医療保険の必要性
この記事では、医療保険の必要性についてファイナンシャルプランナーが解説していきます。医療保険の種類や保険料の相場、加入のメリット・デメリットなどにも触れてますので、保険選びの際にご参考にしてみてください。
1. 医療保険とは?
(1)医療保険とは?
医療保険とは、健康保険や高額療養費制度などの公的医療保険の利用だけでは足りない部分を補うための位置づけにあります。
医療保険は、思わぬ病気やケガで入院・手術等の出費に備えるための保険ですが、緊急のときの治療費や生活費を十分まかなえるだけの預貯金などの資産があれば、無理に加入する必要はありません。

しかし、入院や手術をすると働けなくなったり生活が苦しくなるようでしたら、備えとして医療保険に加入することを検討したほうがよいでしょう。
何のため? | 自分が思わぬ病気やけがをして医療費がかかったときのため |
---|---|
いくら必要? | 社会保険では賄いきれない部分の医療費をカバーできるように |
期間は? | 必要な期間(一定期間、一生涯)を設定 |
誰が使う? | 自分と家族のために |
受取方法は? | 一括して、もしくはその都度受け取れる(非課税)保険 |
(2)医療保険の主な保障内容
医療保険には、多数の保障や特約の付加が可能です。中でも多数の保険会社が取り扱っている保障や特約は以下となります。
給付金・特約名 | 適用される条件・内容 | |
---|---|---|
入院給付金 | 保険会社所定の病気や不慮の事故で入院したとき | |
手術給付金 | 保険会社所定の手術を受けたとき | |
通院給付金 | 入院給付金の対象となる病気や不慮の事故で入退院後に治療のために通院をしたとき | |
女性疾病特約 | 子宮筋腫や乳がんをはじめとする女性特有の病気で入院や手術をしたとき | |
三大疾病特約 (特定疾病特約) |
がん、急性心筋梗塞、脳卒中によって保険会社所定の状態になったとき | |
がん特約 | がん診断給付金 | 初めてがんと診断されたとき、最初や転移を含むがんの治療を目的として入院や手術をしたとき |
がん入院給付金
がん手術給付金 |
最初や転移を含むがんの治療を目的として入院や手術をしたとき | |
先進医療特約 | 厚生労働省が定める高度な医療を受けたとき | |
保険料払込免除特約 | 保険会社所定の疾病や身体障害状態、要介護状態になったとき、以降の保険料の支払いが免除される |
2. 医療保険の必要性
医療保険は、思わぬ病気やケガで入院・手術等出費に備えるための保険ですが、全ての人にとって必要というわけではありません。
あなたにとっての医療保険の必要性を、
・実際の加入率
・公的医療保険との関係
・実際にかかる医療費 など
との関係から考えてみましょう。
(1)医療保険の加入率
公益財団法人生命保険文化センターの「令和元年度 生活保障に関する調査」によれば、
- 民間の生命保険会社
- 郵便局
- JA(農協)
- 県民共済・生協 等
で取り扱っている生命保険(個人年金 保険や生命共済を含む)のうち、「疾病入院給付金が支払われる生命保険に加入している」と答えた人は全体の73.1%にものぼります。

※出典:生命保険文化センター 令和元年度「生活保障に関する調査」
疾病入院特約のついた生命保険に加入しているケースが多いことが分かります。
日本では公的医療保険があるため、入院や治療にかかる自己負担額は治療費全体の3割に抑えることができます。その一方で、医療保障のある生命保険への加入率が7割を超えるのは、何故でしょうか?
同じ調査で「ケガや病気に対する不安の有無」についてアンケートをとったところ、ケガや病気に対して不安を感じる人が調査全体の89.6%になりました。
不安感ありと回答した人(3,598人)対象に不安の具体的な内容について調査をしたところ、長期入院で医療費がかさむことや公的医療保険だけでは不十分など、経済的な負担を不安に思う人がいることも関係しているのではないでしょうか。


