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膵臓がんの医療費はいくら必要?治療費をがん保険で備える場合の目安を解説

膵臓がんの医療費はいくら必要?治療費をがん保険で備える場合の目安を解説

早期発見が難しいとされる「膵臓(すいぞう)がん」は、治療にはどの程度の費用が必要になるのでしょうか。

この記事では、手術や抗がん剤治療にかかる医療費の相場と、高額療養費制度を利用した場合の自己負担の目安をデータで解説します。

また、全額自己負担となる先進医療や自由診療、差額ベッド代など「保険適用外の費用」のリスクも紹介します。

万一の際に治療の選択肢を狭めないために、がん保険の適切な保障額を選ぶ際のポイントを解説します。

この記事のポイント

  • 膵臓がんの治療には手術や化学療法、放射線治療が用いられ、公的保険制度が適用される治療であれば「高額療養費制度」の利用でひと月の自己負担額を一定の範囲内に抑えることができる。
  • 膵臓がんの治療で陽子線治療などの「先進医療」や未承認薬を使う「自由診療」、入院時の「差額ベッド代」などは全額自己負担となるため、数百万円単位の高額な出費となるリスクがある。
  • 膵臓がんにがん保険で備える際は、入院日数の短期化に合わせて入院給付金だけでなく、まとまったお金を受け取れる「がん診断一時金」や、「先進医療特約」「自由診療保障」の付加も検討するとよい。

膵臓がんとは?

膵臓がんは、膵臓細胞から発生するがんです。ほとんどが膵管の細胞から発生します。

膵臓は、長さ20センチほどの臓器で、胃の後ろにあります。

頭部・体部・尾部の3部位に分けられ、その中を膵管(細い管のようなもの)が網目状に走っています。

膵管に発生するがんは、膵管上皮細胞の「異形成」や「過形成」といった前がん状態を経て、がん化していきます。

そのため、膵管上皮内がんから浸潤がんへ進展していくことが一般的だと考えられています。

膵臓がんの原因と症状

膵臓がんの発生原因としては、以下のような点が指摘されています。

  • 慢性膵炎
  • 糖尿病
  • 血縁のある家族内に、膵臓がんの既往がある人がいる
  • 肥満
  • 喫煙 など

膵臓は胃の後ろの体の深い部分にあるため、膵臓がんを発症しても初期段階では無症状であることがほとんどです。

そのため膵臓がんは、早期発見が極めて難しいがんであるといわれています。

膵臓がんが進行すると、以下のような症状があらわれます。

  • 上腹部痛
  • 体重の減少
  • 黄疸
  • 食欲減退
  • 腰、背中の痛み
  • 腹部膨満感 など

膵臓がんの組織型分類と病期分類

膵臓には「外分泌機能」と「内分泌機能」という2つの機能があります。

外分泌機能は膵液の産生を促して、食べ物の消化をサポートする役割を担っています。

一方で内分泌機能は、インスリンをはじめとするホルモンを産生する役割を担っています。

膵臓がんは、「外分泌系のがん」と「内分泌系のがん」の2種類に大別されます。

発生頻度が高いのは外分泌系のがんで、全体の95%を占めます。

また、膵臓がんは手術により採取したがん細胞を組織学的に検査することにより、「上皮性腫瘍」と「非上皮性腫瘍」に分類することもできます。

そして上皮腫瘍はさらに、「内分泌腫瘍」「外分泌腫瘍」「併存腫瘍」「不明な上皮性腫瘍」に分類されます。

また、膵臓がんの治療方法を決めるうえでも大切なのが、「病期(ステージ)」の判定です。

膵臓がんの進行の程度は、腫瘍の大きさや広がり、転移の有無などによって下記のように分類されます(UICC分類)。

がんの大きさ

領域リンパ節への転移

離れた臓器への転移あり

なし

1~3個あり

4個以上あり

2㎝以下

Ⅰ(A)

Ⅱ(B)

2㎝超4㎝以下

Ⅰ(B)

4㎝超

Ⅱ(A)

腹腔動脈・上場間膜動脈・総肝動脈へがんが及ぶ

 

