Unlearn(アンラーン)人生100年時代の新しい「学び」|対談編(第二回)
書籍紹介:Unlearn(アンラーン) 人生100年時代の新しい「学び」
『Unlearn(アンラーン)人生100年時代の新しい「学び」』執筆のきっかけ
宮脇
先生が1月に出版された「Unlearn(アンラーン)人生100年時代の新しい「学び」」を読みました。まずは非常に驚いたのは、先生の研究領域がすごく広い点です。その中で、為末さんと手を携えてアンラーンという概念を導入するような本を書かれたのか、背景も含めて教えてください。
柳川教授
為末さんとは昔からの友人です。10年近く前、彼の現役時代に勉強会で知り合いました。どちらかというと飲み友達でして、彼がその現役引退から今のキャリアに踏み出すような話を聞いてきました。
為末さんと「本を書きたいよね」という話をして、その中で共通で何か訴えたいことはなんだろうということを考えた結果、出てきたのが「アンラーン」でした。
為末さんは、日本のアスリートのセカンドキャリアについて、アスリートとして生きてきたキャリアを「アンラーン」して新しい人生を踏み出すことが重要だと考えています。それは大きなキャリアチェンジの話だけでなく、アスリートの活動の中でも、昔のやり方にとらわれすぎていて、結果的に伸びないという実感を持っていたためです。そういった意味で、「アンラーン」が大事だと考えています。
私が重要だと考える「アンラーン」とは、過去の価値観や会社の文化などから解放し、新しいキャリアに踏み出すことを言います。多くの人が、今いる会社や文化に囚われ、踏み出せないことがあります。これはもったいないと思います。今は、アスリートだけでなく、普通の人もセカンドキャリアやサードキャリアがある時代になっており、その中で、「アンラーン」をすることで、新しいチャンスを見つけることができます。
そもそも「アンラーン」とは?
宮脇
私の理解する「アンラーン」は、これまでの行動様式や価値観を疑って壊し、新しいことに適用することです。現代社会は変化が激しいため、個人や会社もそれに対応するために「アンラーン」が必要だと思います。たとえば、企業の中では、転職が増えるなどして、長期にわたって同じ会社にいることが少なくなってきています。そのため、個人のキャリアも変化し、新しい環境に適応するために「アンラーン」が求められていると感じました。 その理解でよろしければ幸いです。
柳川教授
おっしゃるように、世の中の環境変化が激しくなってしまって、いろんなものが変わっていくわけですよね。
産業構造が変化し、企業のやるべきことや収益を得る方法も大きく変化してきています。そのため、企業全体に「アンラーン」と考え、過去に縛られずに新しい方向で発展していくことが必要であり、それは様々なレベルで必要です。
僕は主に政策に関する話をすることが多いですが、社会の仕組みや法律を変えるだけでなく、企業経営も変革する必要があると考えており、それを経営者に対して講演やアドバイスを行っています。
一方で、大きな枠組みだけでなく、個人レベルでも意識を変えることが必要です。外の枠組みが変わるのを待っていては、何も変わらないため、自分自身で何かを変えることで新しいものを生み出すことができます。そのため、「アンラーン」は個人向けの本だと考えています。
宮脇
為末さんと書かれた「アンラーン」は個人向けの著書ということですが、先生のご関心が強いのは、やはりその社会的な仕組みの部分ですか?
柳川教授
社会的な仕組みに関心と自分の役割があると考えていますが、全体の仕組みを変えていく上では個人のところも大事だと考えています。様々な角度から変化を促すことが大事です。
今後ますます必要性が高まる「アンラーン」
宮脇
今後の日本をうまく進めていくために「アンラーン」は必要であり、もちろん個人もそうですし、先生ご指摘の通り、その社会的仕組みそのものを改善していく必要性があると思いながら、先生の著書を読ませていただきました。先生のご関心もそこにあると考えてよろしいでしょうか?
柳川教授
最近、リカレント教育やリスキリングに対する関心が高まってきていることに対して、嬉しく思っています。これは私が目指してきた方向への変化が始まっていることを意味していると思います。
「知識を増やす」ということは、今までの知識を上に重ねていくイメージが強いですが、今までの価値観や発想を変えずに新しい知見を得るだけでは、本当に新しいものを生み出すことはできないと考えています。
環境の変化に適応するためには、根本から価値観や行動様式を見直すことが必要であり、それがより広い世界へ飛び出すための良い選択になると考えています。
宮脇
日本のDXには、「デジタル化」という言葉だけに囚われ、仕事のやり方をそのままにし、一部を電子化するだけの誤った認識が広がっている残念な状況があると思います。本来のDXは、「トランスフォーム」「トランスフォーメーション」であり、デジタル技術を活用して、仕事やビジネスのあり方を根本から変えることを意味しています。「アンラーン」でサービスの根っこに立ち返り、本来のDXを実現することを望んでいます。
私たちのSasuke Financial Lab株式会社の取り組みも、そういった取り組みを通じて、保険ビジネスなどを変えていくお手伝いができることを願っています。
柳川教授
DXのXの部分ですよね。DXという言葉は日本ではよく使われていますが、実際にはそこまでの変革は起きていないように思われます。そのため、「本当に何を目指したいのか」を再度見直すことが必要です。最終的な価値観や目的を見直すことで、目指すべき方法や変えるべきことが明確になり、同じ方向を向くことができるようになります。
現在は変化が進んできていると感じることができます。そして、早い段階から変革に取り組めれば、大きなビジネスチャンスがあり、個人のレベルでも可能性が広がるでしょう。私たちは現在、大きな過渡期、あるいは変革期にあるといえます。
宮脇
元々銀行に勤務していた私は、銀行業界を保守的だと思っていましたが、生命保険業界はそれ以上に保守的だと驚きました。変革が必要だと考えています。保険会社の多くは株式会社ではないため、投資対象についての情報が限られていると思います。そのため、私たちは情報発信を通じて一般の消費者のサポートをしたいと考えています。