男性の妊孕性(にんようせい)に影響するがん治療-妊孕性温存のための費用と男性のがん保険の必要性とは?
妊孕性(にんようせい)とは、妊娠のしやすさのことで、男女ともに関係があります。
がん治療によりこの妊孕性が低下する可能性があることから、がん治療を始める前に、妊孕性について担当医の説明を聞き、ご家族で相談しながら治療方法を決めていく状況が増えてきました。
本記事では、国立がん研究センターなどの情報を参考にしながら、本記事では、がん治療による男性の妊孕性低下や、妊孕性温存の費用、がん保険に加入することの必要性について詳しく解説します。
本記事のポイント
- 男性もがん治療によって妊孕性に影響が出る場合がある。
- 精子凍結保存や精巣組織凍結保存が男性の妊孕性温存の方法としてある。
- 妊孕性温存治療は、保険診療の対象外であり、全額自己負担になる。
- 助成制度の活用やがん保険の活用を検討することで、費用負担を軽減できる。
- がん保険を比較検討し、貯蓄と組み合わせて備えることが重要。
男性の妊孕性とは
男性の妊孕性とは、生殖に必要な機能が正常であることです。生殖に必要な機能は生殖機能といい、性欲や精子の形成、勃起、射精などの機能を指します。
がん治療により生殖機能が低下することで一時的又は永久的な男性不妊を引き起こします。
関連記事:妊孕性(にんようせい)ってなに?-女性のがん保険の選び方
どんながんになると男性の妊孕性が失われるのか?
性機能障害(射精障害、勃起障害、性欲減退)や性交障害は、直腸がんや泌尿器科系がん(腎臓、膀胱、前立腺、精巣、陰茎)の手術後にみられます。
性機能を司る神経や血管が骨盤内臓器切除やリンパ節郭清術(かくせいじゅつ)によって損傷を受けたり、外性器を失ったりすることが理由とされています。
リンパ節郭清とは
がんを取り除く際に、がんの周辺にあるリンパ節を切除すること。
男性の妊孕性が低下する治療は抗がん剤治療や放射線治療
また男性の妊孕性が低下する治療として、抗がん剤や放射線による治療が挙げられます。
抗がん剤は、精子形成の過程に影響があり、精巣の萎縮や無精子症を引き起こす可能性があります。
放射線治療では照射線量が多いほど不妊期間が延長され、一定量を超えると精子のもとになる精原細胞が完全に破壊され、永久不妊になります。
男児については、思春期の発来前は性腺機能の評価が難しいことや妊孕性低下を知らないまま成人になりあとで問題に直面することなど、男児ならではの問題もあります。
妊孕性への影響は、がんの種類や症状、治療方法によって異なりますので、医師から十分な情報を得る必要があります。
男性の妊孕性の温存方法は?
男性の妊孕性温存のための方法として、精子凍結保存や精巣組織凍結保存があります。
精子凍結保存は、がんの治療を始める前に精子を採取し凍結保存する方法です。以下のケースで用いられます。
- 精巣摘除により精子形成の場がなくなる場合
- 抗がん治療によって精子形成が障害される場合
- 手術療法により精路閉塞がおこり閉塞性無精子症となる場合
- 手術療法による神経障害により射精障害となる場合
一方、精巣組織凍結保存は、がん治療を始める前に精巣組織を凍結する方法です。
思春期前の男児のための妊孕性温存治療として期待されていますが、まだ研究段階の温存方法で、日本で実施できる医療施設は限定的です。
男性の妊孕性の温存治療の医療費の目安とがん保険の活用方法
妊孕性温存治療の医療費や助成制度をもとにがん保険の保障金額の決め方について考えてみましょう。
妊孕性温存治療の医療費と助成制度
精子凍結保存の医療費は、筑波大学附属病院では次のようになります。
- 凍結開始時:50,000円(+消費税)
- 保存更新時:20,000円(+消費税)
- 融解費:5,000円(+消費税)
凍結開始時と保存更新時の費用には、1年間の維持管理費を含むとありますので、凍結開始時に50,000円、保存を継続する場合には1年毎に20,000円かかることになります。
医療機関によって費用は異なりますが、凍結開始時だけでなく、更新費用がかかる点は他の医療施設でも見られます。
妊孕性温存治療のあとは、がんの治療を行いますので、費用負担が気になります。
妊孕性温存治療に対しては、都道府県が助成制度を設けていることがあり、確認するといいでしょう。
ここでは神奈川県の助成制度を参考に紹介しておきます。
妊孕性温存治療に向けてのがん保険の活用方法
助成制度を利用できれば負担を軽減することができますが、がん治療に係る費用もありますので、出来るだけ金銭的な負担は軽減したいものです。
妊孕性温存治療は、保険診療の対象外ですので、健康保険等が使えず、全額自己負担となります。
また一般的にがん保険は、保険診療扱いの場合に対象となりますので、がん治療で受け取った入院給付金や手術給付金から捻出する必要があります。
そのため、がん保険の活用方法として、医療保険やがん保険に複数加入し、妊孕性温存治療の費用をカバーする方法ありますが、他の方法についても考えてみましょう。
「実額補償」型の保険を活用する
損保系の保険会社から販売されているがん保険は、「実額補償」型の保険で、保険診療の対象外(いわゆる自由診療)を含めてがん治療にかかった費用が補償されます。
例外となる費用もありますので、加入する際には確認しましょう。
がん診断給付金を活用する
がん保険は、入院給付金をベースとした保障にがん診断給付金が付加されているものが一般的ですが、なかにはがん診断給付金額を自由に決められる保険もあります。
がん診断給付金は、入院給付金や手術給付金とは異なり、がんと診断されたら受け取れますので、使い道を自由に決めることができます。
妊孕性温存治療の費用だけでなく、差額ベッド代や病院までの通院費用、食事代など含めて検討するといいでしょう。
関連記事:がん保険の一時金(診断給付金)はいくら必要?相場や所得税を解説します
まとめ
がん治療にかかる費用は、年齢や性別に加え、がんの種類や治療方法、症状によっても異なります。
そのため、保険や貯蓄でいくら準備しておけばいいか判断は難しいですが、「がん診断給付金100万円+貯蓄」というように、貯蓄と組み合わせて準備しておくと無理なく保険を活用することができるでしょう。
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