病気やケガで働けなくなると、収入が減り、家計に大きな影響を及ぼします。
収入減少のリスクに備えるのが就業不能保険ですが、そもそもこの保険は、どんな商品なのでしょうか。また、具体的にどのような場合に、保険金を受け取れるのでしょうか。
この記事では、就業不能保険の特徴や保障内容、商品選びのポイント、他の保険商品との違いなどについて、わかりやすく解説します。
生命保険会社では、多くの種類の保険商品が取り扱われていますが、その中でも最近注目を集めているのが就業不能保険です。
病気やケガ等で長期療養を余儀なくされると、仕事にも影響が出て、収入が大きく減少する可能性があります。
契約している保険が死亡保険の場合、高度障害など、生命保険会社所定の状態にならない限り保険金を受け取ることはできません。また、医療保険の場合は、入院日数や手術の種類に応じた給付金を受け取れるだけで、働けない状態によって収入が減少したことに対する保障というのがありません。
つまり、自宅療養で数か月間にわたり仕事を休んだ場合、死亡保険や医療保険では収入減少に関する保障を受けられないのです。
就業不能保険は、働けないことで起こりうる収入減少のリスクに備えるための保険です。
就業不能の期間に応じて契約時に定めた金額の給付金を受け取り、それを働けない間の生活費やローンの支払いなどに充てることができます。
就業不能保険は、生命保険会社所定の就業不能状態になった場合に、契約時に定めた金額の給付金を受け取ることになります。
就業不能保険は、契約時に就業不能給付金の金額(月額)を設定します。
被保険者の1ヶ月あたりの収入(月収)を参考にして、決定することが一般的です。
例えば、被保険者の職業が会社員で、1ヶ月あたりの収入(月収)が手取りで33万円の場合、健康保険から最長1年6ヶ月、傷病手当金を受け取ることができるので、その分も考慮して、目安として10~20万円の間で設定するイメージです。
被保険者の職業が自営業の場合は、会社員と異なり、原則として傷病手当金を受け取ることができないため、1ヶ月あたりの収入(月収)の手取りの金額で設定するほうが良いでしょう。
そして、被保険者が生命保険会社所定の就業不能状態と認定された場合、所定の給付金を毎月受け取ることになります。
就業不能給付金を受け取れる期間は、以下のいずれかである商品が一般的です。
・就業不能状態から回復するまで
・保険期間満了まで
例えば、給付金月額を10万円に設定した就業不能保険の被保険者が20か月間にわたり就業不能状態となった場合、毎月10万円ずつ20か月間、合計200万円を受け取れることになります。
就業不能保険は、職業や年収によって設定できる給付金額に上限が設けられている商品が一般的です。
例えば、ある生命保険会社が販売する就業不能保険では、職業・年収別の給付金の上限額を以下のように定めています。
年収 | 給付金上限金額 |
---|---|
100万円超~200万円以下 | 10万円 |
200万円超~300万円以下 | 10万円~15万円 |
300万円超~400万円以下 | 10万円~20万円 |
400万円超~500万円以下 | 10万円~25万円 |
500万円超~600万円以下 | 10万円~30万円 |
600万円超~700万円以下 | 10万円~35万円 |
700万円超~800万円以下 | 10万円~40万円 |
800万円超~900万円以下 | 10万円~45万円 |
900万円超 | 10万円~50万円 |
主婦・主夫 | 10万円 |
学生、年金生活者、資産生活者、無職、年収 100万円以下の人 | 申し込み不可 |
職業や年収によって定める給付金の上限金額は、生命保険会社によって取り扱いが異なります。働けなくなった場合のリスクに手厚く備えたい、という方は、上限額を高めに設定している商品を検討するのもひとつの選択肢でしょう。
働けなくなった場合のリスクに備える就業不能保険ですが、具体的に、どのような状態になった場合に給付金を受け取れるのでしょうか。
ここからは、「就業不能」とはどんな状態のことをいうのか、また、実際に給付金が支払われたのはどんな事例なのか、といった点について見ていきましょう。
何をもって「就業不能」と認定するのか、その定義は生命保険会社によって異なります。
例えば、ある生命保険会社では、病気やケガが原因で
① 治療を目的とした入院をしたとき
② 医師の指示を受け在宅療養をしたとき
③ 国民年金法施行令に定める障害者等級2級以上に認定された場合
を、就業不能状態と定義します。
