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医療費控除とは?仕組みや計算方法をわかりやすく解説

医療費控除とは?仕組みや計算方法をわかりやすく解説

「医療費控除」とは、年間の医療費(自己負担額)が10万円を超えた場合に、確定申告を行うことで所得税が還付され、住民税が軽減される制度です。

この記事では医療費控除の仕組みや高額療養費制度との違い、医療費控除の計算のしかた、世帯合算や確定申告をする際に注意すべき点などについて解説します。

この記事のポイント

  • 医療費控除とは、年間10万円(所得200万円未満の場合は所得の5%)を超えて支払った医療費をもとに確定申告を行うことで、納めすぎた所得税が還付され、翌年の住民税が安くなる制度である。
  • 医療費の計算には、生計を一にする家族の治療費や通院交通費、市販薬の購入代(セルフメディケーション税制)も合算できるが、民間の医療保険から受け取った給付金や高額療養費の払い戻し額は差し引く必要がある。
  • 夫婦共働きの場合、所得税率が高い(年収が高い)方が家族(※自身または自身と生計を一にする配偶者やその他の親族)の医療費をまとめて申告した方が還付金が多くなる。

医療費控除とは?

医療費控除とは?

私たちの支払う医療費の負担を軽くする制度の一つに、「医療費控除」があります。

「高額療養費制度みたいに医療費が戻ってくる制度?」と勘違いしやすいのですが、両者は別物です。

医療費控除はどんな制度?高額療養費制度との違いは?

医療費控除とは、所得税や住民税の負担を軽くするための制度です

税金が軽くなる仕組みのため、高額療養費制度のように医療費が払い戻されることはありません。

計算の結果、所得税が還付されたり翌年の住民税が軽減されたりする仕組みです。

一方で、高額療養費制度は、1カ月あたりの自己負担の上限を超えた医療費が、あとで払い戻される制度です

いずれにせよ、高額になった医療費の負担を軽減する点では似た制度といえます。

高額療養費制度は2026年8月から自己負担額引き上げに

なお、高額療養費制度は2026年8月から段階的に自己負担限度額が引き上げられることが決まっています

■第1段階(2026年8月~2027年7月)の見直し

所得区分

月額上限
(<>内は多数回該当)

年間上限

約1,160万円~
(標準報酬月額:83万円~)

270,300円+1%
<140,100円>

1,680,000円

約770~約1,160万円
(標準報酬月額:53~79万円)

179,100円+1%
<93,000円>

1,110,000円

約370~約770万円
(標準報酬月額:28~50万円)

85,800円+1%
<44,400円>

530,000円

約200万円~約370万円
(標準報酬月額:26~19万円)

61,500円
<44,400円>

530,000円

~約200万円
(標準報酬月額:~15万円)

61,500円
<44,400円>

530,000円

非課税【70歳未満】

36,900円
<24,600円>

290,000円

非課税【70歳以上】

25,700円

290,000円

一定所得以下【70歳以上】

15,700円

180,000円

※「~約200万円(標準報酬月額~15万円)」区分に該当する場合は年間上限41万円を適用し、令和9年8月以降に償還払いとなる

■第2段階(2027年8月~)の見直し

所得区分

月額上限
(<>内は多数回該当)

年間上限

約1,650万円~
(標準報酬月額:127万円~)

342,000円+1%
<140,100円>

1,680,000円

約1,410~約1,650万円
(標準報酬月額:103~121万円)

303,000円+1%
<140,100円>

約1,160~約1,410万円
(標準報酬月額:83~98万円)

270,300円+1%
<140,100円>

約1,040~約1,160万円
(標準報酬月額:71~79万円)

209,400円+1%
<93,000円>

1,110,000円

約950~約1,040万円
(標準報酬月額:62~68万円)

194,400円+1%
<93,000円>

約770~約950万円
(標準報酬月額:53~59万円)

179,100円+1%
<93,000円>

約650~約770万円
(標準報酬月額:44~50万円)

110,400円+1%
<44,400円>

530,000円

約510~約650万円
(標準報酬月額:36~41万円)

98,100円+1%
<44,400円>

約370~約510万円
(標準報酬月額:28~34万円)

85,800円+1%
<44,400円>

約260~約370万円
(標準報酬月額:20~26万円)

69,600円
<44,400円>

530,000円

約200~約260万円
(標準報酬月額:16~19万円)

65,400円
<44,400円>

~約200万円
(標準報酬月額:~15万円)

61,500円
<34,500円>

410,000円

非課税【70歳未満】

36,900円
<24,600円>

290,000円

非課税【70歳以上】

25,700円
<24,600円>

290,000円

一定所得以下【70歳以上】

15,700円

180,000円

※「~約200万円(標報:~15万円)」区分に該当する場合は年間上限41万円を適用し、令和9年8月以降に償還払いとなる

限度額が上がるということは、高額療養費として払い戻される金額が減り、患者の実質的な自己負担額が増えることを意味します

また、のちほど触れますが、自己負担額が増えることで医療費控除の計算にも影響が出る可能性があります

関連記事:高額療養費制度は医療費がいくら以上から使える?さらに医療費の負担を軽くする制度も紹介!

