金等による経済的な困窮が背景としては考えられるかと思いますが、自殺の理由・要因がどんなものであれ、自殺により、残される家族やその周囲への影響は、はかり知れないものです。
自殺という選択肢をとる前に、弁護士や法テラス、公的機関の窓口に相談することで何か解決に繋がる糸口が見つかるかもしれません。
死亡原因が自殺の場合で死亡保険金が支払われるケース
逆に、死亡原因が自殺でも死亡保険金が支払われることがあるケースがどのようなものかというと、支払われないケースに該当しないものということになります。
- 保険金を目当てにしていない自殺
- 免責期間外の自殺
- 精神疾患等で判断・責任能力がない状態での自殺
免責期間(待機期間)経過後で、経済的困窮が自殺の要因ではないと推測される、もしくは自殺の要因が明確になっている場合は、死亡保険金が支払われるケースもあるようです。
それ以外には、精神疾患等で本人の心身の状態が判断・責任能力がないと推測される状態での自殺も同様のようです。
自殺以外で死亡保険金が支払われないケース
自殺以外の原因で被保険者が死亡した場合に、死亡保険金が支払われないケースは、同じく保険法51条に定められています。
二 保険契約者が被保険者を故意に死亡させたとき(前号に掲げる場合を除く。)。
三 保険金受取人が被保険者を故意に死亡させたとき(前二号に掲げる場合を除く。)。
四 戦争その他の変乱によって被保険者が死亡したとき。
上記をわかりやすくいうと、以下のようになります。
- 契約者が被保険者を殺害した場合
- 死亡保険金受取人が被保険者を殺害した場合
- 戦争や内乱、暴動等による死亡の場合
- 告知義務違反があり、告知義務違反の内容が原因による死亡の場合
いわゆる保険金目当ての殺人だったり、戦争や内乱、暴動に巻き込まれて死亡した場合などは、死亡保険金の支払いの対象外となります。
それ以外にも、保険契約加入時に告知義務違反があり、その告知しなかった内容が原因となる死亡の場合は支払いの対象外となる可能性が高くなります。
なお、保険金が支払われないケースについては、保険会社各社で個別具体的に保険約款等で定めているため、詳しくは約款等をご確認ください。
関連記事:なぜ生命保険に告知が必要なの?その重要性と告知の種類を解説します
まとめ
もちろん、必ずしも全てがというわけではありませんが、原則として、死亡原因が自殺の場合は死亡保険金は支払われないと考えて頂くほうがよいでしょう。
自殺の理由・要因がどんなものであれ、自殺により、残される家族やその周囲への影響ははかり知れないものです。
自殺という選択肢をとる前に、ひとりで抱え込まず、弁護士や法テラス、公的機関の窓口に相談することで何か解決に繋がる糸口が見つかるかもしれません。
