火災保険の個人賠償責任特約とは?補償されるケースや必要性が高い人について徹底解説!
火災保険に「個人賠償責任特約」をセットすると、日常生活の中で他人にケガをさせたり、他人の物を壊したりした時のリスクに備えられます。
この記事では、火災保険における個人賠償責任特約の内容や必要性、契約する時のポイントなどを解説します。万が一のトラブルから自身や家族を守りたい方は参考にしてください。
この記事のポイント
- 火災保険などにセットできる「個人賠償責任特約」は、日常生活で他人にケガをさせたり物を壊してしまった場合の損害賠償を補償する特約で、被保険者本人だけでなく同居の家族や別居の未婚の子なども対象になる。
- 個人賠償責任特約では、自転車事故や子どものいたずら、ペットによるケガ、マンションの水漏れなど幅広いケースが補償対象となるが、わざと起こした損害や地震などによる被害は補償されない。
- 個人賠償責任特約の必要性が高いのは、自転車を日常的に使う人や小さな子ども・ペットがいる家庭、またマンション住まいの人など、思わぬ高額賠償のリスクがある人があげられる。
火災保険の個人賠償責任特約とは?

火災保険は建物や家財の損害を補償する保険ですが、個人賠償責任特約をセットすることで日常生活で起こりうる賠償リスクにも備えられるようになります。
ここでは個人賠償責任特約の基本的な特徴や補償範囲などをわかりやすく解説します。
個人賠償責任特約の基本的な概要
個人賠償責任特約は、他人の所有物を誤って壊したり、他人にケガをさせたりして、法律上の損害賠償責任を負った場合に、保険金が支払われる特約です。
記名被保険者(保険証券に記載されている、保険の対象になる人)だけではなく、一般的に以下の家族も補償対象に含まれます。
- 記名被保険者の配偶者
- 記名被保険者またはその配偶者の同居の親族
- 記名被保険者またはその配偶者の別居の未婚の子
例えば世帯主である父親が個人賠償責任保険に加入すれば、妻や同居中の子どもも補償対象になります。
個人賠償責任保険で補償される費用は以下の通りです。
- 被害者への損害賠償金(治療費、修理費、慰謝料など)
- 弁護士費用、訴訟や調停・和解・仲裁の費用 など
契約時に設定した保険金額を上限として、保険金が支払われます。
なお、保険会社によっては示談交渉サービス(加害者である被保険者に代わって、被害者と解決に向けた交渉を進めるサービス)が付帯されている場合もあります。
個人賠償責任特約で補償されるケース
個人賠償責任特約は、他人の身体や所有物に損害を与えた際に補償されます。以下は具体的な事例です。
個人賠償責任特約で補償される事例
- 自転車で走行中に歩行者をはねてしまった
- 子どもがボール遊び中に誤って隣家の窓ガラスを割った
- 飼い犬が散歩中に他人に噛みついてケガをさせた
- 自分が打ったゴルフボールが他人に当たってケガをさせた
- 自宅のマンションで水漏れが発生し、階下の部屋が水浸しになった など
個人賠償責任特約で補償の対象外となるケース
個人賠償責任特約で補償の対象外となる主なケースは以下の通りです。
人賠償責任特約で補償されない事例
- わざと他人にケガを負わせた場合や、物を破損した場合のの損害賠償責任
- 地震・噴火・津波が原因の損害賠償責任
- 被保険者と同居している親族への損害賠償責任
- 被保険者が所有・使用・管理している物に関して、正当な権利をもつ人への損害賠償責任
- 仕事が原因で起きた損害賠償責任
- 心神喪失を原因とする損害賠償責任
- 航空機・船舶・車両の所有、使用、管理が原因となる損害賠償責任
- 名誉毀損やプライバシーの侵害によって生じた損害賠償責任 など
上記以外でも、保険会社の承諾なしで被害者と示談した場合なども補償対象外となる可能性があるので、注意しましょう。
他の保険にも個人賠償責任特約は付帯できる
火災保険だけではなく、自動車保険や傷害保険などにも個人賠償責任特約を付帯できる場合があります。
個人賠償責任特約では実際に生じた損害額までしか保険金は支払われないため、補償が重複していても二重に保険金が支払われるわけではありません。保険料が無駄にならないよう、新しく契約する際は、他の保険の契約状況も確認しましょう。
個人賠償責任特約は本当に必要?必要性が高い人とは

個人賠償責任特約は、日常生活の中でうっかり他人にケガをさせたり、物を壊したりした時のリスクに備えられる特約です。
年間数千円程度の保険料で、数億円〜無制限の補償を設定できる商品も多くあります。予期せぬ事故やトラブルによって高額な損害賠償金を請求されるケースもあるため、万が一に備えて加入しておくと安心できる保険です。
ただし、ライフスタイルや家族構成などによって、必要度合いは異なります。以下に当てはまる人は、ちょっとした不注意が原因で他人に損害を与えるリスクが少なくないため、加入を検討した方が良いでしょう。
- 自転車を日常的に利用する人
- 世帯に小さな子どもやペットがいる人
- マンション住まいの人
それぞれ詳しく解説します。
自転車を日常的に利用する人
自転車に頻繁に乗る人は、思わぬ事故で高額な賠償責任を負う可能性があるため、個人賠償責任特約に加入するのがおすすめです。
