がんの治療法を知りたい!それぞれのメリット・デメリットや民間保険での備え方も解説
医学のめざましい発展により、がんは「不治の病」から、もはや働きながら治療でき、かつ完治する病気となりつつあります。
本記事では現在も発展し続けるがんの治療法について解説します。代表的ながんの治療法である三大治療や、先進医療や自由診療といったがん治療で知っておきたい言葉もあわせてわかりやすく説明します。
そのうえで医療保険・がん保険の選び方の参考になる情報もお伝えします。
発展し続けるがんの治療法
2018年に京都大学特別教授(当時)の本庶佑(ほんじょ・たすく)さんがノーベル医学・生理学賞を受賞しました。
受賞理由として挙げられたのが、本庶さんが長年行ってきた免疫の仕組みについての研究が、オプジーボなど画期的ながん治療薬の開発につながったことでした。
本庶さんの研究をはじめとして、がんにかかわる医療技術の発達はめざましく、がんは不治の病から、今はもはや働きながら治療でき、かつ完治する病気となりました。新たな検査法や治療法、治療薬を探る研究が世界中で盛んに行われ、現在も進化を続けています。
がんの治療では、先進医療や自由診療といった言葉もよく耳にします。これらには承認されたものから未認可のものまであり、保険診療の対象となる基準も異なります。
関連記事:保険診療とは?自由診療との違いや健康保険(公的医療保険)とがん保険の関係について解説
がんの三大治療とは?
外科手術・放射線治療・抗がん剤治療の3つをがんの三大治療(標準治療)と呼びます。科学的な根拠が認められ、現時点で最良の治療であるとされる、最も一般的な治療法です。これらを単独か、もしくは組み合わせてがん治療を行います。
それぞれの特徴は次のようになります。
外科手術
がん細胞やその周辺の組織を外科的に切除する治療法です。開腹して直接がんを切除する手術や内視鏡を使ってがんを取り除く手術があります。
術後の状態により入院期間は異なりますが、退院後通院しながら経過を見る形が一般的です。したがって、退院=完治を意味するわけではありません。
開腹・開胸手術
文字通り腹部や胸部を開け、医師が直接がんの患部を目で確認しながら取り除きます。
広範囲のがんも確実に取り除くことができますが、手術にともなう傷口が大きく、術後も痛みが残りやすいので、患者の体に負担がかかりやすいともいえます。
腹腔鏡(ふくくうきょう)手術
腹部に開けた5ミリ程度の穴から内視鏡や腹腔鏡を入れ、そこからの映像を医師がモニターで見ながら手術を行います。手術器具も同じ穴から入れたものを使用します。医師には高い技術が必要となります。
傷口が小さいので患者の体にかかる負担も少なく、傷跡も目立ちにくいものとなります。
放射線治療
人工的な放射線をがんに照射し、がん細胞の増殖を抑え、死滅させる治療法です。患者の身体を傷つけず、少ない副作用でがんへの治療効果が得られます。
体の外部から放射線を照射する外部照射が一般的ですが、カプセル状の放射線源を体内に挿入し、直接がん組織に照射する内部照射という方法もあります。
X線治療
外部照射で行う代表的な治療法です。専用の装置を用い、体の外部からがん組織にX線を照射します。治療自体に痛みはないため、患者の身体的負担も少ないといえます。
陽子線治療
陽子線の特徴を生かし、患部により深く放射線を照射することができる治療法です。がん患部周辺の健康な組織への照射も最低限にとどめることができます。
先進医療に分類されますが、がんの種類により保険診療(公的医療保険の適用)が適用されます。また、実施している医療機関も限定されます。
重粒子線治療
陽子線治療と同様に、特に治療が難しいがんにも効果的な治療法です。先進医療に分類されますが、がんの種類により保険診療が可能です。また、実施している医療保険も限定されます。
抗がん剤治療
化学療法(抗がん剤治療)、ホルモン剤治療、分子標的治療など、薬物を使用してがん細胞の増殖を抑える治療法です。抗がん剤には飲み薬や点滴や注射があります。薬の効果や副作用など経過観察を行いながら、治療を進めていきます。
ホルモン剤治療
体内に分泌されたホルモンを使い増殖する種類のがんに対し、ホルモンの分泌を抑えながら、がんへの攻撃を行うことができる薬を投与する治療です。副作用が出ることがあります。
分子標的治療
がんの増殖の原因となる特定のタンパク質に対し、集中的に攻撃を行うことができる薬を投与する治療です。飲み薬の小分子化合物と、点滴で投与する抗体薬の2種類があります。薬ごとに異なる副作用が出る可能性があります。
がん治療における先進医療とは?
