独身で老後が不安…老後資金の必要額や目安はいくら?年金・貯金を増やすために今からできる対策とは
独身には自由な生活を謳歌できるというメリットがあるものの、老後に対する不安が大きいのも事実です。この記事では、独身で老後に受け取れる年金額や必要な老後資金についてシミュレーションを行い、今からできる老後への備えを紹介します。
老後一人暮らしに必要なお金がいくらか知りたい方や、老後資金を増やすために今からできることを知りたい方はぜひご覧ください。
本記事のポイント
- 未婚率は男女ともに年々上昇し、結婚する意思を持たない人の割合も上がり続けているため、今後さらなる増加が見込まれる
- 現在の年金受給額の平均に準じ独身の人が受け取れる年金をシミュレーションすると、公務員や会社員の人は老後ひとりあたり月額14.5万円、自営業やフリーランスの人は月額5.6万円の年金を受け取れる
- 独身で老後にゆとりある生活を送るためには、月々約23.2万円が必要になる
生涯未婚率の実態

いわゆる「生涯未婚率」とは、正確には50歳時点で一度も結婚をしたことのない人の割合をさします。よって、「人ひとりの一生のうち」の未婚率をあらわすものではないため、注意が必要です。
2020年における男性の50歳までの未婚率は28.25%で女性は17.81%でした。すなわち男性の約4人に1人が、女性の約6人に1人が未婚ということになります。
なお、未婚率は男女ともに年々上昇し続けています。未婚率と同様に、結婚する意思を持たない人の割合も上がり続けているため今後さらなる増加が見込まれます。
独身が必要な老後資金はどれくらい?
はじめに、改めて「独身」の定義を確認してみましょう。独身とは、ある時点において結婚をしていない状態をさします。
よって、今まで婚姻歴のない未婚の人をはじめ配偶者との離婚や死別を経験した人、また内縁の配偶者がいる人など、独身には様々な状態の人が含まれます。
この中において、老後ひとりの生活を想定しなくてはならないのは、独身の中でも未婚の人や配偶者と離別・死別した人になると考えられます。
独身者の平均年金受給額
年金には、20歳以上60歳未満のすべての日本国民が加入する国民年金と公務員や会社員が加入する厚生年金のふたつがあります。
公務員や会社員は国民年金と厚生年金の2つに加入している一方で、自営業やフリーランスの場合加入しているのは国民年金のみになります。
厚生労働省の調査によると、令和4年度末時点の国民年金の老齢年金の平均月額は5.6万円でした。また、同調査にて国民年金の老齢年金と厚生年金の老齢給付の平均を合計すると14.5万円となりました。
よって、現在の年金受給額の平均に準ずると公務員や会社員の人は老後ひとりあたり月額14.5万円、自営業やフリーランスの人は月額5.6万円の年金を受け取れることになります。
なお、独身である場合年金における家族手当ともいえる加給年金は支給されません。
加給年金(かきゅうねんきん)とは
老齢厚生年金または障害厚生年金の受給資格がある人が、年金支給の開始年齢である65歳に到達した時点で、年下の配偶者や子など一定の扶養家族がいる際に、 厚生年金部分に上乗せして支給される年金のこと。
また、年金受給開始年齢である65歳以降も働く場合は、年金額を削られる可能性があるためこの額がすべて支給されるわけではないことに注意が必要です。
関連記事:年金制度の基本!厚生年金と国民年金の違いと切り替えのタイミングを知っておこう
独身者の平均貯蓄額

独身の人の平均貯蓄額については、調査データがあります。
金融広報中央委員会が2023年に行った家計についての調査によると、単身世帯の金融資産(預貯金・保険・有価証券・その他金融商品含む)の保有額の平均は941万円でした。
この調査における金融資産には預貯金以外に金融商品を含んでいるものの、1千万円近い資産があると聞くと驚く人も多いかもしれません。しかし、同調査結果を中央値でみると金融資産の保有額は100万円でした。
中央値(ちゅうおうち)とは
母集団となる数値を小さい(あるいは大きい)方から順に並べた際に真ん中となる値。平均値に比べ外れ値(極端に大きいまたは小さい値)の影響を受けにくいため、実感により近い数値を出すことができる。
また、同調査の調査対象2,500世帯のうち、約4割にあたる900世帯は金融資産がないという回答でした。そもそも貯蓄自体がない、という世帯も多そうです。
なお、コのほけん!では「老後資金の貯め方」の調査アンケートを独自に実施しました。その中で全国の20歳以上の男女243名を対象に、公的年金保険制度以外に老後資金を貯めている方法についてたずねたところ、「預貯金」が最多の31.3%となった一方、次いで「貯めていない」が25.9%と2番目に多い結果となりました。
よって、未婚や既婚に関係なく、老後の資金を特に貯めていない人や世帯が一定数あると想定されます。

