「P2P わりかん がん保険」について|Insurtech最新動向

「P2P わりかん がん保険」について|Insurtech最新動向

「P2P わりかん がん保険」を提供している株式会社 justInCase / justInCase Technologies 代表取締役 / CEO, Co-founder 畑加寿也さんにお話をうかがってきました。

「P2P わりかん がん保険」とは、後払いのがん保険

コのほけん!編集部

「P2P わりかん がん保険」はどのようなサービスでしょうか?

 畑CEO
「P2P わりかん がん保険」にはいくつか特徴がありますが、 形式的な特徴で言うと

  • 保険金を割り勘すること
  • 保険料が後払いになること

の2つがあります。

1つ目は、サービス名の通り「保険金を割り勘します」というものです。例えばイベントへ行った時の費用をみんなで割り勘するのと同じように、必要な保証を得るためにかかった費用や掛け金、保険金をみんなで割り勘して負担するというサービスです。

その特徴ゆえに、「必要な保障を受けるためにはいくらかかったのか?」が必然的に後から出てきますので、保険料が後払いになるという点が2つ目の特徴になります。

「加入者の方々がみな健康でがんになった人はいませんでした」という場合は保険料が0円になりますし、複数の方々が病気にかかる場合ももちろんあります。後者の場合は、当社が上限金額を超えた分を負担するというサービスです。

コのほけん!編集部
保険期間は決まっているのでしょうか。

畑CEO
「P2P わりかん がん保険」は少額短期保険ですので、保険期間は1年です。1年ごとの自動更新で、保険料は毎月、事後精算となります。

用語解説

少額短期保険とは保険のうち、保険金額が少額、保険期間1年(第二分野については2年)以内の保険で、保障性商品の引受のみを行います。
出典:一般社団法人日本少額短期保険協会

2020年の発売当初は加入人数も少なく、また、加入後すぐにがんになる方もいらっしゃらなかったので、保険料0円という状況が半年程続きました。現在は保険加入人数も多くなってきており、また多くの方がいらっしゃると確率的にがんになる方も増えますので、今ではほぼ毎月皆さまの保険料負担額を計算しています。

「保険金の支払いが必要な時に、まず、保険金をお支払いし、あとからかかった費用として保険料を加入者が割り勘で支払う」というシステムの付随的な特徴として、自分が払うお金に対しての義務や責務、 何に使われているのかがわかりやすい点です。

保険の加入者同士は会ったことがないわけですが、みなでがんと診断された方を支え合う、「頑張って!」「おお、ありがとうございます!」という心の繋がりのようなものがもてる点は保険商品としては珍しい形だと考えています。

「保険金を割り勘で支払う」仕組みの付随的な特徴ではありますが、実はこれが1番重要なポイントなのではないかと思っています。

コのほけん!編集部
コミュニティということでしょうか?

畑CEO
コミュニティや帰属意識とは少し違う気がしています。

通常の保険では、月々決まった保険料をクレジットカードや口座引き落としで支払いますが、その場合保険会社に払っているという意識しかないと思うのです。
ところが、「保険金の支払いを割り勘」という形にすると、「会ったことのない人ではあるものの、その人のために使われた」ことが明確に分かります。
月により保険料が0円の時もありますし、 逆に2倍になる時もあります。2倍になってしまった時にも「いつもの2倍、誰かを助けられた」と実感できる部分が通常の保険とは極めて異なる特徴だと感じています。

コのほけん!編集部
誰に支払われたのか、支払われた実績というのが判るようになっているのでしょうか?

畑CEO
個人情報の開示はしませんが、若年層・中年層・高齢層などの年齢層と性別は開示しています。また、がんの種類によっては開示する場合もあります。過去には、ご本人の了承を得て開示したケースもありました。

罹患された方の情報に触れると、コミュニケーション量が増え、例えば「自分と同年代の人がこんながんに罹った」ということもわかります。それは加入者の方々が改めてご自身の健康について考える要因になり、がん検診を受診するきっかけにもなると思ってます。

コのほけん!編集部
コミュニケーションはどこで発生するのでしょうか。

畑CEO
毎月の請求金額がアプリの通知とメールで届くようになっています。その際に「がんと診断された方にメッセージを送りませんか?」というご案内をしており、ご希望に応じてメッセージを送ることができる仕組みになっています。
当社でフィルタリングは実施していますが、基本的には全てのメッセージをがんと診断された方に毎月お送りさせていただいていて、アプリ上で他の加入者の方々も見られるようになっています。

開発の背景は?

コのほけん!編集部

「P2P わりかん がん保険」を開発された背景について教えていただけますでしょうか?

畑CEO
過去にアリババが提供していた保険”的”サービスに着想を得ました。厳密にいうと、アリババが提供していたサービスは保険ではなく相互型クラウドファンディングだったのですが、現在当社が提供している「P2P わりかん がん保険」と似た特徴を持っていたのです。
みながモニタリングしている世界一のフィンテック企業の保険サービスを輸入し、日本の文化に合う形でより良いものにして提供したいと考えたのが開発のきっかけです。

もう1点、保険金を受け取った人の個人情報の開示という観点で少しお話しします。
アリババのサービスでは、名前の一部や病院の住所、がんの種類などが開示され、保険金を受け取った人の情報をみられるようになっていました。これにより加入同士で不正がないかどうかのチェックができ、運営コストも下げられる仕組みです。

