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少子高齢化による日本の公的医療保険制度や民間の保険への影響について
教育機関・研究機関の専門家インタビュー記事一覧

少子高齢化による日本の公的医療保険制度や民間の保険への影響について

日本大学商学部の河本教授に少子高齢化による公的医療保険制度や民間保険への影響についてお話しをうかがいました。

研究のきっかけは?

コのほけん!編集部

先生の著述では「医療保険制度」「高齢者医療」などが頻出ワードですね。こうした研究に取り組むきっかけ、背景や理由などについてお聞かせください。

河本淳孝教授
2つあります。

1つは、取り組む価値があるという単純な理由です。
高齢者医療にかかる諸課題が解決すれば、日本全体も良い方向に向かう、元気になる。

もう1つは、若者の将来を少しでも明るくしたいという、こちらも単純な理由です。
キャンパスで学生と接していると、
多くの若者がこの国の年金や医療に少なからずの不安を抱えていて、
そのことが結婚や出産を先送りする理由の1つとなっていることが分かります。

今の若者世代が老後を迎えたときに、
年金や医療の給付はかなり目減りしていて、生活は厳しい。
諦めムードになっている学生が多くいます。

国は知恵を絞っています。
予算を割り当てて、子育て支援策などを講じています。
しかしながら、出生率は低迷したままです。

社会保険制度の運営はやがては次世代が担うことになるのですが、
見通しのきかない状態で次世代にバトンタッチするのは心残りです。
私たち責任世代のできることはやりつくしてからバトンを渡したい。

年金や医療の見通しが好転すれば、若者の結婚や出産に対する見通しも好転する。
そう信じています。

団塊世代が通り過ぎれば問題は解決する?

コのほけん!編集部

団塊世代が通り過ぎれば日本の人口問題や年金・医療の問題も自然と解決するのでしょうか?先生のお考えをお聞かせください。

河本淳孝教授
ベビーブームや出生率の落ち込みは、
世界大戦を経験した先進各国で同様に観測された人口現象です。

その後、多くの先進国は出生率の回復局面を迎えました。
残念ながら、日本は例外でした。
先進国の中で日本だけは出生率が落ち込んだままです。
回復の見通しが立っているとは言い難いです。

団塊世代が通り抜ければ高齢者問題は解決するし、出生率も回復する。
慌てることはない。四半世紀ほど待てばよい。
こうした楽観論を繰り出す有識者や学者がいます。

それで本当に若者の将来が明るくなれば良いのですが、
長期に亘り出生率が低迷した国では、
人口構造と国家財政が深刻なダメージを受けます。
四半世紀後に、現在の諸課題はさらに深刻さを増します。

深刻なダメージを受けた状態から如何にして回復するか。
具体的で力強いアクションプランが必要となるのですが、今のところ描けていません。
問題解決の核心にアプローチしていません。
この不作為が、若者の諦めムードや漠たる不安の原因かも知れません。

信頼に足る将来予測、統計数値を広く開示して、
他の先進国の事例はもっと深く考察して、
不都合な事実を直視して、
本気で問題解決にアプローチすることが求められている

そもそも、
「少子化問題」という言葉を乱用して、
若者世代にプレッシャーをかけるメンタリティーが、
問題の核心から外れているのです。

楽観論には常習性があります。
蔓延すると危険です。
「終バス」に乗り遅れてしまうかも知れません。

高齢者の「医療費の適正化」について

コのほけん!編集部

メタボ健診などは高齢者の「医療費の適正化」にどの程度の効果があるでしょうか?

河本淳孝教授
ご指摘のとおり、
特定健診(メタボ健診)の主な目的は、高齢者の「医療費の適正化」です。
特定健診や特定保健指導は、「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づいて実施されています。

「基準値」を上回ると、僅かな超過でも気になるものです。
特定健診の場合、腹囲の「基準値」は85㎝です。
腹囲85cm以上の日本人は、どのくらいいると思いますか?
40歳以上男性は、61.0%が腹囲85cm以上です。
(「国民健康・栄養調査2018年」)
したがって、61.0%が保健指導等(健康介入)の候補者となります。

「基準値」が厳しいと、
健康介入の対象者は増えます。
こうした現役世代への健康介入が高齢者の「医療費の効率化」に対して、
どのような効果があるかはハッキリしていません。
わが国の医療保険制度は年齢等で分断されているため、
健康介入の効果のトレースが容易ではありません。

ウエスト85㎝のような厳しい「基準値」は、
有病者だけではなく未病者(健康者を含む)を不健康者(候補者を含む)に分類します。
抑制的な生活習慣を国民に促します。
そして、このことが、日本人の自己評価に負の影響を及ぼしている可能性があります。

2016年のOECDデータを見ると、
日本人の健康に対する自己評価は先進他国に比べて驚くほどに低いことが分かります。
自分の健康状態について「とても良い」「良い」又は「まあ良い」と答えた国民の割合は、
アメリカ88.4%、イギリス88.0%、フランス66.3%、ドイツ65.2%に対して、
日本は僅か35.5%です。男女別、年齢階層別でも同様です。
世界一の長寿を誇るわが国民の多くが自らを不健康と評していることになります。

また、
「基準値」超えの国民が増えると、
投薬や加療が増える可能性があります。

「基準値」を厳しくしたものの、
高齢者の「医療費の効率化」の効果は不詳、投薬や加療は増え、国民の自己評価に負の影響を及ぼしているかも知れない。
これは誰を利するでしょうか。

公的医療保険と民間医療保険の課題とは?

