生命保険選びに備えるべき、メディア・リテラシーについて
今の専攻を志されたきっかけは何ですか?
私の専門分野は、「教育工学」という分野で、どのように「教育を工夫するか」ということに主眼を置いています。
その中でも、最近の学校現場では「現代的な課題」と呼ばれる、可変的な内容をどう教えるかということをテーマとしています。
(例えば、情報モラル教育や環境教育、金融教育など)
こうした内容を教えていくためには,学校現場だけではなく”社会との連携”が不可欠であり、大学生の時に所属した研究室の中で、社会と連携しながら教育を行っていくところに魅力を感じたことから、現在の専攻を志したというところが第一にあります。
先生にとって、保険を一言で表現すると、どのようなものでしょうか?
私の日常生活で考えれば、「自分へのリスクを考えるための入口」というイメージを持っています。
よく「リスクへの備え」と表現されることはありますが、人々の多くは日常的に「自分は大丈夫」と思いがちです。しかし、保険について考えることで、これから起こりうるリスクを自然に予想することになるため、そうしたきっかけになるものとして捉えています。
また、もし保険を私の研究的な視点から捉えるのであれば、「様々な可能性を持った教材」と捉えられると考えています。
大学生に実践したメディア・リテラシー教育の題材にもなりえますし、金融教育やリスク教育としてもまだまだ可能性を感じています。こうした可能性についてはより検討していきたいと考えています。
オンラインで生命保険の情報を収集する際は、1つのサイトで決めるのではなく、複数のサイトで情報収集や比較しながらみていくことが大事
コのほけん!編集部
生命保険を選ぶ際に、対面で保険営業員やFPに相談をする、直接専門家と相談したいという人もいれば、インターネットで自分で情報を収集して、比較検討して加入される方という2パターンあると思うのですがオンラインで、生命保険の情報を収集する際には、どんな点について気をつけたらいいでしょうか?
酒井先生:私もよくネットを使うことがありますが、多分、インターネットで調べた時に、多くの人はその情報を見るだけではなくて、 どちらかというと、いろんな人の口コミとかランキングを見ることが多いのではないでしょうか。
もちろん、それは重要だと思うんですが、ただ一方で他の人が言ってるからそれがいいのかっていうのは、また別の問題で、 自分のライフプランに見合ったものかどうかを確認することは必要かなと思います。
あとは、 1つのサイトの中にある情報を、色々見るだけではなくて、やっぱり複数のサイトを見ていくってことも重要かなと思います。
コのほけん!編集部:1つの視点だけではなくて、多面的に見るように注意する必要があるということでしょうか?
酒井先生:はい。先程御社のサイト(コのほけん!)でもそうなんですけど、結構最近だと1つのサイトでいろんな情報を見れるという完結型のサイトが多いですよね。
ただ、サイトによっては、そこに広告等といったものが含まれる可能性があります。サイト自体も複数見ていくということは重要かなと思います。
コのほけん!編集部:1つのサイトで決めるのではなく、複数のサイトで情報収集や比較しながらみていくことが大事ということでしょうか。
酒井先生:そうです。
情報は「どこが発信している情報であるか」を確認することが大事
編集部
オンラインで自分自身で生命保険を選ぶときに、 どのような情報ソースを参考にすべきという風に考えていらっしゃいますか?
酒井先生:私も調べる時には、例えば『保険 選び方』と調べることがあるんですが、そうすると、多くのサイトがずらっと出てきます。
そうした中で、まずはそこ(どこが発信している情報であるか)を見極めることが重要だろうと考えています。
例えば、保険に限らず、ネット上の情報をみていくと、公平な評価ではなく、広告宣伝を目的として、特定の商品をよく見せようとしている可能性もあるため、その辺りはある程度心の中に踏まえて見る必要があるだろうと考えています。
また、FPの方のように、専門家の方の意見を聞くことも、非常に重要だと思います。FPの方にオンライン上で情報を聞ける等のそういったソースを自分で探して見つけていくことも検討することが必要だろうと思います。
コのほけん!編集部:酒井先生が保険選びでインターネットを利用した時にこの情報が欲しかったとか、あってよかった情報というようなものはないでしょうか?
