保険 比較
通話
無料
無料保険相談はこちら
0120-995-311
9:00〜20:00(年末年始除く)
保険 比較
お気に入り
お気に入りは
最大10件です
資料請求
通話
無料
無料保険相談はこちら
0120-995-311
9:00〜20:00(年末年始除く)
メニュー
アメリカと日本の傷害保険の違いとは?海外で保険加入時の注意すべき点
教育機関・研究機関の専門家インタビュー記事一覧

アメリカと日本の傷害保険の違いとは?海外で保険加入時の注意すべき点

早稲田大学で商法・保険法を専門とされている大塚英明教授にアメリカと日本の傷害保険の違いについて、海外で保険加入する時の注意点をテーマにお話を伺ってきました。

今の専攻を志したきっかけは?

やはり指導教授の影響が強かったからです。

 

 

先生にとって、保険とは?

月並みですが「安心」です。

 

 

傷害保険の範疇化(はんちゅうか)を研究するきっかけ

コのほけん!編集部

大塚教授は「傷害保険契約の範疇化」の研究課題を発表されましたが、傷害保険 に着目して研究に至った経緯などを教えていただけますか?

大塚英明教授
現行の保険法は2007年に制定されました。その時に傷害保険の扱いにものすごく悩みました。

傷害保険という範疇が1つ認められていいのかどうか、あるいは伝統的に分類するかどうかですね。

それがおおいにもめて、結局、後者の考え方で、傷害疾病定額保険契約と傷害疾病損害保険契約の2つにわかれました。

傷害疾病定額保険契約は生命保険の弟で、傷害疾病損害保険契約は損害保険であるという形になり、傷害保険が1つの保険分野として認められることはなかったのです。

ぼくはずっと傷害保険について特殊性があると思って研究してきて、医療保険とは別に、1つの分野を設けるべきだという考え方を持っていたのです。

ところが法律が1つの分野として独立させなかったので、理屈的に、傷害保険が第三分野なのかというところを考えるとやはり違うのですよ。

傷害保険を1つの範疇として、確立できればいいなというのがきっかけですね。保険法改正が大きくヘソを曲げるきっかけになります。

コのほけん!編集部
ヘソを曲げられるきっかけになったのですね。

大塚英明教授
旧保険法は生命保険と損害保険しか規定してなかった法律だから、 新しい傷害保険には対応できないだろうと思って、みんなその1つ別の分野だと思っていたわけです。

ところが、 新保険法ではっきり1つ別の分野ではないと否定されてしまいました。

ぼくの師匠が面白いことを言ったのですよ。「傷害保険というのは1つの小宇宙」だって。

生命保険と損害保険とでは割り切れないことが多すぎますよね。特徴が相当違うんだろう、 どっちでも説明できないということです。

コのほけん!編集部
そこがきっかけなのですね。ありがとうございます。

ポイント

  • それまでの保険法は生命保険と損害保険しか規定されていなかった
  • 2007年の保険法改正の折、傷害保険を含めた第三分野保険の定義が導入
  • 傷害保険は実損填補型は損害保険、定額給付型は生命保険の弟という分類

アメリカの傷害保険は日本の傷害保険とは全くの別物

コのほけん!編集部

アメリカと日本の傷害保険では違いなどはございますか?それぞれについての特徴なども教えてください。

大塚英明教授
これはご存じだと思うのですが、アメリカには、基本的には公的医療保険がありません。

公的医療保険がなくて、医療保険をやると保険金の支払いが非常に多くなり、保険会社が破綻します。

事実上、傷害事故を医療保険的に扱わせるということが、とても広く認められないと困るわけです。

アメリカの傷害保険は、まず、第一に保障範囲が非常に広いです。

日本は医療保険が充実しているので、それに加えて三大疾病とかそういう時のためいわゆる疾病保険はあるのだけども、アメリカほど切実ではありません。

日本は非常に悠長に疾病保険と傷害保険が違うという分析ができますが、アメリカは傷害保険をかけて、それでなんとかとろうという方向に動きます。

「保険事故」という概念を広くして、なんとか保険会社に持ってもらおうという方向にもっていきます。

アメリカでは歯の治療に公的保険はないし、医療保険は保険料が高いのでかけられません。
そのため、虫歯になって歯の治療が必要な場合、特に、すごく痛くなった時は自分で自分の顔をぶつけて怪我をつくります。