これは一部の人を対象としたアンケート結果であり、医療保険に加入が必要ということではありません。公的医療保険に対する考え方についての結果をみると、
・「公的医療保険でまかなえると思う」と回答した人は42.5%
・「まかなえるとは思わない」と回答した人は61.5%
となるため、人それぞれ考え方によることがうかがえます。

個々のご家庭の資産状況や家族構成・リスクに関する考え方次第で医療保険の必要性は変わりますので、迷われる場合は専門家に相談するのも一つの手です。
(2)医療費はいくらかかる?
厚生労働省が発表している国民一人当たりの医療費の概況について、平成29年の調べでは年間で33万9,900円となっており、一人の人が生涯で必要となる医療費の平均は約2,700万円となっています。

傷病別に受療率の高い傷病は、入院と外来でそれぞれ以下のとおりです。

※出典:厚生労働省 平成29年「患者調査の概況」
これら日本人に多い身近な傷病が、それぞれ治療費をどの程度要しているのかみていきましょう。
統合失調症の治療費の目安
数ある傷病の中でも、統合失調症などの精神疾患は入院日数が長くなる傾向にあります。
厚生労働省の「平成29年度 患者調査」によると、統合失調症、統合失調型障害及び妄想性障害における全年代の平均在院日数は「531.8日」で、実に1年半もの間に渡って入院する可能性があることを示しています。
また「令和元年度 社会医療診療行為別統計」によると、統合失調症の1日あたりの治療費は約13,600円でした。
統合失調症による 入院費用・日数・自己負担額 |
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入院日数総数 | 約531.8日間 |
1日あたりの 自己負担費用 |
平均4,080円 |
自己負担額 | 総額約2,169,744円 |
脳血管疾患の治療費の目安
脳血管疾患とは、脳の血管が破れたり詰まったりすることで表れる全ての症状の総称のことです。代表的な病気に「脳梗塞」や「くも膜下出血」があります。

「平成29年度 患者調査」脳血管疾患における全年代の平均在院日数は「78.2日」と、2ヶ月以上に渡って入院する可能性があります。
一方、「令和元年度 社会医療診療行為別統計」によると、脳血管疾患の1日あたりの治療費は約40,160円と、統合失調症に比べて非常に高額になっているのが特徴です。
脳血管疾患による 入院費用・日数・自己負担額 |
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入院日数総数 | 約78.2日間 |
1日あたりの 自己負担費用 |
平均12,048円 |
自己負担額 | 総額約942,154円 |
公的保障で自己負担が3割になったとしても、高額の治療費がかかることになります。
悪性新生物(がん)の治療費の目安
悪性新生物とはいわゆる「がん」のことで、組織細胞が何らかの原因で変異・増殖を続けることで正常な身体組織を破壊してしまう病気のことです。
体中のどの部位に腫瘍ができるかによって入院日数に多少の違いがみられますが、あらゆる部位と全年代の平均入院日数は「17.1日」になっています。
「令和元年度 社会医療診療行為別統計」によると、新生物の1日あたりの治療費は約67,230円と、入院日数は比較的短くても治療費は高額です。
悪性新生物(がん)による 入院費用・日数・自己負担額 |
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入院日数総数 | 約17.1日間 |
1日あたりの 自己負担費用 |
平均20,169円 |
自己負担額 | 総額約344,890円 |
骨折の治療費の目安
厚生労働省の「平成29年度 患者調査」によると、骨折の治療にかかる入院日数や治療費の目安は骨折した部位や治療法によって異なりますが、あらゆる部位と全年代の平均は以下のとおりです。
骨折による 入院費用・日数・自己負担額 |
|
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入院日数総数 | 約37.2日間 |
1日あたりの 自己負担費用 |
平均1万9,835円 |
自己負担額 | 総額73万7,862円 |
(3)公的医療保険制度でカバーできない金額
民間の医療保険に加入していなくても、公的医療保険精度で医療費はカバーできないのでしょうか。
高額療養費制度を利用した場合
- 高額療養費制度(こうがくりょうようひせいど)
- 1ヶ月(1日から末日まで)でかかった医療費の自己負担分が一定の金額を超えた分が、後で払い戻される制度。※出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
高額療養費制度を利用した場合の69歳以下の医療費の上限額は、下記の通りです。

