生命保険料控除とふるさと納税はどちらがお得?併用による影響や控除の上限額についてわかりやすく解説
毎年10月になると、生命保険や医療保険に加入している人には保険会社より生命保険料控除証明書が送られてきます。会社員や公務員の方であれば、そろそろ年末調整も始まる時期です。また、年末にかけてどの自治体にふるさと納税を行うかそろそろ決めなくてはいけません。
本記事では、生命保険料控除とふるさと納税を併用する場合に注意すべきポイントについて解説します。
本記事のポイント
- 所得控除は、その年の所得から差し引いて所得税や住民税の負担を軽減する制度
- 生命保険料控除制度とふるさと納税は所得控除の一種で併用可能
- 生命保険料控除をはじめとした所得控除を引いた後の所得で、ふるさと納税の上限額は変わる
生命保険料控除とはどんな制度?
生命保険料控除制度は、その年の1月1日から12月31日までに払い込んだ生命保険料の金額によって、一定の金額が契約者(保険料負担者)のその年の所得から差し引かれ、税率を掛ける前の所得が低くなることにより所得税と住民税の負担が軽減される制度です。いわゆる、「所得控除」と呼ばれるものの一種で、税金の負担を軽減します。
関連記事:生命保険料控除でいくら戻ってくる?還付金額の計算方法【会社員・個人事業主・パート職業別】
ふるさと納税とはどんな制度?
ふるさと納税は、本来は住んでいる自治体に納める予定の税金を任意の自治体に寄付することで、所得から住民税や所得税が控除される仕組みです。
控除を受けられる上限は納税額によっても異なりますが、控除される金額は寄付金から2,000円を引いた金額と決められています。
なお、控除の対象となるふるさと納税額は総所得金額等の40%が上限です。生命保険料控除制度もふるさと納税も「所得控除」のひとつです。
生命保険料控除とふるさと納税は併用はできる?それによる影響はある?
生命保険料控除とふるさと納税は併用できます。
ただし、生命保険料控除の金額に限らず住宅ローン控除や医療費控除など、その他の所得控除を受けている際にはふるさと納税額の年間上限が変わる点には注意しなければなりません。
生命保険料控除の上限額はいくら?
所得税と住民税において、生命保険料控除の上限額は旧制度と新制度で異なります。納めた所得税以上の金額の控除はできません。
旧制度の生命保険料控除とは
旧制度の対象となるのは、2011(平成23)年12月31日以前に締結した契約です。一般生命保険料控除と個人年金保険料控除の2種類があります。所得税の控除額は2種類の合計で10万円、住民税の控除額は合計で7万円が上限となります。
また以下の表の通り、一般生命保険料控除の対象には生命保険や介護保険、そして医療保険などが含まれます。個人年金保険料控除の対象に含まれるのは個人年金保険のみですが、税制適格特約が付帯されている契約に限られているため注意が必要です。
【旧制度】所得税の控除額の上限
生命保険料控除にて実際に所得税から控除される金額はその年の1月1日~12月31日までに払い込んだ保険料の額によって決められています。
旧制度の場合、年間払込保険料とそれに応じた所得控除額は以下の表の通りとなり、年間払込保険料が10万円を超えると控除額の上限である5万円の所得控除を受けられます。また所得税の控除額は、2種類の保険料控除を合計した10万円が限度となります。
【旧制度】住民税の控除額の上限
旧制度の場合、年間払込保険料とそれに応じた住民税の控除額は以下の表の通りです。年間払込保険料が7万円を超えると控除額の上限である3万5,000円の控除を受けられます。また住民税の控除額は、2種類の保険料控除を合計した7万円が限度となります。
新制度の生命保険料控除とは
新制度の対象となるのは、2012(平成24)年1月1日以降に締結した契約です。一般生命保険料控除と個人年金保険料控除に介護医療保険料控除が加わり3種類となりました。所得税の控除額は合計で12万円、住民税の控除額は合計で7万円が上限となります。
以下の表の通り、一般生命保険料控除や個人年金保険料控除の対象となる保険は旧制度より変わりはありません。新しく加わった介護医療保険料控除の対象となる保険は介護保険や医療保険、そしてがん保険などが含まれます。
【新制度】所得税の控除額の上限
新制度では年間払込保険料とそれに応じた所得控除額の上限は以下の表の通りとなります。年間払込保険料が8万円を超えると、控除額の上限である4万円の所得控除が受けられます。
【新制度】住民税の控除額の上限
新制度では年間払込保険料とそれに応じた住民税の控除額は以下の表の通りです。年間払込保険料が5万6,000円を超えると、控除額の上限である2万8,000円の控除を受けられます。また住民税の控除額は、3種類の保険料控除を合計した7万円が上限となります。
生命保険料控除による所得税からの還付金額の計算方法
ここからが大事です。具体的に生命保険料控除により所得税から還付される金額は以下の計算式の通り生命保険料控除により控除される金額に対し、所得に応じた所得税率をかけることで求められます。
支払った生命保険料のうち控除対象となる金額 × 所得税率 = 還付金額
まず下の早見表から、自分の所得金額とそれに応じた税率を確認してみるとよいでしょう。
課税される所得金額 | 税率 |
---|---|
1,000円から1,949,000円まで | 5% |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33% |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% |
40,000,000円以上 | 45% |
生命保険料控除による住民税から控除される金額の計算方法
住民税に関しては、全額が翌年の住民税から控除(引かれる)形になります。税率は所得に関係なく一律10%であるため、以下の計算式で求めることができます。
支払った生命保険料のうち控除対象となる金額 × 10% = 住民税から控除される金額
関連記事:令和6(2024)年の年末調整の変更点は?年末調整で注意したいポイントも解説
ふるさと納税による控除額の上限はいくら?