膵臓がんの発症率と罹患リスク

国立がん研究センターが発表した2021年のデータによると、1年間に膵臓がんを発症する確率は、人口10万人に対して男性が37.6人、女性が35.5人でした。

そのため、膵臓がんは男性のほうが女性よりも、発症率がやや高い傾向にあります。

また、生涯において膵臓がんになる確率は、男性・女性ともに2.7%(37人に1人)でした。

膵臓がんの治療方法

膵臓がんの治療方法には、以下のような選択肢があります。

  • 外科治療
  • 化学療法
  • 放射線療法

腫瘍を切除可能な場合は、外科治療を基本に薬物療法や放射線治療を組み合わせて治療することが一般的です。

一方で、腫瘍が他臓器に転移していたり、大事な血管を巻き込んでいたりする場合は、放射線治療や薬物療法による治療が行われます。

外科治療

膵臓がんの治療においては、まず検査によって腫瘍の切除が可能かどうか判定します。

一般的に、Ⅱ期~Ⅲ期の間が切除可能境界となっており、他臓器への遠隔転移があるⅣ期になると、切除不能となります。

手術は、腫瘍がある位置や広がり方などを考慮したうえで、以下のような方法により行われます。

  • 膵頭十二指腸切除術:十二指腸、胆のう、胆管を含め、膵頭部を切除
  • 膵体尾部切除術:膵臓体部と膵臓尾部を切除
  • 膵全摘術:膵臓を全て摘出する
  • バイパス手術:腫瘍で十二指腸が塞がっている場合に、胃と小腸をつないで食事をとれるようにする

化学療法

化学療法では、細胞障害性抗がん剤を使った治療が行われます。

手術後に実施することで、膵臓がんの再発リスクを低くできるほか、生存期間を延長する効果もあると考えられています。

放射線療法

膵臓がんに対する放射線治療には、「化学放射線療法」と「症状緩和を目的とした放射線治療」の2種類があります。

化学放射線療法とは、化学療法と放射線治療を組み合わせた治療で、がんが大事な血管を巻き込んでいる場合などに行われます。

これに対して症状緩和を目的とした放射線治療は、膵臓がんの骨転移などによる疼痛をはじめとする諸症状を緩和するために行われます。

膵臓がんの治療費はどのくらいかかる?

厚生労働省が実施した医療費給付実態調査によると、2023年度に膵臓がんを含む悪性新生物(腫瘍)の治療を受けた患者の自己負担額は、以下の通りです。

入院

入院外(通院)

1件あたり

215,490円

22,719円

1日あたり

19,743円

14,346円

※「その他の悪性新生物」のデータを参照
※金額は公的保険制度の適用後(3割自己負担)

上の表からわかる通り、入院1件あたりでは約22万円、1日あたりでは約2万円かかることがわかります。

近年、入院日数は短くなる傾向にありますが、術後の経過によっては長期入院になることもあります。

退院後も通院治療を継続することが多く、治療費の負担が増える可能性も考えられます。

ただし、公的保険制度が適用される治療を受けた場合、窓口での自己負担額は医療費全体の3割(70歳未満の場合)となります。

さらに、1カ月間の自己負担額が一定の限度額を超えた場合には、高額療養費制度により超過分が払い戻されます。

高額療養費制度(こうがくりょうようひせいど)とは?

1カ月間(1日から月末まで)の医療費の自己負担額が一定の限度額を超えた場合に、超過分が健康保険から払い戻される制度。

なお、自己負担限度額は年齢と所得によって異なります。

膵臓がんの手術費用や抗がん剤の費用は高額になりやすいものの、高額療養費制度を活用すれば、ひと月あたりの実際の自己負担を限度額の範囲内に抑えることが可能です。

さらに、事前に「限度額適用認定証」を取得しておけば、窓口での支払い自体を自己負担限度額内にとどめることもできます。

なお、マイナンバーカードがある場合は、基本的に申請不要です。

膵臓がんの治療で公的保険制度の適用外となる費用とは?

膵臓がんの治療で、公的保険制度の適用外となるのは以下の費用です。

  • 先進医療の技術料
  • 自由診療の費用
  • 患者申出療養の費用
  • 差額ベッド代
  • 交通費・食事代 など

特に高額になりやすいのは、先進医療や自由診療、患者申出療養の費用です。

先進医療(せんしんいりょう)とは?

