個人年金保険がおすすめしないと言われる理由とは?必要な人・不要な人も解説
老後のために備えたいけれど、どのような商品で備えれば良いかわからない、という人は多いのではないでしょうか。公的年金以外の老後資金の準備方法として個人年金保険が代表的ですが、積立利率が低く、現在は昔ほど人気がありません。個人年金保険がおすすめされない理由や、個人年金保険が必要な人、不要な人について本記事ではご紹介いたします。
個人年金保険とは?
個人年金保険とは、老後資金に備えるための年金保険です。
国が運営主体である「公的年金」の「国民年金」や「厚生年金」とは異なり、いわゆる自助努力のひとつです。
自助努力(じじょどりょく)とは
自助努力とは、他を頼らず、自分の力だけで目標を達成しようとすることを意味します。
個人年金保険は、運用利率による分類で、
- 定額個人年金保険(予定利率で将来の運用成果が確定している)
- 変額個人年金保険(特別勘定で運用するため、将来の運用成果が確定しない)
運用通貨による分類で、
- 円建て個人年金保険(日本円で運用する)
- 外貨建て個人年金保険(主に、米ドル、ユーロ、豪ドルで運用する)
などに分類することができます。
なお、本記事は、一般的な日本円で運用される定額個人年金保険を中心に解説します。
関連記事:変額個人年金保険とは?リスクや税金控除をカンタン解説
外貨建て保険とは?3つの種類と5つの選び方のポイントについて解説
かつては老後資金に個人年金保険がおすすめされていた理由
老後資金の自助努力のひとつとして、個人年金保険がおすすめされていた時代がありました。
理由としては、
- 契約時の積立利率(予定利率)が高かった
- 返戻率が高かった
- 資金計画が立て易い
- 保険料控除で節税効果がある
が理由としてあげられます。
積立利率(予定利率)が高かった
かつて、積立利率(予定利率)が高い時代がありました。
予定利率(よていりりつ)とは
予定利率とは、保険会社が保険料を運用するときに契約者に約束する利率で、保険会社が保険契約時に決めています。
予定利率が高い保険契約は、保険料の割引率が高くなるため、保険料が安くなり、予定利率が低い保険契約は、保険料の割引率が低くなるため保険料が高くなります。
予定利率は、保険商品ごとに、保険会社が設定するものですが、設定をする際の参考とする指標として「標準利率」というものがあります。これが現在では0%となっています。
関連記事:生命保険における予定利率と標準利率の違いは?利率の推移と今後の展望
返戻率が高かった
返戻率が高かった時代があり、この返戻率というのも、前述の積立利率(予定利率)に関連しています。
返戻率(へんれいりつ)とは
返戻率とは、払い込んだ保険料の総額に対して、手元に戻ってくる保険金・給付金等の割合のこと。
個人年金保険における返戻率とは、
受け取る年金額の総合計額 ÷ 払込保険料総合計額 × 100
で求めることができます。
資金計画が立て易い
円建ての定額個人年金保険は、据置期間(保険期間)を通じて、予定利率が約束されているため、満期を迎えたときに得られる年金額が契約時点で確定しています。そのため、公的年金と合わせて、老後資金の計画が立て易いといえます。
保険料控除で節税効果がある
個人年金保険料控除が適用される条件を満たしている場合、新制度での、個人年金保険料控除の上限は、所得税4万円、住民税2.8万円です。
関連記事:個人年金保険料控除とは?個人年金保険料税制適格特約の条件と注意点は?税金はいくらお得になる?
近年個人年金保険がおすすめされない理由とは?
ところが、最近では、個人年金保険はおすすめしないと言われることが多くなっています。
理由としては、
- 途中解約すると元本割れする可能性がある
- インフレリスクがある
- 保険会社倒産の可能性がある
が考えられます。
途中解約すると元本割れする可能性がある
これは個人年金保険の契約に限定した話ではなく、保険契約全般で言えることですが、解約返戻金がある保険契約について、契約直後など途中解約をした場合、解約返戻金はないか、あってもごくわずかになります。払い込んだ保険料分を取り戻すことはできません。
インフレリスクがある
インフレとは
インフレとは、インフレーション( inflation)の略で、モノの値段が上がり続ける状態のこと。
モノの価値が上がり続ける状態が続くと、相対的に、お金の価値が下がります。
円建ての定額個人年金保険の契約では、あらかじめ予定利率で運用成果が約束されているため、その運用成果を上回るようなインフレが起きた場合に対応しきれないというリスクがあります。
保険会社の倒産の可能性がある
経済環境・戦乱など大きな情勢の変化が起きた場合など、保険会社が倒産する可能性があります。
特に、円建ての定額個人年金保険は、老後資金の形成が目的となっているため、据置期間(保険期間)が長期にわたる可能性が高く、保険会社の倒産というリスクもあるということを念頭においておきましょう。
関連記事:生命保険会社の金融機関格付けとソルベンシーマージン比率
個人年金保険が必要な人
ここまでで円建ての定額個人年金保険についてみてきました。
それでは、円建ての定額個人年金保険が必要な人とはどのような人なのでしょうか?
