発達障害とは?発達障害と診断されても入れる生命保険の選び方を解説
近年、大人になってから発達障害と診断されるケースが増えてきています。すでに発達障害と診断された人は、場合によっては生命保険への加入ができないこともあるため、「自分は保険に加入できるのだろうか?」と不安になっている人もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、発達障害の人が保険を選ぶ際の注意点だけでなく、発達障害がどのような病気なのかについて解説していきます。
発達障害とは
発達障害とは、あくまで特性の1つであり、病気とは異なります。
具体的には、発達障害者支援法において以下のように定義されています。
「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」
発達障害は、生まれつきの脳機能障害や通常と異なる脳の発達によって、日常生活にさまざまな支障が発生します。ただし発達障害は、個人の特性に応じて支援を受けることで、十分な力を発揮することが可能です。
そして発達障害の種類は、大きく以下の3種類に分けることが可能です。
- 自閉症スペクトラム障害
- 注意欠陥多動性障害(AD/HD)
- 学習障害(LD)
それぞれについて確認していきましょう。
自閉症スペクトラム障害
自閉症スペクトラム障害とは、自閉症やアスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害などを指します。しかしそれぞれの症状が重なることもあり、明確に診断を分けられないケースもあることから、連続体=スペクトラムと呼ばれるようになりました。
全体的には、集団行動が苦手であったりコミュニケーションの取り方が独特であったりといった特徴があります。
注意欠陥多動性障害(AD/HD)
注意欠陥多動性障害(AD/HD)は、不注意や多動・多弁、衝動的な行動などが特徴的です。うっかりミスが多く気が散りやすい人が多い一方で、気配りがうまい人もいます。
学習障害(LD)
学習障害の人は、「読む」「書く」「計算する」といった知的能力が極端に苦手なのが特徴的です。
発達障害と診断される人の数の推移
それでは発達障害と診断される人は、近年どのように推移しているのでしょうか?以下は、厚生労働省による生活のしづらさなどに関する調査に記載されている、発達障害と診断された人の人数です。
平成23年 | 平成28年 | |
---|---|---|
全体 | 317,500人 | 481,000人 |
20代以降 | 168,100人 | 243,000人 |
※20代以降は、全体の人数から0〜19歳と年齢不詳を引いた人数
※出典:厚生労働省「平成23年生活のしづらさなどに関する調査」「平成28年生活のしづらさなどに関する調査」
このように、発達障害であると診断されている人が5年間で16万人以上増えていることがわかりますね。特に20代の人は平成23年で42,800人だったのに対し平成28年では107,000人まで増加しています。
また平成28年においては、障害者手帳を所持している人の割合が76.5%で、およそ4人に3人が障害者手帳を所持しています。
大人の発達障害の特徴と対策および2次障害について
ここでは、大人が発達障害と診断された場合の特徴や対策、2次障害について解説していきます。
特徴
発達障害と診断された大人には、日常生活や仕事で以下のような特徴があります。
発達障害の種類 | 特徴 |
---|---|
自閉症スペクトラム障害 |
|
注意欠如・多動性障害(ADHD) |
|
学習障害(LD) |
|
なお、ここでご紹介する特徴は大人に限ったことではなく、子供にも同じ特徴がみられることもあります。
2次障害
2次障害とは、発達障害の特徴と自分自身の置かれている状況が合わないことによるストレスによって引き起こされる症状のことです。
ストレスが積み重なると気分が落ち込み、パニック障害やうつ病、統合失調症といった精神疾患になってしまう恐れがあります。
精神疾患は、治療期間が長く根治が難しい傾向にあるため、生命保険に加入しにくくなります。
対策
発達障害と診断された場合の対処方法は、診断された障害の種類によって異なります。
