妊孕性(にんようせい)ってなに?-女性のがん保険の選び方
小児、若年者が「がん」と診断された時、すみやかに治療を開始するのは言うまでもありませんが、その際に注意すべきことがあります。
それは「妊孕性(にんようせい)」についてです。
妊孕性(にんようせい)とは、将来、子どもを産み育てる可能性を指します。
女性であれば、妊娠する力、男性であれば、妊娠させる力と表現することができます。
本記事では女性の妊孕性についてみていきます。
生理・妊娠のしくみ
女性は、卵巣から卵子が排卵され、受精し、子宮に着床することで妊娠します。
それでは、生理のしくみをみてみましょう。
生理のしくみ
卵子のもとは、原始卵胞(げんしらんほう)というもので、これは、卵巣内にある卵胞(らんほう)という卵子を育てる袋の中で眠っています。
この原始卵胞は目に見えないくらいの小さなもので、胎児が生まれる時から存在し、当初の原始卵胞の数は約200万個と言われています。
そして、その原始卵胞が生理周期とは無関係に目覚め、若いときは1日平均30~40個、月に1000個ほどが育ち始め、すぐ消えてしまいます。
生まれてから月経のはじまる思春期までに、約170万個から180万個が自然に消滅し、 思春期・生殖年齢の頃には約20~30万個まで減少します。
思春期が始まり生理が始まると、卵胞細胞のごく一部が数カ月かけて18~20mmほどの目に見える大きさまで成長します。
育った卵胞細胞の中からたった1つが卵子として成熟し、月1回の周期で卵巣の壁を破って外に飛び出します。
これが「排卵」です。
排卵する卵子が決まると、他の卵子はすべて消えます。
排卵されるタイミングに合わせて子宮内膜を厚くし、受け入れ態勢を整えて受精卵を待ちます。
排卵のタイミングで卵子が受精しなかった場合、準備した子宮内膜がいらなくなり、はがれて体外に排出されます。これが「生理」です。
卵子は加齢とともに数が減っていきます。
卵巣で目覚める卵子も少なくなり、最後の段階まで生き残る卵子もごくわずかです。
一回の月経の周期に約1,000個が減少し、1日にすると30~40個が減り続けている計算になります。
生まれたあとは原始卵胞は増えることはなく、女性の身体の時間の経過とともに、原始卵胞も同じように歳を重ね減っていきます。
妊娠のしくみ
成熟しかけた卵子が卵巣から放出されるところまでの過程は同じです。
卵巣から放出され、卵子は卵管の中で最後の成熟の段階を経ながら、卵管を下り、その途中で精子と出会い受精します。
受精すると、卵子の核・精子の核が融合し、染色体が細胞分裂を繰り返し始め、最終的には桑実胚(そうじつはい)と呼ぶ状態になります。
卵の中の細胞は均等ではなくなり、それぞれの場所に応じた性質の変化が現れ、細胞が分化し始めます。
最初の大きな分化が胚盤胞の形成となり、このタイミングで子宮に着床することになります。
なお、歳を重ねると、卵子の質の低下が起きるため不妊の原因のひとつとされています。
胎生期に産生され卵巣に蓄えられた卵子は、そのまま再生されることなく、本人とともに歳を重ねて老化し、染色体異常も増えてきます。
加齢による妊娠率の低下、流産率の増加に繋がり、結果として年齢が上がるにつれて妊娠・出産が困難なものになっていきます。
女性の妊孕性とは
妊孕性(にんようせい)とは、将来、子どもを産み育てる可能性と冒頭で説明いたしました。
女性の妊孕性(にんようせい)とは
女性の妊孕性とは、妊娠・出産ができるかどうかということになります。
放射線治療、抗がん剤の影響で卵巣機能が低下したり卵子の数が減り、通常よりも早く閉経する、あるいは子どもを授かることが困難になる可能性があります。
女性特有のがんの5年生存率について
がん診断やがんの治療の進歩により、がんの5年生存率は大幅に改善したことも最近のニュースでも話題になっていたので、ご存知の方が多いかと思います。
生存率(せいぞんりつ)とは
生存率とはがんの診断から一定期間後に生存している確率のことです。
一般的に、百分率(%)で示されます。
がん患者の生存率は、がん患者の治療効果を判定する上で、最も重要かつ客観的な指標です。
