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医療保険

熱中症は保険でカバーできる?公的保険と民間の保険の適用条件を解説

熱中症は保険でカバーできる?公的保険と民間の保険の適用条件を解説

猛暑が続く近年、熱中症による救急搬送は増加の一途をたどっています。

2025年5~9月の搬送者数は、全国で約10万人と過去最多を記録し、熱中症は今や誰にとっても他人事ではない健康リスクと言えるでしょう。

では、実際に熱中症になった場合、医療費や入院費はどこまで保険でカバーされるのでしょうか。

熱中症の保障は公的保険(健康保険・労災保険など)と、民間の保険(医療保険・傷害保険・死亡保険)で異なります

この記事では、熱中症がカバーされる保険の種類や適用範囲、注意点を整理し、必要な備え方をわかりやすく解説します。

この記事のポイント

  • 熱中症は健康保険の適用対象であり、通院・入院ともに自己負担は原則1〜3割だが、差額ベッド代や食費などは自己負担となる。
  • 労災保険は業務に起因する熱中症であれば医療費が全額補償され、休業補償給付など収入面の支援も受けられる可能性がある。
  • 民間保険では医療保険は入院時のみ給付対象となることが多く、傷害保険は原則対象外だが、近年は熱中症に特化した保険も登場し、加入者を増やしている。

熱中症とは?

熱中症とは

熱中症は、体内の水分や塩分が減少したり血液の流れが滞ったりして、体温の調節ができなくなり、急激に体温が上昇することによって発症します

症状としては、めまい、筋肉のこむら返り、頭痛、吐き気などがあります。

症状がひどくなると意識がなくなったり、まっすぐ歩けなくなったり、最悪の場合、死に至るケースもあります

熱中症の分類と後遺症について

熱中症になるとどのような症状が現れるのでしょうか。

熱中症は、重症度によって3つに分類されています。

熱中症になるとどうなる?後遺症の影響はある?

重症度Ⅰ度(軽症)では、めまいや立ちくらみ、大量の発汗や筋肉硬直があります。

Ⅰ度の場合は現場での応急処置が可能で、涼しい場所に避難し安静にすることが基本的な処置となります。

重症度Ⅱ度(中等症)の場合は、頭痛や嘔吐、集中力や判断力の低下が見られます。

すぐに症状の改善が見られない場合は、医療機関の受診が必要です。

重症度Ⅲ度(重症)になると、意識障害やけいれん、歩行困難などの症状が現れ、入院が必要となります。

なお、入院日数は1~3日程度が一般的とされていますが、重症化により長期化することもあります。

さらに、熱中症には後遺症が現れる可能性もあります

記憶障害や意欲低下、歩行障害など、重症化した熱中症ほど後遺症が残るリスクが高くなります。

後遺症は数カ月で改善するケースが多いとされていますが、重症の場合は1年以上かかることもあります。

したがって、熱中症の症状が悪化する前に病院に行き、治療を受けることが重要です。

なお、2024年4月からは従来の「熱中症警戒アラート」に加え、より深刻な状況を知らせる「熱中症特別警戒アラート」の運用が始まっています

このアラートは、熱中症の危険性が極めて高くなると予想される場合に、前日の17時頃または当日の朝5時頃に発表されるものです。

環境省のWebサイトやメール配信サービスでアラートの発表状況を確認し、発表時には不要不急の外出を控えるなど、予防行動に役立てましょう。

熱中症は公的保険が適用される?

では、熱中症になった場合、保険は適用されるのでしょうか。

まずは公的保険制度である健康保険と労災保険について、確認してみましょう。

健康保険の場合

熱中症で通院した場合は、健康保険が適用されるため自己負担は1〜3割です

入院した場合も、医療費の自己負担額は同様ですが、差額ベッド代や食事代、日用品の購入費用などは健康保険が適用されず、全額自己負担となります

差額ベッド代(さがくベッドだい)とは?

個室や2〜4人部屋に自ら希望して入室した場合に発生する費用。

なお、入院が長引き医療費が高額になった場合は、高額療養費制度の対象となります。

高額療養費制度(こうがくりょうようひせいど)とは?

1カ月あたりの医療費が自己負担上限額を超えた場合、超えた金額が払い戻される制度。上限額は年齢や年収によって異なる。

なお、以下の表は2026年7月までの高額療養費の上限額を示したものです。

■ 70歳未満の方の区分(2026年7月まで)

高額療養費の上限額(70歳未満の区分)

※「総医療費」は自己負担割合を適用する前の10割の金額

■ 70歳以上の方の区分(2026年7月まで)

高額療養費の上限額(70歳以上の区分)

※「総医療費」は自己負担割合を適用する前の10割の金額

関連記事:高額療養費制度は医療費がいくら以上から使える?さらに負担を軽くする多数該当、世帯合算とは?