※標報:標準報酬
例えば、現役世代(69歳以下)で年収約370~約770万円の人の場合、高額療養費制度を利用しても毎月8万円台を上限として自己負担がかかる計算になり、治療が月をまたげばさらに高額な治療費を支払うことになります。

また、以下の項目はすべて自己負担となります。
・健康保険適用外の治療を受ける
・差額ベッド代
・入院中の食費
・雑費 など
入院や不慮の事故が原因で、場合によっては家事や子育てのためにホームヘルパーを頼むことも必要になるかもしれません。
加えて、治療中は普段の仕事をセーブしたり休むことで給与が減り、さらに収支のバランスが崩れる可能性もあることを念頭に、高額療養費制度を利用しても足が出る出費部分をどのようにカバーするか考えなければいけません。
傷病手当を利用した場合
会社員であれば、傷病手当金を利用することもできます。
ただし、傷病手当金は平均標準報酬月額の2/3しか受け取ることができないので、治療費をすべて公的医療保険でまかなおうとするのには無理が出てきます。

この「はみ出した医療費」をどうカバーするか考えたとき、民間の保険会社が販売する医療保険を検討する必要性があり、
・入院給付金
・手術給付金
・通院給付金
・三大疾病特約
・先進医療特約 など
はこの「はみ出した医療費」や崩れた収支のバランスを整えるために必要なものと考えられます。
(4)性別・年齢別に見る医療保険の必要性
あなたが男性か女性か、また現在の年齢によって、必要と思われる医療保険や保障が異なってきます。
それぞれの性別・年齢別に医療保険を捉えたとき、どのような医療保険が必要となり得るのか見てみましょう。
20代の男性・女性に必要な医療保険
20代男性
平成29年「患者調査の概要」によれば、20代の平均在院日数は11.1日と非常に短いのが特徴です。
民間の医療保険に加入するか否かは、自身の貯蓄状況で変わるでしょう。
20代男性の入院1日あたりの自己負担費用額は平均で18,824円であり、平均通りの11日の入院の場合に換算すると、約20万円かかります。

高額療養費によって、100万円の医療費がかかったとしても87,430円で済みますが、20代は貯蓄額が十分でないことから、これらの出費が痛手になることもあります。
貯蓄が十分でないと感じた場合は、入院限度日数が30日~60日などの月の掛け金が安い医療保険への加入を検討するのも良いでしょう。
20代女性
20代の女性も平均在院日数は非常に短いですが、若い女性でもかかりやすい病気の1つとして「乳がん」に気を付ける必要があります。
公益財団法人がん研究振興財団『がんの統計’18』の「年齢階級別がん罹患 部位内訳(2014年)」のデータによれば、がんは基本的に年齢が上がるほど罹患率が上がる病気ですが、乳がんに限っては20代~40代の比較的若い世代の罹患率が高くなっています。

- ※出典:公益財団法人がん研究振興財団 「がんの統計’18」
若いうちにがんに罹患した場合、進行が早く全身に転移する可能性があります。重い症状にかかった時のことを考えた保険選びが重要になるでしょう。
乳がんに罹患する可能性を考えた「がん保険への加入」を検討するほか、手厚く備えるなら「医療保険+がん保険」の組み合わせを考えるのも良いでしょう。
30代の男性・女性に必要な医療保険
30代男性
20代よりも給与収入が高くなる場合が多く、ケガや病気が原因で仕事を休むことによる金銭的なダメージも相対的に大きくなる時期です。
傷病手当で2/3の受け取れる会社員でも、1年6ヶ月を過ぎれば支給はされなくなります。また、自営業の場合は傷病手当はそもそも支給されません。

