日帰り入院とは?通院や外来手術との違いは?民間医療保険の適用の注意点を解説
「日帰り入院」とは、同じ日(24時間以内)に入院して退院した入院のことです。本記事では、「日帰り入院」と「通院」「外来手術」の意味や違い、民間の医療保険適用時(給付金受取時)の注意点などを含めて解説いたします。
本記事のポイント
- そもそも、入院用のベッドを持っている「病院(20床以上)」「有床診療所(19床以下)」でないと「日帰り入院」はできない
- 「日帰り入院」とは、同じ日(24時間以内)に入院・退院をした入院のこと
- 領収書や医療費明細書の項目で「請求期間の始まりと終わりが同じ日であること」、「入院料等の項目で診療報酬点数の記載があること」で確認が可能
- 通院による治療は、原則、民間の医療保険の通院特約(通院保障)の対象外
- 通院特約(通院保障)は入院を必要とする病気・ケガの入院の(前)後で通院した場合には保障の対象となる
- 「日帰り入院」「日帰り手術」「外来手術」が民間の医療保険の給付金の対象になるかどうかは保険会社・保険商品によって異なる
日帰り入院とは?日帰り入院の定義
日帰り入院とは
日帰り入院とは、同じ日(24時間以内)に入院・退院をした入院のことです。
「日帰り入院」は、その医療施設に入院施設としてベッド(外来診療のためのベッドとは異なる)が配置されている必要があります。いわゆる「病院」や「有床診療所(ゆうしょうしんりょうじょ)」のことをいいます。
「病院」とは、医師又は歯科医師が、公衆又は特定多数人のため医業又は歯科医業を行う場所であつて、二十人以上の患者を入院させるための施設を有するものをいう。
有床診療所は「19床以下の入院ベッドを持つ医療機関」であり、地域に身近な診療所の外来機能と専門的治療や慢性疾患治療を行う入院機能を併せ持っています。
入院するためのベッドを持つ病院もしくは診療所でなければ、「日帰り入院」はできません。
日帰り入院の確認は、領収証の入院基本料の項目に金額が書いてあるかで確認ができます。
下記は医療費の領収証の一例ですが、赤枠①に入と区分が書いてあり、②入院料等の欄に点数(1点=10円)が記載があり、③請求期間の日付が同一である場合には、日帰り入院となります。
領収証のフォーマット(書式)は、医療機関ごとに異なるため、あくまで一例としてください。領収証以外にも、医療費明細などでも確認が可能です。
診療明細書の場合は、①の区分が入院と記載され、②の受診日が同一日であること、③明細内に「入院料」の項目があることなどで確認が可能です。
ポイント
- 日帰り入院とは、同じ日(24時間以内)に入院・退院をした入院のこと
- 日帰り入院かどうかの確認は、領収証は①「入院・外来の区分」②「請求期間の始まりと終わりが同じ日であること」③「入院料等の項目に診療報酬点数の記載があること」の3点で確認が可能
- 診療明細書で確認する場合は、①「入院・外来の区分」②「受診日の始まりと終わりが同じ日であること」③「部に「入院料等」の記載があり、その項目に診療報酬点数の記載があること」の3点で確認が可能
ココに注意
日帰り入院と混乱しやすい通院や手術との違いとは?
日帰り入院と通院との違い
通院とは
通院とは、医師の治療の必要があり、外来や往診によって医師の治療を受けることです。
「日帰り入院」と「通院」の違いは、入院の有無です。
確認は、「日帰り入院」の項目で解説した領収証や診療明細書で「入院料等」の項目に「診療報酬点数」の記載の有無で確認が可能です。
ココに注意
民間の医療保険の「通院特約(通院保障)」は、入院する必要のある病気・ケガの治療のため、入院の(前)後で通院し治療を受けた場合の保障です。
そのため、通院のみで治療が可能な「風邪」などは、民間の医療保険の「通院特約(通院保障)」の保障の対象にはなりません。
日帰り入院と外来手術との違い
外来手術とは
外来手術とは、入院をしない手術のこと。
「日帰り入院」と「外来手術」の違いは、入院の有無です。
確認は、「日帰り入院」の項目で解説した領収証や診療明細書で「入院料等」の項目に「診療報酬点数」の記載の有無で確認が可能です。
民間の医療保険における「外来手術」は、保険会社ごと・契約の保険種類・加入時期により、手術給付金の対象になるかどうかが違います。必ず、ご加入中の保険会社もしくは担当営業にご確認ください。
日帰り入院と日帰り手術との違い
日帰り手術とは
日帰り手術とは、保険診療上、同一の日に入院・手術・退院することをいいます。
「日帰り入院」と「日帰り手術」の違いはありません。
確認は、「日帰り入院」の項目で解説した領収証や診療明細書で「入院料等」の項目に「診療報酬点数」の記載の有無で確認が可能です。
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日帰り入院ができる病気の種類は決まっている?
