生命保険の複数契約を持つことのメリット・デメリット
生命保険では同じ保障内容や似たような保障内容の商品を複数契約することが可能です。
本記事では複数の契約を持つことのメリット・デメリットや注意点などを解説していきます。
生命保険で複数の契約を持つことができるの?
ココがポイント
生命保険では、同じ保障内容や似た保障内容の商品を複数契約することが可能です。
たとえば、A社とB社の死亡保険、C社とD社の医療保険に加入するなど、同じタイプの保険に加入することが複数契約です。
C社の医療保険とD社のがん保険でも、重複する保障がありますので、複数契約と言えるでしょう。
ココに注意
通算制限では、他の保険会社を含めた保険金額総額に対して制限を設けており、不要に高額な保険金額や給付金にならないよう契約時と保険金支払い時等に確認しています。
それではどのような形で生命保険会社は他社の契約である保険金額を確認するのでしょうか?
保険会社は照会制度を使って確認をしている
生命保険会社各社が加入する一般社団法人生命保険協会が設立した3つの制度を使って、他社にある保険契約の情報を照会し、その保険契約に問題がないかどうかを確認しています。
その制度は次の3つです。契約時に渡される保険の契約のしおりや約款に制度の概要が記載されています。
- 「契約内容登録制度・契約内容照会制度」
- 「医療保障保険契約内容登録制度」
- 「支払査定時照会制度」
この3つの制度を使って、保険会社間で必要な情報を共有しています。
たとえば、ひとつの契約を見た時に、その契約単独ではごく標準的な保険金額の死亡保険の契約だとしても、それが複数の保険会社と契約している場合には通算すると大きな保険金額となり、場合によっては一部の契約者が不当に大きな利益を得ることになってしまいます。
そういったモラルリスクを防ぐため、保険会社では新しい契約の引受をする際に、照会制度を利用し、他社情報とあわせてその契約と保険金額が妥当であるかどうかを判断します。
複数契約のメリット・デメリット
ここまで複数契約についてと、契約に関する保険会社の情報共有の仕組みを紹介しましたが、複数契約のメリットとデメリットはどのような点にあるのでしょうか。
複数契約のメリット
生命保険の契約を複数持つことの主なメリットは下記の3つです。
- それぞれの商品の強みを生かした保障を得ることができる
- 複数の保険会社や担当者から様々な情報を得ることができる
- 経済的に安定し、安心を得られる
それぞれの商品の強みを生かした保障を得ることができる
たとえば医療保険で、A社は疾病aには対応しているが疾病bには対応していない、B社は疾病bには対応しているが疾病aには対応していない場合、A社とB社の医療保険に加入することで、保障の範囲が広がり、将来のリスクに対応しやすくなります。
どの医療保険がどのような疾病に対応しているかは請求時になってみないと分からないほど、医療保険は多くの疾病に対応しています。いざ請求したけれども対象外になる可能性を回避できるのが複数契約のメリットの一つです。
複数の保険会社や担当者から様々な情報を得ることができる
特定の保険会社や担当者からのみの情報では不十分な場合でも、複数の保険会社と契約を結ぶことで、得られる情報量が増え、物事の判断がしやすくなります。
ときには異なる考え方を知ることができかもしれません。シンプルで保険料は安いがアフターサービスや特典の少ない保険会社であっても、特典の豊富な保険会社とも契約することで、充実した保障と様々な情報を得られることがあるでしょう。
経済的に安定し、安心を得られる
保険会社や保険商品によって、支払要件が異なります。
1契約のみの場合、保険金や給付金が支払われるかどうかはその保険会社次第になってしまいますが、仮に3社と契約している場合、少なくともそのうち1社から受け取ることができれば、経済的損失をカバーできますし、複数社から受け取ることができれば経済的にも安定します。このように対応範囲が広くなれば安心感を得ることができます。
複数契約のデメリット
生命保険の契約を複数持つことのデメリットは主に下記の4つです。
- 保険料が高くなりがち
- 契約の管理が煩雑
- 入院時や死亡時に保有契約の把握と手続きが困難
- 場合によっては国税庁の調査の対象になる
保険料が高くなりがち
複数の保険に加入しますので、その分、支払うべき保険料は高くなります。メリットばかりに気を取られ複数契約を結んでしまうと、家計の状況に合わない保険料を支払うことになりますので、注意が必要です。
契約の管理が煩雑
複数契約を持つと、それぞれの契約を管理しなければなりません。住所や連絡先を変更するとすべての保険会社に変更の申請をしなければなりませんので、手間がかかります。また契約ごとに保険会社からの連絡や郵便物があるため、それらを分別するなどの管理が煩雑となります。
