【2024年】年末調整で生命保険料控除を申告し忘れたらどうなる?その対処法を紹介
生命保険料控除とは、申告することで所得税や住民税の負担が軽減される制度のことです。控除を受けるには年末調整などで生命保険料控除証明書を提出し、申告する必要がありますが、年末を忙しく過ごしているうちに、「年末調整で生命保険料控除の提出を忘れてしまった…」や「確定申告(還付申告)の期限に間に合わなかった…」と後悔している方はいませんか?
生命保険料を支払っているのであれば、生命保険料控除を申告しなければ”損”をしてしまいます。本記事では、年末調整で生命保険料控除を申告し忘れた際の対処法を紹介していきます。
本記事のポイント
- 生命保険料控除の申告期限の1つ目は会社が定めた年末調整の期限。
- 2つ目の期限は確定申告の期限。2024(令和6)年度の確定申告の期限は3月17日。
- 最後の期限は所得税の更正の請求の期限。法定申告期限(確定申告の期限)から5年以内であれば更正の請求にて生命保険料控除の申告を行うことが可能。
生命保険料控除の申告期限はいつまで?年末調整を忘れたときの対処法
はじめに、令和6(2024)年度における生命保険料控除の申告の期限を早く到来する順に並べると以下の通りになります。
- 会社が定めた年末調整の必要書類の提出期限
- 年末調整の期限:2025年1月31日
- 令和6年度の確定申告の期限:2025年3月17日
- 更生の請求の期限:2025年3月17日から5年以内
以下でそれぞれの詳細を解説します。
生命保険料控除の申告期限①
会社員で年末調整が必要な方の場合、1つ目の期限は会社が定めた年末調整の提出期限になります。しかし、そもそも年末調整の期限は「給与所得の源泉徴収票」を会社から従業員に交付することとなる翌年1月末日とされています。よって年末調整の必要書類も1月31日までであれば提出可能ということになります。
しかし会社もこの年末調整の期限ギリギリに必要書類の提出期限を設定するとは考えにくく、仮に提出期限ギリギリもしくは期限が過ぎてから社員が生命保険控除証明書を提出した場合には、会社側でも再計算や書類の変更を余儀なくされます。
よって、もし会社が定めた期限までに生命保険料控除証明書を提出できなかった場合には、まず会社の年末調整の担当者などに相談してみるのがよいでしょう。
生命保険料控除の申告期限②
2つ目の生命保険料控除の申告期限は、確定申告の期限である3月15日です。なお、確定申告の期間は毎年原則2月16日~3月15日ですが、最終日の3月15日がもし土曜日や日曜日にあたる場合は、その翌月曜日が期限となります。よって令和6(2024)年度の確定申告の提出期限は、2025年3月17日(月)となります。
自営業の方は、この3月17日が1つ目の生命保険料控除の申告期限になります。会社員の方も、この3月17日までに生命保険料控除を申告すれば問題ありません。
生命保険料控除の申告期限③
しかしこの確定申告の期限も忘れていた場合、生命保険料控除の最終申告期限は確定申告の期限から5年後となります。
実は確定申告は、誤りがあったら自己申告で修正することができます。よって生命保険料控除を申告し忘れた場合は「更生の請求」により確定申告を再度行うことができます。なお更正の請求の期間は確定申告の法定申告期限から5年以内と定められています。よって、令和6年度であれば2025年3月17日から5年後が期限ということになります。
以上の内容をまとめると、年末調整で生命保険料控除を申告し忘れても5年間は申告が可能ということにはなりますが、年数が経つと生命保険料控除証明書を紛失する可能性が高くなりますし、何枚も書類を記載しなければならないので、申告し忘れたことに気づいた時点で手続きをしましょう。
そもそも年末調整とは?
