個人年金保険
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個人年金保険とは?

仕事をリタイアし、年金生活になる老後。 現役時代の生活水準を維持するためにも、今から老後の準備をしておきたいところです。
老後の資金を形成する手段は、貯蓄や投資など様々ですが、そのひとつに個人年金保険があります。
では、そもそも個人年金保険とは、どういうものなのでしょうか。この記事では、個人年金保険の種類や仕組み、公的年金制度との違い、加入するメリット・デメリットなどについてわかりやすく解説します。
- 目次
1.個人年金保険とは
個人年金保険は、公的年金制度によるものと、民間の個人年金保険の2種類に分けられます。
まずは、これらの個人年金がどのようなものなのか、それぞれの概要について見てみましょう。

(1)公的年金制度
公的年金制度は、社会保障制度の一環として国により運営されているものです。
この制度は大きく2段階に分けられ、1段階目となる「国民年金」は、日本国内に住む20歳以上60歳未満の人すべてに加入義務があります。
保険料は原則として一律ですが、収入などに応じて免除制度や後納制度を利用することができます。受け取れる年金は「老齢基礎年金」と呼ばれ、受け取り開始は原則として65歳からとなります。ただし、所定の手続きを経ることにより、受け取り時期を60歳から70歳まで繰り上げたり繰り下げたりすることが可能です。
2段階目となる「厚生年金」は、会社員や公務員などが加入するものです。
保険料は収入によって異なり、標準報酬月額・標準賞与額の9.15%を被保険者が、その同額を勤務先が負担します。受け取れる年金は「老齢厚生年金」と呼ばれ、受取開始期は現在、一部の生年月日や年齢に応じ、61歳から65歳へと段階的に引き上げられています。受け取れる老齢厚生年金の金額は、それまで支払った保険料に応じて変わります。
また、公的年金制度により受け取れる年金には、一定の年齢以降に受け取れる老齢基礎年金・老齢厚生年金の他に、「障害年金(障害厚生年金)」や「遺族年金(遺族厚生年金)」もあります。
- 障害年金(しょうがいねんきん)
- 障害年金とは、病気やケガで仕事や生活が制限されるようになった場合に支払われるもので、現役世代の人も受け取ることができます。
- 遺族厚生年金(いぞくこうせいねんきん)
- 遺族厚生年金とは、国民年金・厚生年金保険の被保険者が亡くなった場合に、その人により生計を維持されていた遺族に支払われるものです。
(2)民間の個人年金保険
民間の個人年金保険とは、生命保険会社などによって運営・販売されている保険です。
予め定めた期間に保険料を納め、保険料払込期間を終えて約定の年齢(年金受取開始年齢)に達した時点から年金の受け取りが始まります。保険料は、受け取る年金の金額や加入時の年齢、保険料払込期間、保障内容などによって異なります。また、年金を受け取れる期間は商品によって異なり、10年、15年、というように予め決まっているものもあれば、生存している限り生涯にわたり受け取れるものもあります。
(3)公的年金制度と民間の個人年金保険の違い
公的年金制度と民間の個人年金保険には、主に以下のような違いがあります。
加入義務の有無
公的年金制度と民間の個人年金保険の最も大きな違いが、加入義務の有無です。公的年金制度は、20歳以上の人すべてに加入義務があります。これに対して民間の個人年金保険への加入は完全に任意で、20歳未満の人が加入することも可能です。
年金の支払い条件
公的年金制度における年金には、一定の年齢に達した時点より受け取れる老齢基礎年金・老齢厚生年金の他、障害状態になるなど一定の要件を満たした場合に受け取れる「障害基礎年金」や、被保険者が死亡した場合にその者により生計を維持されていた人に支払われる「遺族年金」があります。
これに対して、民間の個人年金保険により受け取れるのは、約定の年齢に達した時点より給付が始まる「個人年金」のみとなります。ただし、保険料払込期間中に被保険者が死亡した場合には、それまでに払い込んだ保険料の金額をもとに算出した死亡給付金(死亡払戻金)が支払われる商品が一般的です。また、個人年金保険を途中解約した場合、約定の返戻率に基づき算出された解約返戻金が支払われます。
保険料の払込期間
公的年金制度における保険料の支払期間は20歳から60歳までとなっており、これを任意に短くしたり長くしたりすることはできません。これに対して民間の個人年金保険は、保険料払込期間を任意に設定できます。具体的な取り扱いは商品によって異なりますが、有期払いや一時払いを選択することで、短期間のうちに保険料の支払いを終えてしまうことも可能です。
2.個人年金保険の種類
個人年金保険は、投資リスクの有無や払い込んだ保険料の運用方法などによって、
1. 個人年金保険
2. 変額個人年金保険
3. 外貨建て個人年金保険
の3種類に分けられます。
これらの商品にはそれぞれ異なるメリット・デメリットがあり、中には年金の受取総額が払込保険料の総額を下回る可能性があるものもあります。そのため個人年金保険への加入を検討する際は、これら3種類の商品にどのような特徴があるのか、正確に理解しておくことが大切です。
(1)個人年金保険