生命保険料控除をはじめとした各種の所得控除を除いた後の課税所得額から、ふるさと納税の上限額が決まります。
控除を受けられる上限は納税額によっても異なりますが、控除される金額は寄付金から2,000円を引いた金額と決められています。なお、所得税の控除の対象となるふるさと納税額は総所得金額等の40%が上限です。住民税については総所得金額等の30%が上限です。
ふるさと納税による所得税からの控除額の計算方法
ふるさと納税により所得税から控除される場合、控除額はそのまま還付金となります。控除額は以下の計算式で求めることができます。
所得税からの控除 = (ふるさと納税額-2,000円)× 所得税の税率
所得税の税率は先ほど紹介した早見表の通りとなります。
課税される所得金額 | 税率 |
---|---|
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% |
40,000,000円 以上 | 45% |
ふるさと納税による住民税からの控除額の計算方法
住民税からの控除には「基本分(確定申告の場合)」と「特例分(ワンストップ特例制度)」があり、それぞれ以下のように決まります。なお、控除の対象となるふるさと納税額は、総所得金額等の30%が上限です。
■ 基本分(確定申告の場合)
住民税からの控除(基本分) = (ふるさと納税額-2,000円)×10%
■ 特例分①(ワンストップ特例制度の場合)
住民税からの控除(特例分) = (ふるさと納税額 – 2,000円)×(100% – 10%(基本分)– 所得税の税率)
なお、特例分(①で計算した場合の特例分)が住民税所得割額の2割を超える場合は、下記:特例分(②)の計算式となります。この場合、実質負担額は2,000円を超えます。
■ 特例分②(ワンストップ特例制度の場合)
住民税からの控除(特例分) = (住民税所得割額)×20%
生命保険料控除とふるさと納税はどちらがお得?
生命保険料控除とふるさと納税の概要などを見てきましたが、実際どちらを使うと控除額や還付金額がよりお得なのでしょうか。
本来、保険は保障を目的に加入するものであるため、生命保険料控除はあくまで保障のついでに受けられる税制上の特典です。一方で、ふるさと納税は自治体に寄附をすることで、返礼品と寄附の金額に応じた税金の控除を受けられる制度です。よって、それぞれの制度自体の性質が異なるため、もし家計に余裕があれば生命保険料控除とふるさと納税を併用し、うまく活用するとお得になると考えた方がよいでしょう。
関連記事:【2024年版】保険料控除って何?申請すればいくら戻ってくる?生命保険料控除と地震保険料控除がよくわかる記事まとめ
ふるさと納税ワンストップ特例制度の利用もおすすめ
もし生命保険料控除以外に住宅ローン控除や医療費控除などの所得控除を多く使う方は、ふるさと納税ワンストップ特例制度を利用するのもおすすめです。この制度は確定申告をする必要のない会社員の方にもおすすめです。なお、ふるさと納税ワンストップ特例制度を利用する場合、その年の所得税からの控除は行われません。代わりにふるさと納税を行った翌年度の住民税から、所得控除分も含めた控除額の全額が控除されるので注意しましょう。
また、医療費控除や住宅ローン控除の初年度など確定申告で行う所得控除がある場合には、ふるさと納税ワンストップ特例制度を利用することができません。
なお、ワンストップ特例制度は、寄付を行った自治体宛にふるさと納税ワンストップ特例の申請書を1月10日必着で提出することで適用されます。詳細な手続きは、総務省のふるさと納税ポータルサイトのホームページをご確認ください。
関連記事:【2024年】年末調整で生命保険料控除を申告し忘れたらどうなる?その対処法を紹介
まとめ
以前、コのほけん!ではふるさと納税と生命保険料控除についてのアンケート調査を実施しました。
まず、ふるさと納税への意識・実態調査を行った「ふるさと納税について」では、ふるさと納税の寄附経験が一度もないという人が約7割と、半数以上がふるさと納税をしたことがないという結果になりました。
また、生命保険料控除についての意識・実態調査として「高所得の家計負担に関する実態調査」も実施しました。そこでは生命保険料控除が節税対策として有効だと思うと約6割の人が回答しました。
生命保険料控除とふるさと納税はいずれも所得控除の一種でともに節税に有効な手段ですが、今までやったことがないという人も多いのではないでしょうか。ぜひ両方とも上手に活用していきましょう。