また、別の生命保険会社では、
① 5疾病による所定の入院・在宅療養状態
② 病気やケガを原因とする所定の障害状態
③ 所定の要介護状態になった場合
ここで注意したいのは、就業不能保険の保障対象となる自宅療養は、あくまでも医師の指示によるものである必要がある、という点です。
医師の指示ではないものの体調が優れず自己判断で仕事を休んでいる、という場合は就業不能保険による保障を受けられません。
また、ほとんどの就業不能保険は「入院もしくは医師の指示による自宅療養状態」を「就業不能状態」と認定しますが、その原因となった病気やケガについては、特に限定していない商品もあれば、5疾病、7疾病、というように限定しているものもあります。
また、所定の要介護状態になった場合を就業不能状態と認定するかどうか、という点も生命保険会社によって取り扱いが異なります。
就業不能保険への加入を検討するにあたっては、どんな状態を就業不能と定義するのか、その原因となる病気について限定されているかどうか、という点について必ず確認しましょう。
就業不能保険の給付金支払い事例には、以下のようなものがあります。
・ 血管性の認知症により、250日間入院をした
・ 通勤中の事故によるケガで、180日間入院をした
就業不能保険の多くは、病気の治療を目的として入院したとき、あるいは医師の指示により自宅療養したときを、保障の対象としています。
ただし、この「病気」に「精神疾患」も含まれるかどうか、という点については生命保険会社によって取り扱いが異なるため、注意が必要です。
というのも、就業不能保険の中には、入院や自宅療養など就業不能状態になった原因が「うつ病」などの精神疾患であった場合、給付金の支払対象外となる商品があるのです。
精神疾患を含むあらゆる病気に伴う収入減少のリスクに広く備えたい方は、保障範囲の広い商品を選ぶことをおすすめします。
商品の中には、以下のような保障タイプの中から必要なものを選択できるものもあります。
保障範囲が広くなると保険料も高くはなりますが、より手厚い保障を用意しておきたい方には、全疾病型プランをおすすめします。
全疾病型
精神疾患を含む、すべての病気やケガを原因とした就業不能状態の場合に保障
3疾病型
がん、心筋梗塞、脳卒中を原因とした就業不能状態の場合に保障
がん保障型
がんを原因とした就業不能状態の場合に保障
精神疾患による就業不能は保障内容が異なる場合がある
精神疾患を原因とする就業不能状態を保障の対象としている商品を検討するにあたっては、1つ、注意したいポイントがあります。それは、就業不能状態の原因が精神疾患であるかどうかによって、保障内容が変わる場合がある、という点です。
例えば、ある生命保険会社が販売する就業不能保険は精神疾患による就業不能についても保障を受けられますが、給付期間を受け取れる回数には以下のような違いがあります。
・病気やケガによる就業不能状態…回数無制限
・精神疾患による就業不能状態…通算18回まで
また、「就業不能」の定義についても、以下のような違いがあります。
・病気やケガによる就業不能状態
①治療を目的とした入院
②医師の指示による在宅療養
③国民年金法施行令に定める障害者等級2級以上に認定された場合(精神疾患を直接の原因とするものを除く)
・精神疾患による就業不能状態
①精神疾患の治療を目的とした入院
②国民年金法施行令または精神保護及び精神障碍者福祉に関する法律施行令に定める障害者等級2級以上に認定された場合
就業不能保険の商品選びにおいては、精神疾患による就業不能状態についても保障されるかどうか、という点についてはもちろん、どのような場合にどんな保障を受けられるのか、という点についても詳しく確認する必要があります。
就業不能保険の保障期間(保険期間)や免責期間は、生命保険会社によって取り扱いが異なります。よりニーズにあった商品を選ぶためにも、就業不能保険への加入を検討する際は、保障期間と免責期間の2点についても、よく確認しておくようにしましょう。
就業不能保険の多くは、加入時に保障期間(保険期間)を選択できます。選択の仕方は商品によって異なり、60歳満了、65歳満了、というように予め設定されているプランの中から選択するものもあれば、50歳から75歳までの間の年齢、というように予め設定されている年齢の範囲の中から任意に設定できるものもあります。
