SaaS型保険基幹システム「Inspire」について|InsurTechの最新動向
SaaS型保険基幹システム「Inspire」とはどのようなサービス?
コのほけん!編集部
「Inspire」とはどのようなサービスなのかお伺いできればと思います。
河端さん
「Inspire」は、デジタルネイティブな保険をスピーディにリリースするための仕組みで、主な機能は以下の3つです。
(1)保険募集機能
(2)契約管理機能
(3)保険金請求・支払機能
保険料の見積り、意向確認やお申し込みなどの保険募集、保険の契約や解約、保険金請求やそれに対するお支払い手続き等をオンラインで行うことができるサービスです。そして、これらの機能をSaas型のモデルで提供しているところが特徴です。
開発の背景
コのほけん!編集部
「Inspire」を開発された背景について教えていただけますでしょうか。
河端さん
Finatextグループでは、少額短期保険会社(スマートプラス少額短期保険)を運営しております。「Inspire」を同社の基幹システムとして利用することを想定しつつ、それを他社様にも提供する想定のもと、株式会社Finatextにて開発をしました。
多くの保険ビジネスにおいて、保険募集や契約・ご請求手続きなどは従来、紙ベースで行われていました。もちろんシステムも活用されていますが、紙ベースの業務をサポートすることが前提のシステムが今でも主流となっています。
そこで、当社のテクノロジーの強みを活かして新たなシステムを開発すれば、保険ビジネスをアップデートできるようなシステムが作れるのではないかと考えました。
少額短期保険とは保険のうち、保険金額が少額、保険期間1年(第二分野については2年)以内の保険で、保障性商品の引受のみを行います。
出典:一般社団法人日本少額短期保険協会 https://www.shougakutanki.jp/general/consumer/insurance.html
Inspireが解決したい課題
コのほけん!編集部
「Inspire」はどのような方のどのような課題を解決するサービスでしょうか。
河端さん
日本の保険市場は規模約50兆円の超巨大成熟市場です。中には、日本の保険市場は頭打ちだと考える方もいますが、頭打ちの未来をただ見ているだけではなく、新しい収益の柱を作り、次の成長を実現するために、業界各社が動き始めています。
では次の成長の柱づくりに向けて現在はどんなステージにいるかというと、今はまだ新たな種をまき、次世代のビジネスを探索する段階と考えています。
その新たな種まきの主要テーマの一つに「デジタル保険」があると考えており、ここを支援するのが私たちFinatextのInspireのビジネスです。
デジタル保険にはまだ誰も答えを持っていません。ここで道を切り開いていくには、失敗を重ねながらその中で学ぶといった、スタートアップ的な動き方が必要です。つまり、柔軟に変化しながら仕組み自体をどんどんアップデートしていくことが求められます。そこでは、クラウドや外部のSaaSを活用したり疎結合な構成を指向するなど、柔軟なシステムと体制が必要となります。Finatextは、保険業界のこのような動きをサポート、あるいはリードしていきたいと考えています。
サービスの特徴は?
コのほけん!編集部
「Inspire」のこだわりポイントや特徴はどのようなところでしょうか。
河端さん
「Inspire」の特徴は、デジタルネイティブ視点とモダンなテクノロジーで開発されている点です。
「これまでの保険業界でやってきた業務を電子化しよう」という発想ではなく、最初からデジタルな発想で商品データや契約データの処理の仕方を捉え直すところから、開発されています。
少し具体的にいうと、「保険とは、将来事故が起きた時にそこで生じる金銭的損失を補填する代わりに、手前で保険料支払ってもらう契約である」という保険の根本的な性質に立ち返って、そこを出発点として、「その契約にまつわる業務や顧客体験を、今の技術を使って最大限よいものにするにはどうしたらいいか?」という発想で設計・開発しています。
実は「Inspire」を開発しているメンバーに保険経験者はほとんどおりません。証券やゲームなど、他業界で様々な経験を積んできたメンバーが、一から保険の本質を捉え直して、設計・開発をしたからこそ、良い意味で保険を新しく捉え直すことができていると思います。
また、システム自体が進化していく点も「Inspire」の強みだと考えています。先程お話しした通り、業界として「答え」がない中で探索し、どんどん変化していこうとしている段階です。Inspireはシングルアプリケーション・マルチテナントモデルのSaaSなので、デジタル保険の進化・変化に合わせてシステム自体進化し、その進化のメリットをすべてのユーザー様に提供していくことができます。
マルチテナントとは、SaaSやASPサービスなどで、機材やソフトウェア、データベースなどを複数の顧客企業で共有する事業モデル。また、システムやソフトウェアが複数の利用者で共有できるような設計・構造になっていること。
出典:IT用語辞典 e-Words「マルチテナント【multi-tenancy】マルチテナンシー」
今後の展望は?
コのほけん!編集部
今後、本事業を通じて実現したいことをお聞かせ願えますでしょうか?今後のご展望もございましたら、併せて教えて下さい。
河端さん
これからも引き続き、保険業界の発展をサポートしていきたいと思っています。
当社のキーパートナーは保険業界です。その保険業界において、新しいデジタル保険を一緒にリードできるインフラとなり、保険業界と一緒に作ったデジタル保険のあり方がスタンダードになり、当社提供のシステムが広く使われている状態を目指しています。
またデジタル保険の進化を通じて、お客様の利便性が向上する・お客様がお支払いする保険料が安くなるなど、顧客メリットに繋げていきたいというのが当社の想いです。
まとめ(編集後記)
成熟した保険業界において、スタートアップは新たな価値の提供や、ゼロベースでの開発などで旧態依然とした保険業界に新たな風を吹き込み、お客様の利便性やよりよい顧客体験を創造することを目指しています。河端さんのデジタル保険や保険業界の発展にかける熱い想いをお伺いでき、保険業界の将来に胸が躍りました。
河端 一寛プロフィール
株式会社Finatext 保険事業責任者
東京大学経済学部卒業。博報堂、ボストンコンサルティンググループ(BCG)を経て、Finatextに入社。博報堂では消費財・機械、小売等のマーケティング戦略立案・実行支援業務に従事し、BCGでは複数の新規事業・新サービス立ち上げ支援業務に従事。現在Finatextでは、保険事業の立ち上げ・推進をリードし、スマートプラス少額短期保険株式会社の取締役も務める。
Twitter: @kazukawabata