医療保険と生命保険の違いについて|おすすめはどちら?
生命保険会社が販売する「保険」商品は保障の仕組みや範囲・保険金受取人などによって、いくつかの種類に分けられます。
中でもなじみがあるのが生命保険と医療保険ですが、これらの特徴について理解していなかったり、混同して考えていたりする方は少なくありません。そこでこの記事では、生命保険と医療保険の違いや両方の特徴について、わかりやすく解説します。
自分のニーズに合った保険を選ぶためにも、これらの保険に加入するとどんな保障を受けられるのか、正しく理解しておきましょう。
本記事のポイント
- 生命保険は死亡時のリスクに備えるためもの
- 医療保険は病気やケガをした場合のリスクに備えるためのもの
- 死亡時に家族など経済的に困る人がいるのであれば生命保険の必要性が高くなり、そうではない場合には医療保険を優先したほうがいい場合もある
- 性別・年齢、ライフステージによってそれぞれの必要性は異なる
生命保険と医療保険の違い
就職や結婚・子どもの誕生といったタイミングで加入や見直しを検討する人も多い「生命保険」と「医療保険」。両方の特徴を端的に言うと、下記のとおりです。
ココがポイント
生命保険は死亡リスクに備えるために、医療保険は病気やケガのリスクに備えるために加入する保険。
両者の違いとしては、「保障内容」と「保険金受取人」の2点が挙げられます。
生命保険と医療保険の「保障内容」の違いを比較
まず保障内容についてですが、生命保険は被保険者が死亡した場合に保険金が給付されます。
これに対して医療保険は、被保険者が病気やケガで入院をしたり手術を受けたりした場合に、保険金が給付されます。
保険の種類 | 保険金の受給要件 |
生命保険 | 被保険者が死亡した場合 |
医療保険 | 被保険者が病気やケガで入院・手術をした場合 |
生命保険と医療保険の「保険金受取人」の違いを比較
次に保険金受取人についてですが、生命保険の場合、被保険者の配偶者や子どもなど、契約時に指定した人が保険金受取人になります。
これに対して医療保険は、契約者または被保険者が保険金受取人となります。
保険の種類 | 保険金受取人 |
生命保険 | 契約時に指定した人(被保険者の配偶者や子どもなど) |
医療保険 | 契約者または被保険者 |
ココがポイント
生命保険は被保険者が「死亡したあと」の保障をし、医療保険は被保険者が「生きていくため」の保障をするため、このような違いが生じるのです。
次に、生命保険と医療保険についてさらに詳しく見ていきましょう。
生命保険とは
生命保険とは、被保険者に万一のことが起きた場合に、約定の保険金が給付される保険のことを言います。
被保険者にもしものことがあっても、まとまった額の保険金が受け取れれば、遺族はそれを原資に生活をしていくことができるでしょう。つまり生命保険は「遺族の生活保障のための保険」と言うことができます。
生命保険を3種類別に比較
生命保険は、保険金がどのような場合に給付されるのかによって、以下の3種類に分けられます。
生命保険の種類
- 死亡保険
- 生存保険
- 生死混合保険
では、これら3種類の生命保険にはどのような違いがあるのか、それぞれ比較してみましょう。
①死亡保険
死亡保険とは死亡保険は被保険者が死亡したとき、あるいは高度障害状態になったり余命宣告を受けたりなど、約定の状態になったときに保険金が受け取れる保険です。
そして死亡保険はさらに「定期型」と「終身型」の2種類に分けられます。
定期型
定期保険とは〇〇歳まで・〇〇年間といった形で保障期間(保険期間)が決められています。
定期保険では約定の期間内に死亡しなかった場合、保険金の給付は受けられません。
また定期保険の多くは掛け捨て型で、このタイプの保険は中途解約をしたり保障期間内に死亡しなかった場合でも、払い込んだ保険料は戻りません。
ただ、貯蓄型の商品に比べると保険料が比較的安いため、保険料負担を抑えつつまとまった額の保障を用意することができます。
定期保険のポイント
- 保障期間(保険期間)が一定期間
- 掛け捨て型が多い
- 比較的安い保険料で、万が一の際の経済的リスクに備えられる
終身型
終身保険とはこれに対して終身保険は、保障期間(保険期間)の定めがなく保障が一生涯にわたり続きます。
人はいつか亡くなりますので、終身型の死亡保険に加入していれば、解約しない限り死亡時に必ず保険金を受け取れます。
また、終身型の死亡保険には貯蓄性があり、払い込んだ保険料の一部が積立てられています。そのため解約時には、約定の解約返戻金が支払われます。
終身保険のポイント
- 保障が一生涯続く
- 解約しない限り、必ず死亡保険金を受け取れる
- 終身型の死亡保険には解約返戻金がある
死亡保険の中には、終身保険と定期保険を組み合わせた「定期付き終身保険」や「就労不能特約」「シールド特約」など、死亡以外のリスクをカバーできる特約を付加できる商品もあります。