独身者の老後の必要生活費
老後に必要な生活費は、高齢者世帯の支出から考えることができます。
総務省が毎年定期的に実施している家計調査によると、65歳以上の高齢者かつ単身無職世帯における1か月あたりの消費支出の平均は145,430円でした。
ただし、毎月必ず発生する非消費支出(税金や社会保険料など消費にあたらない支出)を実収入から引いた可処分所得が114,663円のため、毎月3万円ほどの赤字が発生していることになります。

※出典:総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要」より筆者が表を作成
ではこの結果を踏まえ、老後も趣味などを楽しめる、ゆとりある生活を送るためには月々いくら必要なのか考えてみます。
生命保険文化センターが行った調査にて、老後の生活を送るにあたって生活費にいくら上乗せすれば経済的にゆとりがあると思うかたずねたところ、平均で約14.8万円となりました。ただし、この質問では夫婦の世帯が想定されているため、単身世帯なら約6割の約8.9万円をゆとりある生活に必要な上乗せ分として考えます。
よってこの金額と先ほどの支出額を合計すると、独身で老後にゆとりある生活を送るためには月々約23.4万円が必要になるといえます。なお、現在のデータをもとした試算であるため、インフレや物価高などの影響ではこの金額では足りない可能性も考えられます。しかし、老後も趣味などを楽しみたいと考えている場合は基本的には月20万円以上の生活費があるとよいでしょう。
関連記事:生活防衛資金とは?目安はいくら?計算方法や貯め方のコツを解説します
生活費以外に老後で必要な費用
年を取り体が弱り病気・ケガのリスクが増加すると、支出が増える費用の代表が医療費と介護費用です。
ただし、医療費の自己負担割合は年を取ると徐々に低下します。現行の健康保険制度では、医療費の自己負担額は70歳までは原則3割で70歳から75歳までは原則2割、さらに75歳以上の後期高齢者になると原則1割となります。
また、介護費用についても介護保険制度により介護サービスを受けられるため、想定していたよりも負担は軽いものとなるかもしれません。しかし、今後の制度改定や重い病気や介護状態になった時に備えて、医療費も介護費用も健康なうちから備えておくに越したことはないといえます。
ちなみに、先ほど紹介した家計調査にて医薬品の購入費や医療機関の診療代などを含む「保健医療」の1か月あたりの支出は7,981円でした。1年間では約10万円の支出となるため、決して小さくはない金額といえます。
関連記事:公的介護保険制度とは?認知症など要介護状態になった時に公的介護保険で利用できる介護サービスを紹介
今からできる老後への対策

老後への対策を立てるには、現状を正確に把握し今自分にできることが何か考えることが重要といえます。
まずは老後の年金など、いわば老後の収入を把握することからはじめ、老後のための資金形成に投資などを検討してみるとよいでしょう。今からできる対策についていくつか紹介します。
自分の年金受給額を把握する
老後に必要な生活費の見込みを立てるには、まず将来支給される年金額を知っておくとよいでしょう。
年金額は、日本年金機構から送付される保険料納付額や加入状況などの自身の年金に関する情報が記載されたねんきん定期便から知ることができます。ねんきん定期便は、毎年誕生月にはがきとして送られてくるほか、35歳と45歳、59歳になる年には封書にて送られてきます。
より正確な年金額を知りたい場合には、日本年金機構が運営するねんきんネットや厚生労働省が運営する公的年金シミュレーターを活用するとよいでしょう。
老後資金を貯める
老後の生活や介護などに備えるためには、やはり老後のための資金を貯めておいておいた方がよさそうです。
なお、生命保険文化センターの調査によると、貯蓄などで準備しておいた老後資金の使用開始年齢の平均は66.8歳でした。年金の受給開始とともに老後資金を使い始めることを想定すると、老後資金の準備は早いに越したことはないでしょう。
新NISA・iDecoの活用

