がん保険|神経膠腫(グリオーマ)の医療費はいくら必要?
発症すると、様々な症状があらわれる神経膠腫(グリオーマ)。そもそもこれはどのような病気で、治療にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか。また、神経膠腫の治療費負担をがん保険でカバーする場合、保障額はどのくらいの金額を目安に設定すればいいのでしょうか。
神経膠細胞とは?その構造と機能について
頭蓋骨とその内側にある髄膜に囲まれている脳は、大脳や小脳、脳幹といった部位に分けられ、それぞれの部位が異なる役割を担っています。そして、脳から発せられた指令は、神経細胞(ニューロン)から延びる神経線維を通して、全身に伝えられます。
神経膠細胞(しんけいこうさいぼう)は、脳や脊髄のなかに無数に存在し、神経細胞を固定したり、これに栄養分や神経伝達物質を供給したりする役割を担っています。
神経膠腫(グリオーマ)とは?
神経膠腫(しんけいこうしゅ)は、グリオーマと呼ばれることもある病気で、脳腫瘍(悪性)の一種に分類されます。脳や脊髄の中にある神経膠細胞から発生し、その悪性度(グレード)と組織型によって以下のように分類されます。
悪性度 | 星細胞腫系 | 乏突起膠腫系 |
グレード1 | 毛様細胞性星細胞腫 | |
グレード2 | びまん性星細胞腫 | 乏突起膠腫 |
グレード3 | 退形成性星細胞腫 | 退形成性乏突起膠腫 |
グレード4 | 膠芽腫 |
神経膠腫の5年生存率は男性が33.0%、女性が38.6%となっており、がん全体の5年生存率が男性59.1%、女性66.0%であることからすると、やや低い傾向にあります(国立がん研究センター『最新がん統計』より)。
神経膠腫(グリオーマ)の原因とは
神経膠腫の原因については、ほとんど明らかになっていません。白血病治療のために受けた放射線治療が原因でこの病気を発症するリスクが高くなることはわかっていますが、それ以外の原因については、まだわかっていないのです。
神経膠腫(グリオーマ)の症状
神経膠腫の症状は、多くの病型に共通して起こる「頭蓋内圧亢進症状」と、がんが発生した部位によって症状のあらわれ方が異なる「局所症状(巣症状)」とに二分されます。
頭蓋内圧亢進症状(ずがいないあつこうしんしょうじょう)
脳はその周囲を頭蓋骨に囲まれているため、その内部に腫瘍ができると頭蓋内圧(頭蓋骨の中の圧力)が高くなります。するとその影響によって、以下のような症状があらわれます。
- 頭痛
- 吐き気
- 意識障害
局所症状(巣症状)
神経膠細胞は、脳や脊髄に無数に存在する細胞です。そして脳は、各部位によって言語や思考、感覚や運動など、司っている機能が異なります。そのため神経膠腫を発症すると、がんが発生した部位によって以下のように様々な局所症状があらわれるようになります。
腫瘍がある場所 | 局所症状 |
前頭葉 |
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側頭葉 |
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頭頂葉 |
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後頭葉 |
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視交叉・視床下部 |
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視床 |
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脳幹 |
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小脳 |
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脳神経 |
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統計からみる神経膠腫(グリオーマ)の発症率