②生存保険
生存保険とは被保険者が生存していることを条件に、保険金が給付される保険のことを言います。
具体的には「個人年金保険」や「学資保険」が生存保険にあたります。
個人年金保険
個人年金保険とは老後の資金準備手段として活用される保険です。
年金受取開始時までに保険料の払い込みを終え、その後は約定の期間中、生きている限り年金が給付されます。
なお、保険金(ここでは「年金」)の給付は被保険者の生存を条件としています。
そのため「生存保険」に分類されますが、保障期間(保険期間)中に被保険者が死亡した場合は、払込保険料相当額の死亡保険金を受け取れます。
③生死混合保険
生死混合保険とは生存保険と死亡保険を組み合わせた保険のことを言います。
生死混合保険の保障内容は、以下のとおりです。
被保険者の状態 | 受け取れる |
死亡した場合 | 約定の死亡保険金 |
満期まで | 約定の満期保険金 |
養老保険
養老保険は、代表的な生死混合保険です。
この保険は、死亡保険金と満期保険金の額が同じであるのが特徴で、個人が老後の備えのために加入するのはもちろん、法人が福利厚生やリスクマネジメントの一環として加入することもあります。
関連記事:生命保険会社が扱う保険は4種類に分類できる!特徴を図・一覧でわかりやすく解説
医療保険とは
医療保険とは、病気やケガのリスクに備えるために加入する保険のことを言います。
医療保険の主な保障には「入院給付金」と「手術給付金」の2種類があり、次のような保障内容が一般的です。
医療保険の | 給付金の | 給付金額 |
入院給付金 | 被保険者が入院した場合 | 約定の入院給付日額 |
手術給付金 | 被保険者が手術を受けた場合 | 約定の額の保険金 |
保障の対象となる入院・手術や保険金給付の条件は、商品によって異なります。
また医療保険には上記の基本保障のほか、以下のような特約を付加することも可能です。
医療保険に付加できる特約
- 通院特約
- がん診断給付金特約
- 先進医療特約
- 入院一時金特約
- 保険料払込免除特約
- 女性疾病特約 など
公的医療保険制度と民間医療保険の違いとは?
医療保険への加入を検討するうえで理解しておきたいのが、公的医療保険と民間医療保険の違いです。
公的医療保険制度とは
公的医療保険制度とは、日本の社会保障制度のひとつで、医療機関を受診する際、保険証を提示することにより診療費などの自己負担額を1~3割に抑えられます。
また医療費が高額になった場合「高額療養費制度」を利用することで、1ヵ月あたりの自己負担額を一定限度内に抑えることも可能です。
日本は国民皆保険制度を採用しており、国民全員が公的医療保険に加入しなければなりません。保険料は、年齢や収入・職業などによって異なります。
民間医療保険とは
民間医療保険とは、生命保険会社が販売する医療保険商品のことを言います。
入院給付金と手術給付金を基本的な保障内容とし、個別に特約を付加することで色々なリスクに備えられます。
公的医療保険とは異なり加入は任意で、保険料は保障内容や年齢によって異なります。
関連記事:医療保険とは?公的医療保険制度との仕組みの違いをわかりやすく解説
民間医療保険には入るべき?
このように公的医療保険があれば医療費を抑えることは可能ですが、1~3割相当額については自己負担しなければなりません。
また、病気やケガのために仕事を休まざるを得なくなった場合、その間の逸失収入を埋める方法についても考えておく必要があるでしょう。
ココがポイント
この点、民間医療保険に加入していれば保険金の給付を受けられるため、病気やケガに伴う経済的リスクをしっかりカバーできます。
つまり民間医療保険に加入する必要性は、病気やケガをした際に「公的医療保険だけではカバーしきれない経済的リスクに備えられる」という点にあるのです。
医療保険を種類別に比較
医療保険は、
- 保障期間(保険期間)
- 貯蓄性の有無
- 保障内容
などによって、以下の5つのタイプに分けられます。
①定期医療保険
定期医療保険とは、保障期間(保険期間)が定められている医療保険のことを言います。
保険料は保障期間中のリスクをもとに算出されるため、若い方は安い保険料で手厚い保障を用意することができます。
保障期間満了後も契約の更新をすることは可能ですが、年齢に比例して保険料も高くなります。
②終身医療保険
終身医療保険とは、一生涯にわたり保障が続く医療保険のことを言います。
定期型の保険とは異なり契約の更新がなく、保険料は加入時のまま変わりません。
また、終身医療保険の中には生涯にわたり保険料を払い続ける「終身払」のほか、〇〇年間・〇〇歳までというように一定期間内に一生分の保険料を払い込んでしまう「短期払」を選択できる商品もあります。
関連記事:終身医療保険とはどんな保険?定期型との違いをわかりやすく比較
