【2023年】年末調整で生命保険料控除を出し忘れたらどうなる?その対処法
生命保険料控除とは、申告することで所得税や住民税の負担が軽減される制度のことです。控除を受けるには年末調整などで申告する必要がありますが、年末を忙しく過ごしているうちに、「年末調整で生命保険料控除をし忘れてしまった…」や「確定申告(還付申告)の期限に間に合わなかった…」という方はいませんか?
生命保険料を支払っているのであれば、申告しなければ”損”をしてしまいます。本記事では、生命保険料控除をし忘れた際の対処法を紹介していきます。
本記事のポイント
- 年末調整の期限は会社が定めた日
- 保険料控除証明書の提出を忘れたら会社が定めた年末調整の提出期限
- 翌年の1月31日 ※ここまでは年末調整で対応可能
- 翌年の3月15日(確定申告の期限)
- 5年後 までであれば所得税の更正の請求で申告が可能
生命保険料控除の期限はいつまで?年末調整で出し忘れたときの対処法
まず、生命保険料控除の申告の期限はいつまでなのかを解説していきます。会社員で年末調整が必要な方の場合、1つ目の期限は会社が定めた年末調整の提出期限になります。
ココがポイント
しかし、会社側も年末調整の期限ギリギリに提出期限を設定しているわけではないので、理論的には翌年の1月31日までであれば提出可能です。
ですが、会社側でも様々な計算や書類の変更を余儀なくされますので、ギリギリになって提出すると嫌な顔をされてしまうかもしれません。
次に訪れる生命保険料控除の申告期限は3月15日です。3月15日とは確定申告の提出期限です。自営業の方はこの日が1つ目の期限になりますね。会社員の方は、1月31日までに出し忘れても3月15日の確定申告にさえ間に合えば大丈夫です。さらに、それを逃してしまった場合の最後の期限は5年後までです。
実は確定申告は、誤りがあったら自己申告で修正することができ、その期限が5年です。
ココがポイント
つまり、年末調整で生命保険料控除をし忘れても5年間は大丈夫ということ。
とはいっても、年数が経つと必要書類の「生命保険料控除証明書」を紛失する可能性が高くなりますし、何枚も書類を記載しなければならないので、申告をし忘れたことに気づいた時点で手続きをしましょう。
生命保険料控除の期限まとめ
- 会社が定めた年末調整の提出期限
- 翌年の1月31日 ※1
- 翌年の3月15日(確定申告の期限)
- 5年後 ※2
※1 ここまでは年末調整で対応可能
※2 所得税の更正の請求として申告
そもそも年末調整とは?
年末調整とは、会社員や公務員が1年間で支払った所得税の過不足を調整するための制度のことです。
1年間で実際に支払われた所得と源泉徴収税額を照らし合わせて、過不足が生じていないかを確認します。
また、アルバイトやパートの場合でも、
- 1年を通して働いている場合や年の途中から年末まで働いている
- アルバイトの掛け持ちをしていない
- 退職した年に支払う給与の総額が103万円以下
の場合は、年末調整を行います。
年末調整の対象となるのはその年の12月末まで在籍している会社員や公務員ですが、たとえばその中でも
- 給与収入が2000万円以上ある人
- 住宅ローン控除を初めて利用する人 など
は年末調整ではなく、確定申告をする必要がありますので覚えておきましょう。
ココに注意
初めて住宅ローン控除を利用する人は、初年度は確定申告をする必要がありますが、次年度からは年末調整で対応が可能になります。
初年度だけは確定申告を忘れないように注意が必要です。
年末調整と確定申告の違いとは
会社員や公務員・パート・アルバイトが、1年間で支払った所得税の過不足を調整するために行う年末調整に対して、確定申告は所得額に応じた税金を計算して支払うために必要な手続きです。
確定申告が必要な人は、一般的に自営業者(店舗経営やフリーランスなど)や給与以外の所得がある人です。
しかし先ほどお伝えした通り、以下のような人も確定申告の対象となります。
確定申告が必要な人の例
- 2,000万円以上の給与所得がある会社員
- 住宅ローン控除を初めて利用する人
- 退職所得があった人
- 2か所以上から給与をもらっている人
- 副業の収入が20万円を超えた人