一般的な個人年金保険では、生命保険会社が保険料を「一般勘定」で運用します。
- 一般勘定(いっぱんかんじょう)
- 一般勘定とは、運用実績にかかわらず約定の給付が保証されるタイプの商品の資産(保険料など)を管理するための勘定のことをいいます。
一般勘定では運用に伴うリスクを生命保険会社が負うため、原則として、契約時に定めた年金の受取金額が減少することはありません。ただし、生命保険会社の経営破綻による責任準備金の減少などが起きた場合にはこの限りではありません。
(2)変額個人年金保険
変額個人年金保険では、生命保険会社が保険料を「特別勘定」で運用します。
- 特別勘定(とくべつかんじょう)
- 特別勘定とは、運用実績に応じて受け取れる金額が変動するタイプの商品の資産(保険料など)を管理するための勘定のことをいいます。
特別勘定では、株式や債券を中心とした金融商品による資産運用がなされ、これに伴うリスクは契約者が負います。
そのため変額個人年金保険は、その運用実績によって受け取れる年金の金額が変動します。年金受取開始後は一定の金額のまま変動しないもの、年金受取開始後も運用実績によって年金の金額が増減し続けるもの、というように年金額の変動のしかたについては商品によって取り扱いが異なるため、注意が必要です。

近年は、年金受取総額について最低保証を設けている生命保険会社が増加傾向にありますが、解約返戻金については、最低保証がない商品が多いようです。変額個人年金保険への加入を検討する際は、年金受取総額や解約返戻金に対する最低保証の有無についても確認しておく必要があります。
(3)外貨建て個人年金保険
- 外貨建て個人年金保険(がいかだてこじんねんきんほけん)
- 外貨建て個人年金保険とは、払い込まれた保険料を外貨で運用する個人年金のことをいいます。
契約通貨は商品によって異なりますが、米ドル、ユーロ、豪ドルなどを用いるものが一般的です。

外貨は日本円に比べて相対的に金利が高いため、その運用益による年金額の増加が期待できます。また、円だけでなく外貨にも分散投資することには、円の価値が下落するリスクに備えられる、というメリットもあります。

ただし、外貨建て個人年金保険は、保険料の払い込みはもちろん、年金の受け取りも外貨で行います。そのため為替レートの変動により、円換算後の年金総額が払込保険料の総額(円換算額)を下回るリスクがあります。
3.個人年金保険の年金受取期間
個人年金保険は、年金の受取期間によって
1. 終身年金
2. 確定年金
3. 夫婦年金
4. 有期年金
の4種類に分けられます。
年金の受取期間は老後の生活資金について考えるうえでとても重要なポイントですので、これら4種類の個人年金保険にはそれぞれどのような特徴があるのか、詳しく見ていきましょう。
(1)終身年金
- 終身年金(しゅうしんねんきん)
- 終身年金とは、被保険者が生存している限り、生涯にわたって年金を受け取れる商品のことをいいます。
このタイプの個人年金保険には「保証期間」が付されているものが多く、これを「保証期間付終身年金」と呼びます。