コのほけん!編集部

先生のご研究分野で、民間医療保険に期待することはありますか?

河本淳孝教授
意外に思うかも知れませんが、
民間医療保険は高齢者の「医療費の適正化」に影響力を持ちます。

一定条件を備えた民間医療保険は、
保険収支が改善すると、その直接的な波及効果が公的医療保険に及びます。

民間保険の財政が好転すれば、
公的保険の財政も自動的に好転するということです。

一定条件の民間保険が保険技術を駆使して医療給付の適正化に成功すれば、
公的保険の「医療費の適正化」の見通しは明るくなります。

Win-Winの関係にあるということです。
実のある連携を実現するには、
民間保険側のインセンティブが重要なポイントになります。
高齢者の医療補償に本気でコミットしてもらうには、
「人と資本を動かす」シナリオを考える必要があります。

コのほけん!編集部
一定条件を備えた医療保険というお話がありました、その「一定条件」とは、どのようなものでしょうか?

河本淳孝教授
主な条件は2つです。
1つは、医療費の患者自己負担を過不足なく補完すること。
もう1つは、請求漏れ、給付漏れが発生しない仕組みであること。

医療費について、患者負担と公的負担は連動します。
患者負担の3割が増減すれば、公的負担の7割も連動して増減します。

先ほどお話ししたとおり、
民間保険における医療給付の適正化が十分であれば、
公的保険の「医療費の適正化」は実現します。

ただし、
民間医療保険が「医療費の適正化」に及ぼす影響の強弱は、
その普及率に依存します。
高い普及率を実現するためには、
官民連携の制度設計が前提となるでしょう。
官民がしっかりと連携すれば、
請求漏れ、給付漏れが発生しない仕組みを作ることが可能です。

医療費の患者自己負担を過不足なく補完する民間医療保険は、
日本では普及していません。

入院日額給付や手術・特定疾病定額給付は、
公的医療給付の補完を想定してはいるものの
実費を填補する(indemnity)機能を持つ先進他国の医療保険とは一線を画す存在です。
また、請求漏れや給付漏れを完全に防ぐことは出来ません。

コのほけん!編集部
医療費の患者自己負担を過不足なく補完する医療保険が日本で普及しないのは何故ですか?

河本淳孝教授
手厚い高額療養費制度の存在が大きいと思います。

わが国では、ひと月の医療費(保険診療)が100万円程度と高額になった場合でも、
患者自己負担は10分の1以下の9万円弱(標準報酬月額50万円以下の場合)で済みます。

こうした手厚い自己負担上限があるため、
医療費自己負担による家計破綻を身近なリスクと感じる国民はそれほど多くありません。

しかしながら、
たとえば医療財政の逼迫を背景に、
高額療養費制度が見直されて自己負担上限が大幅に引き上げられた場合、
医療費自己負担による家計破綻を身近なリスクと感じる国民が増加して、
公的医療給付の補完市場は実費填補型に重心を移す可能性があります。

こうした事態も想定して、
医療保険の保険技術、アンダーライティング・スキルを磨いておくのが良いと思います。

参考までに、
OECD(2004)は、「日本の民間医療保険の規模は無視できるほど小さく、
その機能は不明確である」 と評しています。
また、日本の入院日額給付や手術・特定疾病定額給付などは、
医療保険(health insurance)ではなく、
現金給付(cash plan)又は特定疾病給付(disease-specific plan)に分類しています。

少子高齢化による医療保険制度の変化と保険業界はどう変化する?

コのほけん!編集部

「人と資本を動かす」シナリオとは例えばどのようなことですか?教えていただきたいです。

河本淳孝教授
たとえば、
Pay or Playの再考というアプローチがあると思います。

企業の健保組合は本質的に黒字です。
問題は、国から請求される高齢者医療負担金(Pay)の赤字です。
このPayがなくなれば健保組合は健全です。

なぜPayするか?
それは、健保組合が高齢者医療を引き受けない(Playしない)からです。

健保組合はPay or Playのどちらかを選択する必要があります。
現在は、負担金(Pay)を選択しているのですが、
この選択は、健保組合自身にとって本当に望ましいでしょうか。

また、この選択は、
若者の将来にとって、或いは高齢者医療にとって、本当に望ましいでしょうか。
再考する価値があると思います。

繰り返しになりますが、
高齢者医療について、実のある官民連携を実現するには、
民間保険側のインセンティブが重要なポイントになります。

まとめ(編集部後記)

本インタビューでは、河本淳孝教授に日本の医療保険制度について伺いました。高齢化に伴い後期高齢者の健康保険制度は赤字となり、医療保険制度を取り巻くさまざまな要素が変化し始め、保険会社は本来の役割である自己負担額のカバーをする方向に変化していくべきではないかと指摘しています。今後の民間の医療保険は、健康保険(公的医療保険)とより相互補完的な役割を果たす方向で変わっていくべきなのかもしれません。

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