持病があっても入れる保険(引受基準緩和型の医療保険)の必要性
持病がある人は、加入できる医療保険はあるのか、そもそも医療保険に加入したほうが良いのか、疑問に思ったことはないでしょうか。この記事コラムでは、持病がある人でも入れる医療保険の内容や、それら保険のメリット・デメリットについてお伝えします。保険加入検討の参考にしてください。
保険は持病があると入れない?
持病があると、医療保険に加入できないのでは?と考えてしまうかもしれませんが、一律に保険に加入できないというわけではありません。医療保険に加入する際は、健康状態等について告知をしますが、この告知の該当状況により保険加入の可否が判断されます。
告知の内容は、保険会社によって異なるものの、一般的には下記のような内容です。
- 過去3ヶ月以内に医師の診察・検査・治療・投薬のいずれかを受けましたか。
- 過去5年以内に病気やケガで7日以上の入院をしましたか。
- 過去5年以内にガンや心筋梗塞、うつ病など保険会社所定の病気で、医師の診察・検査・治療・投薬を受けましたか。
- 過去5年以内に保険会社所定の病気以外で7日以上の期間にわたり、医師の診察・検査・治療・投薬を受けましたか。
- 過去2年以内に健康診断や人間ドックで、要再検査など異常を指摘されたことはありますか。
- 今までに、がんと診断されたことはありますか
- 視力・聴力などの障害はありますか。
- 現在妊娠していますか。
一般の医療保険に加入する際は、これら告知に回答し、告知に該当した場合は治療期間や 治療内容等についてさらに詳しく告知書に記入することになります。しかし、告知に該当したとしても、ただちに加入できないわけではなく、特定の病気や身体の特定の一部を一定期間、保障の対象から外す「特定疾病・特定部位不担保」を条件として加入できたり、通常保険料に割増保険料を上乗せすることで加入できたりすることもあります。これらの条件は、「この病気は部位不担保◯年」といった具合に一律で内容が決まっているわけではありません。告知内容によって保険会社が個々に判断するため、同じ病気でも人によって条件が異なることもあります。同じ病気を持っている人が、医療保険に加入できた、できなかったという話をしていても、自分には当てはまらない可能性があることを覚えておきましょう。
持病とはどこまでの病気を指す?
ところで、持病と言っても症状は様々です。一般的に持病とは、なかなか治らない慢性的な病気や症状を言いますが、医療保険においては、どのような病気を指すのでしょうか。保険会社や商品ごとに異なりますが、下記の病気が、一例として挙げられます。
- 心臓:狭心症、心筋梗塞、不整脈
- 脳:脳内出血、脳梗塞
- 精神・神経:統合失調症、うつ病、てんかん、認知症、自律神経失調症
- 肺・気管支:ぜんそく、慢性気管支炎、肺結核
- 胃腸:胃潰瘍、腸閉塞
- 肝臓・胆嚢:肝機能障害、脂肪肝
- がん:がん(上皮内新生物含む)、白血病、肉腫、ポリープ
- 目・耳・鼻:白内障、緑内障、メニエール病、中耳炎
- その他:糖尿病、こうげん病、不妊症
これら病歴がある場合は、告知に該当する可能性が高くなります。しかし、先ほど告知の内容をお伝えしたように、過去5年以内に診察を受けたなど期間限定で質問されることが一般的です。
また、今までお伝えした内容は一般の医療保険に関する内容です。加入を検討する余地はありそうだという人もいれば、やはり厳しそうだという人もいることでしょう。しかし、もし、厳しくても、次にお伝えする「持病があっても入れる保険」なら検討の余地はあるかもしれません。
持病があっても入れる保険とは「無選択型保険」「引受基準緩和型保険」です。一般的な医療保険と同じく1日あたりの入院給付金や手術給付金、先進医療給付金などが保障されます。
まず、無選択型保険とは、健康状態の告知や保険会社の審査もなく加入できる保険です。保障期間は一定期間の定期型で、更新するたびに保険料は上がります。また、更新できる年齢も最長75歳までなど年齢に上限が設けられていたり、病気に関しては加入後90日など一定期間保障対象外となっていたりすることが一般的です。さらに、治療中の病気や既往症は保険金支払いの対象外です。
一方、引受基準緩和型保険とは、加入する際の条件を緩やかにしている保険をいいます。引受基準緩和型保険は、定期型、終身型どちらもあり、契約前の病気や既往症も保険金支払いの対象です。
引受基準緩和型保険の告知内容は、保険会社によって異なるものの、告知の数が一般的には3つと少なくなっています。主な内容としては以下の通りです。
- 過去3ヶ月以内に医師に入院・手術・検査をすすめられましたか。
- 過去2年以内に入院・手術をしたことがありますか。