保証期間中は被保険者の生死に関係なく年金を受け取れ、保証期間内に被保険者が死亡した場合は、残りの保証期間に応じた年金あるいは一時金を受け取ることが可能です。
保証期間の長さは商品によって異なり、予め決められたプランから選ぶ商品の他、5年、10年、というように数年単位で任意に設定できるものもあります。
(2)確定年金
- 確定年金(かくていねんきん)
- 確定年金とは、年金受取期間中、被保険者の生死に関係なく年金を受け取れる商品のことをいいます。
年金受取期間中に被保険者が死亡した場合は、残りの年金受取期間に応じた年金あるいは一時金を受け取れます。

被保険者の生死に関係なく年金を受け取れる、という点では保証期間付終身保険と似ていますが、確定年金型の商品では「年金受取期間」が定められているため、この期間満了後は年金の給付を受けられません。
(3)有期年金
- 有期年金(ゆうきねんきん)
- 有期年金とは、年金の受取開始後、10年間、15年間、というように約定の期間中、被保険者が生存していることを条件に年金を受け取れる商品のことをいいます。
有期年金は保証期間付きのものとそうでないものとに分けられ、保障期間付有期保険の場合、保証期間中は被保険者の生死に関係なく年金を受け取れます。

これに対して保証期間のない有期年金は、年金受取期間中に被保険者が死亡すると、それ以後は年金を受け取れません。ただし、年金原資あるいは既払込保険料相当額から既に受け取った年金の総額を差し引いた残額がある場合には、一金として受け取れる商品が一般的です。
(4)夫婦年金
- 夫婦年金(ふうふねんきん)
- 夫婦年金とは、被保険者を夫婦2人とし、夫婦のいずれかが生存している限り年金を受け取れる商品のことをいいます。
夫婦年金は、年金受取期間によって確定年金や終身年金、有期年金に分けられます。

