がん保険|生命保険、損害保険、少額短期の違い
がん保険は生命保険会社、損害保険会社、少額短期保険会社が取り扱っています。同じがん保険でも取り扱う保険会社によってその内容は大きく異なります。またがん保険選びにおいて、保険会社による違いを踏まえ、どのタイプのがん保険がふさわしいか検討する必要があります。
この記事では、がん保険の特徴を取り扱う生命保険会社、損害保険会社、少額短期保険会社で比較し、三者の違いなどについて解説します。
生命保険会社取扱いのがん保険
生命保険会社では、生命保険のほかに、就業不能保険や医療保険・がん保険、個人年金保険、学資保険なども取り扱っています。
各生命保険会社から保険が販売されていることもあり、保険の種類や保障内容はさまざまです。がん保険についてもどれを選んだらよいか決めるのが難しいほど販売されているのではないでしょうか。
さまざまながん保険がありますが、生命保険会社が販売するがん保険には一定の特徴があります。
生命保険とは何か、生命保険会社の販売するがん保険の特徴について解説します。
生命保険とは
生命保険は第一分野の保険ともいわれ、死亡保険である終身保険や定期保険、生存保険である学資保険や個人年金保険、生死混合保険である養老保険などがあります。
生保のがん保険の特徴
生命保険会社の販売するがん保険は、契約時に決められた金額が支払われる「定額払い」という特徴があります。がん保険にはおもに、入院給付金・手術給付金を主契約とするものとがん診断一時金を主契約とするものがありますが、入院給付金なら日額を、がん診断一時金なら一時金の額を決めて加入し、支払い条件を満たせばその金額が支払われます。
また保障期間は終身タイプが中心で、保険料は契約時の年齢で決まり、保険期間中の保険料は変わりません。保険料は変動しないため支出計画は立てやすく、また早く加入するほど毎回支払う保険料の負担は軽くなるため、保障を継続しやすい特徴があります。このような点から中長期的に保障を得たい人向けの保険と言えるでしょう。保障期間、保障内容、給付金額、保険料の4つの観点でまとめると次のようになります。
【生命保険会社が取り扱うがん保険のおもな特徴】
項目 | 内容 |
保障期間 | 終身型(生きている限り保障が続く)と定期型(期間限定の保障) |
保障内容 | 入院給付金・手術給付金またはがん診断一時金を主契約とする |
給付金額 | 原則、定額払い。先進医療給付金は技術料相当額が支払われる実損払い |
保険料 | 契約時の年齢が上がるほど保険料は割高になる。契約時の年齢に応じた保険料が維持される |
関連記事:自分にがん保険は必要?不要論のワケ・必要性が高い人を知る
損害保険会社取扱いのがん保険
損害保険会社からもがん保険は販売されています。がん保険を販売している損害保険会社は、生命保険会社ほど多くはありませんが、生命保険会社にはない特徴をもっています。
損害保険会社が取り扱うがん保険について解説します。
損害保険とは
損害保険は発生した損害を補てんするための保険で、火災保険や自動車保険、傷害保険、賠償責任保険などがあります。損害を補てんするための保険ですので、損害額以上に補償されず、所定の範囲内で損害額分が支払われます(実損払い)。
損保のがん保険の特徴
損害保険会社が販売するがん保険も、火災保険や自動車保険と同様、損害額(がん保険では治療費)が補償の対象となります。実損払いとなりますので、一般的に治療費以上の保険金・給付金が支払われることはありませんが、原則、自己負担がゼロになります。
また生命保険会社のがん保険が終身タイプ中心であるのに対して、損害保険会社のがん保険は定期タイプ中心です。5年更新型ですが、保険料は5年刻みで上がっていきます。
【損害保険会社が取り扱うがん保険のおもな特徴】
項目 | 内容 |
補償期間 | 定期(一般的に5年更新) |
補償内容 | 負担した治療費分が補償される |
給付金額 | 負担した治療費分が支払われる実損払い |