- 過去5年以内にガン、肝硬変、認知症、アルコール依存症、統合失調症で医師による診察を受けましたか。
先ほど、一般的な医療保険の告知内容をお伝えしましたが、それと比べるとずいぶん項目が少ないのが分かるかと思います。少なくなることで、加入へのハードルが低くなりますね。
関連ページ:保険に入れない病気一覧・持病があって保険に入れない場合の対処法をご紹介
持病があっても保険に入るメリット・必要性
持病で保険に入れないと思っていた人にとっては、保険に加入できる入れることは安心感につながり心理的負担は緩和されるでしょう。持病があるからこそ、入院や手術をすると費用がかさむことを身をもって実感していることと思いますし、引受基準緩和型であれば、加入前からの持病も保障対象になりますから、特に今後、入院や手術が予想されるなら、入るメリットは大きいでしょう。しかし、一方で高額療養費制度があるため、医療保険に入る必要性があるのか、疑問に思う人もいるかもしれません。ここで、高額療養費制度について簡単に説明すると、高額療養費制度とは月初から月末までの1ヶ月にかかった医療費に上限が設けられている制度です。上限額は年齢や所得によって異なりますが、69歳以下の人の場合、所得と上限額の関係は以下の通りです。
所得区分 | 自己負担上限額 |
---|---|
住民税非課税者 | 35,400円 |
〜年収370万円 | 57,600円 |
年収370〜770万円 | 約8〜9万円 |
年収770〜1160万円 | 約17万円 |
年収1160万円〜 | 約25万円 |
※厚生労働省保健局「高額療養費を利用される皆さまへ」を参考に筆者作成
医療費が上記の自己負担上限額を超えたとしても申請すれば戻ってきますが、対象となる医療費はあくまで 健康保険適用の医療費です。病院までの交通費や付き添いの人の食事代はもちろん、本人の差額ベッド代や食費、健康保険適用外の医療費は高額療養費の対象とはなりません。
したがって、ガン治療などで健康保険適用外の自由診療や先進医療などを受けた場合は、全額自己負担ということになり、数百万円の医療費がかかる可能性もゼロではありません。引受基準緩和型の保険には、がん診断給付金や三大疾病一時金などオプションで追加することもできますから、健康保険適用外の医療費負担のリスクを減らすというメリットもあります。
では、持病があっても入れる保険にはどのようなものがあるでしょうか。一例を挙げます。
・チューリッヒ生命・・・「終身医療保険プレミアム Z ワイド」
三大疾病の一時金や払込免除特約、女性特有の疾病で給付金上乗せなど、ニーズに合わせて保障のカスタマイズができるのが特徴です。
・ネオファースト生命・・・「ネオdeいりょう 健康プロモート」
健康割引があり、所定の要件を満たすと保険料が割引になるのが特徴です。
・アクサダイレクト生命・・・「アクサダイレクトのはいりやすい医療」
基本の保障は入院給付金と手術給付金のみと至ってシンプルです。自分の判断に応じてその他のオプションをつけられます。
持病があっても入れる保険のデメリット
引受基準緩和型や無選択型の保険は、一般の医療保険に比べ保険料が高いことが、なんといってもデメリットでしょう。保険料に差があるのは、保険金支払いの可能性が高い人とそうでない人を同じ条件で保険加入させてしまうと加入者間の公平性が保てなくなるためです。
高い保険料を払ってまで契約する価値はあるのか考えたいところです。保険料の支払いが負担になり、見直しをせざるを得ないことになると本末転倒です。年齢に応じて保険料は高くなりますから、見直すことによって保障内容が薄くなってしまうかもしれません。医療保険は終身、数十年契約していくものですから、今の家計状況だけでなく、これからの人生ずっと払っていけるのかも判断する必要があるでしょう。
そのほか、商品によっては契約から一定期間、保険金削減期間が設けられていることがあります。 削減期間内だと支払事由に該当しても、満額の保険金は支払われませんから確認が必要です。
また、商品によっては、がん保障や特定疾病保障など特約を追加できるとはいえ、告知項目が増えるのが一般的です。該当すると希望する保障内容で契約できない可能性もありますので、。この点はれらは、デメリットと言えるでしょう。
まとめ
持病があっても引受基準緩和型や無選択型保険など、加入できる医療保険の選択肢はあります。しかし、これら保険にはメリットもあればデメリットもあります。持病の状況や年齢、家族構成や今後のライフプランによって医療保障の必要性は人それぞれです。正解はありませんから、自分にとってのメリット・デメリットを知り、納得できる結論を出してください。