老後は健康に過ごしたいけど介護費用はいくらかかるの?介護費用の目安と公的介護保険・民間の介護保険について解説
平均寿命が伸びていますが、健康に過ごせる期間は意外と短いものです。本記事では公的介護保険で老後の介護がまかなえるのか実際いくら介護費用がかかるのかわかるデータを紐解きながら、公的介護保険の仕組みや民間の介護保険の必要性をわかりやすくみていきます。
本記事のポイント
- 日本人の平均寿命は長いものの、健康寿命との差がある。介護費用の総額はおおむね約590万円となる。
- 公的介護保険では一部の介護費用が自己負担となるため、費用が完全にカバーされないことがある。
- 介護費用を賄うために民間の介護保険も検討するとよい。ただしタイプや保険金の受取方法などによって保障に差があるため、貯蓄でも備えておくとよい。
平均寿命と健康寿命の差は、不健康寿命?
老後の資金も心配なのですが、介護が必要になった時のことも大きな心配事です。日本は世界でも長寿国です。厚生労働省の調査によると男性の平均寿命は81.09歳、女性は87.14歳です。しかし一方で、令和元年における健康寿命をみると男性72.68歳、女性75.38歳です。平均寿命と健康寿命の差が、男性では約8.4年、女性では約11.8年あります。
健康寿命というのは、病気にならずにかつ介護されずに日常生活を送ることができる期間を指します。平均寿命と健康寿命の差というのは、晩年になんらかの制約を受けながら暮らしていく年数にもなります。いかに自分の健康寿命を延ばせるかと言うのが老後にとって大事なことになってきます。できれば、晩年は要介護状態にはならないで、元気に生きたいものです。
※参考:厚生労働省「令和5年簡易生命表」
公的介護保険のしくみ
要介護状態に認定されると、公的介護保険から支援を受けることができます。介護にかかる費用の9割が介護保険から支給され、自己負担は原則1割です(所得の高い人は2割、または3割)。しかし、実際のところ利用限度額を超えて、自己負担額の1割だけでは全部を賄いきれないこともあるのが現状です。
では、どのくらいの費用が介護にかかるのかを見てみましょう。2021年の生命保険文化センターの調査によると、一時的な費用として平均で74万円がかかります。そして継続的な費用として月額平均8.3万円かかると言われています(公的介護サービスの自己負担費用を含む)。なお平均的な介護期間としては、61.1ヵ月です。
では、介護になった時の総額はどのくらいの金額を用意しておけばよいのか?ということになりますと、約590万円ぐらいは準備しておきたいですね。
約590万円というのは次のような計算になります。
- 継続的な費用月額8.3万円 × 介護期間平均61.1ヵ月=約507万円
- 約507万円+初期費用80万円=約587万円
なお認知症を発症した場合は、上の金額に対しさらに費用が加算されます。
関連記事:公的介護保険制度とは?認知症など要介護状態になった時に公的介護保険で利用できる介護サービスを紹介
民間の介護保険のしくみ
いざ、介護が必要になった場合には、かなりお金がかかります。公的介護である程度はカバーできるのですが、それでも介護をする家族への負担は大きくなります。ですから民間の介護保険も検討したいものです。民間の介護保険にはさまざまなタイプがあり、さらにその組み合わせでできています。民間の介護保険のしくみを説明していきましょう。
貯蓄タイプと掛け捨てタイプ
まず、大きく2つに分けて、「貯蓄タイプ」と「掛け捨てタイプ」があります。
貯蓄タイプの多くは、死亡保険の機能があります。死亡すると保険金が出るので必ず受け取ることができます。その分、保険料も高いのが特徴です。
掛け捨てタイプは、死亡保障がないものが多いです。その分保険料は安めに設定されています。
保険金の受け取り方
つぎに保険金の受け取りタイプで分けてみましょう。
「一時金タイプ」と「年金タイプ」「一時金と年金の併用タイプ」があります。
「一時金タイプ」は、要介護状態になると一時金で受け取ることができます。要介護になったときのリフォームなどの初期費用に役に立ちます。
「年金タイプ」は、要介護状態になったときに毎月年金のように受け取ることができます。毎月定期的に受け取れるので安心感があります。
なお「一時金・年金の併用タイプ」もあり、要介護状態になったとき、一時金と年金の両方を受け取ることができます。
介護保険の認定条件
介護保険の認定条件によってもタイプ分けができます。
「介護認定が緩いタイプ」公的介護の認定で要介護1・2で支払われるタイプ。認定が緩いので保険金を受け取りやすいようになっています。その分、保険料は高めになります。
「要介護認定が厳しいタイプ」公的介護の認定で要介護3・4以上にならないと支払われないタイプ。認定が厳しいので、保険金を受け取れるハードルは高いです。その分、保険料は低めになっていることが多いです。
介護認定の条件は、公的介護の認定を使っている場合、保険会社の独自の条件を設定している場合、そして公的介護と独自の条件の併用している場合があります。このように保険会社によってまちまちですので、各保険会社に確認をしてください。
関連記事:介護・認知症保険の必要性や加入にあたり知っておきたいメリット・デメリットをファイナンシャルプランナーが解説!
自分にあう介護保険を見つけるには
民間介護保険、認知症保険にはさまざまなタイプがあり、それを組み合わせて作られています。そのため、保険会社によって条件・保障内容が違ってきます。どれがいいというのは一概にいえません。上記のタイプを比べながら自分に必要な保障を見つけて、一番近い介護保険を選ぶようにするのがベストです。
ただ、ずっと健康で要介護状態にならなければ、介護保険は必要がありません。要介護になるかどうかと言うのはわかりませんから、介護費用を貯蓄で備えるというのが一番いい方法ではあります。要介護になれば、その貯蓄を使って介護費用にすればいいわけですし、幸いにして要介護状態にならなければ、老後資金にまわすということもできます。
関連記事:民間の介護保険は必要?それとも不要?加入のタイミングや特徴を解説
まとめ
介護にかかる費用というのは、総額で500万円ぐらい必要になってきます。公的介護だけでは、賄いきれないこともあります。民間の介護保険はさまざまなタイプがあるので、自分がもっとも重視したい保障を中心に考えて選ぶのが正解。しかし、介護費用は貯蓄で用意しておくのがもっとも効率的です。