コのほけん!編集部
えええ〜っ(驚愕)

大塚英明教授
口に怪我をして怪我をして歯が欠けたとして傷害保険を使うわけです。

 

コのほけん!編集部
えええ〜っ(驚愕)すごい理屈ですね。衝撃です。

大塚英明教授
これは想像ですが、アメリカで医療保険がないということはものすごく大変なことです。

当然の話、お金がないと病院に行くことができません。病院側も患者を診察した後にお金がないです、医療保険がないですと言われると困ります。医者の方だって、治療費が取れないですからね。

公的医療保険がないので、少なくとも傷害保険に入っているのであれば、怪我にして事故扱いにしたほうがいいということになります。

内的な病気だと傷害保険はつかえませんが、外的な病気などであれば、なんでも事故にしてしまいます。

例えば、自分で自殺未遂をして、そこで倒れて切ったり怪我をすると、傷害保険を使います。

コのほけん!編集部
えええ〜っ(驚愕)

大塚英明教授
アメリカの医療保険というのは、非常に保険料が高いから、傷害保険でなんとかしないといけないのです。

今、アメリカの貧富の差という話がありますが、要するにステータスがある人は医療保険に十分に入っている人たちです。

ものすごいお金があるから、医療保険のすごい高い保険料の支払いも大丈夫なわけです。この人たちは、病院に行っても、しっかり保険で治療を受けられます。
病院もそういうステータスが高い人たちで、医療保険に入っている人はすごく優遇します。

傷害保険の前提として、公的医療保険がないことがアメリカではものすごく困ってるという事実です。

貧富の差も保険に現れるのです。

ただ、傷害保険で考えるんだったら、やっぱり事故というのは、日本もそうですけど、「事故ってのは何なの?」というのは、先ほど申し上げたとおり、傷害保険の核心ですね。

事故が生命保険と損害保険は違うわけですから、ここはやっぱりアメリカでも相当論議されている部分です。

コのほけん!編集部
いや〜衝撃的でしたね。アメリカのお話が。

大塚英明教授
何をやっても、傷害保険になればいい。

少々際どい話になりますが、アメリカ人男性は、マスターベーションする際に首を絞めながらする人がいます。

コのほけん!編集部
・・・。(絶句)

大塚英明教授
自分で快感を得るために首を絞めながらマスターベーションします。
信じられないような話ですが、それで死んだ時に遺族が傷害保険で保険金をもらうことになります。事故扱いになります。

ぼくがアメリカの傷害保険に学問的に入った時、 あまりにその事件が衝撃的でした。日本人だと1件、2件でとっても特殊な事例だと考えがちですが、そうした事例の件数は非常に多いです。

コのほけん!編集部
え、多いのですか!?

大塚英明教授
それがきっかけで最初の傷害保険の論文を書きました。

アメリカの男性は自分の首を絞めながらマスターベーションします。そこには、さまざまな背景がありますが、その中でも、アメリカの貧困層の男性は日本人男性のように風俗に行くことができません。それはお金がないからです。それでマスターベーションが盛んで、過激になります。
自分で首に紐を結びながら、例えば、トラックの車体の下に首をくくりながら行為を行います。当然、間違えて死ぬリスクがあり、万が一それで死亡した場合に、遺族がその時の状況で、このマスターベーションは事故だとして傷害保険金の請求をするわけです。

この件数が非常に多いのです。

それに非常に驚いて、「アメリカの傷害保険は日本の傷害保険と相当違う、なぜそんなものに傷害保険金を出すのか?」という疑問から保険の学術研究所に、自分はアメリカの傷害保険の分析・判例分析で入りました。

そうしてみると、ものすごく判例が多いのです。つまり、そういう文化が広がると、みんなやるようになるのかもしれません。明らかに危険な行為であるため、 家族がいる場合、家の中ではできず、車の中でロープを首に巻いてするので、1歩間違えて死ぬ事例が出てくるわけです。

