小児がん経験者はがん保険に入ることができる?公的支援制度やがんサバイバーでも入れる保険について解説
国立がん研究センターによると、小児がんは、小児がかかる様々ながんの総称で、成人がかかる生活習慣を原因とするがんは少なく、胃がんや肺がんなどは見られません。遺伝により発症するがんもあります。
本記事では、小児がん経験者はがん保険に加入できるのかどうかについてご紹介いたします。
小児がんとは
国立がん研究センターによると、小児がんは、小児がかかる様々ながんの総称で、成人がかかる生活習慣を原因とするがんは少なく、胃がんや肺がんなどは見られません。遺伝により発症するがんもあります。
小児がんの特徴
小児がんには以下の種類があります。
がんの名称 | がんの発生部位 | 罹患の割合 |
---|---|---|
白血病 | 血液のがん | 32.3% |
脳腫瘍 | 頭蓋骨の中にできる腫瘍で、グリオーマ(神経膠腫)、胚細胞腫瘍、髄芽腫など | 25.1% |
リンパ腫 | リンパ節、脾臓、骨髄など、細菌やウイルスの排除などの免疫機能をつかさどるリンパ組織から発生するがん | 9.8% |
国立がん研究センターによると、小児がんの治療は複数の治療方法を組み合わせて行われ、成人に比べ、化学療法や放射線療法による効果が高く、現在では、7~8割の割合で治っているそうです。
小児がん患者の数
厚生労働省「人口動態統計」の年齢別の死因から小児がん患者数を確認してみます。
0歳
死因 | 人数 |
---|---|
先天奇形、変形及び染色体異常 | 635 |
周産期に特異的な呼吸障害等 | 236 |
不慮の事故 | 77 |
乳幼児突然死症候群 | 69 |
胎児及び新生児の出血性障害等 | 64 |
1~4歳
死因 | 人数 |
---|---|
先天奇形、変形及び染色体異常 | 178 |
不慮の事故 | 70 |
悪性新生物<腫瘍> | 60 |
心疾患 | 33 |
肺炎 | 24 |
5~9歳
死因 | 人数 |
---|---|
悪性新生物<腫瘍> | 75 |
不慮の事故 | 60 |
先天奇形、変形及び染色体異常 | 51 |
心疾患 | 16 |
その他の新生物<腫瘍> | 12 |
10~14歳
死因 | 人数 |
---|---|
自殺 | 100 |
悪性新生物<腫瘍> | 99 |
不慮の事故 | 51 |
先天奇形、変形及び染色体異常 | 37 |
心疾患 | 20 |
4歳以上で見ると、がんを原因とする死亡が多いことが分かります。国立がん研究センターによると、小児がんと診断される人数は年間2,000~2,500人で、10,000人に約1人の割合です。
小児がん経験者のその後を支える公的制度、取り組み、就学支援、就労支援など
小児がんは治るようになっている一方、成長に伴う小児がんや放射線治療などの治療による影響で生じる合併症、晩期合併症(晩期障害)が見られます。治療後、数十年たってから症状が現れることがあるため、長期にわたるケアやフォローアップが必要となります。
■ 小児がんの晩期合併症
- 成長・発達への影響:身長の伸び、骨格・筋・軟部組織、知能・認知力、心理的・社会的成熟、性的成熟
- 生殖機能への影響:妊娠可能か、子孫への影響
- 臓器機能への影響:心機能、呼吸機能、腎機能、内分泌機能、消化管機能、視力・聴力
- 二次がん(腫瘍):良性腫瘍、悪性腫瘍
小児がん経験者のための公的支援制度
小児がんと診断された場合、健康保険を利用することができますが、原則18歳未満であれば、「小児慢性特定疾病医療費助成制度」を利用することができます。この制度の概要は以下の通りです。
- 原則18歳未満の児童(引き続き治療が必要な場合は20歳未満まで)
- 所得に応じた自己負担限度額を超えた額を免除
- 指定医療機関で治療を受ける必要がある
特別児童扶養手当
特別児童扶養手当は、障害のある児童に対する手当で、小児がんも受給の対象となる場合があります。受給要件を満たすかどうかは、住所地の市区町村役場に確認してください。
障害児福祉手当
障害児福祉手当は、重度の障害を有する児童に対する手当で、日常生活において常時介護を必要とする20歳未満の児童に支給されます。こちらも住所地の市区町村役場が窓口となります。
自立支援医療費制度(育成医療)
自立支援医療費制度(育成医療)は、身体に障害を有する児童に対して医療費の自己負担限度額を軽減する制度です。こちらも住所地の市区町村役場が窓口となります。
このように公的支援制度でも様々な制度があり、長期フォローアップが可能な病院などもありますので、病院の担当医や住所地の市区町村役場に確認してみてください。病院で治療を受けている間は、特別支援学校、特別支援学級、訪問教育などの連携で学校教育を継続して受けたり、NPO法人などでは小児がん経験者向けの就労支援をしていたりします。合わせて情報収集しておくといいでしょう。
また、民間の医療保険やがん保険に加入していれば給付金等を受け取ることができます。しかし、生まれてすぐ小児がんに備えて医療保険やがん保険に加入している人は少ないのではないでしょうか。当初の治療は公的支援制度等を利用するとして、数十年後に発症するかもしれない晩期合併症等に対応するために、治癒した後に民間の医療保険やがん保険に加入したいと考えるかもしれません。
そこで、がん経験者が加入できる民間の保険があるかどうか確認します。
がん経験者は保険に加入が可能か?
