白血病の医療費はいくら必要?がん保険でまかなえる?
がんの一種である、白血病。
そもそも白血病とはどのような病気で、治療には平均でどのくらいの費用がかかるのでしょうか。
また、その治療費をがん保険でまかなおうとする場合、その保障額はどのくらいを目安に設定すればいいのでしょうか。
本記事のポイント
- 白血病はがんの一種で、「血液のがん」と表現されることもある病気
- 男性の106人に1人、女性の155人に1人が、生涯において白血病になる可能性がある
- 白血病の治療には、1件1入院あたり数十万円の費用がかかる
- 入院・手術給付金だけでなく、一時金が出るタイプのがん保険も検討したほうがいい
白血病とは?
白血病はがんの一種で、「血液のがん」と表現されることもある病気です。
私たちの体内を流れる血液は骨髄でつくられますが、その過程で血液を構成する細胞(赤血球・血小板・白血球)が、がん化することがあります。
このがん化した細胞(白血病細胞)が骨髄内で増殖すると、全身に様々な症状があらわれるようになるのです。
白血病の種類とその概略
白血病は、その進行パターンから、がん化した細胞が急激に増殖する「急性白血病」と、がん化した細胞がゆっくり増殖する「慢性白血病」に大別されます。
そしてこれら2類型の白血病は、がん化した細胞のタイプによって、さらに以下のようなに分類されます。
急性白血病
急性骨髄性白血病 | 骨髄で血液をつくる過程において、骨髄芽球(製造段階にある未熟な血液細胞)に遺伝子異常が発生し、白血病細胞が無限に増殖することで発症。 |
急性リンパ性白血病 | リンパ球(白血球の一種)が悪性化し、白血病細胞が無限に増殖することで発症。 |
急性前骨髄球性白血病 | 血液をつくる過程において、前骨髄球に遺伝子異常が発生し、白血病細胞が無限に増殖することで発症。 |
慢性白血病
慢性骨髄性白血病 | 血液細胞のもとである造血幹細胞に異常が発生し、がん化した血液細胞が体内で無限に増殖することで発症。 |
慢性リンパ性白血病 | 白血球の一種であるリンパ球が悪性化し、がん化した血液細胞が無限に増殖することで発症。 腫瘍細胞が骨髄や末梢血にある病型を慢性リンパ性白血病、リンパ節にある病型を小リンパ球性リンパ腫と呼ぶ。 |
白血病の原因とは?
白血病の原因については、未だに解明されていない部分もあります。
ただ、これまでの研究により、以下のようなことが判明しています。
急性白血病の原因
染色体異常、遺伝子異常を原因として発症する「急性前骨髄球性白血病」と、過去に受けた抗がん剤治療や放射線治療を原因として発症する「二次性白血病」を除き、白血病の原因については未だはっきりと解明されていません。
慢性白血病の原因
慢性骨髄性白血病の原因は、そのほとんどが染色体9番と22番の異常にあります。
これらの染色体の一部が入れ替わることにより、血液細胞の過剰増殖の原因となるフィラデルフィア染色体が生じるのです。
慢性リンパ性白血病・小リンパ球性リンパ腫の原因については未だ解明されてないところが大きいものの、遺伝的素因の影響が大きいのではないか、と考えられています。
白血病の症状とは?初期段階ではどんな症状があらわれる?