これには本当に驚きました。アメリカの事故とは、別の言い方をするとダイナミックで、ものすごく広い意味を持たなきゃいけないわけです。

アメリカの傷害保険は、日本と比べようがないぐらい、何でも使われます。

一言で言うと、アメリカという先進国では保険が充実していないから、傷害保険でやらざるをえないのです。

極端な話は文化の違いといえばそうですが、徹底的にやります。

飲酒運転というと、日本はそもそも保険が働かないですよね。
アメリカでは飲酒運転は事故だからという理由で傷害保険が働きます。
日本の傷害保険って相当進んでいるのです。

コのほけん!編集部
すごい、衝撃です。

大塚英明教授
びっくりしますよね?

普通は自動車保険についてる傷害保険もしくは、自動車保険の賠償保険で相手への損害賠償をまかなうことが多いですね。

アメリカの場合、自動車保険に傷害保険をつけると保険料がすごく高くなります。

日本の自動車保険のパッケージはだいたい同じですね。

アメリカでは相当な貧困層ではない限り、自動車保険につけた傷害保険でまかなうことになります。

コのほけん!編集部
すごいです。ちょっと言葉が出ませんでした。びっくりしました。

ポイント

  • アメリカでは日本と異なり公的医療保険制度がないため、
    民間医療保険に加入するしかないが保険料が非常に高く、貧困層には手が届かない
  • アメリカの傷害保険は公的医療保険の側面を担っている部分がある
  • ただし、事故の原因として病気が絡む場合は一切支払いがされない
  • 医療保険がないため、病気でかかりたい場合に、該当箇所に無理矢理、怪我(事故)を作って傷害保険を利用する事例が多い
  • アメリカの傷害保険は自動車保険についている傷害保険の利用率が高い

損害保険の傷害保険と生命保険の傷害保険の違いは支払い方法

コのほけん!編集部

損害保険における傷害保険と生命保険における傷害保険の違いについて教えてください。

大塚英明教授
単純な例を出すと、治療実費を持つのは損害填補(てんぽ)ですよね。入院日額1万円が生命保険で、定額給付ですね。これにとても大きな違いがあると思ったので、現行保険法は種類が違うと、損害保険と生命保険という分け方をしたのです。

私の研究の元々の出発点になりますが、 保険金の支払いの仕方がそんなに重要なのでしょうか

問題は、傷害保険という事故が、人に何か怪我が起こるということについては、生命保険なのか、損害保険なのかということを全然考えていませんでした。

人は生命保険(死亡保険)しかないから死ぬということしか考えておらず、その中間で人だって壊れる、つまり、怪我をするということについて、伝統的な保険法は考えていませんでした。

「人が壊れる」という思考の場合、発想は損害保険ですが、壊れる対象が「モノ」ではないため、微妙な問題が出てきます。

特に1番大きいのは先ほど述べたように「病気なの?壊れたの?」というのが、境界がわからないことです。

よく考えると「モノ」は元々壊れる運命だったし、中から腐っていくなどのものなのかどうかというところです。

当然「モノ」が壊れて崩れたという時に保険事故だとは思わないわけです。

だから、「モノ」の場合には中から、要するに、その「モノ」の性質上ぐずぐず崩れちゃうことになるものだったのか、実は火で燃えちゃったのか、「物質」である「モノ」の場合は区別がはっきりするのでいいのですが、人間の場合ははっきりしません。

だから、内面的に病気と言われるもので、ガタが来たのか、外的な刺激で壊れたのかという点が、境界が非常にわかりにくいわけです。

ぼくは、 傷害保険はそっちの方が重大な問題だと思うのです。

ところが先ほどから文句を言っていますが、この間の保険法の立法の段階では、いやいや、そんなことは大したことないと、実は支払いのやり方のほうが重要なんだといいます。

損害保険というのは、実損を填補する、生命保険の話だったら、定額給付、この部分が違うというのですが、それが冒頭にお話したのと同様に視点が違っていると思います。

「傷害保険における保険事故ってなあに?」というところに注目すると、ぼくの師匠がおっしゃったように、その 1つの小宇宙的にね。

今まで保険では考えられてない事故というのは概念されると思いますが、ところが、現行保険法の立法者は、 いや、事故なんか関係ないよ払い支払いの方法だけだよというわけでは、それは大きな違いですね。

立法は支払い方法で分けてしまったので仕方ないのですが、未だにやっぱり傷害保険の保険事故というのは、今言ったように、人間の不具合というのは、中からぐずぐずくるのと外からがんとくるものとあり方の境界がわからないと思うわけです。

コのほけん!編集部
そこはまだこう学説というかの判断はついてないということですか?