自転車は手軽な移動手段の一つですが、ひとたび事故が起きれば、加害者として高額な賠償責任を負う可能性があります。
過去には1億円近い損害賠償が命じられた判例も存在します。
事故の内容 | 賠償金額 |
---|---|
男子高校生が自転車で車道を斜めに横断し、正面から来た自転車と衝突。 | 9,266 万円 |
小学生が運転する自転車が62歳の歩行者と衝突し、被害者が意識不明になった。 | 9,520 万円 |
こうした高額な損害賠償に備え、全国の34都道府県(2024年4月1日時点)では、自転車事故に備えた保険への加入が義務付けられています。
個人賠償責任特約を付帯した保険に加入しておけば、安心して自転車を利用できるでしょう。
関連記事:自転車保険にはどう入る?加入方法や補償内容・プランの違いを解説
世帯に小さな子どもやペットがいる人
小さな子どもやペットがいる家庭では、思わぬトラブルで他人に損害を与える可能性があるため、個人賠償責任特約に加入しておくと安心です。
小さな子どもやペットがいる家庭では、予期せぬ行動によって他人にケガをさせたり物を壊したりする可能性が少なくありません。たとえば、子どもが遊んでいて他人の車を傷つけてしまったり、ペットが通行人に飛びついてケガを負わせたりするようなケースがあります。
直接的なケガなどでなくても、線路に入り込んで電車を止めてしまった場合には、鉄道会社から数千万円〜数億円の損害賠償を請求されることもあります。
個人賠償責任特約に加入しておけば、このような事故が起きた場合も適切に対処できます。
マンション住まいの人
マンションなどの集合住宅に住んでいる人は、漏水などによって他の住戸や共用部分に損害を与える可能性があるため、個人賠償責任特約への加入をおすすめします。
集合住宅では、上下左右の部屋が密接しているため、自室のトラブルが他の住戸に影響を及ぼすことが少なくありません。とくに多いのが、以下のような水漏れによるトラブルです。
- 浴槽の水を出しっぱなしにし、排水溝が詰まり水が溢れ、階下や共用部分に水が広がった
- 洗濯機のホースが外れ、下の階の住人の衣類や床が水浸しになった
- 台所の掃除中に配管を破損し、水漏れによって階下の壁紙に損害が生じた
- 給排水管(専有部分)の老朽化により水漏れが発生し、共用部分の電気設備が故障した
このようなトラブルでは、賠償費用が数十万円から数百万円に及ぶこともあります。個人賠償責任特約に加入しておけば、経済的な負担を軽減することが可能です。
関連記事:賃貸なら火災保険や家財保険に自分で加入しなくてもいい?賃貸における火災保険・家財保険の必要性を解説!
火災保険と自動車保険、どちらで個人賠償責任特約を付帯するべき?
個人賠償責任特約は、火災保険と自動車保険のどちらにも付帯できますが、重複して加入する必要はありません。基本的に補償内容に大きな違いはなく、両方から保険金を受け取ることができるわけではないので、どちらか一方にだけ付帯しておくのがよいでしょう。
ただし、保険料や保険期間などは契約する商品や保険会社によって異なる場合があります。火災保険と自動車保険の条件を比較したうえで、自分にとってメリットが大きい方を選ぶのがおすすめです。
火災保険と自動車保険の個人賠償責任特約に違いはある?
火災保険と自動車保険のどちらに個人賠償責任特約を付けても、基本的な補償内容には大きな違いはありません。
ただし、契約期間には違いが出ることがあります。自動車保険は通常1年ごとの更新であるのに対し、火災保険は5年など長期契約をするケースが少なくありません。頻繁に見直すのが面倒に感じる人は、火災保険に付ける方が管理が楽になるでしょう。
また、保険会社が違えば保険料や補償内容にも若干の違いが出る場合もあります。契約前には、各社の補償内容を比較して、自分に合ったプランを選びましょう。
関連記事:車をぶつけて他人の家の塀を壊した場合自動車保険は使える?
火災保険と自動車保険で個人賠償責任特約が重複していないかチェックしよう
個人賠償責任特約は重複して加入していても、それぞれの保険から保険金を受け取ることができるわけではないため、補償が重複していないか確認しておきましょう。
特に以下のようなケースでは、重複が起きやすいため注意が必要です。
- 自分で火災保険と自動車保険の両方に加入しており、それぞれに特約を付帯している
- 家族の誰かが加入している保険に特約があり、自分も別の保険で特約を付帯している
ただし、特約の補償額が少ない場合には、補償を上乗せする意味で複数の特約に加入するのもひとつの方法です。
例えば、補償金額1億円の特約を2つ契約している場合、万が一2億円の賠償が発生したときには、それぞれから保険金を受け取ることができる可能性があります。
まとめ
個人賠償責任特約は、日常生活の中で起こりうるさまざまなトラブルに備えられる保険です。比較的安い保険料で高額の補償が受けられるため、万が一に備えて加入しておくと安心でしょう。
ただし、補償の重複には注意が必要です。自分や家族がすでに他の保険で個人賠償責任特約に加入していないか、事前に確認しておきましょう。
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