がん検診は受けるべき?がん検診の種類やメリット・デメリットを知り重要性を考えよう
がんは種類や場所にもよりますが、がん検診にて早期発見できれば治る病気になりつつあります。一般的にがんは症状の自覚前に発見できれば、身体的負担は軽く、治療にかかる医療費も抑えられると考えられています。
この記事ではがん検診の種類や、検診を受けるにあたって知っておきたいメリットとデメリットについても解説します。
がんとはどんな病気?
がんは、何らかの原因で生まれた異常な細胞のかたまり(腫瘍)が、周囲に広がったり、別の部位に移動したりしてできたかたまり(悪性腫瘍)のことを指します。
がん(悪性腫瘍)には、肺がんや乳がん、骨肉腫のような固形がんと、白血病や悪性リンパ腫のような血液がんがあります。
なお、周囲に広がったり、別の部位に移動したりしていないものを上皮内新生物といいます。上皮内新生物は手術で取り除くことができ、転移する可能性も少ないのが一般的です。
関連記事:がん保険における「がん」は2種類。悪性新生物と上皮内新生物の違いについて解説
がん検診とは?
がん検診とは、がんにかかっているかどうかを調べるための診察や検査のことで、がんを早期発見し、治療することを目的としています。
まず、検査によりがんの疑いがあるか調べ、がんの疑いがあれば、さらに精密検査によって最終的に判断されます。なお、がん検診は症状のない人向けの検査のため、明らかに症状が出ている人は受けることができません。
がん検診が血液検査や尿検査のみでできる時代がやってくる?
以前より、がんの検査には、腫瘍マーカー検査やPET検査、また、CT検査など高性能の医療機器を使った最先端のものがありました。
最近注目を集めているのが、少量の血液や尿でがんが検出できるという新しいがん検査です。
ただ、いずれの検査についても「科学的根拠が明確でない」ことを理由に、がん検診として国は推奨しておらず、受診の判断は個人の判断にゆだねられています。
しかしいずれにせよ、より簡単で精度の高いがんの検査方法は常に模索されており、可能性は広がり続けています。
がん検診と人間ドックの違いとは
市区町村などで行われるがん検診は対策型がん検診と呼ばれます。ある地域の住民など、特定集団の死亡率低下を目的に、国が主体となって検診を行います。検査できるのは特定のがんのみですが、自己負担額は検査費用の1割程度で、非常に安価に受診することができます。
対して、人間ドックのように、個人が各々の意思により受けるがん検診は任意型がん検診と呼ばれます。
人間ドックではがんをはじめ全身の状態をより詳細に調べることができますが、がんに関する検査が必ずしもメニューに含まれていないことがあります。
がんに関する検査を受けるためには、あらかじめがん検査が含まれているプランを選択したり、がんに関するオプション検査を追加する必要があります。また、人間ドックは自由診療となるため、費用は原則全額自己負担しなければなりません。
対策型がん検診の種類
対策型がん検診は、主に次の5種類のがんについて、国が科学的根拠があると認めた検査が行われます。
- 大腸がん
- 胃がん
- 肺がん
- 子宮頸がん
- 乳がん
なお、自治体によっては、前立腺がんや喉頭(こうとう)がん、口腔(こうくう)がんなどの検診も選ぶことができます。
また、対策型がん検診は、検診の種類に応じ対象年齢が設けられています。対象者は市区町村から送付される「がん検診の案内」に従って、医療機関に検診の予約をして受診します。市区町村や検診の種類によって、検診間隔や対象年齢などに違いがあるため、検診の際には案内にしたがって受診するとよいでしょう。
大腸がん検診
大腸がん検診では、問診と便潜血(べんせんけつ)検査が行われます。
対象年齢は40歳以上で、毎年受診することができます。なお、便潜血検査では2日分の便で検査が行われます。
胃がん検診
胃がん検診では、問診と内視鏡検査(胃カメラ)またはエックス線検査(バリウム検査)のどちらかを選択して受診します。内視鏡検査とエックス線検査の両方を受診することはできません。
対象年齢は50歳以上(エックス線検査は40歳以上)で、2年に1回受診することができます。なお、エックス線検査は毎年受診可能です。
内視鏡検査とエックス線検査は、検査が終了するまで飲食することはできないので、あらかじめ注意しておきましょう。
肺がん検診