大塚英明教授
これは有名な話で、筋ジス系の病気で嚥下(えんげ)能力が落ちてる時に、餅を喉に詰まらせたというのは、事故か病気のどっちだ?といわれるとわからないです。

これはものすごい典型的な話で、飲み込む力が無くなっているというと病気だし、餅がつまったというと事故になりますよね?

私の手前味噌ですが、傷害保険は現行保険法のように2つに分けるべきだと、注目すべきは、立場だと思ってる立場ですから、そういう例を出します。

傷害保険が裁判所で揉めるというのは必ず「病気なの?事故なの?」という観点です。

だって、よくよく考えると、かなりの確率で、人間の体は外的な要因で壊れますが、病気がかなり影響することが多いですよね。

それこそ倒れて大腿骨を骨折という事例であれば、歩行傷害は加齢から来てるという理由がありますよね。これが、人間の体の上にはすごく目立つのです。病気なのか、傷害事故なのかという境界がわからなくなります。

コのほけん!編集部
そういう視点で伺ってみると、車乗って怪我をしたという事故だったら、明らかにわかりやすいのですけど、例えば転倒、こけて怪我したのは、加齢によるものなのかどうかってところではいかがでしょうか?

大塚英明教授
意地悪言うようですけど、糖尿病の症状がかなり重い女性が車にはねられて大腿骨を骨折しました。車の事故で大腿骨骨折だったら、それは事故だと思いますよね?入院して足上げてたら、糖尿病で血流が悪いから死んでしまった事例があります。原因はどちらなのか?となりますね。

その亡くなった方は60代ぐらいで、 普通、大腿骨骨折で入院して死ぬことというのはあまりあることではありません。ところが、糖尿病で血流が悪いことが要因としてあるとわからなくなりますね。

傷害保険の保険事故の特徴の「病気なのか?事故なのか?」という境界線の分からない事例をあげようと思ったら、たくさんあります。

むしろ、健康な人が車を運転してて、追突されて骨折したというはっきり断定できる事例のほうが珍しい。

コのほけん!編集部
逆にそっちの方が珍しいということですか。

持病を持つ方のほうが多いからですね。

この点は普通に傷害保険という保険事故が定義してある通りにはなかなかいかないのです。 急激、偶然外来の事故ということだけで、人間の傷害事故って決定できる、 病気を排除できると思ったんだろうと思います。

病気ってまず急激じゃないから、じわじわくるものであり、怪我は外来だから病気は内在だと考えたのだろうけれど、境界がわかりません。

コのほけん!編集部
想定外ということですね。

大塚英明教授
そうです。
さっきの例であれば、外的な自動車事故のショックで大腿骨折ったというのと、内的な糖尿病が関与してたら、要因が混在した事故で死んだのは傷害保険で補償すべきものなのか?

人が死んだ理由は、糖尿病のせいもあるし、事故のせいもあるという話になるため、じゃあどうするのかと今すごい困っているのですよ。

コのほけん!編集部
それは一般論としては、どちらで認められているのですか?

大塚英明教授
裁判所では半々です(苦笑)。

裁判所は、糖尿病と大腿骨だから、どのぐらいの割合で影響したかを考えて、死亡保険金の6割としました。

予想されていたことなのか?という点で疑問ですが、裁判所としてはそういう判断をしないとやっぱり、両方とも満足させることはできませんから。
アメリカの傷害保険は、すっごくはっきりしていて、事故の原因として少しでも疾病の影響が出たら一切払いません。そのほうがわかりやすいと思います。

事故の結果に、病気が影響していたら支払わないアメリカの傷害保険の約款に書いてあります。

日本の傷害保険では、「急激・外来・偶然の事故」だと言ってしまったため、今ももめるんでしょうね。

消費者には優しくないかもしれませんが、少しでも病気が関与したら、傷害じゃありませんという方が、理屈としてはわかりやすいですよね。

そこもやっぱり、アメリカと日本の傷害保険が違うところですね。

コのほけん!編集部
先生のお考えとしては、そういう少しでも内在的な要因が絡むようなものに関しては、排除 されるべきとお考えですか?