2026年8月から高額療養費制度は2段階で見直しを実施

なお、2026年8月より、高額療養費制度の自己負担上限額が2段階で段階的に引き上げられることが決定しています

2026年8月以降は自己負担額が増える可能性があるため、最新の上限額は厚生労働省のWebサイトでご確認ください。

第1段階(2026年8月~2027年7月)の見直し内容

■ 70歳未満の方の区分

所得区分

負担割合

月額自己負担上限

年間上限

約1,160万円以上

3割

270,300円+(医療費-901,000円)×1%

168万円

約770~1,160万円

3割

179,100円+(医療費-597,000円)×1%

111万円

約370~770万円

3割

85,800円+(医療費-286,000円)×1%

53万円

約370万円未満

3割

61,500円

53万円

住民税非課税

3割

36,900円

29万円

※年収約200万円未満は年間上限41万円(令和9年8月以降償還)

■ 70歳以上の方の区分

所得区分

負担割合

外来上限(個人)

月額自己負担上限

年間上限

約1,160万円以上

3割

-

270,300円+1%

168万円

約770~1,160万円

3割

-

179,100円+1%

111万円

約370~770万円

3割

-

85,800円+1%

53万円

約370万円未満

2割または1割

22,000円
(年21.6万円)

61,500円

53万円

住民税非課税

1割

11,000円
(年9.6万円)

25,700円

29万円

住民税非課税
(一定以下)

1割

8,000円

15,700円

18万円

※年収約200万円未満は年間上限41万円(令和9年8月以降償還)

第2段階(2027年8月~)の見直し内容

■ 70歳未満の方の区分

年収目安

負担割合

月額自己負担上限

年間上限

約1,650万円以上

3割

342,000円+(医療費-1,140,000円)×1%

168万円

約1,410~1,650万円

3割

303,000円+(医療費-1,010,000円)×1%

168万円

約1,160~1,410万円

3割

270,300円+(医療費-901,000円)×1%

168万円

約1,040~1,160万円

3割

209,400円+(医療費-698,000円)×1%

111万円

約950~1,040万円

3割

194,400円+(医療費-648,000円)×1%

111万円

約770~950万円

3割

179,100円+(医療費-597,000円)×1%

111万円

約650~770万円

3割

110,400円+(医療費-368,000円)×1%

53万円

約510~650万円

3割

98,100円+(医療費-327,000円)×1%

53万円

約370~510万円

3割

85,800円+(医療費-286,000円)×1%

53万円

約260~370万円

3割

69,600円

53万円

約200~260万円

3割

65,400円

53万円

約200万円未満

3割

61,500円

41万円

住民税非課税

3割

36,900円

29万円

※年収約200万円未満は年間上限41万円(令和9年8月以降償還)

■ 70歳以上の方の区分

年収目安

負担割合

外来(個人)上限

月額自己負担上限

年間上限

約1,650万円以上

3割

-

342,000円+(医療費-1,140,000円)×1%

168万円

約1,410~1,650万円

3割

-

303,000円+(医療費-1,010,000円)×1%

168万円

約1,160~1,410万円

3割

-

270,300円+(医療費-901,000円)×1%

168万円

約1,040~1,160万円

3割

-

209,400円+(医療費-698,000円)×1%

111万円

約950~1,040万円

3割

-

194,400円+(医療費-648,000円)×1%

111万円

約770~950万円

3割

-

179,100円+(医療費-597,000円)×1%

111万円

約650~770万円

3割

-

110,400円+(医療費-368,000円)×1%

53万円

約510~650万円

3割

-

98,100円+(医療費-327,000円)× 1%

53万円

約370~510万円

3割

-

85,800円+(医療費-286,000円)× 1%

53万円

約260~370万円

2割

28,000円
(年21.6万円)

69,600円

53万円

約200~260万円

2割

22,000円
(年21.6万円)

65,400円

53万円

約200万円未満

1~2割

22,000円
(年21.6万円)

61,500円

41万円

住民税非課税

1割

13,000円
(年9.6万円)

25,700円

29万円

住民税非課税(一定以下)

1割

8,000円

15,700円

18万円

※年収約200万円未満は年間上限41万円(令和9年8月以降償還)

労災保険の場合

仕事中に熱中症となった場合は、基本的に労災保険の対象となります

高温多湿の環境で仕事をしていたなど、熱中症と業務に関連が認められれば、労災保険から「療養補償給付」を受けられます。

なお労災指定医療機関で治療を受けた場合は、原則として医療費の自己負担もありません。

また、労災保険では療養のために仕事を休み賃金を受けない場合、4日目から賃金の約60%を「休業補償給付」として受けることができます

もし、熱中症で死亡した場合や障害が残った場合にも「障害補償給付」や「遺族補償給付」などの支給があります。

■労災保険で受けられる主な給付

  • 療養補償給付:診察、検査、点滴、入院、手術、薬代など、治療に必要な費用を補償 
  • 休業補償給付:療養のために働けず、賃金が支払われない場合に休業4日目から支給
  • 障害補償給付:治療後も障害が残った場合、その程度に応じ年金または一時金が支給
  • 遺族補償給付:遺族に対し年金または一時金が支給

関連記事:意外と使える!病気やケガで働けなくなった時の公的補償

熱中症は民間の保険で保障される?