年末調整とは、会社員や公務員が1年間で支払った所得税の過不足を調整するための制度のことです。1年間で実際に支払われた所得と源泉徴収税額を照らし合わせて、過不足が生じていないかを確認します。
また、アルバイトやパートの場合でも、以下のような条件に当てはまる場合は年末調整を行う必要があります。詳細は国税庁のホームページでご確認ください。
- 1年を通して働いているもしくは年の途中から年末まで働いている
- アルバイトの掛け持ちをしていない
- 退職した年に支払われた給与の総額が103万円以下 など
また、年末調整の対象となるのはその年の12月末まで会社などに在籍している会社員や公務員ですが、たとえばその中でも以下に当てはまる人は年末調整ではなく、確定申告を行う必要がありますので覚えておきましょう。
- その年の給与収入が2000万円以上ある
- 住宅ローン控除を初めて利用する など
ココに注意
なお年末調整の対象となる人は国税庁のホームページで確認することができます。自分が当てはまるのか不安なら一度確認するとよいでしょう。
年末調整と確定申告の違いとは
会社員や公務員・パート・アルバイトが、1年間で支払った所得税の過不足を調整するために行う年末調整に対して、確定申告は所得額に応じた税金を計算して支払うために必要な手続きです。
確定申告が必要な人は、一般的に自営業者(店舗経営やフリーランスなど)や給与以外の所得がある人です。しかし先ほどお伝えした通り、以下のような人も確定申告の対象となります。
- その年に2,000万円以上の給与所得がある
- 住宅ローン控除を初めて利用する
- 退職所得があった
- 2か所以上から給与を受け取っている
- 副業の収入が20万円を超えた
- 株の売買で配当所得がある など
※参考:国税庁「所得税の確定申告」
ただし、上記にあてはまっても条件などによっては確定申告の対象外となる可能性もあるため、詳細は国税庁のホームページなどでご確認ください。
なお、年末調整と確定申告の違いは「対象かどうか」だけでなく「いつ手続きをするか」でも異なります。年末調整は、所属する会社の指定する期間内(年末まで)に手続きをするのに対して、確定申告は原則毎年3月15日までという数ヶ月遅れたタイミングで行われます。
関連記事:確定申告での生命保険料控除の書き方とは?見方や書類の添付方法などを解説
年末調整で申告する所得控除の種類
生命保険料控除
生命保険料控除は2012(平成24)年1月1日以後に締結した新契約と2011(平成23)年12月31日以前に締結した旧契約で控除額や取扱いが異なります。
新契約(2012(平成24)年1月1日以後に締結した契約)の場合
新契約の生命保険料控除には新生命保険料控除、介護医療保険料控除そして新個人年金保険料控除の3種類があり、新生命保険料控除の対象となる保険契約には生命保険(死亡保険)や養老保険、収入保障保険などが含まれます。
年間払込保険料が8万円を超えた場合、所得税なら4万円が、住民税なら2.8万円が控除額の上限となります。この3種類すべての控除を受けると所得税は最大で12万円が、住民税は最大で7万円が計算時に控除されることになります。
旧契約(2011(平成23)年12月31日以前に締結した契約)の場合
一方で2011(平成23)年12月31日以前に締結した旧契約の場合、控除は旧生命保険料控除と旧個人年金保険料控除の2種類となります。控除額の上限は所得税が最大で10万円、住民税が最大で7万円となります。
生命保険料控除について、もう少しだけ詳しく説明します。
生命保険料控除制度の対象となる契約は、先ほど述べたように契約時期により「新契約」と「旧契約」に分けられます。旧契約は2011(平成23)年12月31日以前に契約した保険契約が対象となりますが、旧契約でも、2012(平成24)年以降に契約を更新したり転換や特約の中途付加などを行った場合は、以降の保険料が新契約の対象となるので注意をしましょう。
関連記事:生命保険料控除でいくら戻ってくる?還付金額の計算方法【会社員・個人事業主・パート職業別】
地震保険料控除
地震保険料控除は2007年より新設されたもので、地震保険を対象としています。地震保険は基本的に単独で契約することができず、火災保険とセットで加入する保険です。
ココに注意
地震保険料控除の対象となるのは地震保険料だけで、火災保険料は対象になりません。
年間で払い込んだ地震保険料が5万円以下の場合は、保険料の全額が控除されます。なお5万円を超えた場合は一律5万円が控除限度額となります。
生命保険料控除と比較すると、地震保険料控除は馴染みが薄いと感じる人も多くいるでしょう。損害保険会社から送られてくる「地震保険料控除証明書」は、無くさないように大切に保管しておいて下さいね。なお損保会社が共同で運営している保険料控除証明書 発行サービスでは、生命保険と地震保険の控除証明書の再発行や電子データでのダウンロードが可能です。
関連記事:火災保険・地震保険や家財保険は年末調整・確定申告で保険料控除の対象?火災保険の保険料控除制度について解説