大塚英明教授
絶対に払うか、払わないかどっちかに定めてほしいと思います。

だから、大盤振る舞いであれば、例えば末期がんの人でも、少しでも怪我をしたのが影響していたら保険金を払うという形ですね。

そうすると、揉めないですむし、保険会社立派だなってみんなに賞賛されるだけなんだけど、日本はどっちでもない。

ちょっとでも影響したら払わないか、ちょっとでも影響しても払うか、どっちもやってないので揉めるわけです。

コのほけん!編集部
そのような訴訟はどのくらい件数がありますか?

大塚英明教授
結構ある印象です。年に2、3件でしょうか。ほとんど最高裁まで持ち込まれます。
傷害保険で人だと、 内在か外来かという境界は難しいですね。

立法がそれを完全に無視してるといったら、ちょっと言いすぎですが、 保険法には、保険事故の内容を書くという条文がないですから、そこには目をつけられなかったのが本当のところだと思います。

2007年の保険法改正のときに、無理矢理、傷害保険を傷害疾病保険損害填補特約は損害保険、傷害保険の定額給付は生命保険の弟と分類することをやらなくてもよかった。

それこそが私が言った範疇としてあるという考え方はもう根強いです。立法が解決できなかったと考えています。

自動車保険の中に人身傷害条項があります。人身傷害条項が初めて全部徹底して損害填補型にしたものです。
過去の傷害保険は、例えば、自動車保険の中でも、自損事故条項ってありますよね。

それまで自損は全額支払いだったのですが、それを変えて実損填補にしたけれども、それでも死亡は絶対定額支払いでした。未だに傷害保険の主流は同じです。

例えば、海外旅行傷害保険は、外国で、実損で治療費を払います。死亡は定額です。あの部分は、傷害前も実装填補ですよね。だから、海外旅行傷害保険の死亡保険金の部分だけは契約時に5000万円と決めて契約するわけです。死亡部分は生命保険です。

だから日本で売られている一般的な海外傷害旅行保険は、損害填補型の上に死んだ時だけ定額の死亡保険金が出ます。

これは損害保険と生命保険がまざっていますね

もし現在の立法の表現を使うのであれば、海外旅行傷害保険は傷害疾病損害填補契約と傷害疾病定額給付契約の混合保険というわけです。そんなめんどくさいことを言うのかと思って。

支払いの方法よりも事故の方が重要だと思うのはそれが理由ですね。

自動車保険の人身傷害は死亡の部分を逸失利益にしたからようやく実損填補になったわけです。

完全に死んだ場合も含めて、傷害疾病損害填補契約にしたのが、今の自動車保険の人身傷害にしたのは初めてですね。

2000年代に東京海上が始めたのですが、今までの常識はたとえ怪我した時は実装填補であっても、死んだら定額給付との組み合わせが傷害保険の普通のやり方でした。
今やさきほどの人身傷害のように、完全実装填補を実現した傷害保険も出ました。

どっちがいいでしょうね?

死んだ時って、これまでの傷害保険って、やっぱり死んじゃったら、 実存填補という考え方はなかったんでしょうね。人って。

死んだら生命保険ということでイメージが繋がりやすかったんだと思います。

ただ理論で言うと、実装填補と死亡の時の定額給付って、完全にこう違うものなんだけど、
きっと考え方でシームレスで、怪我してから亡くなったら、それは生命保険だと思ったのでしょうね。

その辺は傷害保険をやると、実は損害填補型と定額給付型のどこが違ったのとか、どっちに考えやすいのという点で悩むところですね。

傷害保険はものすごく難しい。変な言い方をすると保険で1番簡単なのは、生命保険です。被保険者が亡くなったら保険金を支払います。原因の如何を問わずなので、あれは一番わかりやすい。