日帰り入院ができる病気は保険診療の短期滞在手術等基本料1に定められています。
短期滞在手術等基本料1とは
いわゆる「日帰り手術(同一日に入院・手術・退院)」を行うための環境及び当該手術等を行うために必要な術前・術後の管理や定型的な検査、画像診断等を包括的に評価する施設基準です。
- 内分泌負荷試験 〈1 下垂体前葉負荷試験 イ 成長ホルモン(GH)(一連として)
- 小児食物アレルギー負荷検査
- 皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部)〈3 長径四センチメートル以上(六歳未満に限る。)〉
- 皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部以外)〈3 長径六センチメートル以上十二センチメートル未満(六歳未満に限る。)〉
- 皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部以外)〈4 長径十二センチメートル以上(六歳未満に限る。)
- 腋臭症手術
- 四肢・躯幹軟部腫瘍摘出術〈2 手、足(手に限る。)〉
- 骨内異物(挿入物を含む。)除去術 〈4 鎖骨、膝蓋骨、手、足、指(手、足)その他(手に限る。)〉
- 半月板切除術
- 関節鏡下半月板切除術
- ガングリオン摘出術〈1 手、足、指(手、足)(手に限る。)〉
- 手根管開放手術
- 関節鏡下手根管開放手術
- 涙管チューブ挿入術〈1 涙道内視鏡を用いるもの〉
- 眼瞼内反症手術〈2 皮膚切開法〉
- 眼瞼下垂症手術〈1 眼瞼挙筋前転法〉
- 眼瞼下垂症手術〈3 その他のもの〉
- 翼状片手術(弁の移植を要するもの)
- 治療的角膜切除術〈1 エキシマレーザーによるもの(角膜ジストロフィー又は帯状角膜変性に係るものに限る。)〉
- 緑内障手術〈6 水晶体再建術併用眼内ドレーン挿入術〉
- 水晶体再建術
- 乳腺腫瘍摘出術
- 気管支狭窄拡張術(気管支鏡によるもの)
- 気管支腫瘍摘出術(気管支鏡又は気管支ファイバースコープによるもの)
- 経皮的シャント拡張術・血栓除去術〈1 初回〉
- 経皮的シャント拡張術・血栓除去術〈2 1の実施後3月以内に実施する場合〉
- 下肢静脈瘤手術〈1 抜去切除術〉
- 下肢静脈瘤手術〈2 硬化療法(一連として)〉
- 下肢静脈瘤手術〈3 高位結紮術〉
- 下肢静脈瘤血管内焼灼術
- 下肢静脈瘤血管内塞栓術
- 内視鏡的胃、十二指腸ポリープ・粘膜切除術〈1 早期悪性腫瘍粘膜切除術〉
- 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術〈1 長径二センチメートル未満〉
- 痔核手術(脱肛を含む。)〈2 硬化療法(四段階注射法によるもの)〉
- 肛門良性腫瘍、肛門ポリープ、肛門尖圭コンジローム切除術(肛門ポリープ、肛門尖圭コンジローム切除術に限る。)
- 尿失禁手術(ボツリヌス毒素によるもの)
- 顕微鏡下精索静脈瘤手術
- 経尿道的レーザー前立腺切除・蒸散術
上記一覧では分かりにくいため、分かりやすい一例を挙げてみました。
参考
- 腋臭症(ワキガ)手術
- 上肢骨折手術
- 手根管症候群の内視鏡手術
- 鼠径ヘルニア手術
- 痔核根治術
- 下肢静脈瘤手術
- 胆石などに対する腹腔鏡手術
- 内視鏡的大腸ポリープ切除術
- 食道静脈瘤の内視鏡手術
- 体外衝撃波腎尿管結石破砕術
- 声帯ポリープ切除術
- 内視鏡下副鼻腔手術
- 眼科手術
上記のような病気・手術などが日帰り入院・手術となります。
ココに注意
手術を含まない日帰り入院の場合、入院給付金のみの給付となり、診断書等取得のための文書料のほうが高くつく可能性もあるため、請求を行う前に、事前の確認をおすすめいたします。
民間の医療保険適用のための注意点
「日帰り入院」をした場合、民間の医療保険で給付金を受け取るためには何が必要なのでしょうか?