- ※保証期間付き夫婦年金を取り扱っていない商品もあります。
夫婦終身年金や夫婦有期年金は保証期間がある商品が一般的で、保証期間中に夫婦2人ともが死亡した場合、残りの保証期間に応じた年金あるいは一時金を、遺族が受け取れます。
4.個人年金保険の払込期間
個人年金保険は「老後への備え」という特性が強く、また、貯蓄性が高い商品でもあります。そのためこの種の保険への加入を検討している方の中には、経済的に余裕のある今のうちに保険料を払い込んでしまいたい、と考える人もいるのではないでしょうか。そこで注目したいのが、「保険料払込期間」です。
(1)個人年金保険の払込期間は3種類
個人年金保険の保険料払込期間には、以下のような種類があります。どの払込期間にもそれぞれメリット・デメリットがありますので、世帯収入や個人年金保険に割ける予算を勘案しつつ、自分に合った払込期間を選ぶことが大切です。
契約~年金受取開始まで
個人年金保険の保険料払込期間は、「契約から年金受取開始まで」を基本としています。契約後すぐに保険料の払い込みが始まり、払込期間満了後に年金の受取期間が始まるのです。個人年金保険の中には、保険料払込期間満了後から年金受取開始までの間に「据置期間」を設けているものもあります。
この契約形態のメリットは、保険料を抑えられる、という点です。払込期間が長くなるとその分だけ保険料の払込回数が多くなるため、毎月の保険料を安く抑えられるのです。毎月の保険料を抑えつつ老後の生活資金を用意したいという方は、保険料の払込期間を長めに設定してはいかがでしょうか。
有期払い
有期払いとは、予め定めた期間内で保険料の払い込みを終える契約形態のことをいいます。払込期間の定め方には「歳満了」と「年満了」の2種類があり、歳満了型では、55歳まで、60歳まで、というように年齢によって保険料の払込期間を定めます。これに対して年満了型では、10年、15年、というように契約からの経過年数によって保険料の払込期間を定めます。
保険料の払込期間が短くなると、その分だけ保険料は高くなります。ただ、保険料が多少高くなったとしても収入の多い今のうちに老後への備えをしっかり用意しておきたい、という方にはこの契約形態をおすすめします。
一時払い・全期前納
まとまった金額の余裕資金があるため、これを個人年金保険の支払に充てたい、という方には、「一時払い」あるいは「前期前納」をおすすめします。
「一時払い」とは、保険料を一括で支払う払込方法のことで、年金受取開始まで保険料を払う方法や有期払い、後述する全期前納に比べて、支払い保険料の総額が安くなります。ただし、保険料を一時払いする場合、個人年金控除を1回しか受けられません。また、保険を途中解約した場合、既に払い込んだ保険料の満額が返戻されるわけではない点にも、注意が必要です。
「全期前納」とは、保険料を一括で保険会社に預ける払込方法のことをいいます。「保険料を一括で払い込む」という点は一時払いと同じですが、全期前納の場合、全期分の保険料を保険会社にいったん預け、毎月の支払日にこれを1か月分ずつ消化していく形になります。そのため個人年金保険料控除は毎年受けられますし、保険を途中解約した場合は未経過分の保険料が返戻されます。
(2)個人年金保険加入者の払込方法は?
個人年金保険に加入している人は、保険料の払込方法をどのようにしているのでしょうか。生命保険文化センターの調査によると、個人年金保険加入者の保険料払込方法は、以下のようになっています(『平成30年度生命保険に関する全国実態調査』[i]より)。
・ 月、半年、年ごとに支払っている…56.2%
・ 月、半年、年ごとの支払は完了…18.5%
・ 不明…12.2%
「月・半年・年ごとに支払っている」と回答している人が56.2%と最も多い一方で、3割以上の人が、既に保険料の支払いを終えている(一時払いを含む)ことがわかります。
[i] 生命保険文化センター『平成30年度生命保険に関する全国実態調査』p56
https://www.jili.or.jp/research/report/pdf/h30zenkoku/2018honshi_all.pdf
5.個人年金保険の保険料
貯蓄性があり、老後の資産形成の手段として活用できる個人年金保険。「少々保険料が高くても老後への備えをしっかり用意しておきたい」と考える方も少なくありません。ただ、個人年金保険を払込期間中に途中解約すると、解約返戻率が100%を下回り、損をしてしまう可能性があります。そのため個人年金保険の保険料は、払込期間中、無理なく払い続けられる金額に設定することが大切です。
(1)個人年金保険の保険料の平均はどのくらい?
生命保険文化センターの調査によると、平成30年度における個人年金保険(全生保)の保険料の世帯合計額の平均は、20万1,000円でした。保険料ごとの分布は、以下のようになっています。12~18万円未満という世帯が最も多く、約6割の世帯が保険料の世帯合計額を18万円未満に設定していることがわかります(『平成30年度生命保険に関する全国実態調査[i]』より)。
・ 6万~12万円未満…17.3%
・ 12万~18万円未満…24.4%
・ 18万~24万円未満…9.6%
・ 24万~36万円未満…15.1%