コのほけん!編集部
シンプルなのですね。

大塚英明教授
そして、日本のように生命保険が普及すればするほど保険料を安くできます。

日本は生命保険の成功国です。ものすごく普及したから、ほんとは生命保険って死んだらあれだけの金額出るわけですよ。保険料がすごく高くなるはずなのに、これでやってられる国は海外にはないのですよ。

アメリカの生命保険はすごい高いから、それから、保険先進国イギリスだけど、あそこの生命保険はなかなか入らない。

それで、人口比からしてもイギリスって少ない。だから保険料が高い。
生命保険をどうですかって売るというのは、下手すると日本ぐらいではないでしょうか?

私もヨーロッパの事情は知りませんが、生命保険の普及度は日本はものすごく高い、それによって保険料が安くできたというのもありますよ。

ポイント

  • 傷害保険は支払い方法で分類され、実損填補型は損害保険、定額給付型は生命保険の弟
  • 大塚英明教授は支払い方法ではなく、保険事故の内容が問題だと考えている
  • 何が傷害保険としての事故かという定義が難しく、アメリカでは事故の要因として少しでも病気の影響がある場合には保険金を支払わない
  • 日本における傷害保険の保険事故は、病気が原因で事故が発生し怪我したのか、事故が原因による怪我なのかの境界が曖昧
  • 要因として病気が絡んでも事故として保険金を払うのか、払わないのかはっきりさせたほうがいいというのが大塚英明教授の考え方

できることなら海外の保険には入らないほうがいい

コのほけん!編集部

海外での滞在期間によっては現地での傷害保険の加入が必要になるケースがあります。海外で傷害保険に加入する時、どんな点に注意すべきでしょうか?

今、海外の旅行保険の話もありましたが、海外の滞在期間によっては、現地の傷害保険の加入が必要になるケースがあるかと思うのですが、 海外で傷害保険に加入するときに、注意した方がいいことはございますか。

大塚英明教授
海外の保険は保険料が高いので入らないほうがいいです。

アメリカに行って、現状傷害保険入って、滞在が長くなると、自動車保険は入らなきゃいけないから、それには入ることになると思いますが、 他に特に傷害保険に入ろうというなら保険料は高いですよ。
なるべくだったら、日本の保険に入って、なるべく長期の 旅行傷害の期間を伸ばして伸ばしたほうがいい。やっぱり現地で入ろうとすると高いです。

冒頭に申しましたけど、アメリカでは、保険に入れる人は非常にお金持ちということなのです。だから、日本人だったら、お金があるからいいじゃないかって話になればいいんだけど。

現地の傷害保険であれば、自動車保険に入って特約をつけることがいいでしょう。あとは、 そのお金があったら医療保険にしましょう。医療保険こそ、滞在中に絶対に必要になると思います。医療保険だと国籍問わず入れますので、特約付き医療保険もあるから、それに入るのが1番だと思います。傷害保険よりも優先順位が高いのは、医療保険です。

コのほけん!編集部
ちなみに、医療保険加入時の注意点はありますか?

大塚英明教授
医療保険の注意点はあまりありません
ブルーシールズ、ブルプロスというのが、医療保険の専門でやってるけど、そんなに選択肢がありません。アメリカの保険は、州、アメリカは1つの州が1つの国ですから、州に商務長官と、金融長官がいるわけで、その認可でやるので、その州内の保険会社がすごく多い。
州内の保険会社って、絶対にそんなに契約者数の人数は取れないはずだから。
だから、そのせいでどうしても保険料が高くなります。

民間医療保険だけはその必要性が高くなったのか、全土で展開しています。ある会社が全土という形だから、医療保険の保険料はそこそこに安くなっています。

それでも、貧困層には手が届きません。
日本人でお金に余裕があるなら、現地でアメリカ全土規模の医療保険に入るのが一番です。病院に行って全額お金を払うという感覚は日本人にはないですから。

ぼくはニューヨークで3年間ずっと日本の保険、だから、あれは海外旅行傷害保険だったと思いますが、大学で入って医療保険も入ってるから。東海さんだったのですけど、ニューヨークには東海さんの病院がありました。日本人専用の病院です。