生存率は診断から何年経ったのか、時間の経過で異なってきます。
部位別生存率を比較する場合やがんの治療成績を表す指標として、5年生存率がよく用いられています。
がんが治療等で消失し、表面上治ったように見えたとしても、再発・転移している場合があります。
ただし、目安として、治療後5年の間に再発がなければ、その後の再発はまれであるため、便宜上5年生存率を治癒率の目安としています。
目的に応じて、1年、2年、3年、5年、10年生存率が用いられます。
生存率は、計算する対象の特性(性別や年齢)、進行度(早期のがんか進行したがんか)や、計算する対象の選び方(外来患者さんを含めるか、入院患者さんだけか、来院した患者さんをすべて含んでいるかなど)に大きく影響を受けます。
そのため、複数の施設(病院)を比較したり、いくつかの部位を比較する場合は、どのような対象について生存率を計算しているか注意する必要があります。
以下はがん研究センターが2019年12月14日に発表したがんの5年生存率のうちの女性特有のがんの相対生存率 ※ です。
2010-2011年5年相対生存率
女性の乳がん | 子宮頸がん | 子宮体がん | |
全体 | 92.2% | 75.0% | 82.2% |
ステージ1 | 99.8% | 95.0% | 96.8% |
ステージ2 | 95.7% | 79.6% | 91.7% |
ステージ3 | 80.6% | 62.0% | 72.8% |
ステージ4 | 35.4% | 25.0% | 22.3% |
※出典:国立がん研究センターがん情報サービス※全年齢※がん診療連携拠点病院等院内がん登録生存率集計の情報を元に編集部で作成
女性特有のがんは部位が女性特有のものであり、また、妊孕性の問題に直接的に関わるものですが、表から非常に予後が良いことがわかります。
ただし、これはあくまでも5年相対生存率の話であって、がんを克服した後の生活の質(QOL)について保障する数値ではありません。
がんと診断された女性の中には、 将来子どもをもつことを望む方もいることでしょう。
ココに注意
女性特有のがんだけでなく、どの部位のがんであっても、がん治療は妊孕性に関係してきます。
放射線治療、抗がん剤の影響で卵巣機能が低下したり卵子の数が減り、通常よりも早く閉経する、あるいは子どもを授かることが困難になることもあります。
せっかく、がんを克服しても、こどもを望む人にとって、その可能性がなくなってしまうことはできる限り避けたいことでもあります。
また、小児や若年者は、将来について考えることは難しいかもしれませんが、考えることが難しいからこそ、がんと診断された段階で将来の選択肢を狭めないようにするということは重要です。
将来の選択肢を狭めないために、がん治療を開始する前に妊孕性を温存することが大切です。
しかし、病状や治療の状況によっては、妊孕性温存が困難なこともあります。
ココがポイント
万が一、がんと診断された場合には、がん治療に関して考えると同時に、できるだけ早く妊孕性温存に関して主治医(腫瘍専門医)に相談するようにしましょう。
※相対生存率とは、生存率を計算する対象者と同じ特性(性、年齢、暦年、地域など)を持つ一般集団の期待生存確率より算出した期待生存率で実測生存率を割ることによって、その影響を補正する方法です。対象者と同じ特性を持つ一般の集団(一般の日本国民)の期待生存率は、国立がんセンター(現国立がん研究センター)が計算して公表しているコホート生存率表を利用して求めます。相対生存率は、対象疾患(例えば胃がんや肺がんなど)以外による死亡を補正する方法として広く用いられています。この方法は、死因について正確な情報がない場合にも、用いることができます。
関連記事:男性の妊孕性(にんようせい)に影響するがん治療-妊孕性温存のための費用と男性のがん保険の必要性とは?
まとめ
ココがポイント
がんと診断されたら、治療開始前に妊孕性の温存についてまず考える
女性(小児や若年者含む)ががんになった場合、がんの治療が及ぼす影響についてみてきました。
こういったことに対応するためにも事前の備えとして、がん保険に加入することを検討してみても良いのではないでしょうか。