・ 36万~48万円未満…4.3%
・ 48万~60万円未満…2.9%
・ 60万円以上…5.1%
・ 不明…4.9%
また、個人年金保険加入世帯のうち、一時払いで保険料を払い込んでいる世帯を対象に実施した調査によると、一時払い保険料の世帯合計額の平均は726万円でした。保険料ごとの分布は以下のようになっています。
・ 100万~200万円未満…7.0%
・ 200万~300万円未満…13.3%
・ 300万~500万円未満…18.8%
・ 500万~1,000万円未満…24.2%
・ 1,000万~1,500万円未満…10.9%
・ 1,500万~2,000万円未満…6.3%
・ 2,000万円以上…7.0%
・ 不明…7.8%
(2)保険料払込免除特約が付いている商品もある
個人年金保険は、保険料払込期間中に被保険者が高度障害状態など生命保険会社所定の状態になった場合、それ以後の保険料の払い込みが免除される商品が一般的です。ただし、健康状態に関する告知や診査を必要としない「無選択型個人年金保険」については、保険料の免除がありません。また、保険料の払い込みを一時払いにした場合も、保険料の免除を受けられないため注意が必要です。
[i] 生命保険文化センター『平成30年度生命保険に関する全国実態調査』p53、54
https://www.jili.or.jp/research/report/pdf/h30zenkoku/2018honshi_all.pdf
6.個人年金保険のメリットとデメリット
個人年金保険には、様々なメリット・デメリットがあります。この種の保険選びをする際は、メリットだけでなく、デメリットについても正しく理解しておきましょう。
(1)メリット
個人年金保険には、以下のようなメリットがあります。
老後資金の形成に役立つ
個人年金保険のメリットとしてはまず、貯金が苦手な人でも計画的に老後資金を形成できる、という点が挙げられます。老後資金を貯めるには「貯蓄」や「積み立て」といった方法もありますが、貯金が苦手な人の場合、当初の計画通りにお金が貯まらなかったり、途中で挫折してしまったりすることもあるでしょう。
この点、個人年金保険は保険料が自動的に引き落とされるため、半ば強制的に老後資金を形成することができるのです。
個人年金保険料控除を受けられる
個人年金保険には、「個人年金保険料控除」を受けられる、というメリットもあります。個人年金保険料控除は所得控除制度の一種で、個人年金保険料税制適格特約を付加した契約は年間保険料に応じ、所得税と住民税について一定額まで所得控除を受けられます。ただし、この制度を利用するために必要となる個人年金保険料税制適格特約を付加するには、以下の条件を満たす必要があります。
② 年金受取人が、保険料の払込をする者もしくはその配偶者である
③ 年金の受取開始年齢が満60歳以上で、受取期間が10年以上である
死亡給付金を受け取れる
個人年金保険の中には、保険料の払込期間中や年金受取期間中に被保険者が死亡した場合に、死亡給付金を受け取れるものがあります。死亡給付金の金額は、払込保険料相当額程度のもの、死亡時点における運用益を含めた金額になるもの、払込保険料を下回るもの、というように商品によって取り扱いが異なります。
(2)デメリット
個人年金保険には、以下のようなデメリットがあります。
途中解約すると元本割れする
個人年金保険のデメリットとしてまず挙げられるのが、途中解約すると元本割れしてしまう、という点です。
個人年金保険を払込期間中に解約した場合、約定の解約返戻率をもとに算出された解約返戻金を受け取れます。ただし、多くの商品では払込期間中に解約をした場合、解約返戻率が100%を下回ります。そうすると、受け取れる解約返戻金がそれまでに払い込んだ保険料の総額よりも少なくなってしまうのです。
個人年金保険の払込期間は、20年、30年とかなり長期間になることが少なくありません。この間、急に現金が必要になったり、収入が減少して保険料の支払いが難しくなったりする可能性も十分に考えられるでしょう。
個人年金保険の保険料は、長期にわたり動かせないキャッシュである、という点に注意し、保険料の金額や払込期間は慎重に決めることが大切です。
インフレリスクがある
個人年金保険には、インフレリスクに弱い、というデメリットもあります。「インフレ」とは物価が上がりお金の価値が下がる現象のことで、契約時に受け取る年金額が確定している定額型の個人年金保険の場合、物価がどれだけ上昇しても受け取れる年金の金額は変わりません。そうすると、老後の生活資金が不足してしまう可能性があるのです。
運用実績や為替レートによって元本割れする可能性がある
変額個人年金保険は、運用実績によって将来受け取れる年金の金額が変動する商品です。保険料は特別勘定において運用性を重視した管理がなされるため、運用実績によっては受け取れる年金の総額が払込保険料の総額を下回る可能性があります。
また、外貨建て個人年金は、保険料の払い込みはもちろん、年金の受取も外貨で行われます。そのため為替レートによっては、受け取れる年金の総額が払込保険料の総額を下回るリスクがあります。
年金受取時に課税される場合がある
個人年金保険は、年金受取時に課税される場合がある、という点にも注意が必要です。
