かかりつけ医とは?どうやって決める?総合病院などの主治医との違いや健康保険の自己負担額との関係
医療において、かかりつけ医という言葉をよく聞くことがあります。しかし、かかりつけ医とは具体的に何を指すのでしょうか?かかりつけ医と総合病院にいる主治医との違いは何でしょうか?ここでは、かかりつけ医について詳しく解説していきます。
かかりつけ医とは?何をもってかかりつけ医と呼ぶのか?
「かかりつけ医」とはどのような医師を指すのでしょうか?
日本医師会のHPでは、
「かかりつけ医」とは、患者さんが医師を表現する言葉です。
「かかりつけ医」は患者さんの自由な意思によって選択されます。どの医師が「かかりつけ医」かは、患者さんによってさまざまです。患者さんにもっともふさわしい医師が誰かを、数値化して測定することはできません。だからこそ、わたしたち医師は、心をこめてひとりひとりの患者さんに寄り添います。そうして患者さんに信頼された医師が、「かかりつけ医」になるのです。
※出典:公益社団法人 日本医師会 国民の信頼に応えるかかりつけ医として
と表記されています。
2013年8月8日の「医療提供体制のあり方 日本医師会・四病院団体協議会合同提言」によると、
なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師。
と定義されています。
かかりつけ医制度と健康保険の自己負担額の関係
実は、2018年4月の診療報酬改定で「かかりつけ医制度に関する診療報酬」が新設されました。この制度は、在宅医療の提供や24時間対応などの一定水準を満たす診療所はかかりつけ機能があるとして報酬を上乗せすることができます。「かかりつけ医」に認定された医療機関では、初診時に患者に対して「機能強化加算」として80点分の診療報酬が請求できるようになりました。
1点=10円のため、かかりつけ医を受診した患者は、800円の診療報酬が加算され請求されることになります。窓口で払う金額は、健康保険の自己負担額は3割の被保険者の場合、240円の負担増です。
小児かかりつけ医制度
2018年4月の「かかりつけ医制度」導入に先駆けて、2016年に6歳未満のこどもに対して「小児かかりつけ医制度」が導入されています。強制ではなく、任意のものですが、小児科をかかりつけ医として登録することで、時間外に万が一具合が悪くなった場合に対応してもらうことができる等のメリットがあります。「小児かかりつけ医制度」については、登録できるのは一つの病院のみとなります。
また、「かかりつけ医制度」と同様に、健康保険上診療報酬が加算されるため、窓口の支払いが負担増となる可能性があります。小児かかりつけ医制度の届出を出している小児科は、院内に掲示がされています。また、病院によっては、この制度を利用していない小児科もあります。詳しくは、ご利用されている病院にご確認ください。
厚生労働省の調査※によると、機能強化加算を届け出ている医療機関数は2022年で計14,742施設、うち診療所が13,438件、病院が1,304件です。
※厚生労働省「主な施設基準の届出状況等」
かかりつけ医をもつメリット
かかりつけ医をもつことで、次のようなメリットが考えられます。
かかりつけ医をもつメリット
- 健康状態に関する情報を常に把握してもらえる
- 病気の予防や早期発見・早期治療につながる
- 緊急時にも迅速かつ適切な対応が期待できる
- 症状に応じた専門家の紹介がスムーズ
健康状態に関する情報を常に把握してもらえる
日常的に、かかりつけ医として受診することで、自分の病歴やアレルギー等の情報を把握してもらえるため、的確な診療が期待できます。
病気の予防や早期発見・早期治療につながる
日常的に、かかりつけ医として受診することで、必要に応じた健康アドバイスや指導を受けることができ、疾患の早期発見や治療にもつながります。
緊急時にも迅速かつ適切な対応が期待できる
日常的に、かかりつけ医として受診することで信頼関係が構築されているため、緊急時にも迅速かつ適切な対応が期待できます。
症状に応じた専門家の紹介がスムーズ
日常的に、かかりつけ医として受診することで、健康状態を詳しく知っているため、必要に応じて適切な専門医等を紹介してもらえます。
かかりつけ医と総合病院にいる主治医との違いとは?
かかりつけ医
かかりつけ医は、診療所やクリニック等の小規模な医療機関に所属していることが多く、患者の日常的な健康管理を行い、必要に応じて専門医等への紹介を行います。予防医療等も含め、患者との信頼関係が重要になります。
主治医
主治医は、特定の病気の治療に対して専門性が高く治療にあたり主に責任を負う医師です。入院時には患者の情報を把握するために病歴や検査結果等を取得し、疾患の治療を専門的継続的に行います。
かかりつけ医と主治医の比較表
かかりつけ医 | ・日常的な診察を主にし、健康管理等を中心に行う。 ・診療所やクリニック等に所属し、地域に密着している ・必要に応じて専門医への紹介を行う ・患者との信頼関係を築くことを大切にしている |
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主治医 | ・病気やケガの専門的な治療を行う傾向が高く治療にあたり主に責任を負う ・患者の情報を把握するため、病歴や検査結果等を取得し、専門的継続的な治療を行う |
かかりつけ医はどうやって決める?