しかし、日本と中国では個人情報に関する法律や意識も大きく異なるため、アリババの方法を日本で取り入れるべきでないのは明白です。そのため、情報開示に関する部分を「助け合い」に結びつくよう形を変えれば、日本に同様のサービスを導入できるのではないかと思ったのです。それが、「心の繋がり」が一番重要と考えている一つの理由でもあります。

「P2P わりかん がん保険」はこれまで加入を諦めていた人に加入してもらいたい。

コのほけん!編集部

「P2P わりかん がん保険」はどのような方のどんな課題を解決するサービスなのでしょうか。

畑CEO
保険が必要だけれど届いておらず、加入を諦めている方々の課題を解決するのがこの「P2P わりかん がん保険」です。

少なくとも日本においては、 失うものが多い人が保険に入っていると思っています。収入と保険の加入率が正比例しているのです。また、日本は保険の浸透率が高いです。他の国に比べると貯蓄型保険が多いというのもありますが、収入や貯蓄がある人は日本の社会保険だけで充分だという事は事実でしょう。

一方で、収入が低い世帯や雇用が不安定な方々、貯蓄が十分にない人たちは怪我や病気で働けなくなった場合に収入がなくなり、生活を維持するのが難しくなる可能性が高いので保険に入った方がいいとなりますよね。

しかし、月々の保険料が高すぎると感じたり、支払いが厳しいという方もいらっしゃるのが現実です。そういった通常の保険加入を諦めている方の課題を解決するのが、この「P2P わりかん がん保険」だと考えています

中国ではアリババがそういう方々への保険を開発したという経緯もあり、中国の農村地帯の貧しい方々向けにアリペイを使った保険というものもあります。

また、既に保険に加入している人たちは、困った時にお金がもらえるなど保険に助けられていると感じる側面があると思います。しかし、支払った保険料が誰かの役に立っているかというのは感じにくい状況です。これについては、まだ明確に顕在化はしていない気がするのですが、 私たちはそこに課題があると思っており、当社のビジョンに通じるところでもあります。

これらは、当社が考える保険に関する課題でもあり、社会課題でもあると思っています。
まだ道半ばですが、 まずは保険が必要な層に向けて、当社のビジョンでもある「助け合い」を提供していきたいと考えています。
「助け合い」は双方向なので、保険料が自分だけでなく他の人を助けるために使われることを体感できると、多くの人は「保険を通じ、助け、助けられている」という感覚が腑に落ちるのかもしれません。

「P2P わりかん がん保険」は、みんなが健康に気を付けると保険料が下がる。

コのほけん!編集部

「P2P わりかん がん保険」の中でも一押しの機能やこだわりポイントはどのようなところですか?

畑CEO
意外と知られていないのが、実はお得ながん保険だというところです。私はアクチュアリーですので、他の保険に比べすごくお得になる設計をしています。

用語解説

アクチュアリーとは、確率や統計などの手法を用いて、将来の不確実な事象の評価を行い、保険や年金などの設計を行う人のことを言います。

出典:公益社団法人日本アクチュアリー会

時々ファイナンシャルプランナーやYoutuberの方の目に止まり、この点について取り上げてくださることがあります。
これまでと異なる保険の仕組みばかりに目がいきがちなのですが、「よく考えたらすごく安いがん保険だ」という意見をいただいているので、良い保険を設計できたと自負しています。

まれに、この安さで会社として利益は出るのですか?と聞かれます。
サービススタート時は赤字でしたが、現在は赤字ではありません。会社としての収益を考えながらも、加入者にとってお得な保険になっているという点はこのサービスの売りでもあります。

また、高リスクな人たちだけが集まるような仕組みは、少なくともこの商品では目指していません。

がんは生活習慣病の一つなので、日々の生活に気を付けて、みんな健康であれば実はみんなの負担がすごく下がるという点が加入者の方々に還元できるこだわりのポイントと言えます。

今後の展望は?

コのほけん!編集部

今後、本事業を通じて実現したいことや、今後のご展望を教えて下さい。

畑CEO
「助けられ、助ける喜びを伝える」というのが当社のビジョンです。
今後は、そのビジョンの実現に向け、がんだけではなく他の共通の不安に対してもこのスキームを生かしていきたいですね。例えば、糖尿病予備群の人たちで糖尿病にならないように助け合うようなイメージです。

会ったことのない人たちでも、共通の話題で情報交換したり助け合えたりする場を提供したいのです。例えば、がんは大人でも子供でも、誰もが罹患する可能性があるので、誰でもその共通の話題でコミュニケーションできますよね。
この わりかん がん保険は、本当に良いスキームだと確信しています。これをさらに発展させていくのは当社の使命でもあり、社会課題の解決にも繋がると確信しています。

まとめ(編集後記)

「P2P わりかん がん保険」はこれまでの保険と違った新しい形の一つですね。保険料が後払いになり、自分の支払った保険料が誰のために役立てられているか見える仕組みは、多様化する社会において、従来の保険が合わないと感じていた方の選択肢も増やすことができるのではないでしょうか。

畑 加寿也プロフィール


保険数理コンサルティング会社Millimanで保険数理に関するコンサルティングに従事後、国内外の投資銀行や再保険会社から、商品開発・リスク管理・ALM等のサービスを保険会社向けに提供。プログラミング VBA / Swift / Python / Ruby、日本アクチュアリー会正会員、米国アクチュアリー会準会員、ワインエキスパート、ダイブマスター、京都大学理学部卒

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