それであとで聞いたら、ヨーロッパにも病院があるそうで、日本人独自の、要するに、医療は安全という考えだったのですよね。

だから、楽でした。私はもう3年ぐらいだと、これは、皆さんの方がお詳しいと思うのですけど、3年ぐらいだと、海外旅行傷害保険で医療負担できるのではないでしょうか。

普通に大学が提供する保険商品で、毎年更新した記憶がないので、可能な限り、日本で医療もついた旅行傷害保険に長期間に渡って申し込んだほうがいいと思います。

回答にはならないかもしれませんが、保険は外国で入るべきではないです。

コのほけん!編集部
入るべきではない。

大塚英明教授
保険料が高いというのは、何かと不都合が生じます。

 

ポイント

  • 海外の傷害保険は保険料が高いため、できるだけ入らないほうがいい
  • もし海外で保険に入るのであれば、医療保険を優先したほうがいい
  • 海外旅行傷害保険を最大限延長して活用する

海外にいる間、日本の保険は続けられるなら続けた方がいい

コのほけん!編集部

移住や海外駐在などで海外に長期滞在し現地での保険に加入した場合、日本での公的保険や民間保険での加入の継続や脱退・解約時の注意点を教えてください。

大塚英明教授
先程と被るのですけど、帰国するなら、とにかく日本の保険は是が非でも死守したほうがいいです。公的保険は中断の考え方があるから、行ってる間はききません、帰ってくると大丈夫です。という点でかなり自由がきくと思います。

問題は民間保険で、特に日本の生命保険に入っている時は、海外に行くと確か保険金が出ない場合もありますね。日本の生命保険は契約を中断すると、次に入る時、復活になるので、告知などを契約時と同様にやり直す必要があります。

海外に行っている間に、万が一、体が悪くなってしまうことを考えたら、生命保険がもし続けられるものだったら、アメリカで万が一の場合にたとえ保険金が出なかったとしても、続けているほうがお得ではないでしょうか?

養老で積み立て型がある保険はその部分に中断がないから、アメリカで、例えば死んでも出るという話もあると思うんだけど。養老保険は積み立て型はとにかく保険料を払ってさえいればいいと思います。
死亡保険だけはもったいなくなってやめると帰ってきてから復活の手続きが必要になります。

損害保険はもし持ち家が向こうだったら日本ではやめた方がいいですね。
損害保険って原則1年だからそこまで影響はありませんが、問題は長期ですよね。
傷害保険はできれば海外の傷害保険は避けた方がいい。
その辺はかなり組み合わせが個々人によって違うだろうと思います。
これは情報を集めてみるといいかもしれない。

生命保険は解約しない。保険料がもったいなくても、保険料を支払い続ける。
養老保険は無駄がないので続けたほうがいいと思います。

コのほけん!編集部
ありがとうございました。知らないことが多くて、非常に勉強になりました。アメリカの事例は本当に衝撃的です。

大塚英明教授
文化が違うとわからないですね。だから、 保険会社も文化が違うと出す事件が全然違ったりするから、日本の保険会社って総じて平和なのですよね。

コのほけん!編集部
世界から見たら平和なのかもしれないですね。

大塚英明教授
また、事例を出すと、蜂に刺されたら事故か、マムシに噛まれたら事故か、蚊にさされて病気になったら事故なのか。

アメリカですっごい揉めていて、蜂に刺されるとアナフィラキシーになる、だから、事故として一応分類しています。蚊に刺されて、例えばその蚊がウィルスなどをもっていたら、事故だといいますが、はたして本当にそうなのでしょうか?