- 株を売買している人 など
年末調整と確定申告の違いは「対象かどうか」だけでなく「いつ手続きをするか」でも異なります。
年末調整は、所属する会社の指定する期間内(年末まで)に手続きをするのに対して、確定申告は原則3月15日までと数ヶ月遅れたタイミングで行われます。
年末調整で申告する所得控除の種類
生命保険料控除
生命保険料控除には、
- 一般の生命保険
- 個人年金保険
- 介護医療保険
の3種類があります。
現在の生命保険料控除は2012年1月1日以降に契約したものが対象となっていて、年間払込保険料が8万円を超えた場合は、4万円が控除額の上限です。
そのため、上記3種類の保険に加入している人は最大合計12万円が所得控除されます。
2011年12月31日以前に契約した生命保険の場合、3種類の控除ではなく、
- 一般の生命保険
- 個人年金保険
の2種類となります。控除されるのは合計で最高10万円までです。
地震保険料控除
地震保険料控除は2007年より新設されたもので、地震保険を対象としています。地震保険は基本的に単独で契約することができず、火災保険とセットで加入する保険です。
ココに注意
地震保険料控除の対象となるのは地震保険料だけで、火災保険料は対象になりません。
1年間払い込んだ地震保険料が5万円以下の場合は、保険料の全額が地震保険料控除となります。5万円を超えた場合は、一律5万円が控除限度額です。
地震保険料控除は生命保険料控除と比較すると、馴染みが薄いと感じる人も多くいるでしょう。損害保険会社から送られてくる「地震保険料控除証明書」は、無くさないように大切に保管しておいて下さいね。
社会保険料控除
配偶者や子どもの社会保険料を支払っている方は、社会保険料控除を利用することで、給与から天引きされた保険料の調整ができます。
控除の対象となる社会保険料
- 健康保険料(国民健康保険料)
- 国民年金保険料
- 厚生年金基金
- 公務員教材の掛け金 など
通常、会社員や公務員などの給与所得者は、年金保険料や健康保険料などの社会保険料が毎月の給与や賞与(ボーナス)から天引きされています。1年間で天引きされたこれらの社会保険料は、自動的に計算されるため、基本的には自分自身で控除の手続きをする必要はありません。
しかし上記のように、
- 配偶者や子どもの社会保険料を支払っている
- 以前未納だった国民年金保険料を支払った
などの場合は、勤務先でこれらのことを把握できないため、自分自身で年末調整により手続きをする必要があります。
この場合、11月頃に送られてくる「社会保険料控除証明書」が手続きに必要となりますので、こちらも無くさないように大切に保管しておきましょう。
配偶者控除
配偶者控除とは、納税者本人に控除の対象となる配偶者がいる場合に、一定の控除が受けられるというものです。
控除の対象となるには、その年の12月31日時点で次の要件すべてに当てはまる必要があります。
配偶者控除の条件
- 民法上の配偶者であること
- 納税者本人と生計を一にしていること
- 年間の合計所得が38万円以下であること(2020年以降は48万円以下)
- 青色申告者の事業専従者としてその年で一度も給与の支払いを受けていない、または白色申告者の事業専従者でないこと
配偶者控除の控除額は、下記のとおりです。
生命保険料控除でいくら戻ってくる?
生命保険料控除について、もう少しだけ詳しく説明します。
生命保険料控除制度には「新・旧」があり、旧制度は平成23年までに契約した保険契約についてが対象です。
ただし、旧制度の対象となっていた契約でも、
- 平成24年以降に更新した
- 転換や特約の中途付加などを行った
場合は、以降の保険料が「新制度」の対象となるので注意をしましょう。新制度では最大で12万円までが所得から控除することができ、旧制度では最高で10万円まで控除を受けられます。
3月15日以前に生命保険料控除をし忘れたことに気づいた場合
会社員の方で、3月15日以前に生命保険料控除の申告をし忘れたことに気づいた場合は、3月15日までに確定申告をしましょう。そうすることで、年末調整を提出した場合と同様に所得税の還付金を受けられ、住民税も軽減されます。
確定申告に必要な書類は?