令和3年4月現在、公的年金の受給開始年齢は原則65歳となっていますので、この年齢を目安に、保障期間を何歳までにするか考えてみてはいかがでしょうか。自営業をしており、公的年金受給後も働くつもりで将来の資金計画を立てている方は、保険期間を長めに設定してもいいでしょう。また、現代の社会情勢を考慮すると、公的年金の受給開始年齢が引き上げられることも十分に予想されます。それを見越したうえで保険期間を長くするのもひとつの選択肢です。
ただし、就業不能保険の保険料は、保険期間が長くなればなるほど高くなります。生命保険は保険料を払えなくなると失効してしまいますので、保険期間を決める際は無理なく支払い続けられる保険料であるかどうか、慎重に考えてみることが大切です。
就業不能保険には、働けない状態になったときから給付金受け取り開始までの間に、「免責期間」が設けられています。生命保険会社所定の就業不能状態になった場合でも、免責期間中は給付金を受け取ることができません。
免責期間は商品によって異なり、60日のものもあれば、60日または180日のいずれかを選択できるものもあります。
働けなくなった場合に、お給料のように毎月給付金を受け取れる就業不能保険。では、この保険は本当に必要なものなのでしょうか。日本は社会保障制度が充実しており、病気やケガで働けなくなっても、経済的なサポートを得られる場合があります。そのため就業不能保険の必要性について、疑問を感じている方も少なくないでしょう。
そこでここからは、働けなくなった場合に利用できる公的制度について確認しつつ、就業不能保険の必要性について検討してみましょう。
日本は社会保障制度が充実しており、病気やケガで働けなくなってしまっても公的制度を利用することで、逸失収入をカバーできる場合があります。では、働けない時に利用できる制度には、どのようなものがあるのでしょうか。
1 有給休暇
会社員は、会社を休んでも賃金が支払われる「有給休暇」を利用することができます。これは、雇入日より継続して6カ月間勤務し、かつ、全労働日のうち8割以上出勤した者に与えられるもので、正社員はもちろん、パートタイムで働く従業員も取得することが可能です。
有給休暇の日数は勤続年数に応じて増加しますので、長年同じ会社で働いている方の場合、1か月程度であれば有給休暇を病気やケガの療養に充てられる可能性もあるでしょう。
2 会社独自の保障制度
勤務している会社によっては、その会社独自の保障制度がある場合があります。法律で定められている休業補償や公的制度とは別に、会社独自の保障を受けられるのです。これは、法律で義務付けられている制度ではありませんので、すべての会社に保障制度があるわけではありませんし、保障を受けられる条件も保障内容も、会社によって異なります。
自分が働けなくなった場合にどこからどのくらいの保障を受けられるのか、ということは就業不能保険の保障内容を決めるにあたってとても重要なポイントです。この保険への加入を検討している方は、自分が勤めている会社に独自の保障制度があるかどうか、ある場合はその保障内容について、事前に確認しておきましょう。
3 健康保険の傷病手当金
傷病手当金は、勤務先の健康保険組合など、社会保険に加入している人が、病気やケガで仕事を休んだ場合に受け取れるものです。傷病手当金は、以下の条件をすべて満たした場合に給付されます。
① 業務以外の事由を原因とする病気・ケガの療養のために休業している
② 仕事に就くことができない
③ 4日以上仕事に就けない(連続する3日間を含む)
④ 休業期間中、給与の支払いがない
傷病手当金を受け取れるのは、支給開始日から最長1年6ヵ月です。この期間が経過した後も就業不能状態が続いている場合であっても、傷病手当金を受け取ることはできません。支給開始日は、休業4日目からとなります(連続する3日間の休業の後)。
傷病手当金の支給額(1日あたりの金額)は、以下の計算式により算出されます。おおよそ、標準報酬月額の2/3相当額程度を受け取れる、という理解でいいでしょう。
【 支給開始日以前の継続した12カ月間の各月の標準月額の平均額 ÷ 30日 × 2/3 】
なお、自営業者やフリーランスが加入する国民健康保険には、傷病手当金制度がありません。そのため、国民健康保険に加入している人が病気やケガで仕事を休んだとしても、傷病手当金を受け取ることはできません。
4 雇用保険の傷病手当
雇用保険の傷病手当は、受給資格者が離職後ハローワークに来所して求職の申込をした後、15日以上引き続いて職業に就くことができなくなった場合に受け取れるものです。傷病手当の金額は基本手当と同額で、【離職直近6ヵ月の賃金合計(賞与等は除く)÷180】のおよそ50~80%となっています。基本手当日額には年齢区分ごとの上限があり、令和2年8月時点における上限額は以下の通りです。