③貯蓄型医療保険
貯蓄型医療保険とは、貯蓄性を備えた医療保険のことを言います。
保険料の一部を貯蓄分として積立てるため、掛け捨て型医療保険に比べると保険料は割高です。貯蓄分の支払い方は商品によって異なり、
- 約定の年数ごとに生存給付金が支払われるもの
- 約定の年齢に達した時点で、それまでの払い込み保険料から給付済みの保険金額を差し引いた分が支払われるもの
などがあります。
関連記事:貯蓄型・掛け捨て型の医療保険はどっちが人気でおすすめ?その違いとは
④女性保険
女性保険とは、一般的な医療保険にプラスして、子宮筋腫や乳がんといった女性特有の病気になった場合に、より手厚い保障を受けられる医療保険のことを言います。
商品によっては女性に特有の病気だけでなく、女性に多い病気やがん全般にまで範囲を広げて手厚く保障するものもあります。
関連記事:女性保険のメリットとは?年代別の必要性やおすすめな選び方を紹介
⑤引受基準緩和型・無選択型医療保険
引受基準緩和型医療保険(限定告知型医療保険)とは、一般的な医療保険に比べて告知事項を減らし、引受け基準を緩和した医療保険のことを言います。
というのも、医療保険への加入にあたっては健康状態について告知をしなければならず、その内容によっては契約を引受けてもらえないケースがあります。
ココがポイント
この点、引受基準緩和型医療保険は告知事項を数項目に限定しているため、持病があるなど一般の医療保険への加入が難しい方でも、比較的加入しやすくなっているのです。
ただし、病気やケガのリスクが高い分、保険料は割高に設定されています。
また引受基準緩和型医療保険への加入も難しい場合「無選択型医療保険」への加入を検討することになります。この保険は告知なしで加入できますが、保険料はかなり割高に設定されています。
生命保険と医療保険はどっちがおすすめ?迷ったときの選び方
保険への加入を検討する場合、生命保険と医療保険のどっちを選ぶべき、あるいは両方へ入るべきなのでしょうか。ここからは、生命保険と医療保険の選び方について解説します。
生命保険への加入がおすすめな人
生命保険は基本的に、自分に万一のことがあった場合に、遺された家族が生活に困ることのないよう加入するものです。
したがって以下に該当する方は、生命保険への加入をおすすめします。
生命保険はこんな方におすすめ
- 自分に万一のことがあった場合に、配偶者や子どもの生活に支障がでる人
- 子どもがまだ幼く、これから養育費や教育費がかかる人
必要な保険金額はその人のライフステージによって異なります。そのため、
- 働き盛りの間や子どもが自立するまでの間はまとまった額の保障に
- 退職してからは葬儀費用を賄える程度の保障に
というように、ニーズに合わせて定期的に保険金額の見直しをすることが大切です。
また生命保険の中には、老後に備えるための「個人年金保険」や「養老保険」、子どもの教育費に備えるための「学資保険」などもあります。
以下に該当する方で、必要な保障を用意したうえで余裕がある場合は、こういった保険への加入を検討してみることをおすすめします。
学資保険はこんな方におすすめ
- 公的保障だけでは不安があるため、今のうちに老後の資金の準備を始めたい
- 子どもの教育費を計画的に用意したい
- 貯金が苦手なため、毎月保険料という形で計画的に貯蓄をしたい
医療保険への加入がおすすめな人
民間の医療保険は、病気やケガをした場合の経済的リスクに備えるためのものです。したがって、医療保険をおすすめするのは以下のような方です。
医療保険はこんな方におすすめ
- 病気やケガで入院したり手術を受けたりした場合の医療費に備えたい
- 病気やケガで休職せざるを得なくなった場合の逸失収入をカバーしたい
- 先進医療など、公的医療保険を使えない高額な治療に備えたい
医療費は、公的医療保険制度を使うことで自己負担額を1~3割に抑えられます。
また会社員が病気やケガで休職する場合は「傷病手当金」の支給を受けられるケースがあります。
そのため医療保険への加入を検討する際は、自分に必要な保障についてはもちろん、公的医療保険などによって受けられる保障についてもよく確認しておくことが大切です。
まとめ
生命保険は死亡時のリスクに備えるために、医療保険は病気やケガをした場合のリスクに備えるために加入する保険です。
どっちの保険が必要なのか・どのくらいの保障が必要なのかは、家族構成やライフステージによって異なります。
ココがポイント
まずは自分にはどのようなリスクがあってそのリスクにどう備えるべきなのか、シミュレーションしてみることが大切です。
また日本は社会保障制度が充実していますので、
- 自分が利用できる公的制度にはどのようなものがあるのか
- 万一のことが起きた場合にどのくらいの保障を受けられるのか
といった点についてもきちんと理解しておきましょう。