厚生労働大臣が定めた高度な医療技術を用いた療養。技術料は全額自己負担となる。

2025(令和7)年6月30日時点での実績では、陽子線治療で約278万円、重粒子線治療で約319万円がかかるとされています(1件あたり)。

なお、先進医療では、すべてのケースで全額自己負担になるわけではなく、条件を満たせば保険適用となる場合もあります。

また、自由診療は、国内で未承認の薬剤や治療法を用いる際に活用されるもので、全額自己負担が必要です。

患者申出療養は、患者自身が希望する未承認の治療について、国に申し出て受ける制度です。

先進医療と同様に、技術料は保険適用外となります。

差額ベッド代は、個室などを希望して利用した場合に発生する費用で、1日あたり平均6,862円とされています。

関連記事:差額ベッド代をわかりやすく解説!医療費控除や高額療養費は適用される?

膵臓がんにがん保険で備える際の保障額の目安はいくら?

膵臓がんをはじめとする、がんの治療費にがん保険で備える場合、その保障額はどのくらいを目安に考えればいいのでしょうか。

まず、基本保障である入院給付日額については、1万円前後あるとよいでしょう。

もしすでに医療保険に加入している場合は、5,000円前後を目安に考えましょう。

上述のように、近年は入院日数が短縮化傾向にあり、悪性新生物(腫瘍)による平均入院日数は、14.4日となっています。

そうすると、入院給付日額を高く設定しても、入院日数が少なく、思ったほど多くの給付金を受け取れないケースも想定されます。

がん診断一時金特約で高額な治療費に備える

高額な治療費にもしっかり備えるには、がんと診断された場合にまとまった一時金が受け取れる「がん診断一時金特約」を付加することをおすすめします。

その際の給付金額は、100~300万円程度を目安に考えましょう。

また、より手厚い保障を用意しておきたい方は、「特定疾病保障定期保険」に加入するのもひとつの選択肢です。

先進医療特約の付加もおすすめ

がん治療では、先進医療に指定されている治療法を選択できる場合があります。

上述のように、先進医療にかかる技術料は患者が全額自己負担しなければなりません。

そのため、がん保険に加入する際は、実費が保障される先進医療特約も忘れずに付加しておくことをおすすめします。

自由診療に備えられる保障も検討を

先進医療に加えて、もうひとつ備えておきたいのが自由診療にかかる費用です。

膵臓がんは早期発見が難しく、進行した状態で見つかるケースも少なくありません。

そのため、標準治療以外の選択肢を検討する場面が出てくる可能性があります。

近年では、一部のがん保険に「自由診療保障」や「がん自由診療特約」が用意されています。

国内未承認の抗がん剤治療などにかかる費用を、カバーできる商品も登場しています。

保険適用外の治療費は高額になるケースが多いため、こうした保障を付加しておくことで、いざというときの治療の選択肢を広げられるでしょう。

ただし、自由診療を保障する特約は保険会社や商品によって内容が大きく異なる点に注意が必要です。

たとえば、保険会社が指定する病院での受診が給付条件となっているケースや、あるいは給付金の支払いに年間の上限額が設けられているケースなどがあります。

加入を検討する際は、対象となる治療範囲や指定病院の有無、給付条件の詳細を事前に確認しておくことが大切です。

関連記事:がんの治療費と自己負担額は平均でいくら?手術や抗がん剤治療などの治療別に解説

まとめ

膵臓がんは体の奥深くにあるため初期症状が出にくく、見つかったときには進行しているケースも少なくありません。

公的保険制度の高額療養費制度を利用すれば、標準治療における毎月の自己負担額は一定に抑えられます。

しかしそこで問題となるのは「先進医療」や「自由診療」といった保険適用外の治療費です。

これらは全額自己負担となるため、経済的な理由から希望する治療を諦めざるを得ない事態も起こり得ます。

そうした後悔をしないためにも、がん保険を選ぶ際は「がん診断一時金」で当面の資金を確保しつつ、「先進医療特約」や「自由診療保障」などで最新の治療に備えておくことが大きな安心に繋がります。