保険で資産運用はできる?投資性の高い保険のメリット・デメリットとは?
昨今では将来の生活資金の準備に資産運用に取り組む人が増えています。株式や投資信託だけではなく、保険も資産運用の手段の1つです。この記事では、保険を用いた資産運用を検討する人を対象に、代表的な商品の種類、メリット・デメリットや向いている人の特徴、注意点について解説します。
保険を資産運用目的での利用はできる?問題はある?
老後の暮らしを充実したものとするために、年金や退職金以外で老後資金を補う目的で行う個人の資産運用の取り組みが注目されています。資産運用とは、将来的に利益が発生することを見込んで自己資金を投じることを指します。
資産運用の商品には、投資信託や株式・債券などさまざまなものがありますが、保険も資産運用目的での利用が可能な商品です。保険には、生命保険や入院保険など人の命に関わるものから、自動車保険、火災保険、損害保険などモノに関係するものまでいろいろな種類があります。本来、保険は万が一病気やケガ・破損などのトラブルが起きたときに、保険金や給付金が支給されて、家族の生活費や活動資金に充てる経済的な備えとなるものです。保険会社は、保険料を保障の原資としてのみ使う掛け捨ての生命保険以外に、保険金の機能を加えて貯蓄機能を兼ね備えた投資性の高い商品を提供しています。
こうした保険商品は保険と投資信託の両方の機能を有する便利な保険商品である一方で問題はゼロではなく、掛け捨て対応の保険より保険料が高いことや、投資における価格変動の影響を受けること等が挙げられます。投資を始める前に、想定される享受するメリットとデメリット等を把握しましょう。
資産運用に向いている投資性の高い保険の種類
資産運用を目的に保険に加入する場合は、運用成果が期待できる商品を選択する必要があり、また保険の種類ごとに特徴があるため、ご自身の目的にあった保険を選ぶ必要があります。ここでは、資産運用に適した主要な保険商品をご紹介します。
終身保険
終身保険は、保障を受けながら貯蓄ができる貯蓄型保険の1つです。解約するまでは一生涯保障される死亡保障・高度障害保障として保有できて、長期間コツコツ払い込み続けて貯蓄した解約返戻金を老後の生活費や大きな支出に充てることが可能です。
終身保険は保険料が変わらず、掛け捨ての保険とは異なり、解約しない限り強制的に毎月の保険料の支払いが発生し貯蓄性が高いことが特徴です。原則、加入期間が長くなるにつれ、また保険料払込期間終了後も、解約返戻率が増えていきます。ただし、解約の時期によっては解約返戻金が払込保険料総額より少ない元本割れのリスクがあるなど、解約には損失をともなう可能性がある点に留意が必要です。
解約返戻金(かいやくへんれいきん)とは
保険契約を解約したときに、保険会社から保険契約者に支払われる(払い戻される)お金です。
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変額保険
変額保険は、保険料の一部を積立金として株式や投資信託などで構成された「特別勘定」で運用するタイプの生命保険です。通常の保険では公社債など比較的低リスクと呼ばれる資産を軸に運用しますが、変額保険はリターンやリスクをカスタマイズする運用が可能です。
運用実績が良ければ、将来受け取れる保険金額や年金額、解約時に受け取る「解約返戻金」が増える可能性があります。途中で解約する場合などの解約返戻金には最低保証はありませんが、運用実績が悪化した場合でも、死亡保険金は基本保険金額を下回ることがありません。運用パフォーマンスを調整しつつ基本保険金額の保障も受けられる資産運用に適した保険といえます。
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個人年金保険
個人年金保険は、保障を受けながら貯蓄ができる貯蓄型保険の1つで、「確定年金」「有期年金」「終身年金」の3つの種類があります。また、安全性よりも相対的に高い収益性を求める場合は、保険会社の運用実績によって年金額が変動する変額個人年金保険も選択肢になるでしょう。公的年金の補完を目的とする私的年金で、契約時に定めた年齢(60・65歳等)から一定期間(5・10年等)、毎月一定額の年金を受け取ります。一般的に、返戻率は100%を超える商品もありますが、運用次第では元本割れする可能性がある商品設計もあるため確認が必要です。