保険料は年齢が上がるごとに高くなるため、30代のうちに終身医療保険に加入しておくことで、安い掛け金で安心の保障を得ることができるでしょう。
結婚している場合は、
- 夫婦共働き
- 片方が専業主婦(夫)
であるかどうかでも医療保険の重要度は変わります。
また、男性の場合はメタボリックシンドロームが疑われる人や予備軍の割合が30代から急激に上がることも考慮し、3大疾病特約付きの医療保険がおすすめです。
30代女性
国立がんセンターの「最新がん統計」によれば、女性は30代になると男性よりもがんに罹患する確率が高くなり、乳がんの罹患率が急激に上昇するほか、子宮がんの罹患率も60代以降の高齢女性に比べて高水準です。

- ※出典:全国がん登録による全国がん罹患データ
20代よりもがんにかかるリスクが高くなるため、まだ保険に加入していない場合の優先順位はがん保険への加入とも考えられます。
中でも初期のがんとしてかかりやすい「上皮内がん」が保障の対象になっているかを確認しましょう。
出産・育児が盛んになるのステージのため、余裕があれば死亡保障を合わせて検討すると良いでしょう。
40代の男性・女性に必要な医療保険
40代男性
40代に入ると、それまで死因の2位だった不慮の事故が5位以降に後退し、悪性新生物が2位に浮上します。
45~49歳になると悪性新生物が死因の1位になることから、30代までに比べてがん保険に加入する必要性が高まる時期です。
はじめてがんと診断された時に給付金を受け取れる「がん特約」付きの医療保険がおすすめです。
そのほか、脳血管疾患による死亡率が高まることから、30代に引き続き三大疾病特約付きの医療保険への加入を検討しましょう。
40代女性
20台後半から50代前半にかけては、男性より女性のがん罹患率が高い時期です。
がん保険は、一度がんと診断されると新規での加入が難しくなるため、できるだけ若いうちに加入する必要があります。
特に乳がんは40代後半で罹患率のピークを迎えることから、30代に引き続き、がん保険の優先度が高くなります。

- ※出典:国立がん研究センター「2020年7月6日 最新がん統計」
年齢が高くなるにつれて罹患率が上がるのが悪性新生物の特徴ですが、女性に関しては30~50代の罹患率が男性よりも高く、早い段階での備えが必要です。
女性特有の病気で入院した際は入院給付金が5,000円が10,000円に増額される、乳房再建術の際に給付金が受け取れるなどの手厚い保障を受けられる「女性向けの医療保険」がおすすめです。
50代の男性・女性に必要な医療保険
50代男性
厚生労働省「死因順位」によると、50代の男性の死因は40代後半から続けて悪性新生物がトップになっています。40代よりも、更にがん保険の必要性は高まります。
また、40代後半で死因の2位だった自殺が3位に後退し、心疾患が2位に浮上しているのも特徴です。
40代までより入院日数の長期化が予想され、たとえば死因の4位である脳血管疾患は、35~64歳の平均在院日数が45.6日と非常に長期化しています。
入院限度日数が60日では心配になる時期ですから、120日の入院限度日数に切り替えることも検討すると良いでしょう。
また、厚生労働省 平成29年 国民健康・栄養調査報告では男性は年齢を重ねるごとにメタボリックシンドロームが疑われる人の割合が増えていることから、特に増加する60代に備えて三大疾病特約付き医療保険の重要性が高まります。

※出典:厚生労働省「平成29年 国民健康・栄養調査報告」
50代女性
50代の女性は、40代までの女性に比べると
・メタボリックシンドロームが強く疑われる人
・予備軍と考えられる人
の割合が約2倍に増加するデータがあります。
死因においても、40代で2位だった自殺が50~54歳で3位、55~59歳で4位と後退する代わりに脳血管疾患・心疾患がそれぞれ2位と3位に位置するようになります。
50代の女性は、心疾患よりも脳血管疾患の方が死亡する割合が高いのが、他の年代・性別にない特徴です。
脳血管疾患は平均在院日数が45.6日と長期化しやすいため、入院限度日数ができるだけ長い医療保険がおすすめになります。
60代の男性・女性に必要な医療保険
60代男性
50代までは女性の方が高かった「がんの罹患率」の高さが、60代になると男性が逆転します。
厚生労働省が発表した「死因順位」によると60~64歳の48.5%、65~69歳の48.0%が悪性新生物で死亡していることが分かります。