社会保険料控除
配偶者や子ども、その他親族の社会保険料を支払っている人は、社会保険料控除を利用することで、給与から天引きされた保険料の調整ができます。控除の対象となる社会保険料は以下の通りです。
- 健康保険料(国民健康保険料)
- 国民年金保険料
- 厚生年金保険料
- 公務員共済の掛け金 など
通常、会社員や公務員などの給与所得者は、年金保険料や健康保険料などの社会保険料が毎月の給与や賞与(ボーナス)から天引きされています。1年間で天引きされたこれらの社会保険料は自動的に計算されるため、基本的には自分自身で控除の手続きをする必要はありません。
しかし配偶者や子どもの社会保険料を支払っていたり、以前未納だった国民年金保険料を支払っていたりする場合には、勤務先でこれらのことを把握できないため、自分自身で年末調整により手続きをする必要があります。
この場合、11月頃に日本年金機構から送られてくる「社会保険料控除証明書」が手続きに必要となりますので、こちらも無くさないように大切に保管しておきましょう。
配偶者控除
配偶者控除とは、納税者本人に控除の対象となる配偶者がいる場合に、一定の控除が受けられるというものです。なお控除対象となる配偶者の年齢が、その年の12月31日時点で70歳以上であれば老人控除対象配偶者に該当します。
控除の対象となるには、その年の12月31日時点で次の要件すべてに当てはまる必要があります。
- 民法上の配偶者であること
- 納税者本人と生計を一にしていること
- 年間の合計所得が48万円以下であること
- 青色申告者の事業専従者としてその年で一度も給与の支払いを受けていない、または白色申告者の事業専従者でないこと
配偶者控除の控除額は、下記のとおりです。
控除を受ける納税者本人の合計所得額 | 控除額 | |
---|---|---|
一般の控除対象配偶者 | 老人控除対象配偶者 | |
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超 950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超 1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
関連記事:配偶者特別控除をわかりやすく解説!いくら控除されて配偶者控除とは何が違うの?
確定申告の期限前に生命保険料控除を申告し忘れたことに気づいた場合
会社員の方で、確定申告の期限前に生命保険料控除の申告をし忘れたことに気づいた場合は、令和6(2024)年度であれば2025年3月17日までに確定申告を行いましょう。そうすることで、年末調整を提出した場合と同様に所得税の還付金を受けられ、住民税も軽減されます。
確定申告に必要な書類は?
確定申告の必要書類は、確定申告書と生命保険料控除証明書です。それ以外にも該当する控除を受ける場合は、必要書類が異なります。
たとえば医療費控除を受ける場合は申告書に「医療費控除に関する明細書」を添付し、病院の領収書やレシート等は5年間保存することになっています。
確定申告の方法
確定申告と聞くと難しいイメージがあるかもしれませんが、会社員の場合は会社から配布される源泉徴収票を見ながら記載すれば、簡単に手続きすることができます。
確定申告を行うには、以下2つの方法があります。
- 税務署で用意している確定申告の用紙に必要事項を記入して提出する
- 国税局のWebサイトにある確定申告書等作成コーナーで確定申告書を作成し、e-Tax経由もしくは印刷して書面で税務署に提出する
国税局のWebサイトから確定申告を行う場合、必要な数字を入力すれば、税金や控除の額が自動計算されて申告書類を作成できるようになっています。また、マイナポータル連携を行えば、生命保険・地震保険、そして社会保険などの控除証明書のデータをマイナポータル経由で一括取得し、確定申告書に自動記入することが可能です。
繰り返しになりますが、確定申告の期限は2024(令和6)年度においては3月17日までです。年末調整で申告し忘れてしまった方は、まずは確定申告の期限に間に合わせるようにしましょう。e-Taxならインターネット上で確定申告を完結することができます。
確定申告の期限も過ぎたらどうする?確定申告で生命保険料控除を申告し忘れた場合
もし年末調整での生命保険料控除を忘れ、確定申告の期限も過ぎてしまった会社員の方や、確定申告の際に生命保険料控除を記入し忘れた自営業者の方は、5年以内に所得税の更正の請求を行いましょう。なお更生の請求の期限は確定申告の法定申告期限から5年と規定されていますので、その年の確定申告の期限から5年後が最終期限となります。
以下の国税庁ホームページのリンクに手続きの概要や必要書類である更生の請求書などの作成方法が掲載されています。なお更生の請求書はその年の源泉徴収票などを確認しながら記載すると、スムーズに作成ができますよ。
更生の請求に必要な書類は?