酒井先生:私の視点ですと、メリットとデメリットを適切に提示してもらえると安心感を感じます。
例えば、こういう人には合ってるかもなどのペルソナ的な、その商品にあう人物、理想の人物みたいなものが出ている方が、自分を照らし合わせることができるので判断しやすくなります。
コのほけん!編集部:なるほど、ありがとうございます。
メディア・リテラシーは「批判的な視点で捉えられるか」
コのほけん!編集部
生命保険のように形のない商材を契約する際に必要なメディア・リテラシーっていうのは、どのように高めていくことができるのでしょうか?
酒井先生:メディア・リテラシーを、考えていく中で、ポイントとなるのは、批判的な視点で捉えられるかということです。
「批判的な視点で捉えられるか」ということは「批判する」という意味ではなく、これってそうじゃないとしたらどうなるかとか考えることです。
情報をそのまま受け取るのではなく、裏の意図があるとすればどういうものなのかということを考えるのは非常に重要です。
例えば、なぜこの保険がおすすめされているのか、なぜ他の保険より安いのか?と考えることです。
例えば、防災の視点のでも、自然災害で被害が起きた時に、twitterなどで情報が出てくることがあり、 その時に子供たちがこうフェイクニュースを拡散してしまったり、嘘の情報を信じてしまったりということがあります。その時のポイントとして、「だ い ふく」というキーワードを意識させています。
コのほけん!編集部:「だいふく」ですか?
酒井先生:
「だ」 誰が言っている情報か?
「い」 いつ言ったもの(情報の発信日時)か?
「ふく」複数の情報を確かめたか?
これは、誰が言っている情報か、いつ言ったものか、 複数の情報を確かめたかという視点です。この観点は、メディア・リテラシーにおいて重要なポイントだと思います。
加えて、メディア・リテラシーや保険のリテラシーについて、早期から学習機会を持たせることも大切だと思います。
コのほけん!編集部:なるほど。そういう意味でいきますと、ちょうど今年の4月からの高校の家庭科では資産形成の授業が始まりましたね。
中3の娘とちょうど金融リテラシーは難しいねという話をしていまして、その発達の段階にあったリテラシー教育があるかと思うんですけれども、 資産形成から入るというのはどうなのかなっていう疑問はあるのですが。
酒井先生:これはおっしゃる通り、段階が必要と考えていまして、いきなり株式とか投資の話をされると、学生はとっつきにくい印象を受けてしまうと思います。
まずは、自分がどのように生きていくかをイメージさせてから、そこへ関連付ける形で金融リテラシーを学べることが理想だと思います。こちらも中学校や高校段階の早期から学習機会を設けることで、次第に発展的な内容を扱えるようになると思います。
自分だけではなく、他の意見を踏まえて、今より多的な視点で考えていくことが重要
コのほけん!編集部
弊社の読者層というのは、大体30代から40代の男女になるのですが、自分自身でその生命保険を選ぶ際のアドバイスがございましたらお願いいたします。
酒井先生:やはり生命保険を選ぶ場合、どういう保険がお得かとか、 どういうところがその多くの人に選ばれてるかっていうところにも、目が行きがちなんですけれども、まずは自分のライフプランをちゃんと確認することが大切だと思います。
さらに、選ぶ際にはどうしても費用面に目がいきがちですが、そこだけではなく、自分のライフプランとの整合性を確認することが大切だと思います。まずは自分がどう生きたいとか、この先、どういうライフイベントを考えてるかとかも結婚とかもそうですし、出産とかもそうですし、そこをまず見ていただくことが必要かなと思ってます。
あとは、 専門家の方に相談するということも、非常にハードルが高く感じると思いますが、チャットやオンラインツールを活用しながら、自分の視野にないことを知り、それを踏まえて保険を選んでいただくことが重要だと思います。
メディア・リテラシーという視点でも、やっぱり自分だけではなくて、他の意見を踏まえて考えることも重要だと思うので、今より多的な視点で考えていくことが重要かなと思います。
まとめ(編集部後記)
東洋英和女学院大学でメディア・リテラシーの教育に力を入れている酒井先生に、生命保険選びだけでなく、普遍的に通じる「メディア・リテラシー」のお話を伺うことができました。
ポイント
- 「だ」 誰が言っているものなの?(情報の発信元はどこか?)
- 「い」 いつ言ったものなの?(情報の発信日時はいつ?)
- 「ふく」 複数の情報を確かめた?
情報の発信元の信用性やいつ発信されたものなのか、複数の情報ソースを確認することで、賢く情報を活用していきたいものですね。
本インタビュー記事は2022年7月21日時点の内容です。