先進医療とは、厚生労働大臣が認めた高度な医療技術を用いた治療法を指します。最新の医療技術のうち、効果や安全性が確認されたものが対象です。令和5年9月1日時点では、81種類が認定されています。
自己負担が3割で済む保険診療とは異なり、先進医療は治療費全額を自己負担しなければなりません。
ただし、先進医療と保険診療を同時に受けた場合、保険診療分は自己負担額が3割となります。
※参考:厚生労働省, 先進医療とは
また、先進医療がのちに保険診療適用として認められたケースもあります。
先に述べた粒子線を用いたがん治療は高価な先進医療の代表格でしたが、2018年に一部のがんで保険適用が認められました。その後も対象となるがんの範囲は拡大しています。
粒子線治療の治療費は一般的におよそ200〜300万円と非常に高額だったため、保険適用はかなりの負担軽減となります。
関連記事:先進医療とは?医療保険でカバーできる治療や注意点、先進医療の代表例を紹介
先進医療の注意点
先進医療の注意点は、特殊な技術や設備を必要とするため、実施している施設が限られていることです。なお最新の実施機関数は全国で322施設であり、一覧を厚生労働省のホームページで見ることができます。
先進医療に保険で備えるには?
先進医療は保険診療に比べると高額で、がんの治療の中には200万〜300万円の治療費がかかるものもあります。
医療保険やがん保険に付加できる先進医療特約は、こうした高額な医療費に備えることができます。
追加保険料も月々100〜200円と安く、小さな保険料で大きな保障を得られるため、ぜひ積極的に特約の付加を検討しましょう。
がん治療における自由診療とは?
自由診療とは、厚生労働省が承認していない治療法や投薬を含む診療のことで、保険外診療とも言われます。健康保険の適用外となるため、治療費は全額が自己負担となります。
自由診療と先進医療の違いは、自由診療が厚生労働省による認可を受けておらず、保険適用の治療との併用が禁止されているということです。
自由診療に分類される治療法
がんの治療には認可されているもの以外にも、有効性が期待できる治療があります。免疫療法や温熱療法(ハイパーサーミア)はその代表といわれており、治療法としては新しいものに分類されます。
免疫療法とは
人が持つ免疫の力を利用してがんを攻撃する治療法です。免疫細胞が持つがんへの攻撃力を薬によって強めます。一部は保険診療の対象になっていますが、民間のクリニックや病院で行っているものについては未認可のものも多いため、慎重に見極める必要があります。
温熱療法とは
人間の細胞が高温で死滅する性質に着目し、体外から電磁波でがん細胞を加熱し、破壊する治療法です。
また、欧米では一般的に使用されているものの、日本では未承認の治療薬もあります。こういった治療薬を使用する場合も自由診療に該当し、薬代を含めた治療費は全額自己負担となります。
自由診療の注意点
自由診療は保険適用の治療との併用が認められていません。
自由診療と保険診療を治療に併用したいわゆる「混合診療」は原則禁止されていますが、もし実施した場合、保険診療部分を含めた治療全体が自由診療とみなされます。よって自由診療と保険診療にかかった医療費を全額自己負担しなければなりません。
まとめ
以上、現在用いられているがんの治療法について解説してきました。
今後も画期的な治療法の開発が期待されるため、いざというときの選択肢を広げるために、医療保険やがん保険に先進医療特約を付加しておくと安心です。
また自由診療がカバーできる医療保険やがん保険もあります。こちらはがん診断一時金に加え、保険診療や自由診療にかかった実費を保障します。
医療費を理由に最善のがん治療をあきらめることがないよう、ぜひ健康なうちに医療保険・がん保険の検討や見直しを行いましょう。