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投資性の高い保険のメリット
もしもの時の保障が確保されている
保険の本質である、ケガや病気が原因で働けなくなった有事の際に困らないための安心を買うことができます。リスクに備えつつ将来の資金を用意する資産運用を行うことが可能です。
例えば、預貯金や定期預金等では家族に預け入れた金額分の現金しか遺せません。しかし、変額保険に加入していた場合は保険期間中に被保険者が死亡すると、契約時の基本死亡保険金が最低保証され、遺された家族の生活を支えることが可能です。
資産運用を行う為の手間がかからない
運用初心者でも保険料を払い込むことで資産運用が可能となります。一般的に保険料は口座引き落としやクレジットカード払いで自動的に払い込まれるため、手間をかけずに毎月資産形成が出来ます。また、預貯金のように自由に引き出せないことから、半ば強制的に資産形成ができ貯蓄が苦手な人も続けられます。
投資経験や知識が少ない人でも始めやすい
保険会社の担当者が商品ごとの特徴やリスクを説明してくれるため、自分に適した生命保険の選択がしやすいでしょう。資金の運用は保険会社の専門家が行うため、投資経験の少ない初心者が投資判断を下す必要はありません。専門家は契約者の資産を減らさないことを重視しているため、日本国債や地方債・公社債などの低リスク資産の構成比率が大半を占める傾向があり、投資初心者でも始めやすいです。
インフレ耐性
物価上昇によりお金の価値が下がることをインフレと呼びます。預貯金額は低利息でほぼ横ばいですが、物価上昇は生活費用を増加させるため、インフレは将来的に資産を目減りさせるリスクがあります。金利(債券)や株価はインフレ時に強くて運用実績が良好になりやすい傾向があります。運用実績次第で満期保険金や解約返戻金を増やすことができれば、お金の価値が下がるインフレの影響は受けづらくなります。
節税効果
生命保険に加入すると所得控除を受けることが可能です。年間に払い込んだ保険料額に応じて、一定の金額が所得から差し引かれます。個人型確定拠出年金(iDeCo)のように掛金の全額が所得控除されるわけではありませんが、控除上限額まで利用した場合の控除額は12万円になります。年末調整や確定申告で「生命保険料控除」を申告すると、課税所得の金額が控除された分だけ低くなり、所得税や住民税が軽減されて節税につながります。
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投資性の高い保険のデメリット
長期間の加入が必要
投資性の高い生命保険の多くは原則として長期の加入が必要です。生命保険での運用は低リスク資産への投資が主で、運用成果を得るためにある程度の期間が必要になります。
また、生命保険を途中解約すると不利になる可能性が高いです。解約時に支払われる「解約返戻金」が出ない場合や、解約返戻金が支払われても支払った保険料を上回らずに元本割れで損をしてしまう場合も考えられます。そのため、基本的に長期間の保険料の支払いを想定して資産運用する必要がある点は留意しましょう。
返戻率の変動リスク
資産運用が可能なタイプの保険は、保険の解約や満期時に受け取る解約返戻金や満期保険金の取得を目的としています。支払った保険料の総額に対して受け取る料金総額の割合を返戻率といいます。
一般的に、返戻率は加入期間が短いうちは低く、加入期間が長くなるにつれ高くなり100%を超える傾向があります。概して返戻率105%~110%程度の商品が多いですが期間の長さだけでなく、保険商品によっては為替レートや市場金利等の影響を受け、返戻率が変動するリスクがあることは留意しましょう。
元本割れリスク
投資性の高い商品とはいえ、満期まで加入しても必ず利益が出るとは限りません。一般的に、保険で運用した場合、銀行預金金利よりは高い収益が見込めますが、他の株式や投資信託といった運用商品に比べると、ローリスク・ローリターンの投資の結果として低利回りになる傾向があります。