・ 30歳未満…6,845円
・ 30歳以上45歳未満…7,605円
・ 45歳以上60歳未満…8,370円
・ 60歳以上65歳未満…7,186円
雇用保険の受給期間は原則として、離職した日の翌日から1年間となります。ただし、病気やケガにより引き続き30日以上職業に就けない日がある場合には、最大3年まで受給期間の延長が可能です。
また、「健康保険の傷病手当金」と「雇用保険の傷病手当」はしばしば混同されがちですが、両者はまったく異なる制度です。健康保険の傷病手当金が「在職中」に受けられる保障であるのに対し、雇用保険の傷病手当は、「失業中」に受けられる保障となります。
なお、雇用保険は労働者の解雇や失業に伴うリスクをカバーするためのもので、自ら事業を行う個人事業主本人は、「労働者」とみなされません。そのため雇用保険には加入できず、この制度を利用することもできません。
5 労災保険の休業補償給付
労災保険の休業補償給付は、労働者が以下の3つの条件を満たした場合に受け取れるものです。
① 業務上の事由または通勤を原因とする病気やケガの療養のため
② 労働することができず
③ 賃金を受けていない
休業初日から3日間を待機期間とし、4日目から以下の給付金が支給されます。
・ 休業補償給付金…給付基礎日額[i]の60%×休業日数
・ 休業特別支給金…給付基礎日額の20%×休業日数
休業補償給付金の支払期間について、特段の制限はありません。ただし、療養開始から1年6ヵ月経過後は、給付基礎日額について年齢階層別に定められる最低・最高限度額が適用されます。また、以下の要件に該当する場合は、支給される給付金が傷病補償年金に切り替わります。
・ その病気またはケガが治っていないこと
・ その病気またはケガによる傷害の程度が傷病等級票の傷病等級に該当すること
なお、個人事業主は原則として、労災保険に加入することができません。建設業など、一定の業種については特別加入が認められるケースもありますが、それ以外の職種の方の場合、業務上のケガや病気が原因で仕事を休んでも、労災保険による補償は受けられないと考えておきましょう。
6 国民年金や厚生年金の障害年金
国民年金や厚生年金の障害年金は、病気やケガによって「一定の障害の状態にある」と認定された場合に受給できるものです。
国民年金の障害基礎年金額は、障害等級によって以下のようになっています(令和3年4月から)。
・ 1級…78万900円×1.25+子の加算[ii]
・ 2級…78万900円+子の加算
厚生年金加入者は、障害基礎年金に加え、障害厚生年金を受給することができます。障害厚生年金額は、障害等級によって以下のようになっています(令和3年4月から)。
・ 1級…報酬比例の年金額×1.25+配偶者の加給年金額[iii](22万4,700円)
・ 2級…報酬比例の年金額+配偶者の加給年金額(22万4,700円)
・ 3級…報酬比例の年金額(最低保障額58万5,700円)
国民年金加入者と厚生年金加入者では、保障対象となる障害等級やもらえる年金の種類に違いがあります。自営業者やフリーランスが加入する国民年金では、障害基礎年金しかもらえないうえ、保障対象となるのも障害等級2級からとなります。
[i] 給付基礎日額とは、疾病の発生が確定した日、または負傷の原因となった事故が発生した日の直前3か月間に支払われた賃金合計(賞与等を除く)をその期間の日数で割って算出した、1日あたりの賃金額のことをいいます。
[ii] 「子の加算」は、第一子、第二子について各22万4,700円、第三子以降は各7万4,900円となります。また、ここにいう「子」とは、以下に該当する人のことをいいます。
[iii]配偶者の加給年金額は、その方に生計を維持されている配偶者(65歳未満)がいるときに加算されるものです。
ここまで、働けなくなったときに利用できる公的制度についてご紹介してきました。ここで注意したいのが、会社員と自営業者・フリーランスとでは、利用できる制度が大きく異なる、という点です。
病気やケガで働けない場合に会社員が利用できる公的制度
・ 有給休暇
・ 会社独自の保障制度
・ 健康保険の傷病手当金
・ 雇用保険の傷病手当
・ 労災保険の休業補償給付
・ 障害基礎年金と障害厚生年金
病気やケガで働けない場合に自営業者やフリーランスが利用できる公的制度
・ 障害基礎年金
自営業者が利用できる公的制度は、会社員に比べてかなり限定されています。そのため自営業者は会社員に比べて、働けなくなった場合の経済リスクにより手厚く備えておく必要があります。