確定申告の必要書類は、確定申告書と生命保険料控除証明書です。それ以外にも該当する控除を受ける場合は、必要書類が異なります。
参考
たとえば医療費控除を受ける場合は「医療費控除に関する明細書」を添付し、病院の領収書やレシート等は5年間保存することになっています。
確定申告のやり方
確定申告と聞くと難しいイメージがあるかもしれませんが、会社員の場合は会社から配布される源泉徴収票を見ながら記載すれば、簡単に手続きすることができます。
確定申告を行うには、以下2つの方法があります。
確定申告のやり方
- 税務署で用意している確定申告の用紙に必要事項を記入して提出する
- 国税局のWebサイトにある「確定申告書等作成コーナー」で作成する
ココがポイント
国税局のWebサイトから確定申告を行う場合、必要な数字を入力すれば、税金や控除の額が自動計算されて申告書類を作成できるようになっています。
自分で計算するのが面倒な人や、生命保険料控除や地震保険料控除以外にも医療費控除など申告する項目が複数あって計算が複雑になりそうな人は「給与所得者向けの作成コーナー」もあるので、こちらを利用すると良いでしょう。
繰り返しますが、確定申告の期限は3月15日までです。年末調整で申告し忘れてしまった方は、まずは確定申告の期限に間に合わせるようにしましょう。
3月15日の期限も過ぎたらどうなる?確定申告で生命保険料控除をし忘れた場合
- 年末調整での生命保険料控除を忘れ、確定申告の期限も過ぎてしまった会社員の方
- 確定申告の際に、生命保険料控除を記入し忘れた自営業者の方
は、5年以内に「所得税の更正の請求」という手続きを行いましょう。
ココに注意
法定申告期限から5年と規定されていますので、5年後の3月15日が最終期限となります。
上のリンクから請求書を印刷して、ご使用下さい。その年の源泉徴収票などを確認しながら記載すると、スムーズに作成ができますよ。
なお、更正の請求には「生命保険料控除証明書」が必要になりますので、必ず用意しておきましょう。万が一、生命保険料控除証明書を紛失した場合は、保険会社のホームページから再申請が可能です。ホームページの再申請フォームの期限を過ぎている数年前の生命保険料について控除を受けたい場合は、電話で問い合わせれば再発行に応じてもらえます。
ちなみに「所得税の更正の請求」を税務署に提出すると、各市町村と内容が共有されます。過去に支払い過ぎた住民税も還付されますので、ご安心ください。
年末調整で生命保険料控除を忘れたらどうなる?
最後に、年末調整で生命保険料控除を忘れた場合のデメリットをご紹介します。
① 戻ってくる税金が少なくなる
年末調整で生命保険料控除を忘れると、本来であれば戻ってきたであろう税金の還付を受け取ることができなくなってしまいます。
還付金がもらえないということは、過大な税金を支払うということですので、必ず忘れないように生命保険料控除の手続きを行いましょう。
② ふるさと納税のワンストップ特例が利用不可に
年末調整を忘れたら、確定申告を行うのが一般的です。年末調整で控除を忘れたものも、確定申告を行えば適用することができます。
ココに注意
ふるさと納税のワンストップ特例制度を利用した方は、確定申告を行うとワンストップ特例申請が不適用となってしまうので注意をしましょう。
ワンストップ特例制度は、ふるさと納税をした自治体に申請書を提出することで確定申告をしなくても控除が受けられる、2015年から新設された制度です。
しかし、ワンストップ特例申請をしたのに年末調整を忘れると、すでに申告特例申請書を自治体に提出していても、改めて確定申告でふるさと納税の寄付金控除を申請しなければいけません。二度手間にならないように、必ず年末調整で控除の手続きを忘れないようにしましょう。
まとめ
生命保険料控除の手続きを忘れても、3月15日までに気が付けば確定申告が可能なので問題ありません。
確定申告の期限も過ぎた場合は、確定申告期限から5年以内であれば「所得税の更正の請求」の手続きを行うことで、生命保険料控除を受けることができます。住民税もそれに応じて計算し直され、還付金がある場合は還付金を受け取れます。
ココがポイント
生命保険料控除を受け忘れても、5年後の3月15日まで大丈夫なので、慌てずに手続きを行いましょう。
確定申告や更正の請求を行う場合は、源泉徴収票・生命保険料控除証明書などが必要になります。
源泉徴収票は会社に言えば発行してもらえますし、生命保険料控除証明書も保険会社が発行してくれますので、再発行を依頼して早めに手続きをしましょうね。