自閉症スペクトラム障害によって不安症状やうつ症状が現れた場合は、抗不安薬や抗うつ剤を処方されるのが一般的。また、症状が現れる前に、過度なストレスや環境の変化の有無を確認し環境の調整が改善を試みることもあります。
また、成人を対象にした対人技能訓練といった認知リハビリテーションが、地域の発達障害者支援センターを中心に行われています。
注意欠如・多動性障害(ADHD)の場合、薬による治療が行われるのは子供だけであり、成人に対しては薬の処方が認められていません。
そのため、集中を妨げる刺激を少なくしたり、集中する時間を短時間に区切って一度にこなす量を少なめに調整したりなどの環境調整が行われます。
加えて、自閉症スペクトラム障害や注意欠如・多動性障害(ADHD)は、周囲の人間が症状に対する理解を深めて、本人の特性に合わせた接し方をすることが大切とされています。
本人の自尊心が低下しないように接することで、本人は勉強や仕事に打ち込むことができるのです。
学習障害の場合は「文章の中で大事な部分にマーカーを引いてもらう」「会議の内容をメモではなくあらかじめメールしてもらう」と必要に応じて周りの支援を得ることが有効とされています。
発達障害が内包するリスク
発達障害と診断された人は、周囲の理解が得られないと、自分の意思や努力にかかわりなくトラブルに巻き込まれリスクがあるため注意が必要です。
ここでは、発達障害の方が抱えているリスクについて詳しくみていきましょう。
加害者リスク
発達障害の特徴と環境が合っていないことによって、他人に危害を加えたり物を壊したりといった危険行為に及んでしまうことがあります。
これらの行為は自分の意思とは関係なく起こることがあるのです。
被害者リスク
発達障害の特徴が社会の中で目立ってしまうことによって、被害者になってしまう可能性もあります。
特に大人の場合は、周囲と違う言動をしたり仕事をサボったりすることで、反抗的と捉えられてしまい職場で孤立するケースがあるため注意が必要です。さらに人事評価で不当な評価を付けられることもあります。
その結果、精神的に辛くなり離職や転職を繰り返さざるを得ない状況になりかねません。
また、悪質なセールスに引っかかってしまったり、借金でトラブルになったりといったケースもあります。
発達障害の人が加入できる保険
発達障害は、人によって特徴や状態が異なるだけなく、保険契約時に告知書に記載した内容で判断されるため一般的な生命保険や医療保険に加入できる可能性もあります。
一方で、うつ病のような精神疾患になり薬を処方されているような状態だと、基本的に加入が難しい傾向になります。
仮に一般的な生命保険や医療保険に加入できなかった場合、加入できる可能性のある保険は以下の3種類です。
- 発達障害者専用の保険
- 引受基準緩和型の保険
- 無選択型の保険
それぞれの保険には、メリットやデメリットが存在しますので理解した上で自分に合ったものを選んでみてください。
発達障害者専用の保険
発達障害者専用の保険とは発達障害を抱えている人が加入できる保険がことです。場合によっては、発達障害だけでなくダウン症やてんかん、知的障害なども加入対象となります。
保障内容は、以下のように一つの保険でさまざまな保障を得られる場合が多いです。
- 死亡・重度障害
- 病気やケガによる入院・手術・通院
- 個人賠償責任保険
特徴的なのは、個人賠償責任保険が付帯されている点です。他人に危害を加えた場合や物を壊してしまった場合に、保険金額を限度に補償を受けられるため安心ですね。
ただし、発達障害者専用の保険は、コースの選択肢が少ない点に注意しましょう。特に死亡保険金額は、多くても100万円台しか準備できないため、小さな子供がいる世帯主の保障としては不足する可能性があります。
また、うつ病や統合失調症のような精神疾患での入院は保障の対象外の場合もあるため、保障内容をよく確認してから加入しましょう。
引受基準緩和型
引受基準緩和型保険とは、通常の保険よりも告知項目が少なく、健康状態に不安がある人でも加入しやすい保険です。死亡保険や医療保険などに、単品で加入できます。
告知の項目は商品や保険会社によって異なりますが、概ね以下のような項目です。細かい通院や服薬の履歴、健康診断の結果などは聞かれない場合がほとんどです。