病気やケガで働けなくなり、収入が減少しても、毎月の生活費など家計からの支出は続きます。総務省の「家計調査報告(家計収支編)令和2年」[i]によると、2人以上世帯(勤労世帯)における1か月あたりの支出の平均額は30万5,811円で、その主な内訳は以下のようになっています。
主な内訳 | 金額 |
---|---|
食料 | 7万9,496円 |
住居 | 1万8,824円 |
光熱・水道 | 2万1,696円 |
家具・家事用品 | 1万3,364円 |
被服及び履物 | 1万654円 |
保健医療 | 1万3,068円 |
交通・通信 | 4万9,469円 |
自動車等維持 | 1万8,668円 |
教育 | 2万5,003円 |
教養娯楽 | 2万8,718円 |
その他の消費支出 | 5万5,868円 |
こづかい(使途不明) | 9,887円 |
交際費 | 1万3,620円 |
これはあくまでも平均値ですので、家族の人数や教育方針、居住地などによって、食費や住居費、教育費などが平均値を大きく上回る家庭もあるでしょう。そしてこれらの支出は、働けない間もずっと続きます。
公的制度を利用することで一定の保障を得られるとはいえ、それだけで働いていたときと同水準の生活を維持するのは難しいでしょう。
[i] 総務省「家計調査報告書(家計収支編)令和2年」
では、実際に就業不能保険に加入している人は、どのくらいいるのでしょうか。生命保険文化センターの調査によると、2021年(令和3年)における生活障害・就業不能保障保険、生活障害・就業不能保障特約の世帯加入率は18.4%でした。また、その加入率を世帯主年齢別にみると、以下のようになっています(生命保険文化センター「2021(令和3)年度「生命保険に関する全国実態調査[i]」」)。
・ 29歳以下…26.5%
・ 30~34歳…34.6%
・ 35~39歳…30.9%
・ 40~44歳…26.3%
・ 45~49歳…28.7%
・ 50~54歳…26.3%
・ 55~59歳…17.5%
・ 60~64歳…14.7%
[i] 生命保険文化センター「2021(令和3)年度「生命保険に関する全国実態調査」」
就業不能保険は、すべての人に加入の必要があるものではありません。では、どのような人に就業不能保険が必要で、どのような人には必要ないのでしょうか。
以下に当てはまる方は、就業不能保険への加入を検討してみてはいかがでしょうか。
・ 自営業者、フリーランス
・ 住宅ローンや賃料など住居費がかかる世帯
・ 長期間働けなくても生活していけるだけの貯金がない世帯
・ 小さい子供がいる世帯
毎月の生活費が約30万円必要であるとして、10年間働けない期間が続くと仮定します。その間に必要なお金は3,600万円になります。これをカバーできるだけの貯蓄がない方は、就業不能保険への加入をおすすめします。
十分な資産をお持ちの方は、就業不能保険に加入する必要はないでしょう。例えば、以下のような方がこれに当てはまります。
・ 不動産所得をはじめとする不労所得がある
・ 働かなくても子供が成長するまで現在の生活水準を保てるほどの資産がある
就業不能保険と混同されやすい商品に、「医療保険」「収入保障保険」「所得補償保険」があります。ここからは、就業不能保険とこれらの保険の違いについて見ていきましょう。
医療保険は、病気やケガの治療を目的として入院したり、手術を受けたりした場合に保険金を受け取れるものです。「病気やケガ」というと就業不能保険と同じようにも思えますが、医療保険と就業不能保険では、対応するリスクに大きな違いがあります。
就業不能保険が病気やケガによる「収入減」をカバーするものであるのに対して、医療保険は病気やケガによる「医療費」をカバーするものなのです。
ほとんどの医療保険には入院日数に応じて支払われる入院給付金について、支払限度日数が設けられています。例えば、支払限度日数60日の医療保険に加入している場合、入院期間が61日以上になっても60日分の入院給付金しか受け取ることができません。これに対して就業不能保険は、就業不能状態から回復するまで、あるいは保険期間満了まで、給付金を受け取ることが可能です。
また、医療保険は原則として、入院あるいは手術を受けた場合に保障を受けられます。これに対して就業不能保険は、入院した場合はもちろん、医師の指示によって在宅療養をした場合も、保障を受けることが可能です。
