悪性黒色腫(メラノーマ)は悪質な皮膚がん?治療費やがん保険の保障の目安を解説
メラノーマという言葉を聞いたことはあるでしょうか。
悪性黒色腫という皮膚がんの一種で、進行が大変早く、早期に他の臓器に転移する恐ろしいがんです。
日本では発生数が少なく、希少がんに位置付けられています。
耳慣れない言葉ですが、本記事ではこのがんについて分かりやすく解説しながら、治療費がいくらになるのか、保障の目安までご紹介いたします。
皮膚とは
皮膚は人間の表面全体を覆っています。
総重量は約9キロ、面積は1.6㎡で、人体最大の臓器です。ほぼ畳一枚分の大きさですね。
外界の刺激から体を保護するだけでなく、感覚器官としての役割、水分喪失の防止、体温調節など、多くの機能を備えています。
皮膚の構造は表面に近い順に、「表皮(ひょうひ)」、「真皮(しんぴ)」、「皮下組織(ひかそしき)」の3層に分かれています。
表皮は平均2mmのとても薄い膜で、その中でさらに「角質層」、「顆粒層(かりゅうそう)」、「有棘層(ゆうきょくそう)」、「基底層(きていそう)」の4層に分かれます。
皮膚がんと悪性黒色腫(メラノーマ)
皮膚がんは皮膚悪性腫瘍とも呼ばれ、皮膚を構成する細胞から発生するがんのことで、発生した場所や、細胞の種類により区別されます。
皮膚がんには非常に多くの種類があり、その中でも発生頻度の高いのは基底細胞癌(きていさいぼうがん)、次に有棘細胞がん(ゆうしさいぼうがん)、そして悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ)、この3つを指して3大皮膚がんと称されます。
悪性黒色腫はメラノーマ又は単に黒色腫とも呼ばれ、発生件数は少ないものの、進行速度が早く、他の臓器への転移が多く見られる恐ろしいがんです。
表皮の基底層にあるメラノサイトという細胞が悪性化してがん化すると考えられています。
日焼けなどにより肌の色を黒くする、メラニン色素という言葉に聞き覚えがある人は多いのではないでしょうか。
メラノーマはこのメラニン色素を作る基底層にある皮膚の細胞です。
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悪性黒色腫(メラノーマ)の原因
残念ながら現時点で悪性黒色腫の原因ははっきり解明されていません。
人種によって発生率が異なることが分かっており、外的刺激や紫外線との関係が考えられています。
成人してからいつの間にか出来ていたほくろを針で刺したり、焼き切ったりと、刺激するような事は行ってはいけません。
また、日焼け止めクリーム(サンスクリーン剤)ががん予防に効果的との報告が見られていますので、積極的な利用を心がけましょう。
また、遺伝的な要因の関係性も指摘されており、白色人種では家族内で発生したり、皮膚の数カ所に多発したりする家系が存在するそうです。
悪性黒色腫(メラノーマ)の症状
悪性黒色腫は進行の速度が早いので、とにかく早期発見が治療の鍵となりますが、初期症状がほくろと非常に似ているため、素人には判断が難しいがんです。
初期症状は【ABCDE】の5つの特徴があると言われていますので簡単にまとめました。
- Asymmetry・・・左右非対称
- Border・・・輪郭がギザギザしている
- Color・・・色むらがある
- Diameter・・・大きい(6ミリ以上)
- Evolving・・・変化(大きさ、色、形状などが変化していく)
これらの代表的な症状の他にも、短期間に目立って大きくなったり、一部だけが硬くなっている場合も注意が必要です。
少しでもおかしいと思うようなほくろがあった場合、自己判断せず速やかに皮膚科の専門医を受診しましょう。
病型分類
悪性黒色腫は見た目の所見と、顕微鏡による所見、予後により大きく4つのグループ(病型)に分かれます。
- 悪性黒子型・・・高齢者に多く10年以上かけてゆっくり大きくなります。紫外線が関係していると考えられています。
- 表在拡大型・・・ほくろの細胞が悪性化すると考えられ、あらゆる年齢層の体幹や下腿に発生します。
- 結節型・・・全身どこにでも発生し、結節と腫瘍のみで色素斑(ほくろ状のもの)が生じません。
一般的に予後が良くない病型と言われています。 - 末端黒子型・・・足の裏や手足の爪に生じる病型。最初は不整形の黒色斑で始まり、数ヶ月から数年をかけて成長します。
日本人では最も多い病型です。
