介護・認知症保険の必要性や加入にあたり知っておきたいメリット・デメリットをファイナンシャルプランナーが解説!
この記事では、民間の介護・認知症保険の必要性について、信頼のファイナンシャルプランナーが民間の介護・認知症保険の種類や、日本における介護の実態からみる介護・認知症保険の必要性、そして知っておきたい介護・認知症保険のメリット・デメリットについて解説します。
本記事のポイント
- 2040年には日本の高齢者の約7人に1人にあたる584万人が認知症になる見込み、軽度認知機能障害(MCI)の患者数も約613万人に上る。
- 民間の介護・認知症保険は、公的介護保険とは異なり、生命保険会社が定める介護・認知症状態になった際に保険金を受け取ることができるもの。保険の種類は貯蓄性の有無、支払い要件、保険金支払い条件、保険金の受け取り方によって4つに分類される。
- 民間の介護・認知症保険のメリットは公的介護保険の自己負担部分をカバーでき、保障対象年齢の幅が広く、介護医療保険料控除が受けられる点。
- 民間の介護・認知症保険のデメリットは、保険料の継続的に支払わなければならないことや保険会社の基準によっては要介護状態と認められない可能性があること、また健康状態の告知が必要な場合があることがあげられる。
2040年には584万人の高齢者が認知症患者となる見通し
日本において高齢者人口がピークを迎える2040年に、高齢者の認知症患者が約584万人に上るという厚生労働省の発表が話題となりました。認知症の前段階とされる軽度認知機能障害(MCI)の患者数についても今回初めて公表され、その数は約613万人に上ると予想されています。
2040年における65歳以上の高齢者の推計人口をもとに試算すると、高齢者の約7人に1人が認知症となり、MCIについては約6人に1人がなる可能性があると考えられます。
日本の人口が減少していく中、認知症の高齢者を社会でどう支えていくかという課題もありますが、一方で個人として健康なうちから認知症や介護の予防を意識して生活し、早期発見・治療に努めることも重要といえます。しかし、いざ認知症や介護が必要な状態になった際に備え、民間の介護・認知症保険への加入も検討しておくとより安心でしょう。
民間の介護・認知症保険とは
民間の介護・認知症保険とは、加齢による要介護状態や認知症などを理由に、日常生活能力が無くなるリスクに備えるための保険です。
国が運営する公的介護保険は40歳以上の国民すべてに加入が義務付けられており、要支援・要介護度に応じて介護サービスなどが現物支給として受けられる制度です。一方で、民間の介護・認知症保険は契約者が生命保険会社の所定の介護・認知症状態となったときに保険金を受け取ることができます。
また、民間の介護保険はバリエーションが豊かで、大きく分けて以下4つの点から分類することができます。
- 貯蓄性の有無:貯蓄タイプ・掛け捨てタイプ
- 支払い要件 :公的介護保険制度連動タイプ・自社基準タイプ・併用タイプ
- 保険金支払い条件 :厳しいタイプ・緩いタイプ
- 保険金の受け取り方:一時金タイプ・年金タイプ・併用タイプ
介護・認知症保険を検討する際には、どのタイプが自分にとって必要な保障なのか考えて商品を選ぶことが重要です。
関連記事:介護・認知症保険の基礎知識
民間の介護・認知症保険の必要性
日本には公的介護保険制度もあるため、わざわざ民間の介護保険に加入する必要はないと考える人も多くいます。また、そもそも要介護状態や認知症にならなければ民間の介護保険自体が不要であるという考え方もできます。
現在、どれくらいの人が介護を必要としているのか、要支援・要介護認定者数や平均寿命・健康寿命などから民間の介護保険の必要性を見ていきます。
(1)介護費用はどれくらい必要?
在宅介護の場合、自宅をリフォームしたり車いすやベッドを購入したりと費用がかかります。住宅をバリアフリーに改築すると、数百万円単位のお金が必要となることも想定されます。
生命保険文化センターの調査によると、公的介護保険サービスの自己負担費用を含む、介護に要した費用のうち、一時費用(住宅改造や介護用ベッドの購入などにかかった費用)の合計額の平均は74万円でした。
また、一時的な費用の合計について、最も割合の大きかったのは15万円未満の18.6%でした。その一方で、費用の合計が100~200万円の割合は8.7%、さらに200万円以上も5.6%でした。すなわち100万円以上かかる人の割合も4分の1程度あることがわかります。
また、同調査によると介護に要した費用のうち、月々に支払っている(支払っていた)費用は平均8.3万円でした。最も割合が大きいのは月々15万円以上で16.3%でした。
(2)介護期間はどれくらい?
生命保険文化センターの調査によると、過去3年間に介護経験がある人が実際に介護を行った期間の平均は61.1ヶ月(約5年)でした。最も割合の大きいのは4~10年未満の介護期間で31.5%でしたが、一方で10年以上の割合も17.6%あります。
月々かかる介護費用を平均の8.3万円とすると、以下の計算のとおり、約5年間の介護期間に約507万円の介護費用がかかることになります。
8.3万円 × 61.1ヶ月 = 約507.1万円
また、もし月々15万円の介護費用を要する人の介護期間が10年以上であった場合、実に1,800万円以上の介護費用がかかることになるのです。これは極端な例ですが、仮に公的介護保険で1割負担になったとしても、180万円はどうしても自己負担しなければなりません。
(3)要介護・要支援者数はどれくらいいる?
