病気やけがで働けない時の支えになる「就業不能保険」と「収入保障保険」の違いについてわかりやすく解説
病気やケガなどで働いて収入を得られない時に頼りになるのが「就業不能保険」です。また、名前が似ているものの全く異なるタイプの保険である「収入保障保険」は被保険者が死亡したときに、お給料のように毎月死亡保険金が支払われる死亡保険です。本記事では、この2つの違いについてわかりやすく解説いたします。
本記事のポイント
- 就業不能保険は、被保険者が病気やけが等で働けなくなった場合に収入ダウンを補う保険である。
- 収入保障保険は、被保険者が死亡した場合に遺族に死亡保険金が支払われる保険である。
- 就業不能保険と収入保障保険は根本的なしくみや加入する目的が異なるため、混同しないように注意が必要である。
就業不能保険と収入保障保険は別物
終身保険、定期保険、医療保険、がん保険、介護保障保険……。保険のジャンルは多岐にわたり、それぞれしくみや特徴が異なります。時代のニーズに合わせ、新たなジャンルも登場しています。人生100年時代といわれる昨今、90歳や100歳という人も珍しくなくなりました。長生きできるのはうれしい反面、介護の心配も増えます。介護保険は、そんな長寿化社会を背景に生まれた保険だといえます。
さて、ここのところ急速にクローズアップされているジャンルが、就業不能保険です。まだ、それほど数が多くないため、ご存知ない人もいるかもしれませんね。ざっくりいうと、これは収入に関する保障です。
「収入といえば、たしか収入保障保険っていう保険もあったよね?」はい、あります。でも、ひょっとして就業不能保険と同じものだと考えていませんか?
このネーミングのせいか、どうも就業不能保険と収入保障保険を混同してしまうことが多いようです。しかし、両者はまったく別物です。2つの違いを知っておきましょう。
就業不能保険は働けないリスクを保障
就業不能保険は、働けないリスクをカバーする保険です。
思わぬ病気やケガで、長期にわたって働けないことがあります。休職はもとより、ときには退職も考えられます。ですが、たとえ収入がガクンと下がっても、生活費や治療費はどうしても必要になってきます。節約するといっても限界がありますよね。
入院していれば医療保険から入院給付金が出ますが、通院治療や自宅療養は入院給付金の対象外です。入院が長引いて入院限度日数をオーバーしたら、そこで入院給付金もストップしてしまいます。医療保険は病気やケガに備えられるものの、働けないことまではフォローしきれません。
そこで、就業不能保険であれば、入院・通院・自宅療養を問わず、あらかじめ決めた金額を毎月受け取ることができます。こうして、働けないことによる収入ダウンを補うわけです。つまり、被保険者は生きていることが条件になっているのです。
収入保障保険は死亡リスクを保障
それに対して、収入保障保険は被保険者が死亡したときに、保険金が支払われます。生きている間の収入ダウンに備えるものではなく、死亡を対象とした保障なのです。では、なぜ「収入」という言葉がついているのでしょう。それは保障のしくみに由来しています。
一家の大黒柱が亡くなったときに備え、死亡保険金は何千万円という大きな保障を用意します。遺族の生活すべてがかかっているのですから当然ですね。とはいえ、こんな大金が一気に転がり込んできたら気が大きくなり、無計画に散財してしまいかねません。10年分、20年分の生活費を早々に使い果たしたらたいへんです。
その点、収入保障保険は保険金をひと月ごとに分割して受け取れるため、無駄な浪費を防ぐことができます。お給料をもらっていたころと同じように、毎月決まった収入を確保しますといった意味合いなのです。
このように就業不能保険と収入保障保険は根本的なしくみが違いますので、使い方も異なります。
就業不能リスクを保障する特約も
死亡と就業不能、人生においてはどちらも大きなリスクです。万全な態勢を整えておきたいなら、両方とも準備する必要があります。
「死亡保障に就業不能、がんも心配だし……いったい保険料はいくらかかるんだあ」
頭を抱えたくなるかもしれませんね。保障を手厚くするほど、コストはかかります。
そんな保険料に頭を悩ませる方々に、ちょっと耳寄りな情報を。就業不能に対する保障は昨今、保険会社も注目しているのでしょう。収入保障保険や医療保険に、就業不能の機能を持つ特約をつけられる商品が出てきました。もちろん特約をつけた分、保険料は高くなりますが、それぞれ単独で加入するよりは割安です。
また、主契約のベーシックな保障の中に、就業不能保障を組み込んだ収入保障保険もちらほら登場しています。やはり保険料はやや高めですが、2つの保険に加入するより安くなります。
ところで、所得補償保険という保険もあることをご存知ですか。こちらは損害保険会社が扱う商品で、働けなくなったら給付されるというしくみは就業不能保険とほぼ同様です。
ただ、所得補償保険は、補償期間は1〜5年のように比較的短めで、就業不能保険に比べて保険料は安めが多く、免責期間が7日など短く設定されているところが特徴です。 就業不能保険、収入保障保険、所得補償保険と名前が似通っていますので、取り違えないようにしましょう。
まとめ
就業不能保険は働けなくなった場合に収入ダウンを補う保険であり、収入保障保険は死亡した場合に遺族に保険金が支払われる保険です。両者は根本的なしくみや加入する目的が異なるため、保険を選ぶ際には自分自身の状況やニーズに合わせて慎重に検討することが重要です。また、保険会社が就業不能保障を収入保障保険の特約として提供している商品もありますが、保険料や保障内容について比較検討することが必要です。自分自身や家族の将来を見据えて、適切な保険選びを行いましょう。