神経膠腫は、悪性脳腫瘍の中でも特に頻度の高いがんで、全体の約20%にもなります。また、神経膠腫と診断される人は年間約4,000~5,000人ほどで、脳・中枢神経系のがんの罹患率は、人口10万人に対して男性が4.9人、女性が4.1人となっています(国立がん研究センター『最新がん統計』より)。
神経膠腫(グリオーマ)の治療方法
神経膠腫の治療方法には、以下のような選択肢があります。基本的には外科治療で腫瘍を取り除き放射線治療や薬物療法を行いますが、グレード2の神経膠腫は手術によって腫瘍を全摘出できるケースがあり、その場合は追加の治療を行わず、経過観察をすることもあります。
外科治療
神経膠腫をはじめとする悪性脳腫瘍の治療は、外科治療により可能な限り腫瘍を除去することを原則とします。ただし、手術をすることにより症状が悪化する可能性がある場合は、無理な摘出を行わず、一部摘出にとどめたうえで放射線治療や薬物療法を行います。
放射線治療
放射線治療では、高エネルギーの放射線を照射し、腫瘍細胞を障害します。放射線治療は単独で行うこともあれば、薬物療法と併用して行われることもあります。
神経膠腫に対してはまた、放射線の一種である陽子や重粒子のビームを病床に照射する、陽子線治療や重粒子線治療も行われています。ただし、これらの治療法は先進医療に指定されており、保険適用ではありません。
薬物療法
悪性度(グレード)3、4の神経膠腫に対しては、手術や放射線治療に加え、薬物療法も行われます。薬物療法では経口タイプの抗がん剤が用いられるほか、脳浮腫に対するステロイド治療やけいれん発作(てんかん発作)に対する治療などが行われます。
神経膠腫(グリオーマ)の医療費は平均どのくらい?
神経膠腫の医療費ですが、2017年に悪性新生物(腫瘍)で入院した患者が負担した治療費の平均は、以下の通りでした。
健康保険加入団体 | 1日あたりの診療費 | 1件あたりの診療費 |
協会(一般) | 65,550円 | 738,750円 |
組合健保 | 70,362円 | 756,219円 |
共済組合 | 70,678円 | 763,388円 |
国民健康保険 | 58,946円 | 688,234円 |
このデータは、全ての悪性新生物(腫瘍)治療の平均値ですので、がんの種類によって、あるいは選択する治療法によって、実際の負担額には差が生じます。
検査方法や治療方法によってさらに負担が増えることも
また、上述の治療費は保険適用の治療を受けた場合の金額であり、保険適用外の治療を受けた場合、その治療費の全額を自己負担しなければなりません。
例えば、脳腫瘍を分類するために行う腫瘍組織の検査では「遺伝子学的検査」がほぼ必須となっていますが、神経膠腫の遺伝子検査は、保険適用ではありません(2018年5月現在)。そのためこの検査を受ける場合、その費用は全額自己負担をする必要があります。
また、先進医療に指定されている陽子線治療や重粒子線治療を受ける場合も、これにかかる技術料の全額を自己負担しなければなりません。厚生労働省発表のデータによると、治療1件あたりの技術料の平均は陽子線治療が約271万円、重粒子線治療が約313万円となっています。つまり、神経膠腫の治療法として陽子線治療や重粒子線治療を選択する場合、数百万円の費用を負担しなければならないのです。
がん保険で備えるなら保障額はいくらぐらいが目安?
神経膠腫の治療を受ける場合、1入院につき70万円程度の費用がかかります。もちろん、高額療養費制度を活用することで1ヶ月あたりの負担額を軽減することはできます。ただ、医療費の他に、食事代や雑費等が必要になることも考慮すると、基本保障である入院給付日額は1万円前後にしておくことをおすすめします。
また、先進医療に指定されている治療を受ける場合にもその治療費をまかなえるよう、先進医療特約を付加しておきましょう。
がん保険の中には、がんと診断された場合にまとまった保険金を受取れるがん診断一時金特約や、入院した場合に保険金が給付される入院一時金特約を付加できる商品もあります。近年は入院日数が短縮化していますので、こういった特約を付加し、がんの治療費に備えるのもひとつの選択肢ではないでしょうか。
まとめ
神経膠腫の検査方法や治療方法の中には、健康保険適用外のものもあります。高額な治療費負担に備えるためには、がん保険を上手に活用することが大切です。これまで医療保険にしか加入していなかったという方も、これを機にがんに特化した備えについて考えてみてはいかがでしょうか。