一番に注意して頂きたいのは、外来のベッドで点滴や透析などの治療・休養等は、医療保険の保障対象になる「入院」には該当しない点です。
民間の医療保険が適用になるかどうかの確認の手順は下記の通りです。
簡単な流れ
- 領収証や診療明細書で「入院」かどうかを見て、医療機関に確認
- 加入中の医療保険の入院給付金の内容を確認
- 加入中の医療保険の手術給付金の内容の確認
- 全部の確認ができたら給付金請求をする
step1 領収証や診療明細書で「入院」かどうかを見て、医療機関に確認
領収証や診療明細書で「日帰り入院」であることの確認ができたら、「手術の有無」の確認をしましょう。「手術」についても、領収証であれば「手術」の項目に診療報酬点数が記載され、診療明細書であれば、「処置等」で確認が可能です。
診断書等の発行手続きの前に、かかった医療機関に必ず確認をしましょう。
step2 加入中の医療保険の入院給付金の内容を確認
そして、次に、加入中の医療保険の保障が「日帰り入院に対応しているかどうか」確認をします。最近の民間の医療保険は「日帰り入院」対応が一般的ですが、加入中の医療保険が古い契約の場合、入院給付金の給付は、入院1泊2日からというパターンや、入院5日以内の入院に関しては保障対象外といった事例もあるため注意が必要です。
給付金請求手続きをする前に、保険会社に必ず確認をしましょう。
step3 加入中の医療保険の手術給付金の内容の確認
step1で、領収証や診療明細書を確認した際に、「手術」の項目があれば、手術給付金の請求ができる可能性があります。
加入中の医療保険の手術給付金が「公的医療保険制度対応」なのか、「保険会社所定の手術」「88種の術名に対応」などによっても、手術給付金が給付される・されないに大きな影響があります。
加入中の医療保険の手術給付金が「公的医療保険制度対応」であれば、約1,000種類の手術が対象となります。その中で、下記の手術などは対象外としている保険会社が多いようです。
手術給付金対象外の手術
- 傷の処理(創傷処理、デブリードマン)
- 切開術(皮膚、鼓膜)
- 骨・関節の非観血的整復術、非観血的整復固定術および非観血的授動術
- 抜歯
- 異物除去(外耳、鼻腔内)
- 鼻焼灼術(鼻粘膜、下甲介粘膜)
- 魚の目・タコ切除術(鶏眼・胼胝切除術)
ココがポイント
step4 全部の確認ができたら給付金請求をする
手元の領収証や診療明細書、かかった医療機関への確認、保険会社への各確認が終わったら、保険会社のコールセンター、もしくはマイページなどで医療保険の入院給付金や手術給付金の給付金請求の手続きをしましょう。
なお、給付金や保険金には消滅時効というものがあります。保険事故(給付金や保険金を受け取る原因となること)が起きてから3年以内に請求をしないと、請求権が無くなってしまうのでご注意ください。
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新規加入の民間の医療保険の選び方のポイント
新しく民間の医療保険に入る場合の選び方のポイントはなんでしょうか?
- 従来型の入院給付金・手術給付金が主契約となる医療保険から選ぶ場合は、
「日帰り入院」「短期入院」に対応した「入院給付金」かどうか - 主契約が一時金型の医療保険の場合は
「日帰り入院」にも対応しているかどうか - 手術給付金が「公的医療保険対応」かどうか
- 外来手術対応かどうか
- 通院特約をつけられるかどうか
保障内容が充実するほど、それに比例して保険料は高くなってしまうため、保障内容と保険料のバランスは非常に大事だといえます。
まとめ
医療技術の進歩は著しく、同時に、民間の医療保険の保障内容も大きく変化しています。
現状の医療保険では給付が出ない可能性があるので、ご自身の医療保険の保障内容を把握することをおすすめします。