傷害保険は事故が問題です。病気ってなんだ?という視点でみると、ウイルスが入ると病気じゃないですか。でも、事故扱いになります。ウィルスが体内に入ってくるのですよね。

コのほけん!編集部
マダニに噛まれて亡くなる方もいらっしゃいますよね。最近、ちょっとここ数年でよくニュースで見かけます。

大塚英明教授
そう、虫がウィルス等を人間の体内に入れます。外来ですよね?それを日本ではまだ探すんだけど、アメリカではもうばんばんやっている。マムシや犬はもう完全に事故、ブヨや蜂は事故。今揉めているのは蚊。

コのほけん!編集部
蚊も病気を媒介しますよね。マラリアなどありますよね。

大塚英明教授
そういう蚊がいない日本は平和な国ということです。

 

ポイント

  • 海外の傷害保険は保険料が高いため、できるだけ入らないほうがいい
  • もし海外で保険に入るのであれば、医療保険を優先したほうがいい
  • 海外旅行傷害保険を最大限延長して活用する

まとめ(編集部後記)

早稲田大学の大塚英明教授に、「日本とアメリカの傷害保険の違い」について、時折、編集部員たちが絶句する場面がありつつ、非常に興味深いお話を伺うことができました。

ポイント

  • 海外の傷害保険は保険料が高いため、できるだけ入らないほうがいい
  • もし海外で保険に入るのであれば、医療保険を優先したほうがいい
  • 海外旅行傷害保険を最大限延長して活用する

執筆者

関連記事

古代ローマにも遡る相互扶助と保険の起源から現代の保険会社の企業形態まで

2023/04/25

古代ローマにも遡る相互扶助と保険の起源から現代の保険会社の企業形態まで

生命保険に関する論文も執筆され、経営史をご専門とされている北海道武蔵女子短期大学の木下なつき准教授に「生命保険会社の歴史と企業形態」というテーマでお話を伺いました。

保険会社倒産時の生命保険をめぐる法的規律とその課題について

2023/04/03

保険会社倒産時の生命保険をめぐる法的規律とその課題について

帝京大学法学部講師の長島光一先生に「保険会社倒産時の生命保険をめぐる法的規律とその課題」についてお話しをうかがいました。

就業不能保険の在り方について

2023/04/03

就業不能保険の在り方について

東京都立大学の顧教授に「就業不能保険」についてお話を伺いました。アメリカでは部分的就業不能保険や復帰支援特約が広く活用されており、日本ではまだ一般的ではありません。今後は、働けない間だけの保障だけでなく、職場復帰を支援するような形で保障を拡充する可能性もあるのかもしれません。

少子高齢化による日本の公的医療保険制度や民間の保険への影響について

2023/04/03

少子高齢化による日本の公的医療保険制度や民間の保険への影響について

日本大学商学部の河本教授に少子高齢化による公的医療保険制度や民間保険への影響についてお話しをうかがいました。

不慮の事故か故意による事故(自殺)の判断をどうやってするのか?

2023/03/29

不慮の事故か故意による事故(自殺)の判断をどうやってするのか?

帝塚山大学で民事訴訟を専門に研究されている笹邉将甫准教授に「不慮の事故か故意による事故(自殺)の判断のどうやってするのか?」をテーマにお話をうかがってきました。

コロナ禍におけるリモート化・デジタル化と保険募集

2023/03/24

コロナ禍におけるリモート化・デジタル化と保険募集

京都大学の山下徹哉教授に、「コロナ禍におけるリモート化・デジタル化と保険募集」についてお話しをうかがいました。

 中小企業のリスクマネジメントについて

2023/03/23

中小企業のリスクマネジメントについて

関西学院大学の前田祐治教授に「中小企業のリスクマネジメント」についてお話しをうかがってきました。

InsurTechによる契約者の行動変化について

2023/03/20

InsurTechによる契約者の行動変化について

京都産業大学の諏澤吉彦教授に「InsurTechによる契約者の行動変化」についてお話しをうかがいました。

海外の保険会社と日本の保険会社の違いー資産配分と法律について

2023/03/20

海外の保険会社と日本の保険会社の違いー資産配分と法律について

東洋学園大学現代経営学部 冨田洋介准教授に「海外の保険会社と日本の保険会社の違いー資産配分と法律について」お話をうかがいました。

Unlearn(アンラーン)人生100年時代の新しい「学び」|対談編(第二回)

2023/02/09

Unlearn(アンラーン)人生100年時代の新しい「学び」|対談編(第二回)

今回は、東京大学柳川範之教授の著書「『Unlearn(アンラーン)人生100年時代の新しい「学び」』の内容を中心に、弊社取締役の宮脇信介の対談をお届けします。