生命保険会社が破綻するとどうなる?契約・保険金への影響や過去の事例を解説

加入している生命保険会社が破綻(はたん)した場合、どのような影響が生じるのでしょうか。
この記事では、保険会社が破綻した場合に「生命保険契約者保護機構」によって、どのような救済措置が取られるのか解説します。
あわせて、保険金や解約返戻金が減少するリスクについて分かりやすく解説します。
また、日産生命や大和生命など、過去に破綻した8社の経緯を振り返りつつ、ソルベンシーマージン比率や格付けなど、安全な保険会社を見極めるための指標も紹介します。
この記事のポイント
- 生命保険会社が破綻しても「生命保険契約者保護機構」によって契約は引き継がれるため、保険契約自体が即座に消滅するわけではない。
- 生命保険会社の破綻後、契約は保護の対象になり、責任準備金の90%まで補償されるが、これに伴い将来の保険金や解約返戻金が減少するリスクがある。
- 保険会社の経営の安全性を判断するには「ソルベンシーマージン比率」「信用格付け」「基礎利益」の3つの指標を確認することが重要である。
生命保険会社が破綻するとどうなる?

生命保険会社が破綻すると、契約はどうなるのでしょうか。
保障はそのまま続くのでしょうか。それとも、失効してしまうのでしょうか。
保険会社と契約者の双方の立場から、保険会社が破綻するとどうなるのか見ていきます。
保険会社はどうなる?
もし生命保険会社が破綻したら、一般的には「救済保険会社」が破綻した生命保険会社の契約を引き継ぐことになります。
救済保険会社が現れなかった場合は、「生命保険契約者保護機構」が子会社として設立する「継承保険会社」に契約が引き継がれます。
また、生命保険契約者保護機構自体が、保険契約を引き受ける場合もあります。
なお、日本国内で保険業を営む生命保険会社(共済や少額短期保険会社は除く)は、必ず生命保険契約者保護機構に加入しています。
このような措置が取られるのは、生命保険契約者保護機構に加入している生命保険会社に限られます。
なお、日本国内で保険業の免許を受けて営業している生命保険会社は、国内系・外資系を問わず、すべて生命保険契約者保護機構に加入しています。
そのため、外資系の保険会社に加入している場合も同様の保護を受けることが可能です。
契約と契約者はどうなる?
生命保険会社が破綻した場合、保険契約は生命保険契約者保護機構によって守られます。
生命保険会社が破綻しても、契約を継続することはできますが、「責任準備金」が減額されることがあります。
責任準備金(せきにんじゅんびきん)とは?
将来の保険金支払いに備えて、保険会社が積み立てている金額のこと。
この責任準備金の90%が補償されますが、これは保険金額の90%が補償されることを意味するわけではありません。
関連記事:生命保険における予定利率と標準利率の違いは?利率の推移と今後の展望
保険金や解約返戻金はどうなる?
保険会社が破綻した後は、一般的に「予定利率」の引き下げが行われます。
予定利率(よていりりつ)とは?
保険会社が将来にわたって保険料を運用する際の利回りを、あらかじめ見込んだもの。
この予定利率が高いほど、運用益を見込めるため保険料は低く、低いほど保険料は高く設定される傾向にあります。
生命保険契約者保護機構により、責任準備金の90%(高予定利率契約を除く)までは補償されますが、「保険金が90%支払われる」という意味ではありません。
そのため、この利率変更によって、将来受け取れる保険金額や解約返戻金が減少する可能性があります。
特に、予定利率が高い時期に加入した、貯蓄性の高い保険(終身保険・養老保険・個人年金保険など)は、減額幅が大きくなる傾向があるため注意が必要です。
一方で、掛け捨て型保険(定期保険・医療保険など)は責任準備金が少ないため、保障内容への影響は比較的小さい傾向にあります。
なお、加入している生命保険会社が破綻した後も、保険契約の継続を希望する場合、保険料を継続して払い込む必要があります。
また、保険会社の破綻後でも、保険契約の移転が完了するまで解約はできません。
一定期間内に解約すると、契約条件変更後の解約返戻金などから、一定の割合がさらに差し引かれる(早期解約控除)場合があるため、注意が必要です。
過去に破綻した保険会社とその後の経緯
かつて日本経済が好調だった時期には、顧客獲得や運用収益確保のため、非常に高い予定利率の商品を販売したり、ハイリスクな投資を行っていた保険会社がありました。
しかし、バブル経済崩壊に伴う金利低下や株価下落等により、予定利率を実際の運用収益が下回る、いわゆる「逆ザヤ」状態となる保険会社が増えました。
あわせて、投資収益が大きく悪化した保険会社も続出しました。
当時は、保険会社の破綻処理方法が明確にされておらず、保険会社の経営の透明性などにも懸念がありました。
また、保険の解約も増加したことで、経営基盤の弱い中堅保険会社を中心に、経営破綻が相次ぎました。
日産生命(1997年4月破綻)