肺がん検診では、問診と胸部エックス線検査が行われます。ただし、喫煙などを理由に肺がんリスクが高い人は、喀痰細胞診(かくたんさいぼうしん)も受けることになります。
対象年齢は40歳以上ですが、40歳以上で半年以内に血が含まれた痰(たん)が出たり、50歳以上で1日2箱以上のタバコを吸うなど肺がんのリスクが高いとみなされると、喀痰細胞診の対象者となります。
なお、喀痰細胞診では3日間の喀痰を採取する必要があります。
子宮頸がん検診
子宮頸がん(けいがん)検診は20歳以上の女性が対象で、問診と視診、そして子宮頸部の細胞診および内診まで行われます。検診間隔は2年に1回です。
乳がん検診
乳がん検診では、問診と乳房エックス線検査(マンモグラフィ)が行われます。
40歳以上の女性が対象で、2年に1回受診することができます。
なお視触診については、乳房エックス線検査とセットもしくは選択制など自治体により異なります。
対策型がん検診の費用
対策型がん検診の費用は、市区町村が全額もしくは一部を負担するため、無料もしくは少額です。なお、費用については自治体から送られてくる「がん検診の案内」の記載や、自治体のホームページやお知らせで確認することができます。
■ 例:ある自治体の対策型がん検診の診察内容と費用
検診名 | 検診内容 | 自己負担費用 |
---|---|---|
大腸がん検診 | 問診・便潜血検査 | 500円 |
胃がん検診(内視鏡) | 問診・胃内視鏡検査 | 1,500円 |
胃がん検診(バリウム) | 問診・胃部X線撮影 | 500円 |
肺がん検診 | 問診(質問票)・胸部X線撮影・ 喀痰検査(該当者) | 800円 |
子宮頸がん検診 | 問診・視診・細胞診(頸部)・内診 | 1,000円 |
乳がん検診 | 問診(質問票)・マンモグラフィ | 1,000円 |
一方、人間ドックのような任意型がん検診については自由診療となるため、全額を自己負担する必要があります。
がん検診のメリット・デメリット
がん検診には、がんの早期発見などのメリットも多いですが、様々なデメリットも想定されます。
がん検診のメリット
がん検診のメリットには、主に以下のものがあげられます。
- がんの早期発見・早期治療ができる
- がんの早期発見により治療の負担を身体的・経済的に軽減できる
- がんになる前段階の病変を見つけ、がんになる前に取り除くことができる
がん検診でがんを早期発見できれば、がんが完治する可能性が高くなります。また、その場合一般的に治療期間は短く、身体的・金銭的負担も軽減することができます。
例えば、胃や大腸の表面にできるイボのような突起物(ポリープ)は、がんになることもありますが、がん検診で発見できれば早期に取り除くことができます。
がん検診のデメリット
一方で、がん検診によるデメリットには以下のものが考えられます。
- 「異常なし」と診断されても、がんの可能性はある
- がん検診の結果により、不要な治療や検査を受ける可能性がある
- がん検診により身体的負担を受ける可能性がある
がん検診の結果は、必ずしも正しいわけではありません。がんの種類や場所によっては見つけられないことがあります。もし、「異常なし」という診断結果でも、100%安心とは言い切れません。
また、がんには危険性のないものもありますが、がんと診断された結果、本来は不要だった検査や治療が身体的に重い負担となる可能性もあります。
がん検診は医療費控除の対象になる?
医療費控除の対象となる医療費は12の項目に分けられていますが、いずれも主に病気の治療によりかかった費用に限られています。
よって、がん検診を目的とした健康診断や人間ドックは治療行為ではないため、医療費控除の対象にはなりません。
ただし、診断の結果、がんが発見され、続いて精密検査や具体的な治療に移行した場合には、人間ドックや健康診断が治療に先立つ「診察行為の一部」とみなされ、医療費控除の対象となる可能性があります。
関連記事:医療費控除とは?医療費控除のしくみ・高額療養費制度との違い・医療費控除の計算方法
まとめ
自治体で行われる対策型がん検診は、検診方法は自由に選べないものの、国が推奨する科学的に根拠のある検診を安価で受診することができます。
こうした検診は常に100%の精度ではないものの、定期的に受け続ければがんの早期発見につながり、早めに治療できる可能性も高まります。
もし万が一、がんと診断された場合も、あらかじめがん保険で備えておくとさらに安心といえるでしょう。