医療費控除の仕組みとは?

医療費控除とは、どういう仕組みになっているのでしょう。

まず、医療費控除は1年間(1月1日から12月31日まで)に、10万円以上の医療費を払った人が対象です

ただし、その年の所得などが200万円未満の場合、その5%の金額以上の医療費の支払い分が対象となります。

また、医療費控除の対象となる医療費は、家族(※ご自身またはご自身と生計を一にする配偶者やその他の親族)の分を合計することが可能です

そのため、もし1年間で、家族のうち父親が風邪で内科を受診、母親は虫歯の治療で歯医者に通院、子どもが捻挫して整形外科にかかった場合、これらの医療費をすべて足すことが可能です。

なお、医療費控除は夫婦が共稼ぎで別々の健康保険に加入していても合算が可能です

また、医療費として認められている範囲は、かなり広く設定されています。

医療費控除の対象となる医療費の例

  • 治療費
  • 入院費
  • 手術代
  • 処方された薬代 など

なお、高額療養費では対象外となる入院中の食事代や通院のための交通費も、医療費控除の対象に含まれます。

医療費控除のひとつ!セルフメディケーション税制とは?

ご自身や家族(※ご自身と生計を一にする配偶者やその他の親族)のために、年間12,000円を超える対象医薬品を購入した場合、「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」を受けることができます。

ただし、ビタミン剤のように、病気の予防や健康増進が目的で購入した薬は制度の対象から外れます

また、セルフメディケーション税制と通常の医療費控除は併用できないため、注意が必要です

関連記事:市販薬が対象になる 医療費控除の条件や申告方法、医薬品一覧まとめ

医療費控除の計算は簡単!所得税と住民税はいくら戻る?

医療費控除の計算は簡単!所得税と住民税はいくら戻る?

税金が絡んでくるとなれば、複雑な計算式をイメージするかもしれませんが、医療費控除の計算は非常に簡単です。

実際にシミュレーションしてみましょう。

まずは医療費控除の申告の対象額を計算してみよう!

医療費控除の対象となる金額は、以下の式で計算することができます。

医療費控除として申告できる額 = 1年で支払った医療費の合計額 − 保険金などで受け取った金額 − 10万円(※その年の総所得金額等が200万円未満の場合はその5%)

医療費控除額の計算式

この計算式で出た答えが医療費控除の対象となる金額ですが、上限は最高で200万円と定められています。

なお式を見ると、かかった医療費のすべてが控除の対象になっていないことがわかりますが、これは高額療養費で払い戻された分や、民間の医療保険から受け取った給付金が差し引かれるためです

なお、高額療養費制度の自己負担限度額が引き上げられると、高額療養費として払い戻される金額が減ります。

医療費控除の計算式では「保険などで受け取った金額」を差し引きますが、高額療養費の払い戻し額が減れば、この差し引く金額も小さくなります。

そのため、医療費控除の対象額がその分大きくなり、結果として所得税・住民税の還付額が増える可能性があるのです

1年間に20万円の医療費がかかった場合の申告の対象額をシミュレーション

なお、同じ医療費がかかっていても、補填された金額によっては医療費控除が受けられないケースもあります。

1年間に20万円の医療費がかかったある世帯で、シミュレーションしてみましょう。

■世帯の例

  • 世帯の家族構成:共働き夫婦
  • A(世帯主):年収500万円・医療保険に加入(入院日額1万円)
  • B(Aの配偶者):年収300万円・医療保険の加入なし
  • C(AとBの子):医療保険の加入なし

まず世帯主であるAが、入院・手術で15万円を自己負担しましたが、医療保険から9万円の給付金を受け取りました

次に、Aの配偶者であるBは通院のため年間2万円の医療費がかかりました。

最後に夫婦の子であるCは、通院のため年間3万円の医療費がかかりました。

この場合、医療費控除の対象となる計算は、以下の通りです。

(15万円−9万円+2万円+3万円)−10万円=1万円

なお、保険金などで補てんされる金額は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引くため、引ききれない金額が生じた場合であっても、他の医療費からは差し引きません

また、医療保険で受け取った給付金は、給付金を受け取る原因となった医療費から差し引くだけで、それ以外の医療費から差し引くことはしません

そのため、この世帯の場合は、1万円が医療費控除の申告の対象の額となります

なお、医療保険に加入していなかった場合は以下の計算となり、10万円が医療費控除の申告対象額となります。

(15万円+2万円+3万円)−10万円=10万円

所得税はいくら戻る?還付金の金額を計算してみよう!