また、更正の請求には生命保険料控除証明書が必要になりますので必ず用意しておきましょう。万が一、生命保険料控除証明書を紛失した場合は、保険会社のホームページから再申請が可能です。なお、保険料控除証明書 発行サービスでも生命保険と地震保険の控除証明書の再発行や電子データでのダウンロードが可能です。もし数年前の生命保険料について控除を受けたい場合は、保険会社に電話で問い合わせれば控除証明書の再発行に応じてもらえます。
ちなみに更正の請求書を税務署に提出すると、各市町村と内容が共有されると同時に過去に支払い過ぎた住民税も還付されますので、ご安心ください。
年末調整で生命保険料控除を申告し忘れた場合のデメリットとは?
最後に、年末調整で生命保険料控除を忘れた場合のデメリットをご紹介します。
① 戻ってくる税金が少なくなる
年末調整で生命保険料控除を忘れると、本来であれば戻ってきたであろう税金の還付を受け取ることができなくなってしまいます。
還付金がもらえないということは、過大な税金を支払うということですので、必ず忘れないように生命保険料控除の手続きを行いましょう。
② ふるさと納税ワンストップ特例制度が利用不可になる
年末調整を忘れたら、確定申告を行うのが一般的です。年末調整で控除を忘れたものも、確定申告を行えば適用することができます。
ただし、ふるさと納税ワンストップ特例制度を利用した方は、確定申告を行うとワンストップ特例申請が不適用となってしまうので注意をしましょう。
ふるさと納税ワンストップ特例制度とは
ふるさと納税をした自治体に申請書を提出することで、確定申告をしなくてもふるさと納税による寄附金控除が受けられる制度。
しかし、ワンストップ特例申請書によりワンストップ特例の申請を行ったのに、年末調整で生命保険料控除の申告を忘れてしまうと、すでに申請書を自治体に提出していても改めて確定申告でふるさと納税の寄附金控除を申請しなければいけません。二度手間にならないように、必ず年末調整で控除の手続きを忘れないようにしましょう。
関連記事:生命保険料控除とふるさと納税はどちらがお得?併用による影響や上限に関して解説
まとめ
生命保険料控除の手続きを忘れても、令和6(2024)年度であれば2025年3月17日までに気が付けば確定申告が可能なので問題ありません。
確定申告の期限も過ぎた場合は、確定申告期限から5年以内であれば更正の請求の手続きを行うことで、生命保険料控除を受けることができます。住民税もそれに応じて計算し直され、還付金がある場合は還付金を受け取れます。
よって生命保険料控除を申告し忘れても、確定申告の期限から5年間までならまだ間に合うので、慌てずに手続きを行いましょう。
確定申告や更正の請求を行う場合は、源泉徴収票や生命保険料控除証明書などが必要になります。源泉徴収票は会社に言えば発行してもらえますし、生命保険料控除証明書も保険会社が再発行してくれるとともに上で述べたサービスを使えば自分でも発行できますので、ぜひ早めに手続きをしましょう。
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