これら4つの型のほかに、口腔、鼻腔、口唇、眼瞼、外陰部などの粘膜にもがんが生じる場合があります。皮膚の表面に生じる悪性黒色腫よりも治療が難しい上、血管やリンパ管が豊富なため、一般的に予後がよくありません。
統計から見る発生率
皮膚がんの正確な発生率の統計は取られていませんが、悪性黒色腫は10万人に1人から2人発症すると言われています。
東京の人口が1000万人として、1年間に100〜200人が新たに悪性黒色腫と診断される計算になりますね。
年齢別に見ると、60代から増え始め、高齢者になるほど発症率が高くなります。
悪性黒色腫(メラノーマ)の治療法
がんの治療法は、がんの進行度や体の状態などから検討されます。
癌の進行の程度は「病期(ステージ)」として表され、悪性黒色腫の場合、がんの厚さと転移の有無により0期からⅣ期までの5つに分類されています。
Ⅲ期とⅣ期ではリンパ管や他の臓器への転移が見られるので、予後は悪いといえるでしょう。
治療の第1選択は手術による切除です。
目に見えるがんの部分だけを切除したのでは再発の可能性があるので、原発巣よりも1-2センチ範囲を広げて切除することが一般的です。
がんかどうか不明な場合は、切除後に詳しく丁寧に調べて診断される事もあります。診断が確定したのちに追加で手術を行うこともあるそうですよ。
手術で皮膚が広範囲にわたり損なわれた場合は植皮手術が必要となることも。主に耳の後ろや太ももの付け根、太ももの前や後ろの皮膚を移植します。
がんが再発したり、手術ができない場所に発生した時は薬物療法を用いることもあります。
現在では、抗がん剤に加えて、免疫チェックポイント阻害薬や、分子標的薬など選択の幅が広がっています。
最近になって放射線治療による効果が報告されているそうです。
また、再発や転移による症状を和らげる緩和医療としての効果も認められています。
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悪性黒色腫(メラノーマ)の治療費とがん保険の保障の費用目安、高額療養費制度について
悪性黒色腫の治療費はいくら?
悪性黒色腫だけではありませんが、がんと診断されたら心配になるのは治療費のことですよね。
がんの治療費は治療法によってまちまちですので一概には言えません。とはいえ費用面に不安があれば安心して治療を受けることはできません。
もしもがん保険でまかなうとしたらどれだけの保障が必要なのでしょうか。
皮膚の切除手術費用は平均して10万〜20万円です。
がんの厚さ、広さによって手術費用も変わるためもっと高くなる可能性もあります。
植皮手術を行った場合は30万円程かかる場合もあります。
薬物療法では使用する薬によりますが、数万から50万円以上かかることもあるそうです。
治療費が高くなってしまったら?高額療養費制度について
治療費が高額になった場合に、高額療養費制度というものがあります。
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これは、健康保険に加入していれば治療費の一部を負担してもらう制度です。
これ利用すれば、負担金額は収入によって変わりますが、1ヶ月の自己負担額が4万〜20万円に軽減されます。
しかし、高額療養費制度の対象外となる費用が必要となる事も多くあります。
先進医療の新しい治療法や治療薬を場合はこの制度の対象から外れ、100%治療費を自己負担しなければなりません。
また入院中に個室を希望した場合の部屋代や、入院中の病院食も自己負担となります。
さらに、治療や退院後の検査のための通院には交通費もかかりますよね。
もしもがん保険を検討するなら、自分がどのような環境で治療を進めていきたいかのイメージを持つことが大切となります。
例えば個室を利用しない場合の入院保険の目安は1日あたり7,000円〜10,000円が平均的で、個室利用の時は15,000円〜20,000円程の保障があれば安心でしょう。
まとめ
3大皮膚がんの中で最も悪性度が高いと言われる悪性黒色腫(メラノーマ)。
ほくろとの見分けがつきづらいので早期発見が難しい上に進行速度が他の皮膚がんよりも早い恐ろしいがんですね。
いざという時、安心して最善の治療方法を選択するためには費用面での安心感が欲しいものです。
がん保険の事で悩んだり、検討したいと思ったら独立系のファイナンシャルプランナーに相談してみるのをおすすめします。中立的な立場で的確なアドバイスをしてもらえますよ。