したがって、運用実績によっては将来受け取れる満期保険金額や解約返戻金額などが、支払った保険料を下回る(元本割れする)可能性があります。また、インフレに強い反面でデフレに弱く、結果的に元本割れするリスクを内包しています。
掛け捨てタイプの保険よりも高い保険料
投資性の高い保険商品は、同じ条件を前提にした場合、掛け捨てタイプの保険よりも保険料を高めに設定される傾向があります。別の角度からみると、高めに設定されている分、保険会社は満期保険金や解約返戻金に充当できます。高い保険料を長期にわたって支払ってでも、節税効果や期待される運用成果等を含め総合的に勘案して、プラスと判断できるか吟味する必要があります。
投資性の高い保険が向いているのはこんな人
資産運用の初心者の人
保険での資産運用は比較的リスクが低いため、大きなリターンはのぞめませんが、安定的な運用をしやすい特徴があります。したがって、保険での資産運用は資産運用にあまり慣れていない人や、少ないリスクで資産運用をしたい人に適しています。
将来の計画がある程度見えていて長期的な資金計画を立てられる人
長期間にわたっての保障を確保し続けることを目的として加入する保険であるため、保険料が家計を圧迫するなどを理由に途中で解約することがないよう、先々の人生で大きな出費が出る時期でも、ある程度収支に余裕がある人には適した商品です。
家計管理やセルフでの貯蓄が苦手な人
口座やクレジットカードから自動的に保険料を払い込む生命保険の仕組みは、計画的な家計管理や継続的な貯蓄が苦手な人や、ついつい無駄遣いをしてしまう人には向いています。こうした自助努力を必要としない払い込みの自動化が、長期間にわたる積み立てを可能にして、より資産性を高めることにつながります。
トラブル発生時に家族が抱えるお金の心配を減らしたい人
保険の最大のメリットの1つは死亡を含めたトラブル時の保障があることです。保険商品は、有事発生時にかかる様々な費用を自身が決めた相手に確実に残すことができます。原則、死亡保険金は受取人固有の財産となるため、保険金受取人の受け取った保険金が、法的に他の相続人に渡ることはありません。保険金を受け取る人に「お金」と「意志」を残すことが可能な方法といえます。
投資性の高い保険を利用する際の注意点
投資性の高い保険で資産運用をする前に確認するべき点を確認しておきましょう。
保険の内容と月々の保険料
将来必要な金額を考えて、月々の保険料を算定します。保険料は長期間支払い続けなければならないので、ご自身の収支を考慮して、生活に支障が出ない無理のない範囲で保険料を設定して保険を選びましょう。
返戻率と払込期間
返戻率が固定か変動か、また解約のタイミングで返戻率が異なるか、といった条件をチェックしましょう。一定の期間が過ぎる前に解約すると元本割れするケースもあるため細かいチェックが必要です。また、資金の目的に応じて払込期間を設定する必要があります。加入期間が長いほど返戻率は高い一方で、保険料負担が増えるため、必要な返戻率を試算して加入期間を決めてバランスをとることが大切です。
商品性
似たような商品が多いため特徴をよく確認しましょう。例えば、低利回りで運用する貯蓄性の高い商品と、変額保険のようにリスクをとって運用成果を追求する商品では、全く違う商品性になります。また外貨建て保険の場合は、為替や金利など金融市場の影響を受ける可能性があります。当然、返戻率にも影響が出るため、想定通りにならない可能性があることは留意しましょう。
他の商品との比較
上記項目を確認して投資計画を立てた後に、他の商品と比較して優位性を確認することは大切です。仮に元本割れした場合は、結果的に金融機関などの預貯金のほう高利回りとなってしまう可能性もあり、許容するリスクをよく考えて、ご自身の計画にフィットしているという納得感を得ることが肝要です。
まとめ
保険は万一に備えるものという性質もありますが、資産運用の商品としても活用可能です。初心者向き、インフレ耐性、節税効果といったメリットがある一方、長期加入、返戻率変動リスク、元本割れリスク、高い保険料といったデメリットを考慮する必要があります。ご自身の目的に応じた保険商品への投資計画を立てた後に、他の運用商品と節税効果や手数料などを含めて比較して、併用を視野に入れながらご自身にとって最適な資産運用プランを作ることが肝要です。