先進医療とは?医療保険でカバーできる治療や注意点、先進医療の代表例を紹介
現代医療は日進月歩の進化を遂げ、様々な先進医療が登場し、治療の選択肢が増えています。一方で、健康保険(公的医療保険)が適用されないため、その治療費は高額です。本記事では、先進医療とは何か、どのような治療法があるか、医療保険でカバーできる先進医療はどのようなものか、そして注意点について解説します。
本記事のポイント
- 先進医療は、評価療養のひとつで、高度の医療技術を用いた療養その他療養のことで、健康保険(公的医療保険)適用外であるため医療費は全額自己負担
- 先進医療特約をつけた民間の医療保険は、医療保険でカバーしきれない先進医療に対して技術料の実費分を保障する
先進医療とは?
「先進医療」とは、新しく開発された高度な医療技術等による治療で、健康保険(公的医療保険)の適用の対象にするべきかどうか、その治療の効果を評価している最中の医療技術です。
先進医療は、健康保険法等の一部を改正する法律(平成18年法律第83号)において、「厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた療養その他の療養であって、保険給付の対象とすべきものであるか否かについて、適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要な療養」として、厚生労働大臣が定める「評価療養」の1つとされています。
と厚生労働省のHPページに記載されています。
この中の「評価療養」とは、
厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた療養その他の療養で、将来、公的保険給付の対象とするべきかどうか評価を行うもの
です。
遺伝子治療や細胞治療、ロボット手術、人工臓器移植など、これまでになかったような新しい治療法が開発されています。先進医療によって、患者さんの病状や症状に合わせて、より的確な治療を行うことができます。
先進医療は2種類がある
先進医療には2種類あり、厚生労働省の定義は下記の通りです。
先進医療 A
1 未承認等の医薬品若しくは医療機器の使用又は医薬品若しくは医療機器の適応外使用を伴わない医療技術(4に掲げるものを除く)
2 以下のような医療技術であって、当該検査薬等の使用による人体への影響が極めて小さいもの
(1)未承認等の体外診断薬の使用又は体外診断薬の適応外使用を伴う医療技術
(2)未承認等の検査薬の使用又は検査薬の適応外使用を伴う医療技術
先進医療 B
3 未承認等の医薬品若しくは医療機器の使用又は医薬品若しくは医療機器の適応外使用を伴う医療技術(2に掲げるものを除く。)
4 未承認等の医薬品若しくは医療機器の使用又は医薬品若しくは医療機器の適応外使用を伴わない医療技術であって、当該医療技術の安全性、有効性等に鑑み、 その実施に係り、実施環境、技術の効果等について特に重点的な観察・評価を要 するものと判断されるもの。
参考:先進医療 A 及び先進医療 B の分類に係る考え方について – 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000037651.pdf
先進医療の各技術の概要 – 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/sensiniryo/kikan03.html
これらをまとめると、下記の通りとなります。
先進医療A
未承認、適応外の医薬品、医療機器の使用を伴わない医療技術
未承認、適応外の体外診断薬または検査薬の使用を伴う医療技術等であって当該検査薬等の使用による人体への影響が極めて小さいもの
先進医療B
未承認、適応外の医薬品、医療機器の使用を伴う医療技術
未承認、適応外の医薬品、医療機器の使用を伴わない医療技術であって、当該医療技術の安全性、有効性等に鑑み、その実施に係り、実施環境、技術の効果等について特に重点的な観察・評価を要するものと判断されるもの
令和5年9月1日時点で、認可を受けている先進医療は、AとBあわせて81種類です。
がん治療での先進医療の代表例
がん治療における先進医療には、以下のようなものがあります(令和5年9月1日時点)。
第2項先進医療【先進医療A】 (28種類)から一部抜粋
- 陽子線治療
- 重粒子線治療
第3項先進医療【先進医療B】(58種類)から一部抜粋
- 経皮的乳がんラジオ波焼灼療法
- インターフェロンα皮下投与及びジドブジン経口投与の併用療法
- 集束超音波治療器を用いた前立腺がん局所焼灼・凝固療法
がん治療以外の先進医療の代表例
がん以外の疾患における先進医療には、以下のようなものがあります。
- 腹腔鏡下膀胱尿管逆流防止術
- 内視鏡的胃局所切除術
なお、先進医療は必ずしも病気の治療法だけではなく、遺伝子検査等の病気の診断技術も先進医療のひとつです。
民間の医療保険でカバーできる先進医療の種類
医療保険でカバーできる先進医療は81種類です(令和5年9月1日時点)。医療保険でカバーできる先進医療には条件があり、患者さんの病状や治療法などによって異なります。詳細は、医療機関や保険会社に確認することが必要です。
先進医療の技術料
先進医療の自己負担額はいくらになるのでしょうか?
下記は年間実施件数が多かった先進医療Aのデータから抜粋した技術料の一例です。
第 134回先進医療技術審査部会)の開催について 【先進医療A】令和3年6月30日時点における先進医療に係る費用 令和3年度実績報告(令和2年7月1日~令和3年6月30日)
※ 令和4(2022)年4月から健康保険適用のため先進医療から外れています。
先進医療を受ける際の注意点
先進医療を受ける際には、以下のような注意点があります。
医師とよく相談すること
先進医療は、通常の治療法に比べて高度で、効果や副作用のリスクがあります。医師とよく相談し、リスクと効果を考慮した上で、治療法を選ぶことが大切です。一般の健康保険適用の治療を受けている中で、患者が希望し、医師が必要性と合理性を認めた場合に先進医療が行われることになります。
たとえ、患者が希望したとしても、先進医療の適応疾患でない場合や適応疾患でも諸条件が合わない場合にはこの限りではありません。先進医療の実施医療機関は限定されているため、すぐに受けられるとは限りません。
先進医療は常に変わる
先進医療は常に見直しされており、治療を受けようとしたときには先進医療ではなくなっている可能性があるため、最新情報を確認しましょう。
説明の理解と同意書の記入
治療内容や費用について、医療機関からの十分な説明を受け、同意書に署名する必要があります。
領収書の保管
治療に伴う費用について領収書が発行されます。先進医療に係る費用、通常の治療と共通する部分についての一部負担金、食事についての標準負担額などが記載されています。この領収書は、税金の医療費控除を受ける場合、民間の医療保険の先進医療特約の請求に必要となりますので、大切に保管してください。
以上の点に留意し、安全かつスムーズな先進医療を受けられるように準備しましょう。
まとめ
先進医療は、最新の医療技術や治療法を用いた医療のことで、がん治療や不妊治療、診断検査など様々な疾患において多くの代表例があります。医療保険に先進医療特約をつけることで費用をカバーできますが、先進医療が適用できるかどうかは患者本人の病状や治療法などによって異なるため、詳細は医療機関や保険会社に確認する必要があります。先進医療を受ける際には、医師とよく相談し、リスクと効果を考慮した上で治療法を選ぶことが大切です。