かかりつけ医は、前提として、自分が信頼できると思った医師であれば、その人がかかりつけ医だといえます。また、受診する内容、たとえば、眼科であったり、耳鼻科であったり診療科目ごとのかかりつけ医がいても問題ありません。「かかりつけ医」だからといって、一人でなくてはいけないということもありません。
上記を踏まえた上で、かかりつけ医を選ぶ際には、以下のポイントに注意すると良いでしょう。
かかりつけ医を選ぶポイント
- 通いやすさ
- 医師の専門性
- スタッフの対応
- コミュニケーションの取りやすさ
- 口コミ
通いやすさ
通院するためには、場所や交通手段、診療時間、予約の取りやすさなどが重要なポイントです。通院の頻度や治療期間によっては、通いにくいと継続が難しくなる場合もあります。
医師の専門性
かかりつけ医の専門性が自分の病気や不調に合っているかどうかを確認することが大切です。たとえば、生活習慣病に対する専門性を持つ医師を探す場合には、その専門性を公表している医療機関を選ぶと良いでしょう。
スタッフの対応
受付や看護師等の対応が良いかどうか、医師とのコミュニケーションがスムーズかどうかなども重要です。治療においては、スタッフのサポートが大きく影響することもあります。
コミュニケーションを取りやすい
コミュニケーションが取りづらいと信頼関係は構築できません。なんでも相談できる医師かどうか、コミュニケーションの取りやすいさは大切なポイントです。
口コミ
近隣の人や友人からの情報などを参考にすることも有効です。自分の周りでかかりつけ医を訪れている人や、インターネット上での評価などを調べることで、信頼できる口コミを得ることができます。
以上のように、かかりつけ医を選ぶ際には、通いやすさや医師の専門性、スタッフの対応、コミュニケーションの取りやすさ、口コミなどを参考にすることが大切です。自分に合ったかかりつけ医を見つけることで、健康維持や病気の早期発見につながります。
かかりつけ医を調べるなら医療情報ネットを活用しよう!
厚生労働省では、患者による医療機関の適切な選択を支援することを目的として医療機能情報提供制度(医療情報ネット)を運用しています。
かかりつけ医がいない場合どうなる?
かかりつけ医がいない場合、健康上の問題が発生した時点から医師を探し始める必要があります。その上で、下記のようなデメリットが考えられます。
かかりつけ医がいないデメリット
- 健康管理が困難になる
- 緊急時の対応が遅れる
- 総合病院にかかる必要がある場合に選定療養費が必要となる
健康管理が困難になる
かかりつけ医がいない場合、健康管理をするためのアドバイスや治療方針を専門家から得ることができず、健康管理が困難になる場合があります。
緊急時の対応が遅れる
かかりつけ医がいない場合、急な病気やケガに対して、早急な対応が難しくなることがあります。また、症状によっては、適切な治療や手術が遅れる場合があります。
総合病院にかかる場合に選定療養費が必要となる
かかりつけ医がいない場合、紹介状を書いてもらうことができないため、総合病院にかかる際に、選定療養費が必要になります。そのため、診療費用が高くなる場合があります。
以上のように、かかりつけ医がいない場合には、健康管理が困難になり、緊急時の対応が遅れたり、診療費用が高くなったりする可能性があります。そのため、できるだけ早めに自分に合ったかかりつけ医を見つけることが大切です。かかりつけ医を持つことで、健康状態の把握や病気の予防・早期発見・早期治療につながり、健康維持に役立ちます。
かかりつけ医登録とは?
現時点では、患者側がかかりつけ医登録をする必要はありません。かかりつけ医登録の制度があるのは、小児科かかりつけ医制度のみとなっています。
医療機関側が、所管の厚生局へ機能強化加算の届出を出すことで、かかりつけ医としての加算の診療報酬を受けられるようになります。そのため、かかっている病院が「かかりつけ医」に認定された医療機関の場合、「機能強化加算」の診療報酬が請求されていることになります。医療費の明細で確認することが可能です。
まとめ
かかりつけ医は、日常的な診察を主とし、健康管理を継続的に行う医師のことを指します。かかりつけ医を決める際には、通いやすさ、医師の専門性、診療時間、スタッフの対応等を考慮することが重要です。かかりつけ医を決めることで、継続的な健康管理ができ、病気やけがの予防ができるなどのメリットがあります。