入院時や死亡時に保有契約の把握と手続きが困難
入院時や死亡時にはそれぞれの保険会社に請求しなければなりません。保険会社によって請求方法は異なりますので、各保険会社に確認して手順通りの請求をする必要があります。不明な点等を問い合わせるやり取りまで考えると、給付金や保険金受取までの進捗状況の把握が困難となるでしょう。
場合によっては国税庁の調査対象になる
保険は万一の場合に備えて経済的損失をカバーするためのものですので、極端に契約数を増やし、多額の給付金や保険金を受け取った場合、本来の目的以外で保険を利用していると考えられ、国税庁などの調査対象になる可能性があります。事件性を疑われる可能性もありますので、注意が必要です。
複数契約を持つ人の保険の見直しのタイミングとは
すでに複数契約を持っている場合、どのタイミングで保険の見直しを行えばいいのでしょうか。
メリットの効果が薄れたとき
複数契約のメリットは、「それぞれの商品の強みを生かした保障を得ることができる」「複数の保険会社や担当者から様々な情報を得ることができる」「経済的に安定し、安心を得られる」ことでした。幅広く保障を得る必要がなくなり、これ以上の情報も不要で、保険を通じた経済的安定や安心感の獲得は十分得られた場合、複数契約を続ける必要がなくなります。
すべての契約が不要となれば同時に解約することも一つの方法ですが、基本的にはこれまでの経験から最も自分に合った保険以外から解約した方がいいでしょう。また他の種類の保険に切り替える場合は、先にどのような保障内容があるか確認し、残しておく保険の保障内容とのバランスを考えておくと効果的です。
デメリットが負担に感じ始めたとき
複数の保険を契約したときは気にならなかったデメリットが、時間の経過とともに負担になることがあります。複数契約のデメリットは「保険料は高くなりがち」「契約管理が煩雑」「入院時や死亡時の把握および手続きが困難」「場合によっては国税庁の調査対象になる」でした。
特に実際に複数契約をして保険料を払い続けると、家計への負担を実感し、保険料の高さがデメリットに感じることがあります。契約当初は気にならなくても、支出の増加で少しずつ負担を感じることも考えられます。
また保険会社や担当者からの連絡や対応で想定以上に時間を取られたり、保険証券や約款、定期的に送られてくる郵便物などの管理が面倒になったりすると、複数契約が負担になります。
ライフステージに変化があったとき
ココがポイント
複数契約であるかどうかに限らず、結婚時、出産時、退職時などのライフステージに変化があったときは保険見直しのタイミングです。
複数契約を維持する場合は、残しておくべき保険と切り替え候補の保険に分け、よりよい保険がないかどうかを探すことになります。複数契約により、複数の担当者から豊富な情報を得ていれば、保険の見直しもしやすいと思われます。
関連記事:持病があっても入れる保険のメリットやデメリットや保険に入れない病気などを解説
これから契約する人が注意すべき複数契約のポイントとは
これから複数の保険会社と契約を結ぶ予定の場合、この記事で紹介したメリットが本当に必要かどうかを検討する必要があります。またデメリットについてもしっかり理解しておかなければなりません。
その上で、複数契約は保険料が高くなる傾向にありますので、契約時の家計の状況だけで考えるのではなく、10年、20年と長期間で支払うことが出来るかどうかを検討しなければなりません。
また複数契約によるメリットを最大限受けるためには、保障内容を正確に理解する必要があります。
全く同じ保障内容である保険を複数契約した場合、支払条件を満たせば受け取れる給付金や保険金は増えますが、条件を満たさなければ全く受け取れないことも考えられます。
複数契約のメリットは、「それぞれの商品の強みを生かした保障を得ることができる」ことにありますので、保障内容を理解し、相互に強みが発揮できる組み合わせを考えなければなりません。ただ、複数の保険会社を取り扱う乗合代理店であれば、それぞれの保険の特徴を知っていると思いますので、相談しながら選ぶことは可能です。
このように、どのような保険商品でも複数であればメリットを受けられるわけではない点が注意点となります。
まとめ
複数契約を持つことにはメリットとデメリットがあり、保険料が高くなりがちであることから、十分検討してから契約する必要があります。死亡保険の複数契約であれば死亡や所定の高度障害にならなければ保険金は受け取れませんし、医療保険の複数契約であれば入院や手術をしなければ給付金は受け取れません。複数の契約を結ぶことにより、万一のときは安心できますが、何もなかったことも考えて保険選びをしましょう。