では次に、民間の保険では熱中症は保障されるのでしょうか。

保険の種類ごとに、熱中症が給付金や保険金の支払い対象となるのか確認していきましょう。

医療保険の場合

一般的には、熱中症で入院や手術をすると入院給付金や手術給付金が支給されます

ただし、通院のみで治療が終了した場合は、給付金は支給されません

なお、主契約に通院特約をつけている場合でも、通院特約は一般的に退院後の通院に対して給付金が支給されます

入院しなければ通院特約の給付金が支給されない可能性があるため、注意しましょう。

傷害保険の場合

傷害保険で保険金が支給されるのは、「急激」「外来」「偶然」の3つの状況がそろったときです。

そのため、熱中症は一般的に「急激」の条件を満たしにくく、傷害保険では保険金の支払い対象外となります

ただし、傷害保険に「熱中症危険補償特約」など、熱中症を支払い対象とした特約を付帯していた場合は保険金支払いの対象となります。

なお、特約が付帯されている場合でも、死亡保険は保険金支払いの対象外となる商品もあります

そのため、熱中症特約でカバーされる範囲について注意が必要です。

関連記事:傷害保険で熱中症は対象になる?熱中症も補償される損害保険を解説

死亡保険の場合

終身保険定期保険収入保障保険などにおいては、熱中症が原因で死亡した場合、一般的には保険金が支給されます。

ただし、災害死亡保険金は対象外のため注意しましょう。

災害死亡保険金(さいがいしぼうほけんきん)とは?

保険会社の定める不慮の事故などを原因として死亡した際に支払われる保険金のこと。

なお、災害死亡保険金が支払われる「不慮の事故」とは、「急激」「外来」「偶然」の事故によるものです。

そのため、熱中症による死亡でも、災害死亡保険金は支払い対象外となります。

熱中症の保障に特化した「熱中症保険」も登場している

熱中症の保障に特化した「熱中症保険」も登場している

熱中症保険とは、熱中症で入院や治療を受けた場合に保険金が支払われる、熱中症に特化した保険です。

■ 熱中症保険の主な保障内容

  • 救急搬送見舞金:熱中症で緊急搬送された際に支払われる
  • 治療保険金:熱中症で病院などで治療を受けた際に支払われる
  • 入院保険金:熱中症で1泊2日以上入院をした際に支払われる

熱中症保険は保険期間が短期で、保険料・保険金ともに少額である少額短期保険として、取り扱う保険会社が増えています。

なお、熱中症保険は保険期間が1日単位で選択できるものも多く、熱中症のリスクが高くなる日だけピンポイントで契約することも可能です

また保険料も1日100円など非常にお手頃で、Webサイトから申込みができるため、最近では加入者も増加しています。

真夏に屋外のレジャーなどを予定している際には、加入を検討するとよいでしょう。

熱中症と保険についてよくある質問

ここでは、熱中症や保険に関して多くの方が抱く疑問について、Q&A形式でお答えします。

Q.熱中症はどの年代に多いですか?また熱中症の発生場所はどこが多いですか?

A.消防庁の発表によると、令和7年に熱中症で救急搬送された57.1%が、65歳以上の高齢者でした。

次いで成人(18歳以上65歳未満)が33.9%、子ども(7歳以上18歳未満)8.4%、乳幼児(生後28日~7歳未満)0.5%でした。

なお、救急搬送された約3割が、入院が必要な中等症であったと報告されています。

また、同発表によると、熱中症の発生場所としては、「住居」が38.1%と最も多く、次いで「道路」が19.7%、「公衆(屋外)」が12.1%となっています

なお、割合としては多くありませんが、教育機関でも3.5%発生しています。

そのため、熱中症のリスクが高い状況にある場合は、水分補給をしたり涼しい場所に移動したりするなどの対策を行いましょう。 

Q.熱中症で通院や入院した際の治療費はいくらかかりますか?

A.軽度の熱中症で通院した場合、診察料や点滴治療、血液検査などで5,000~1万円程度(健康保険適用後の自己負担額、3割負担の場合)かかると予想されます。

なお、軽症から中等症で1~3日程度の入院・点滴治療が必要になった場合は、治療費は数万円程度が目安となりますが、ICU管理を含む長期入院が必要になった場合などは、高額療養費制度が適用されるため、医療費の自己負担額は一定範囲内に抑えることができます。

しかし一方で、保険適用外の出費も合わせると、数万円~数十万円の治療費を自己負担するケースも想定されます

まとめ

熱中症に保険で備えることも大切ですが、熱中症は予防できるため、まずは熱中症にならないよう体調管理を行うことが大切です。

なお、民間の医療保険では、搬送されたとしても保険金が必ず支払われるとは限りません

入院すれば保険金が支給されますが、入院が必要になるのは中等症から重度のケースです。

熱中症が重度になると後遺症や死亡のリスクも高まるため、そもそもこのような状態にならないよう、軽度のうちに処置を行い入院を回避することが大切です。

また、どうしても熱中症のリスクが高い状況を避けられない場合は、現在加入している保険の内容を確認しましょう。

あわせて、どのような条件で保険金が支払われるのかも確認しておくと安心です。

そして、必要であれば熱中症保険に加入することも検討するとよいでしょう。

関連記事:生命保険・医療保険で熱中症は保障される?熱中症の保険対象について解説