こんな方におすすめ
- 預貯金が苦手な人・預貯金代わりにじっくり貯めたい人
- 老後資金を貯めたい人
- 少しでも節税したい人
預貯金が苦手な人・預貯金代わりにじっくり貯めたい人
円建て定額個人年金保険は、あらかじめ将来受け取る年金額が約束されるタイプの年金保険なので、預貯金をコツコツと積み立てていくことが苦手な人や、利率の低い預貯金の代わりにじっくり貯めたいと考えている人におすすめです。
老後資金を貯めたい人
円建て定額個人年金保険は、本来の目的は、公的年金では足りない部分もしくはゆとりある老後生活のための老後資金を貯めることを目的としているため、老後資金を計画的に貯めたいと考えている人におすすめです。
少しでも節税したい人
保険料控除制度を活用して少しでも節約しながら貯めたいと考える人には、個人年金保険はおすすめです。
個人年金保険が不要な人
こんな方には不要
- 公的年金と預貯金・退職金等で生活が賄える人
- 公的年金以外に定期的な収入がある人
公的年金と預貯金・退職金等で生活が賄える人
公的年金と預貯金・退職金等で老後の生活資金を賄えるのであれば、個人年金保険で老後資金を準備する必要はありません。ただ、それら資金で生活できるかどうかは、年金や退職金がいくらなのか、把握しておく必要があります。
退職金は勤務先の退職金規定で調べることができますし、公的年金は、公的年金シミュレーターやねんきんネットで調べることができます。一度、確認しておくと良いでしょう。
関連記事:老後資金の準備方法・個人年金保険の活用を年代別で解説!
公的年金以外に定期的な収入がある人
公的年金以外に定期的な収入があり、老後の生活資金を賄えるのであれば、円建ての定額個人年金保険に入るメリットはあまりないと言えるでしょう。
関連記事:学資保険や個人年金保険やNISAを活用!教育資金や老後資金の準備方法
個人年金保険以外の資産形成方法
国が個人の資産形成を促すために普及を推進している制度として、『iDeCo(イデコ)』と『NISA(ニーサ)』があります。そのほか、企業が設置している『勤労者財産形成年金貯蓄(財形年金貯蓄)』などがあげられます。
iDeCo(イデコ)
iDeCo(イデコ)とは
iDeCo(イデコ)とは、個人型確定拠出年金のことで、毎月一定の資金を積み立て(拠出)、様々な税制優遇を受けつつ、老後の資金を準備するための年金制度です。
公的年金とは違って、加入するかどうかは自由で、加入の申込、掛金の拠出、掛金の運用の全てを自分で行い、掛金とその運用損益との合計額をもとに給付を受けることができます。
※出典:iDeCo公式サイト: iDeCoってなに? > iDeCo(イデコ)の特徴?
NISA(ニーサ)
NISA(ニーサ)とは
NISAとは、Nippon Individual Savings Accountの略で、NISA口座(非課税口座)内で、毎年一定金額の範囲内で購入した金融商品から得られる利益が非課税になる、つまり、税金がかからない制度です。
NISAは、一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAの3つがありますが、2024年からは一般NISAを引き継ぐ形の「成長投資枠」とつみたてNISAを引き継ぐ形の「つみたて投資枠」の2つの枠からなる新しいNISAがはじまります。ジュニアNISAは2023年で終了です。
※出典:金融庁 NISA特設ウェブサイト
勤労者財産形成年金貯蓄(財形年金貯蓄)
財形年金貯蓄(ざいけいねんきんちょちく)とは
財形貯蓄制度のひとつで、自分で決めた所定額を給与天引きにより貯蓄し、60歳以降に5年以上の期間にわたって年金として受け取るものです。
満55歳未満の人が契約することができ、 財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄合わせて元利合計550万円まで(保険は払込額385万円まで)の利息が非課税になります。
※出典:厚生労働省 財形貯蓄制度
ココに注意
関連記事:個人型確定拠出年金『iDeCo』の特徴と3つの節税ポイント、NISA、個人年金保険の活用方法を解説
まとめ
円建ての定額個人年金保険がおすすめされていた理由や、近年おすすめされなくなった理由などについてご紹介いたしました。
老後のための資産形成として預貯金だけでなく、個人年金保険を活用しつつ、勤務先に制度があれば「財形年金貯蓄」、そのほか、「iDeCo」や「NISA」などうまく活用して、自分の状況にあった老後資金づくりをしていきましょう。