※出典:厚生労働省「令和元年 人口動態統計月報年計」
65歳以上になると全体の平均在院日数が37.6日と、35~64歳までの21.9日と比較して長引きやすいのが特徴です。
ケガや病気にかかった時に、若いころに比べて治りにくくなることから、入院限度日数にはできるだけ余裕をもって保険選びを行いましょう。
60代女性
厚生労働省「患者調査」<性・年齢階級別にみた受療率>によれば、50代から60代にかけて入院・外来受療率ともに急増しています。

一方で、40代後半でピークを迎えた女性特有のがん(乳房・子宮など)の発症率は年齢が増すごとに低くなるため、女性向けの医療保険の必要性は50代までより低いです。
60代の女性は女性用保険だけでなく、あらゆる病気のリスクに備えられるような医療保険を検討する必要があるでしょう。
終身型医療保険であれば、将来の年金受給を見据えて掛け捨てで比較的安い掛け金で将来に備えることができます。
80歳以上の男性・女性に医療保険は必要?
一般的に、高齢になるほど病気にかかる確率は上がっていきます。
若いころは保険の必要性を感じていなかった人が、急に必要に感じることもあるのではないでしょうか。
80歳以上の高齢者が医療保険に加入する必要性はあるのかについては、手厚くなる公的保障でカバーできない出費に対する考え方が重要になります。
75歳以上になると、それまで加入していた国民健康保険等から「後期高齢者医療制度」に移行し、制度加入者が窓口で負担する医療費は1割(ただし、現役並み所得の人は3割負担)となり、自己負担額は74歳までと比べて安くなります。

