がん保険における「がん」は2種類。悪性新生物と上皮内新生物の違いについて解説
せっかく加入しているのにがん保険が使えない可能性があります。がん保険における「がん」には2種類存在することをご存知でしょうか?「悪性新生物」と「上皮内新生物」の2つです。実は「上皮内新生物」の場合、がん保険の保障が受けられない、もしくは削減される場合があります。そういった困った事態にならないように、本記事では、2つの違いについてわかりやすく解説いたします。
本記事のポイント
- がんには「悪性新生物」と「上皮内新生物」の2種類が存在する
- 悪性新生物は、血液を作る組織に発生する白血病や悪性リンパ腫、上皮を組織する上皮細胞に発生する肺がん、胃がん、大腸がん、乳がんなどがあり、骨や筋肉にできる悪性新生物は肉腫と呼ぶ
- がん細胞が臓器の表面を覆う上皮にとどまっているものを、上皮内新生物(または上皮内がん)と呼び、「悪性新生物」と比べると、リスクが低いとされる
- がん保険や医療保険等によっては、「悪性新生物」のみを給付対象としたものや、「上皮内新生物」に対する給付金の金額を削減した商品があるため、注意が必要
がんと診断されても給付金が出ないことがある?
がん保険は、基本的にあらゆるがんを保障の対象としています。がんが発生した部位による分け隔てはありません。たとえば、がん診断給付金を100万円に設定していたとすれば、胃がんであっても乳がんであっても100万円が支払われます。そうであるなら、「がんと診断されたのに給付金が出ない」などという事態は起こり得ないはずです。
ところが、「がん」という言葉は私たちが通称で使っていますが、医学的には別の定義があって、がんと思っていても、給付金が出ないという話は、実際に起こり得るのです。本来の給付額の50パーセントや30パーセントに減らされたり、ときにはまったく給付金が出ないことも……。
「こういうときのために保険料を払っているのに、話が違う!」と怒らないでくださいね。これ、約款にはちゃんと記されています。
がんと診断されたのに…?この不思議な差はいったいどこからくるのでしょうか。
悪性新生物とは
がんとひとくくりにしていますが、じつは医学的に見ると2種類に分けられます。「悪性新生物」と「上皮内新生物」です。悪性新生物とは、どんながんを指すのでしょう。血液を作る組織に発生する白血病や悪性リンパ腫、上皮を組織する上皮細胞に発生する肺がん、胃がん、大腸がん、乳がんなどがあげられます。また、骨や筋肉にできる悪性新生物は肉腫と呼ばれています。
悪性新生物の特徴は3つあります。
- 自律的に増殖を続ける。
- 組織の深部にある基底膜を破って広がり(浸潤)、身体のあちこちに移り(転移)、次々とがん細胞を作る。
- 正常な組織が取り入れる栄養を奪い、身体を弱らせる(悪質液)。
一朝一夕に治すことは難しいといえます。
ところで、腫瘍の中には良性と悪性がありますが、両者の違いをご存知ですか?
良性腫瘍は前述した3つの特徴うち、浸潤・転移と悪質液を起こしていない状態をいいます。増殖のスピードも悪性腫瘍よりは緩やかです。発生した部位や状態によりますが、手術で完全に取り去れば再発もしません。ただ、脳のような場所にできると、良性であっても症状が重くなります。
上皮内新生物とは
一方、がん細胞が臓器の表面を覆う上皮にとどまっているものを、上皮内新生物(または上皮内がん)と呼びます。こちらは基底膜を超えて広がっていません。簡単にいうと、基底膜を超えているかいないかが、分かれ目になるわけです。
上皮内新生物は、手術によって取り去ることが可能です。転移の恐れもほとんどないと考えられています。いわゆる初期がんで、進行がんとは区別されています。つまり、この段階で治療を行えば、基本的には完治するわけです。もっとも、上皮内新生物だから安心してよいという話にはなりません。上皮内新生物が悪性化し、基底膜を破って浸潤することもあります。早めに治療するからこそ、完治も見込めるのです。
リスクの違いが保障の差に
悪性新生物と上皮内新生物を比べてみれば、より深刻な状態に陥りやすいのは悪性新生物です。場合によっては命に関わる危険がありますし、治療に時間もかかります。
また、がんの治療法はさまざまです。効果が高いと聞けば、健康保険がきかない治療でも選びたくなるでしょう。そうなったら全額が自己負担ですから、100万円単位のお金が必要になるかもしれません。
このように悪性新生物と上皮内新生物ではリスクの大きさが違います。そのため、「リスクが大きい悪性新生物は保障を大きくしますが、上皮内新生物はリスクが小さいので保障も小さくさせてもらいます」といったしくみになっているのです。
本人にとっては、がんまたは初期がんなどと聞くとショックは大きいと思います。でも、給付金がもらえないからといってがっかりしないでください。悪性新生物とは違い、上皮内新生物は治りやすく、治療費もそれほど高くはなりません。とはいえ、上皮内新生物でも、規定通りの給付金が出る商品もあります。悪性新生物と上皮内新生物の扱いは保険会社ごとに異なりますので、それぞれ確認しましょう。
まとめ
ひと口にがんといっても、がんには「悪性新生物」と「上皮内新生物」の2種類があります。悪性新生物はいわゆる悪性腫瘍で、治療にも大きな負担がかかりがちです。それに対して上皮内新生物は手術によって完治しやすく、治療費もさほどかかりません。そのため、上皮内新生物の場合は悪性新生物よりがん診断給付金が低めになっている商品があります。