保険料負担者と金人が同一である場合、受け取る年金は雑所得に算入され、所得税・住民税が課せられます。算入すべき雑所得の金額は、その年中に支払いを受けた年金の金額から、その金額に対応する払込保険料を差し委引いて計算します。
保険料負担者と年金受取人が異なる場合、年金受取開始時に贈与税が課せられます。これは、保険料負担者から年金受取人に権利の贈与があったとみなされるためで、贈与税が課せられるのは1回のみとなります。毎年受け取る年金については所得税の対象となり、年金支給初年度は全額非課税、2年目以降は課税部分を階段状に増加していく方法で計算されます。
7.個人年金保険の必要性
ここまで、個人年金保険の種類やそれぞれの特徴、メリット・デメリットなどについて見てきました。では、そもそも個人年金保険は必要なものなのでしょうか。
厚生労働省が発表した令和3年度の新規裁定者(67歳以下の人)の年金額の例によると、夫婦2人分の高齢基礎年金を含む標準的な年金月額は、22万496円でした。年間では、264万5,952円となります。また、国民年金の月額は、1人分満額で6万5,075円となっています。生活水準などにもよりますが、やはり、公的年金制度だけで生活を維持するのは、難しい可能性があります(厚生労働省『令和3年度の年金額改定について[i]』)。
[i] 厚生労働省『令和3年度の年金額改定についてお知らせします』
https://www.mhlw.go.jp/content/12502000/000725140.pdf
(1)個人年金保険への加入率はどのくらい?
生命保険文化センターの調査によると、令和元年度における個人年金保険への加入率(全生保)は、全体で21.7%、男性が21.5%、女性が21.8%となっています(『令和元年度生活保障に関する調査』[i]より)。生命保険への世帯加入率(全生保)が88.7%であること、医療保険への加入率が73.1%であることと比較すると、個人年金保険への加入率はやや低い傾向にあります(生命保険文化センター『平成30年度生命保険に関する全国実態調査[ii]』『令和元年度生活保障に関する調査[iii]』より)。
老後の資金を形成する方法には、貯蓄や積み立て、投資信託など、様々な手段があります。そのため、個人年金保険だけにこだわる必要はありませんが、この種の保険には保障面や税制面などにおいて、色々なメリットがあります。生命保険や医療保険など、「万一への備え」としての保険に加入してもなお金銭的に余裕がある方は、個人年金保険への加入を検討してみてはいかがでしょうか。
[i] 生命保険文化センター『令和元年度生活保障に関する調査』p108
https://www.jili.or.jp/research/report/pdf/r1hosho/2019honshi_all.pdf
[ii] 生命保険文化センター『平成30年度生命保険に関する全国実態調査』p4
https://www.jili.or.jp/research/report/pdf/h30zenkoku/2018honshi_all.pdf
[iii] 生命保険文化センター『令和元年度生活保障に関する調査』p60
https://www.jili.or.jp/research/report/pdf/r1hosho/2019honshi_all.pdf
8.個人年金保険の選び方
個人年金保険には、将来受け取れる年金が確定しているもの、変額型のもの、外貨建てのもの、年金の受取期間が終身のもの、有期のもの、保証期間があるもの、ないもの、というように沢山の種類があります。どの商品が適しているのか、年金額をいくらにすべきなのか、保険料や保険料払込期間をどのくらいにすべきなのかは、世帯収入や資産状況、公的年金制度により得られるであろう年金の金額などによって、異なります。
そのため個人年金保険への加入を検討する際は、必要な老後資金はいくらなのか、そのうちどのくらいを個人年金保険で備えるのか、具体的に考えてみることをおすすめします。商品選びやプラン選びに悩んだときは、プロのファイナンシャルプランナーに相談してみるのもおすすめです。
9.個人年金保険のチェックポイント
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監修者プロフィール

吹田 朝子
(すいた ともこ)
1級ファイナンシャルプランニング技能士、
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
ぜにわらい協会会長 一般社団法人円流塾 代表理事。人とお金の理想的な関係を追究するお金のメンタリスト®。1989年一橋大学卒業後、金融機関にて企画調査・主計部門を経て1994年より独立。
顧客相談3300世帯以上。TV出演・新聞連載など多数。結婚・妊娠・出産・子育てや転職・住宅購入、そして親の介護など、様々な人生イベントを含み、夫婦の稼ぎ方からお金の使い方、受け取り方、増やし方、そして家族のために次世代まで幸せが続くお金の使い道を設計することを生業としている。著書に「お金の流れをきれいにすれば100年人生は楽しめる!」(スタンダーズ社)、「お金オンチの私が株式投資を楽しめるようになった理由」(C&R研究所)など多数。