戦後初の生命保険会社の破綻として有名なのが、日産生命のケースです。
バブル崩壊とともに、日産生命は大きな逆ザヤを抱えることになりました。
その後、無理な運用で利益を出そうとして、不安定な株式市場に多額の資金を投じ、さらに多くの含み損を膨らませました。
破綻時の債務超過額は、約600億円にものぼり、負債総額も約2兆1,000億円まで膨れ上がりました。
破綻の際に存在した既契約は、1997年6月に受け皿会社として設立された「あおば生命保険株式会社」に引き継がれました。
その後、現在のプルデンシャル生命に吸収合併され、予定利率は2.75%へと下がりました。
東邦生命(1999年6月破綻)
東邦生命は株価の下落などで逆ザヤが発生し、1999年の決算で2000億円を超える債務超過があることを理由に、金融監督庁から業務停止命令が発令されました。
経営陣は自主再建を断念し、東邦生命は経営破綻しました。
破綻後は、アメリカのGEエジソン生命が受け皿となりましたが、その後1.5%まで予定利率が下げられました。
なお、AIGにより買収されたエジソン生命は、AIGエジソン生命となり、その後はジブラルタ生命へと移り変わりました。
第百生命(2000年5月破綻)
1914年に設立された第百生命(旧:日華生命保険)は、1999年4月にカナダの最大手マニュライフ社と合併しました。
社名はマニュライフ・センチュリー保険となり、新規の営業権を譲渡することになりました。
第百生命は新契約の獲得を行わず、既存契約のみ管理する管理会社となりました。
それでも、株価の下落など経済環境が激変するなかで、第百生命は事業を維持することができませんでした。
結果として、経営のすべてをマニュライフ生命に委ねる形で、2000年5月に自主再建を断念し、経営破綻しました。
予定利率は1.0%まで下げられ、養老保険や個人年金保険などの高利率の商品に加入していた契約者は影響を受けることになりました。
大正生命(2000年8月破綻)
1997年に経営破綻した日産生命の影響で、当時、中小規模の生命保険会社へ社会的な不安が高まっていました。
大正生命はその影響で解約が激増し、あわせて株価の下落による逆ザヤから急激に経営が悪化しました。
1999年に金融監督庁の立ち入り検査により、多額の債務超過があることが判明しました。
増資によって2000年3月末での債務超過は回避しましたが、増資と引き換えに行った投資が、同年6月に金融監督庁により問題視されました。
金融監督庁は業務停止命令を発令し、これによって自主再建を断念した大正生命は経営破綻しました。
予定利率は1.0%まで下げられ、大正生命はあざみ生命が引き受けることになりました。
のちに、2002年にあざみ生命が大和生命に契約を包括移転したものの、その大和生命も世界金融危機(リーマンショック)により2008年に経営破綻しました。
その後はジブラルタ生命により買収され、現在は「プルデンシャル ジブラルタ ファイナンシャル生命保険(PGF生命)」となっています。
千代田生命(2000年10月破綻)
千代田生命は、バブル期の積極的な経営が災いし、バブル崩壊後は不動産向け融資の失敗から不良債権化や株式担保融資の担保割れなどが発生しました。
不良債権の額は期を追うごとに増大し、株価の下落による景気低迷と低金利政策の影響もあって、予定利率を運用利回りが下回る「逆ザヤ」現象が続きました。
信用不安が増大し、契約者の解約が相次いだことにより、2000年10月に経営破綻し、予定利率も1.5%まで下げられました。
その後、AIGグループにより買収されAIGスター生命となり、ジブラルタ生命へと変わりました。
協栄生命(2000年10月破綻)
協栄生命は、かつて自衛隊や教職員などをメインターゲットに生命保険を販売していました。
バブル期に高利回りの長期運用商品(終身保険や個人年金保険など)を販売しすぎたことで、大きな逆ザヤが発生しました。
その結果、負債総額は4兆5297億円に達し、経営破綻しました。
予定利率も1.75%まで下げられ、その後はジブラルタ生命に買収され、現在に至っています。
東京生命(2001年3月破綻)
東京生命は、バブル崩壊後の低金利政策や株価の下落により、逆ザヤが起きて経営状態を悪化させていました。
2000年になって、第百生命・大正生命・千代田生命・協栄生命と経営破綻が続いたことから、同規模の東京生命に対しても、経営不安が広がりました。
その結果、2001年3月に自主再建を断念し、東京生命は経営破綻しました。
予定利率も2.6%まで下げられ、現在はT&Dフィナンシャル生命となり事業を継続しています。
大和生命(2008年10月破綻)
大正生命はあざみ生命となり、その後、大和生命となって事業を続けていましたが、大和生命も世界金融危機により2008年に経営破綻しました。
現在は、「プルデンシャル ジブラルタ ファイナンシャル生命保険(PGF生命)」として、銀行窓口での生命保険の販売に注力しています。
今後、保険会社が破綻する可能性はある?