厚生労働省の発表によると、令和3(2021)年度末時点の要介護・要支援認定者数は約690万人でした。高齢化にともない年々認定者数は増加しており、加齢とともに急速に認定者数の比率は高まります。
なお、年齢別にみると認定者のうち最も数が多いのは85歳以上90歳未満の約185万人で、80歳以上で絞ると約519万人となります。なお、80歳以上の割合は全体の8割近くを占めています。
また、厚生労働省の調査によると、要介護者の介護が必要となった主な原因として、最も大きな割合を占めたのが認知症の23.6%でした。その次に脳血管疾患(脳卒中)の19.0%、そして骨折・転倒の13.0%が続きます。
(4)平均寿命・健康寿命はどのくらい?
厚生労働省の発表によると、令和4年における日本人の平均寿命は男性が81.05歳で女性は87.09歳でした。前年の平均寿命と比較すると、男性および女性もわずかに下回ったものの、日本人の平均寿命が延び続けていることは事実です。
しかし、全員がこの平均寿命を全うするまで健康でいられるとは限りません。そこで近年注目されているのが健康寿命です。一般的に、平均寿命とこの健康寿命の差が、介護が必要な期間として想定されています。
健康寿命とは
健康上の問題で日常生活が制限されることが制限されることなく、生活できる期間のこと。
厚生労働省によると、令和元(2019)年における男性の健康寿命は72.68歳で、女性が75.38歳でした。現在、健康寿命は変化している可能性もありますが、平均寿命の差は男性が8.37歳、女性が11.71歳です。
女性は平均寿命が長いため、健康寿命との乖離が大きいという結果になりましたが、今後さらに日本人の平均寿命が延びれば、男女ともに10年以上介護を受けることになるかもしれません。
(2)公的介護保険で受けられる介護サービスの金額は?
現在の公的介護保険制度では、介護サービス費用を1割(一定以上の所得の場合2~3割)で受けることができます。
ただし、利用できる月ごとの上限が以下のように決められています。この金額を超えた分は、全額が自己負担となります。
介護度 | 利用限度額 |
---|---|
要支援1 | 50,320円 |
要支援2 | 105,310円 |
要介護1 | 167,650円 |
要介護2 | 197,050円 |
要介護3 | 270,480円 |
要介護4 | 309,380円 |
要介護5 | 362,170円 |
なお、1ヶ月あたりの介護サービス費用の自己負担額が高額になった際は、高額介護サービス費が支給されます。自己負担額の上限は、以下のとおりです。
区分 | 負担の |
---|---|
同一世帯内に課税所得690万円(年収約1,160万円)以上の人がいる場合 | 140,100円(世帯) |
同一世帯内に課税所得380万円(年収約770万円)~690万円(年収約1,160万円)未満の人がいる場合 | 93,000円(世帯) |
同一世帯内に課税所得が380万円以上ある人がいる場合 | 44,400円(世帯) |
同一世帯内に課税されている人がいる場合 | 44,400円(世帯) |
世帯全員が市民税世帯非課税 | 24,600円(世帯) |
前年の公的年金等収入金額とその他合計所得金額および課税年金収入額の合計が80万円以下の人 | 24,600円(世帯) |
生活保護の受給者など | 15,000円(個人・世帯) |
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民間の介護・認知症保険のメリットとデメリット
介護・認知症保険への加入を検討する際に知っておきたいメリットとデメリットは以下の通りです。
民間の介護・認知症保険のメリット
- 公的介護保険の自己負担部分をカバーすることができる
- 公的介護保険よりも保障対象となる年齢の幅が広い
- 介護医療保険料控除により所得税と住民税を減税できる
- 保険会社所定の介護状態が続く限り、保険料払込免除となる場合がある
介護・認知症保険で支払った保険料は生命保険料控除のうち、介護医療保険料控除の対象となります。所得税は4万円、住民税は2.8万円を限度に控除を受けることができます。
関連記事:生命保険料控除でいくら戻る?還付金額の計算方法【会社員・個人事業主・パート】
民間の介護・認知症保険のデメリット
- 保険料を支払い続ける必要がある
- 介護認定が保険会社独自基準の場合、要介護状態と認められても保険金が支払われない可能性がある
- 要介護度が低い状態では公的介護保険の利用限度額を超えることは少なく、保険会社所定の要介護状態の条件を満たせることが少ない
- 健康状態の告知が必要な場合がある
新しく保険に加入するということは、保険料の支払いも新たに発生するということです。介護・認知症保険の保険期間は定期(一定期間)もしくは終身(一生涯)から選べる商品が多いですが、どちらを選択するかによっても支払う保険料は変わります。
保険料を家計に影響のない範囲におさめるためにも、加入前に保障内容や保険金額についてよく検討するとよいでしょう。なお、介護・認知症保険でカバーするべき費用は、老後の生活資金を除いた預貯金等の資産から試算するとわかりやすいでしょう。だいたいの目安は100〜800万円の間となります。
まとめ
要介護状態や認知症になると、本人のみならず家族など介護をする人にも様々な影響を及ぼします。仕事と介護の両立が困難であることを理由に、介護離職をせざるをえない可能性もあります。
将来誰にでも起こりうる介護や認知症のリスクに備え、介護・認知症保険を検討したいが、どの商品を選べばいいか迷った際はコのほけん!の無料オンライン保険相談も利用してみるとよいでしょう。