終身保険は保障と貯蓄性を兼ね備えており、自分にもしものことがあったとき、遺族に保険金を残すため、あるいは、貯蓄性を活かし、解約返戻金をさまざまな用途に充てたいから等の目的で活用ができます。じつは、相続対策にも大きな効力を発揮するのです。本記事では、相続対策としての終身保険についてご紹介します。
目次
相続税のお話
保険に加入する際は、「誰のために」「なんのために」といった目的をはっきりさせることがとても大事です。
では、終身保険に入る目的とはなんでしょうか。
自分にもしものことがあったとき、遺族に保険金を残すため。あるいは、貯蓄性を活かし、解約返戻金をさまざまな用途に充てたいから。そんな理由を真っ先に思い浮かべると思います。保障と貯蓄性を兼ね備えている点は終身保険の特徴ですから、当然ですね。
しかし、終身保険には意外な使い方もあります。じつは、相続対策に大きな効力を発揮するのです。
種明かしをする前に、ここでちょっと相続税について触れておきましょう。
亡くなった人から受け継いだ財産には相続税がかかります。といっても、財産すべてに課税されるのではなく、基礎控除が受けられます。基礎控除に相当する分は税金が免除されます。
かつては5000万円+1000万円×法定相続人の数が基礎控除額でした。ですが、2015年に改定があり、現在は3000万円+600万円×法定相続人の数となっています。基礎控除額が減ったということは、相続税を払う可能性のある人が増えたわけです。
「うちはそんなに預金がないから相続税とは無縁だね」と安心した方、油断はできませんよ。現金はもとより、不動産や車、有価証券、骨董品、美術品……などなど、金銭的な価値があるものは全部が財産とみなされます。これらを「本来の相続財産」といいます。
保険金にも税金がかかる!?
本来の相続財産に対して、死亡保険金は死後に得られるため「みなし相続財産」と呼ばれます。保険は亡くなるまでは財産ではないのですが、死亡によって財産になるわけです。相続財産の一部ですから、保険金にも税金がかかってきます。
「それなのに、なぜ保険?」という疑問はごもっとも。
じつは、保険金には非課税枠が設けられています。500万円×法定相続人の数までは、相続税がかかりません。
たとえば、1500万円の終身保険に入っている夫が亡くなり、妻と子ども2人が残されたとします。すると、1人につき500万円、合計1500万円は相続財産の中から非課税にります。しかも、その分はそっくり家族の手に渡ります。メリットの大きさをおわかりいただけるでしょう。
保険金に対する非課税枠は、定期保険であっても終身保険であっても同じです。ただ、人はいつ亡くなるか予測ができません。相続税対策という意味では、保険期間に限りがある定期保険より、一生涯保障が続く終身保険のほうが向いています。
契約者と被保険者に要注意
このように相続税対策としてたいへん有効な終身保険ですが、ひとつ注意したい点があります。それは契約者・被保険者・受取人の決め方です。それぞれの意味をご存じでしょうか?
保険契約の当事者は三者いて、
・契約者ー保険会社と契約を結び、保険料を払う人
・被保険者ー保障の対象となっている人
・受取人ー保険金を受け取る人
となっています。
保険に加入するときは、この三者を指定します。そして、これら3つを誰に設定するかで、税金の種類が変わってくるのです。一例を見てみましょう。
契約者(夫) 被保険者(夫) 受取人(妻や子など法定相続人)→相続税(非課税枠あり)
契約者(夫) 被保険者(夫) 受取人(法定相続人以外の人)→相続税(非課税枠なし)
契約者(夫) 被保険者(妻) 受取人(夫)→所得税、復興特別所得税、住民税
契約者(夫) 被保険者(妻) 受取人(子)→贈与税
どの税金がかかってくるかで税率も異なります。
受取人によって保険金の非課税枠が適用されるかされないかの違いはありますが、相続税対策として使いたいなら、必ず契約者と被保険者を同一人物にしましょう。うっかり間違えると、せっかくの節税効果がフイになってしまいかねません。
相続争いを起こさないために
税金対策だけでなく、保険金は遺産相続をめぐるいろいろなトラブルを防ぐ手段にもなります。
子どもが複数いる場合、財産は均等に残してやりたいと思うのが親心。とはいえ、土地や建物のような不動産は分けにくいものです。和気あいあいとやってきた兄弟姉妹が、遺産相続が持ち上がったとたんにいがみ合うようになったなどという話はままあります。そんな際、例えば、長男には土地と家が、次男には保険金が渡るといった形で配分しておけば、無用な揉め事を避けられるでしょう。
また、財産は不動産ばかりで現金が少ないケースは、相続税の支払いに困るかもしれません。こういうときも納税資金の準備として保険金が役に立ちます。
ちなみに、いざとなったら不動産は物納もできます。ただし、物納が認められるのは資産価値の高い物件、すなわち高く売れそうな物件に限られます。
まとめますと、死亡保険金は「みなし相続財産」として相続財産の一部になり、相続税の課税対象になります。しかし、終身保険はこの相続税の負担を減らす効果を持っています。相続税対策として使うなら、契約者と被保険者を同じにすることがポイントです。