就業不能保険と名前が似ている「収入保障保険」は、死亡保険に分類される商品です。収入保障保険では、被保険者が死亡した場合に遺された家族が、保険期間満了時まで所定の死亡保険金を給与のように毎月受け取るものです。就業不能保険はあくまでも「生きている人が働けない」リスクに備えるためのものですので、被保険者が死亡した場合は「就業不能状態」とはいえないと判断され、給付金を受け取ることはできません。
就業不能保険が「生きている間」のリスクをカバーするものであるのに対し、収入保障保険は「亡くなった後」のリスクをカバーするものである、といえるでしょう。
就業不能保険が生命保険会社によって販売されている商品であるのに対し、所得補償保険は損害保険会社によって販売されている商品です。病気やケガによって働けなくなるリスクに備える、という点では同じですが、保険金額や保険期間、保障(補償)を受けられる期間などの点において、以下のような違いがあります。
所得補償保険
・ 保険金額…契約前の1年間における所得の50~70%
・ 保険期間…1~5年(更新は可能)
・ 補償を受けられる期間…2年、5年、○○歳まで、など商品によって異なる
就業不能保険
・ 保険金額…生命保険会社が定める年収に応じた上限額の範囲内で設定
・ 保険期間…生命保険会社が指定する年齢の範囲内で満期を設定
・ 保障を受けられる期間…就業不能状態から回復するまで、あるいは保険期間満了まで
就業不能保険で備えるべき保障内容や保険期間は、年齢や職業、家族構成、貯蓄状況などによって異なります。そこで、商品選びをする際は、以下のようなポイントを重視してみてはいかがでしょうか。
「就業不能」の定義や、精神疾患による就業不能も保障するかどうかといった「保障範囲」は、商品によって異なります。そこで就業不能保険選びをする際は、それぞれの商品が「就業不能」についてどう定義しているのか、どんな病気やケガによる就業不能状態を保障の対象としているのか、事前に確認しておきましょう。
働けなくなった場合に必要な生活費などについて、そのすべてを就業不能保険でカバーする必要はありません。会社員であれば公的制度を利用することができますし、資産があればそれを切り崩す方法もあります。
もしも働けなくなった場合にどんな制度を利用できるのか、その制度によって得られる給付金はどのくらいなのか、といったことを具体的にシミュレーションしてみると、就業不能保険で備えるべき保険金額が見えてくるでしょう。
就業不能保険の保険期間は、「働いている全期間について備えたい」のか、「働いている一定期間について備えたい」のか、によって変わってきます。
働いている全期間について備えたい方は、60歳、65歳、70歳、というように退職予定時期に合わせて保険期間を設定するといいでしょう。これに対して、働いている一定期間について備えたい方は、子供が独立する○○歳まで、住宅ローンの支払いを終える○○歳まで、というように将来設計に合わせて保険期間を設定してみましょう。
就業不能保険の中には就業不能状態になった日から1年6ヵ月間、受け取る給付金の金額を削減できる商品があります。
会社員の方は健康保険の傷病手当金を1年6ヵ月間受給できるため、この期間内であれば就業不能給付金の受け取り金額を削減しても、大きな問題はないでしょう。また、給付金削減期間を設けることには、保険料を安く抑えられるというメリットもあります。
これに対して自営業やフリーランスの方は、病気やケガで仕事を休んでも傷病手当金を受け取ることができません。そのため給付金削減期間を設けず、免責期間経過後はすぐに契約時の所定の給付金を受け取れるプランを選択することをおすすめします。
就業不能保険は、これを販売する生命保険会社によって、就業不能の定義や保障内容が異なります。
また、就業不能保険で備えるべき保険金額や保険期間は、年齢や家族構成、職種などによって異なります。就業不能保険への加入を検討している方はまず、毎月どのくらいの生活費が必要なのか、それらのうちどのくらいを保険で備えるべきなのか、具体的にシミュレーションしてみてはいかがでしょうか。商品選びに迷ったら、ファイナンシャルプランナーに相談してみることをおすすめします。
こちらの動画でも就業不能保険についてわかりやすく解説をしています。「就業不能保険の選び方&比較するべきポイント」「就業不能保険を選ぶ時の注意点」などについてもファイナンシャルプランナーが解説しているので、ぜひこちらもご参考にしてみてください。
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