- 過去数ヶ月以内に医師から診察や検査で入院または手術がすすめられたことがあるか
- 過去数年(2年など)以内における病気やケガによる入院や手術の有無
- 現在がんなどの疾病にかかり医師による診察・治療・投薬を受けているか
- 過去数年(5年など)以内にがんなどの病気や入院・手術を受けたことがあるか
一方で引受基準緩和型保険は、通常の保険と比べて病気や死亡するリスクが高い人を受け入れるため、保険料が割高である点に注意しましょう。また、引受基準緩和型医療保険の場合、保障が開始されてから1年などの一定期間は、保険金額が半分に削減される可能性があります。
無選択型
無選択型保険とは加入の際に告知が全く必要ない保険のことで、健康状態にかかわらず誰でも加入できます。
しかし無選択型保険は、引受基準緩和型保険よりも病気や死亡するリスクの高い人を受け入れる数が多くなるため保険料も更に割高に設定されています。
そのため、一般的な生命保険や引受基準緩和型保険に加入できなかった人が最後に検討する保険といえるでしょう。
発達障害の人が加入しやすい保険商品の例
発達障害の人でも加入しやすい保険には、例えば以下のようなものがあります。
- ぜんちあんしん保険
- 全国知的障害児者生活サポート協会 生活サポート総合補償制度
- 日本自閉症協会の保険
- コープ共済 たすけあい医療コース
- コープ共済 ジュニア20コース
- アクサ生命「長期保障」の定期保険OKライフ
- オリックス生命 終身保険新RISE Support plus
- アフラック 終身保険どなたでも
- オリックス生命 医療保険新CURE Support Plus
- SOMPOひまわり生命 新・健康のお守りハート
なお、告知の内容によっては上記の保険でも加入を断られる可能性があります。詳細については、各保険会社や取り扱い会社にお問い合わせください。
発達障害の人が保険に加入するときの注意点
最後に発達障害の人が保険に加入するときの注意点を2つお伝えします。
公的な制度を確認する
保険に加入する時は、自分が利用できる公的な保障制度や、支援制度の内容を確認してから「それだけでは足りない」と判断した場合に加入しましょう。
日本人は基本的に全員が健康保険証を持っており、病院や診療所などの医療機関で医療行為を受けた場合は医療費の3割負担で済みます。さらに高額療養費制度を利用することで自己負担額が一定の上限を超えた場合に、超過分が払い戻される仕組みです。
また会社員や公務員の人は、病気やケガで4日以上働けなくなった場合は傷病手当金を受給できます。
加えて、申請をすることで、精神障害者保健福祉手帳や療育手帳といった障害者手帳を申請し取得することで、以下のようなメリットがあります。
- 税金の優遇
- 公共のサービスの割引
- 障害者枠での採用 など
まずは、ご自身が利用できる公的な制度について整理してみてください。
告知義務違反をしない
保険契約を結ぶ際に最も行ってはいけないのは告知義務違反です。
告知義務違反とは、加入時の健康状態について虚偽の内容を告知することです。告知義務違反が認められた場合、死亡したり病気やケガで入院したりしても保険金や給付金が支払われません。
発達障害は病気ではありませんが、告知の対象となる期間内に医師による診察や投薬を受けていた場合は、基本的に告知をしなければなりません。
例えば、保険の告知項目の中に、「過去3か月以内に、医師の診察や検査、治療、投薬を受けたことがありますか?」という文言があった場合、3ヶ月以内に発達し発達障害で医師による診察や投薬を受けていた場合は、診察の内容や処方された薬などの告知が必要です。
まとめ
発達障害は病気ではありませんが、ご自身の特徴と周囲の環境があっておらずストレスを連続して受けることによって、うつ病や統合失調症などの2次障害になる可能性があります。その結果、一般的な保険への加入が難しくなる場合に注意が必要です。
しかし発達障害と診断されても焦らずに、まずはご自身が利用できる公的な制度を確認し、ご自身の状況によって保険の必要性を判断することが大切です。
もし、自分にとって保険が必要かどうかわからない場合は、ファイナンシャルプランナーや保険の専門家に相談をしてみましょう。