現在、資産形成の方法として注目を集めているのが、新NISAやiDecoといった国が勧める制度を活用した投資です。
2024年の1月から始まった新NISAは、運用益が非課税になる投資というNISA本来の特徴に加えより大きな金額を自由度高く投資できるようになりました。
新NISAには、初心者も継続的に投資ができる仕組みが整っています。老後資金の準備にはまずおさえておきたい制度といえます。
また、iDeCoとは、国民年金被保険者である国民を対象とした個人型の確定拠出年金をさします。
新NISAと同様に運用益が非課税で月々5,000円から自分自身で掛け金を積み立て、原則60歳以降に元本と運用益を受け取ることができます。
なお、新NISAとiDecoにはそれぞれメリットやデメリットがあります。自分自身の老後のライフプランにあうものを、よく検討することが大切です。
関連記事:iDeCo vs NISA vs 変額保険 どれがいいか徹底比較 ~我が家に合う資産形成の選び方~
個人年金保険の活用
個人年金保険は国民年金や厚生年金の不足分を補う自助努力の一環として、現在注目を集めている保険です。
一定の期間に保険料を納め、保険料払込期間を終えて約定の年齢(年金受取開始年齢)に達した時点から年金を受け取ることができます。なお、年金を受け取れる期間も一生涯やある一定の年数など商品によって異なります。
保険料が強制的に引き落とされるため、貯蓄が苦手な人でも長期的にお金を積み立てられるというメリットがあります。
関連記事:個人年金保険の必要性とメリット・デメリットを徹底解説!保険料の相場はどれくらい?
変額保険の活用
変額保険の魅力は、保険料をもとにした資産運用と死亡や高度障害に対する保障を両立できることです。生命保険料控除が受けられることもメリットといえます。
商品によっては死亡保険金に最低保証額が設けられているものもあるため、投資を始めたいが保証がなく心配な人や保険での備えを同時に考えている人は検討してみるとよいでしょう。
なお、変額個人年金は個人年金保険の一種です。
関連記事:変額保険はやめた方がいい?!変額保険のメリット・デメリットや向いている人をわかりやすく解説
今から出費を抑えて節約をする
「節約」は生活を切り詰め自分の欲しいものやしたいことを我慢するというイメージもあり、チャレンジしたものの続かなかったという人も多いのではないでしょうか。
しかし、固定費の見直しであれば無駄な生活費を削減することに直接的につながり、生活するうえで自分に必要なものやことを把握できる機会にもなるため、老後に必要な生活費のイメージも立てやすいといえます。
固定費(こていひ)とは
定期的に一定額が必要となる支出のこと。家賃や水道光熱費、通信費(携帯電話使用料など)が代表的。
以下は支出の大きな固定費について見直し方をまとめた表です。ひとつひとつ検討してみるとよいでしょう。
固定費の種類 | 見直し方法 |
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住宅費 |
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光熱費 |
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通信費 |
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保険料 |
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サブスクリプション料金 | サービスの利用頻度に応じ解約も検討する |
食費や娯楽費、交際費など、日々の楽しみに直結している費用の節約は挫折しやすいため、まずは月々の固定費から手を付けてみることをおすすめします。
なお生命保険などの保険料は、固定費の中でも大きな割合を占めていることがあります。現在の契約内容を確認し、保障内容を見直したり他の保険商品に乗り換えたりすると保険料の負担を大きく減らせる可能性もあります。
今加入している保険の保障が適切か、もし自分で判断できない場合は保険代理店や保険に詳しいファイナンシャルプランナーに相談するのもよいでしょう。
関連記事:生命保険の選び方・見直し方をファイナンシャルプランナーが解説!
老後の住まいについても検討する
老後は体が弱り、若いころのように生活するのも難しくなります。よって自宅を必要に応じてリフォームしたり、またより住みやすい家に引っ越すことも想定されます。
よって、持ち家に住む人は家のリフォーム費用を、また賃貸住宅に住む人は住み替えのための引っ越し費用などを老後に必要な費用として考慮する必要があります。
遺産相続などの終活についても考える
未婚で独身の場合、人生の最期は親族や親族以外の第三者に助けてもらうことが多くなるといえます。
よって、終活の一環として、生前から身辺整理をしておき、エンディングノートなどで自身の保有する資産や最期について希望を書き残しておくと、もし自分自身が意思疎通の取れない状態になっても意向を伝える手段となるため安心でしょう。
なお、未婚で独身の場合は、優先して法定相続人となる配偶者や子どもがいないため、特に遺言書等によりご自身の意思を示さない限り、両親、兄弟の順に遺産を相続します。
関連記事:後見人とは?誰がなれる?成年後見制度の手続き・費用のポイントをわかりやすく解説!
まとめ

「人生100年時代」という言葉もある通り、現代は昔に比べ老後が非常に長くなります。従来であれば仕事を引退する年齢以降に働き続けることも十分にありえるため、独身の人は特に日頃から自分の心身の健康に気を遣ったほうがよいでしょう。
また、若いうちから昇進や転職、また副業などで収入を増やす努力をするなど、多少のチャレンジも重要かもしれません。そのうえで老後資金への対策を学び、心配や不安を少しでも減らしておくと、よい老後を迎えられる可能性が高まるといえるでしょう。