ひと月の医療費の限度額である「高額療養費」も、70歳からは個人単位で外来のみの場合の限度額が設定されるようになります。
例えば、70歳以上で年収約370万円未満の世帯の場合、外来のみのひと月の医療費の支払額が18,000円(個人単位)になります。入院等を含めると世帯の限度額は57,600円です。
公的保障が手厚くなることで、多くの場合は新たに医療保険に加入する必要は高いとはいえません。
ただし、これらの公的な制度では入院中の食事や差額ベッド代、先進医療の治療費は対象外です。
先進的な治療を受けたい人や、個室でゆっくりと治療に専念したい人は、費用負担の軽減のために医療保険への加入を検討する価値があります。
(5)医療保険が必要な人・不要な人はこんな人
これまでの解説してきた保障内容や加入率、医療費等から鑑みて、医療保険が必要な人と、いらない・不要と思われる人は以下のとおりです。
医療保険が必要な人
自営業の人
会社員が加入する健康保険であれば「傷病手当」で平均標準報酬月額の2/3を受け取ることができるため、貯蓄次第では生活費をカバーすることができるでしょう。
一方で、自営業者が加入する国民健康保険には傷病手当がないため、入院して収入がなくなった分は全て自分でカバーする必要があります。
医療保険に加入して、経済的なリスクを減らすことを検討することをおすすめします。
医療費負担に心配がある人
国民一人当たりの医療費の概況について、平成29年の調べでは年間で33万9,900円がかかるとされています。
貯蓄が心もとない場合に、一時的な負担増に対して不安を感じる人もいるでしょう。
想定できない医療費負担増に不安を感じる方は、医療保険への加入がおすすめです。
医療保険がいらない・不要な人
医療保険がいらない・不要な人とは、医療費を自分の貯金で賄える人です。
これまでに紹介してきた「受療率が高い傷病」の治療費に備え、ご自身で貯蓄を増やしていける人なら、医療保険の必要性は低いと判断できます。
3. 医療保険のメリット・デメリット
医療保険の加入を検討する際には、必ず最初にそのメリットとデメリットを確認しておきましょう。
(1)医療保険のメリット
・少額の出費(保険料)で高額な治療費の支払や付随費用にも対応することができる
・健康保険でカバーできない支出に備えることができる
・特約を付加すればがんなどの重い病気の治療費の支払にも役立つ
・支払った保険料は生命保険料控除や介護医療保険料控除の対象となる
- 生命保険料控除(せいめいほけんりょうこうじょ)
- 生命保険などの保険料を支払っている場合に、その金額に応じて所得金額が控除(差し引かれる)される制度。確定申告時に納税する所得税が軽減される。
生命保険控除には「控除区分」が定められており、現行の新制度では以下の3種類に分けられています。
このうち、入院や通院で給付金が発生する医療保険は「介護医療保険料控除」に分類されます。
一方、平成23年12月31日までの契約は「旧契約」と呼ばれ、介護医療保険控除は一般生命保険控除に含まれていましたが、新制度になって介護医療保険控除が独立したことで3つに増え、控除の限度額も10万円から3つ合わせて最大12万円まで増えています。
控除される金額は「年間の払込保険料等」に応じて決まります。旧制度と新制度の控除額の比較は以下のとおりです。
【新制度】
年間の払込保険料等 | 控除額 |
20,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
20,000円超 40,000円以下 |
支払保険料等×1/2+10,000円 |
40,000円超 80,000円以下 |
支払保険料等×1/4+20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |
3つの控除区分のそれぞれで上限が40,000円であり、新制度全体では120,000円が控除の上限です。
【旧制度】
年間の払込保険料等 | 控除額 |
25,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
25,000円超 50,000円以下 |
支払保険料等×1/2+12,500円 |
50,000円超 100,000円以下 |
支払保険料等×1/4+25,000円 |
100,000円超 | 一律50,000円 |
「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」を合わせて10万円が控除額の上限です。
(2)医療保険のデメリット
・契約で定められた保険料を支払う必要がある
・病気やケガをしなければ掛け捨てになる
・貯蓄性はないので、途中解約しても解約返戻金がないことが多い
・健康状態が悪ければ加入できないこともある
解約返戻金があると良いの?
- 解約返戻金(かいやくへんれいきん)
- 保険契約者が契約を解約したり、保険会社から契約を解除されたりした場合に契約者に払い戻されるお金のこと。
終身保険など、満期がない生命保険の払込期間を過ぎた後で解約することで受け取れるのが一般的ですが、医療保険は通常、解約返戻金はないか、あっても金額は多くはありません。
老後の備えとして解約返戻金ありの保険を選ぶ人もいますが、解約返戻金がないタイプに比べて保険料が高くなります。
また、早期に解約した場合の解約返戻金は払込保険料を下回る点も注意として挙げられることから、必ずしも解約返戻金ありの医療保険が優れているわけではありません。
健康状態に不安がある人向けの医療保険もある
持病で薬を飲んでいたり、過去にがんなどの病歴があり「生命保険に入れないのでは?」と不安を抱える方向けの保険として「引受基準緩和型保険」が用意されています。
- 引受基準緩和型保険(ひきうけきじゅんかんわがたほけん)
- 持病がある方や入院経験がある方が加入しやすいよう、告知の内容を限定し、引受基準を緩和した商品。
ただし、健康に不安がある人でも利用できる保険であることから、一般の医療保険と比べると同じ保障内容なら保険料は割高になるデメリットがあります。
健康状態に不安がある人でも、より詳細な健康状態の告知を行うことで、保険料が割り増しされていない一般の保険に加入できる可能性もあります。
まずは一般の医療保険の審査を受け、もし加入できなかった際に引受基準緩和型保険に申し込みを行うことをおすすめします。