所得税の還付金額は、課税所得額によって所得税率が異なるため、課税所得額によって変わります。

以下は、所得税の速算表です。

■ 所得税の速算表

課税される所得金額

税率

1,000円 から 1,949,000円まで

5%

1,950,000円 から 3,299,000円まで

10%

3,300,000円 から 6,949,000円まで

20%

6,950,000円 から 8,999,000円まで

23%

9,000,000円 から 17,999,000円まで

33%

18,000,000円 から 39,999,000円まで

40%

40,000,000円 以上

45%

平成25年から令和19年までの各年分の確定申告は、所得税と復興特別所得税(原則としてその年分の基準所得税額の2.1パーセント)を併せて申告・納付をすることになっています。

そのため、医療費控除の確定申告を行うことで、所得税及び復興特別所得税が還付される可能性があります

ここでは、復興特別所得税については考慮せず計算をしてみましょう。

さきほどの世帯について、夫婦どちらで医療費控除の確定申告をしたほうがいいのか試算してみましょう。

■ 医療費控除額が1万円だった場合

  • A(世帯主)の所得税率は20%:1万円×20%=2,000円(所得税からの還付金)
  • B(Aの配偶者)の所得税率は10%:1万円×10%=1,000円(所得税からの還付金)

■ 医療費控除額が10万円だった場合

  • A(世帯主)の所得税率は20%:10万円×20%=2万円(所得税からの還付金)
  • B(Aの配偶者)の所得税率は10%:10万円×10%=1万円(所得税からの還付金)

以上からいずれの医療費控除額でも、Aのほうが還付金が多いことがわかります

このように、医療費控除の確定申告は所得税率が高い人が行うのが今までは得でしたが、2025年分から所得税の基礎控除が引き上げられました(※合計所得金額に応じて最大95万円)。

これにより、同じ年収でも「課税される所得金額」が以前より低くなるケースがあります

計算例の税率は、基礎控除引き上げ後の課税所得に基づいてご確認ください。

住民税はいくら軽減される?

住民税は前年度年収に対して課税されるものであるため、所得税のように還付金という形ではなく、翌年度の住民税が軽減されます

いくら軽減されるのかについては計算ができ、それぞれ下記の通りとなります。

■ 医療費控除額が1万円だった場合

1万円×10%=1,000円

■ 医療費控除額が10万円だった場合

10万円×10%=1万円

ここまででまとめると、世帯主であるAが医療費控除の確定申告を行った場合、以下の金額が最終的に軽減されます(※住民税は翌年度の住民税から軽減の対象)。

■ 医療費控除額が1万円だった場合

所得税:2,000円+住民税1,000円=合計3,000円

■ 医療費控除額が10万円だった場合

所得税:2万円+住民税1万円=合計3万円

関連記事:確定申告の医療費控除とは?いくらからもらえるのかシミュレーションや申請方法を解説

医療費控除に関するよくある質問

ここでは、医療費控除に関して多くの方が抱く疑問について、Q&A形式でお答えします。

Q.医療費控除を受けるには確定申告が必要ですか?確定申告を忘れたらどうすればいいですか?

A.医療費控除を受けるためには、確定申告が必要です。

会社員などが対象となる年末調整では、医療費控除の申告を行うことはできません。

しかし、もし確定申告を忘れた場合でも、「還付申告」として、翌年1月1日から5年間は申告が可能です。

なお、すでに確定申告を行った年に医療費控除を適用し忘れた場合は、「更正の請求」により申告期限から5年以内に修正できます。

関連記事:年末調整で生命保険料控除を申告し忘れたらどうなる?対処法を紹介!

Q.医療費控除の還付金はいつごろ振り込まれますか?

A.税務署の窓口で2月から3月の間に確定申告を行った場合、還付金の振り込みまでの期間は約1ヶ月から1ヶ月半程度とされています

また、電子申告の場合は、3週間程度とのことです。

特に、2月・3月の所得税等と消費税及び地方消費税の確定申告期間中は、大量の申告書が提出される時期です。

還付金の支払手続きには、おおむね1か月から1か月半程度の期間を要する可能性があります。

なお、自宅や税理士事務所からe-Tax(電子申告)で提出された還付申告は3週間程度で処理しています(e-Taxで1月・2月に提出された場合は、2~3週間程度で処理しています)。

ただし、申告内容が誤っていたことにより改めて申告書を作成し提出した場合は、e-Taxで提出した場合であっても上記期間で処理されないことがあります。

Q.医療費控除の還付金はどのような方法で受け取れますか?

A.還付金の受け取り方法は、以下のふたつの方法があります。

  • 確定申告を行った本人の預貯金口座に直接振り込む
  • ゆうちょ銀行の窓口または郵便局の窓口で受け取る

預貯金口座への振り込みを選択した場合、振り込みの時期になると所管の税務署から「国税還付金振込通知書」(はがき)が届くため、必ず確認をしましょう。

まとめ

医療費控除を活用することで、医療費の自己負担を実質的に軽減できますが、控除を適用するためには確定申告が必要です。

2026年8月からは高額療養費制度の自己負担限度額が段階的に引き上げられるため、高額療養費の払い戻し額が減少し、患者の実質的な自己負担が増える可能性があります。

自己負担額が増えるほど医療費控除の対象額も大きくなりますので、制度見直し後は医療費控除の確定申告がこれまで以上に重要になるでしょう。