白血病の症状は、その類型によって症状のあらわれかたが異なります。
また、急性白血病は病気の進行が速いため症状が急にあらわれる場合が多いのですが、慢性白血病は進行が遅いため、初期段階ではほとんど症状があらわれません。
そのため慢性白血病は、健康診断の血液検査などにおいて、偶然見つかるケースが半数以上となっています。
急性骨髄性白血病 |
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慢性骨髄性白血病 |
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WHO分類が主流!白血病の病型分類
一般に、がんはその進行の程度を、「病期(ステージ)」という基準で表現します。
しかし、白血病はがん化した白血病細胞が血液を介し全身に広がっているため、「病期」により進行の程度を示すことができません。
そこで用いられるのが、「病型分類」です。
その方法には「FAB分類」と「WHO分類」の2種類がありますが、現在はWHO分類が主流となっています。
WHO分類では、腫瘍細胞が骨髄・血液中で増殖している病型を「白血病」、リンパ組織で増殖している病型を「悪性リンパ腫」とします。
白血病に関連する疾患
「白血病」という名前こそついていないものの、以下のような病気も、白血病に関連する疾患として扱われます。
悪性リンパ腫
私たちの体内を流れる血液の中には、外部から侵入してきたウイルスや細菌を排除する役割を担う、「白血球」が存在します。
そしてこの白血球は、顆粒球・単球・リンパ球で構成されています。
悪性リンパ腫は、ウイルス感染によって白血球を構成するリンパ球に影響が及び、そのリンパ球からがん化した細胞が増殖することによって発症します。
骨髄異形成症候群
血液細胞を構成する赤血球・血小板・白血球は、造血幹細胞が増殖・分化することでつくられます。
骨髄異形成症候群は、この造血幹細胞に異常が生じることによって発症します。
発症すると血液中の正常な血液細胞が減少し、全身に様々な症状があらわれます。
白血病になる確率はどのくらい?統計からみる白血病の発症率
国立がん研究センターが実施した調査によると、2014年における白血病の発症率は、人口10万人あたり男性が11.7人、女性が7.6人という結果でした。
また、人が生涯において白血病に罹患するリスクは、男性が0.9%、女性が0.6%という結果になっています(国立がん研究センター『最新がん統計』より)。
つまり、男性の106人に1人、女性の155人に1人が、生涯において白血病になる可能性があるのです。
白血病の治療方法
白血病の治療には以下のような方法があり、患者の年齢や全身状態、治療効果のあらわれ方などに応じて、適切な治療方法を選択します。
化学療法
化学療法では、抗がん剤を使用します。
初期治療ではいくつかの抗がん剤を併用し、白血病細胞を破壊します(寛解導入療法)。
ただし、初期治療後も白血病細胞は体内に残っているため、これをゼロに近づけるべく、さらに治療が続けられます(寛解後療法)。
分化誘導療法
分化誘導療法は、急性前骨髄球性白血病に対する治療法です。
この治療法では白血病細胞を破壊するのではなく、これを分化・成熟させることで、正常な白血球と同じように死滅させます。
分子標的治療
分子標的治療は、再発または難治性の急性骨髄性白血病に対する治療法です。
この治療法では分子標的薬を使い、これと白血病細胞を結合させることで、白血病細胞を死滅させます。
造血幹細胞移植
ドナーから造血幹細胞の提供を受け、これを移植する治療法です。
化学療法に比べて質の高いQOLが得られる場合、再発時、予後の改善の可能性があるときなどに、検討されます。
支持療法
白血病による症状や合併症、治療による副作用などの予防・軽減を目的として行われる治療です。
白血病細胞そのものにアプローチするわけではないため、この治療によって白血病細胞が死滅したり減少したりするわけではありません。
白血病の医療費は平均どのくらい?
白血病を発症した場合、やはり気になるのは「治療にどのくらいの費用がかかるのか」という点ではないでしょうか。
厚生労働省発表の『医療給付実態調査(平成29年度)』によると、「血液及び造血器の疾患並びに免疫機構の障害」によって入院した患者の治療費負担は以下のようになっています。
健康保険加入団体 | 1日あたりの診療費 | 1件あたりの診療費 |
協会(一般) | 50,738円 | 398,611円 |
組合健保 | 50,608円 | 381,211円 |
共済組合 | 55,323円 | 429,788円 |
国民健康保険 | 52,413円 | 593,376円 |
上で挙げた金額はあくまでも健康保険対応の治療法を選択した場合であり、保険適用外の治療を受けた場合、その治療費の全額を自己負担する必要があります。
現在は保険適用が認められていますが、1回あたり3,349万円という薬価がつけられたことで話題になった「キムリア」という薬を使う場合、かつてはその薬代の全てを自己負担しなければなりませんでした。
白血病の治療費にがん保険で備えるなら保障額はいくら必要?
がんを発症した場合に、様々な保障をうけられる「がん保険」。白血病の治療費をがん保険でカバー仕様とする場合、その保障額はどのくらいにすればいいのでしょうか。
上述のように白血病の治療には、1件あたり数十万円の費用がかかります。もちろん、これは1入院あたりの治療費になりますので、再発などで複数回入院する場合、その度に治療費を負担しなければなりません。
そういったリスクも想定すると、入院給付日額を1万円程度に設定するということはもちろん、がんになった場合にまとまった保険金の給付を受けられるような保障内容にしておくことをおすすめします。
具体的には、以下のような方法があります。
- がん診断一時金特約をつける
- 入院一時金特約をつける
- 特定疾病保障定期保険に加入する
関連ページ:がん保険を解約して後悔しないための注意点やメリット・デメリット
関連ページ:がん保険はなぜ必要?がんの治療法と治療費をふまえ、がん保険を選ぼう
まとめ
白血病は、誰もが発症する可能性のある病気です。
そしてこの病気は初期治療後も継続的な治療が必要な場合があり、患者はその都度、治療費を負担しなければなりません。
金銭的な事情で治療に専念できない、といったことのないよう、がん保険などを上手く活用して十分な備えを用意しておきましょう。