過去に8社の生命保険会社が破綻した事実を見ると、「自分が加入している保険会社も潰れる可能性があるのではないか」と不安に感じる方もいるでしょう。
結論から言えば、現在の日本の生命保険会社が破綻する可能性はゼロではないものの、過去と比較すると大幅にリスクは低下しています。
過去に破綻した8社はいずれも1997年〜2008年の間に集中しています。
バブル崩壊後の逆ザヤ問題や、リーマンショックという特殊な経済環境が主因でした。
2008年の大和生命の破綻を最後に、2026年1月時点まで約17年間、日本の生命保険会社の破綻は発生していません。
この間、保険業法の改正や金融庁による監督体制の強化が進み、保険会社の経営の透明性やリスク管理体制は大幅に改善されています。
保険会社の経営状態が確認できる指標とは?
保険会社の経営状態を知るために、契約者が確認できる主な指標は以下の3つです。
- ソルベンシーマージン比率
- 信用格付け
- 基礎利益
これらの指標を定期的に確認することで、保険会社の経営状態をある程度判別できるでしょう。
また、保険契約を1社に集中させると、万が一その会社が破綻した場合の影響が大きくなります。
不安がある場合は、複数の保険会社に分散して加入することも検討するとよいでしょう。
ソルベンシーマージン比率
「ソルベンシーマージン比率」とは、大災害や株価の大暴落など通常の予測を超えたリスクが発生した場合に、保険会社がどの程度の支払余力を持っているかを示す指標です。
ソルベンシーマージン比率が200%を下回ると、金融庁が経営改善計画の提出命令や業務停止命令などの「早期是正措置」を発動します。
ただし、ソルベンシーマージン比率が200%を超えていれば、必ず安全というわけではありません。
実際に、かつて破綻した一部の保険会社は、破綻の前年度には200%を超える数値を公表していたケースもあります。
この指標はあくまで「ある時点での財務状況」を表すものであり、急激な経済環境の変化には対応しきれない場合があるためです。
関連記事:生命保険会社の金融機関格付けとソルベンシーマージン比率
信用格付け
「信用格付け」とはS&P、ムーディーズ、R&I、JCRなどの格付け会社が、保険会社の財務健全性を評価したものです。
一般的にAA格以上は財務基盤が極めて高いと評価されますが、格付けはあくまで一時点の評価であり、将来の安全を確約するものではありません。
格付けは各格付け会社のウェブサイトや、保険会社のディスクロージャー誌で確認できます。
基礎利益
基礎利益は、保険会社の本業での収益力を示す指標です。
ディスクロージャー誌や決算資料で公開されています。
基礎利益が安定的にプラスであれば、保険会社の事業基盤が健全であることを示しています。
まとめ
生命保険会社が破綻した場合でも、セーフティネットの仕組みにより契約自体は守られます。
しかし、予定利率の引き下げによって、受け取れる保険金や解約返戻金が目減りしてしまうリスクは避けられません。
将来のために備えていたお金が減ってしまう事態を防ぐためには、加入時の保険会社選びが非常に重要です。
保険料の安さや保障内容だけでなく、「ソルベンシーマージン比率」や「信用格付け」といった客観的な指標も確認し、納得感のある保険会社選びを行うことが、将来のリスク軽減につながります。
もし現在ご加入中の保険会社の安全性に不安がある場合は、リスク分散のために複数の保険会社に分けて加入することも一つの有効な手段です。




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