小児がんは約80%が治癒できると言われていますが、発育途中で治療の合併症が見られることから、民間の医療保険やがん保険に加入しておき、将来の医療費負担を軽減させる方法があります。医療保険やがん保険でがん経験者が加入できる保険をまとめます。
(1) 医療保険
医療保険は、「引受緩和型医療保険」であれば加入できる可能性があります。「引受緩和型医療保険」はほとんどの保険会社で取り扱っていますので、比較検討することで保険料をおさえられる可能性もあります。
「引受緩和型医療保険」の告知内容はどの保険会社も簡略化しており、おおむね次の3点について、「いいえ」であれば加入できる可能性が高くなります。
- 最近3か月以内に、医師から入院・手術・検査のいずれかをすすめられたか
- 過去2年以内に、病気やケガによる入院・手術を受けたか
- 過去5年以内に、がんまたは上皮内新生物・肝硬変・統合失調症・認知症・アルコール依存症で、医師の診察・検査・治療・投薬のいずれかを受けたか
告知内容を見ると、「過去5年以内」に、「がん」で、「医師の診察・検査・治療・投薬のいずれかをうけたことがありますか」が基準となります。小児がんが治って5年経過すれば加入できる可能性が高くなります。
また、「引受緩和型医療保険」の告知内容の「過去5年以内」に該当しなければ加入できますが、一般の医療保険に先に診査の申し込みをしておくといいでしょう。一般の医療保険の方が保険料が安く、加入当初の給付制限がないためです。
がん経験者にとって、まだまだ一般の医療保険に加入するのは難しいかもしれません。加入できたとしても、部位不担保といって特定の保障が対象外となったり、保険金額が減額になったりと条件が付くこともあるでしょう。希望通りの保険に加入できず、最終的にどの保険を選んだらいいか分からない場合などに備え、経験豊富なファイナンシャルプランナーに相談するといいでしょう。
関連記事:引受基準緩和型医療保険とは?医療保険や無選択型医療保険との違いについて解説
(2) がん保険
医療保険は引受基準緩和型が広く利用されていますので条件は付きますが、一定の保障を得ることができます。
今はがん経験者のためのがん保険も登場していますが、加入するためのハードルがやや高く、また保険料は通常のがん保険よりも高くなっています。
関連記事:がん保険はなぜ必要?がんの治療法と治療費をふまえ、がん保険を選ぼう
(3) がん経験者の保険の利用方法
民間の引受基準緩和型医療保険は、20歳からしか加入することができません。一方、この記事の前半に紹介した「小児慢性特定疾病医療費助成制度」や「特別児童扶養手当」などの公的支援制度は20歳未満の児童が対象となる制度です。
そのため、20歳までは公的支援制度を利用し、20歳過ぎて、医療保険やがん保険に加入できるようになってから民間の保険を利用することになります。加入当初は引受基準緩和型しか加入できなくても、一定年数経過すれば一般の医療保険やがん保険に加入できますので、定期的に確認しておきましょう。
まとめ
ここまで紹介してきたように、20歳未満であれば様々な公的支援制度を利用できます。おそらく医療機関でも教えてくれると思いますが、活用できる制度を最大限生かせるように、市区町村にも問い合わせておきましょう。