保険料 | 契約時の年齢が上がるほど保険料は割高となる。契約後も5年毎(5歳刻み)に保険料が上がる。 |
少額短期保険会社取扱いのがん保険
少額短期保険は、保険金額が少額、保険期間は1年以内の保険で、少額短期保険のみを取り扱う会社を少額短期保険会社といいます。死亡保険や医療保険、傷害保険だけでなく、ペット保険や葬式保険など生損保の区分なく少額・短期の保険が販売されています。
ここでは少額短期保険会社が取り扱うがん保険について解説します。
少額短期とは
少額短期保険会社が取り扱う商品は、保険の種類に応じて保険金額の上限が決められており、医療保障では80万円以下が条件となります(緩和措置あり)。「少額短期」という名称の通り、少額で短期の保険のみを取り扱っています。少額短期保険会社は、生命保険商品と損害保険商品を同時に取り扱うことができるなど制限が緩和されている一方、保険料控除や契約者保護機構の対象外となるなど生損保との違いがあります。
少額短期のがん保険の特徴
少額短期のがん保険は商品数が少なく、2021年9月現在では富士少額短期保険が販売している「ガン入院特化医療保障ナンバーワン」があります。少額短期ですので、終身タイプはなく1年更新で保険料は5年毎に上がります。保障内容としては、高額な保険金や給付金は取り扱うことができないため、入院給付金と手術給付金を中心とした保障となります。そのため損害保険会社のがん保険よりも保障範囲が狭い分、保険料も手ごろに設定されています。
【少額短期保険会社が取り扱うがん保険のおもな特徴】
項目 | 内容 |
保障期間 | 定期(1年) |
内容 | 入院給付金・手術給付金を主契約とする |
給付金額 | 原則、定額払い |
保険料 | 契約時の年齢が上がるほど保険料は割高となる。契約後も5年毎(5歳刻み)に保険料が上がる。 |
比較表
生命保険 | 損害保険 | 少額短期 | |
保障期間 | 終身 | 定期 | 定期 |
保障内容 | ・入院給付金 ・手術給付金 ・診断一時金 ・先進医療給付金 ・抗がん剤治療給付金 ・放射線治療給付金 ・通院給付金など | 治療費と同等 | 最小限 ・入院給付金 ・手術給付金など |
給付金額 | 定額払い | 実損払い | 定額払い |
保険料 | 契約時の保険料が維持される | 5年毎(5歳刻み)に保険料が上がる | 5年毎(5歳刻み)に保険料が上がる |
上記の比較表について、何点か補足しておきます。
交通費や諸費用などについて
損害保険会社のがん保険は実損払いですので、補償の対象となる治療費をカバーすることができます。交通費や付添人の宿泊費などの諸費用は別途準備する必要があります。諸費用も保険で準備したい場合は、特約で診断一時金特約を付帯する必要があります。診断一時金特約は、損害保険会社のがん保険でも100万円や200万円などの定額払いとなります。
保険料の基準について
生命保険会社と損害保険会社の保険料は年齢が上がるにつれて高くなります。
一般的に若いときほど損害保険会社の保険料のほうが生命保険会社よりも安く、年齢が上がるにつれ損害保険会社の保険料のほうが高くなります。
若いときは生命保険会社の保険料は損害保険会社と比べると割高ですが、終身タイプであることから一生涯でかかる保険料を均等に振り分けた結果ですので、高齢になった場合の保険料負担を軽減することができます。
生命保険会社、損害保険会社、少額短期保険会社それぞれの特徴から、
ポイント
- 損害保険会社や少額短期保険会社のがん保険は一定期間のみ補償が必要な場合
- 生命保険会社のがん保険は中長期的に保障が必要な場合
- 少額短期保険会社のがん保険は、その特徴から入院と手術の治療費だけ保険でカバーし、あとは預貯金などで準備する人向けで、最小限の補償で十分な場合に活用できる
といえます。
まとめ
がん保険を比較検討する際には、この記事で紹介した保険会社による特徴の違いを踏まえると、絞り込みやすくなります。がん治療の保障が中長期的に必要なのか、必要最小限の保障で十分なのかなど自分自身の状況に合わせたがん保険を選ぶとよいでしょう。