変額個人年金保険とは?リスクや税金控除をカンタン解説
近年、注目度が高まっている老後の資金問題。
皆さんは国民年金や厚生年金といった公的年金のほかに、老後のための貯蓄をしていますか?
ココに注目
2019年に金融庁は「老後は年金だけでは暮らしていけない可能性が高く、95歳まで生きるには夫婦で約2,000万円の貯蓄が必要」と発表しました。
そんな大金なかなか貯蓄できない…と思う方もいるかもしれませんが、そんな時に役立つのが個人年金保険などの”私的年金”です。
今回は、貰える年金額が大幅に増える可能性がある変額型の『変額個人年金保険』についてご紹介します。
変額個人年金保険とは
変額個人年金保険は一般的な個人年金保険と同様、老後資金に備えるための商品です。
参考
一般的な個人年金保険とは、契約時に定めた予定利率で、将来契約者が貰える年金額が確定または保証されている『定額個人年金保険』のことを指します。
対して『変額個人年金保険』は、積立期間の運用実績によって将来貰える年金額が変動します。
そのため高い収益性が期待できる一方、貰える年金額に最低保証がないので、元本割れを起こすリスクがあることも忘れてはいけません。
元本割れとは
総支払保険料(元本)よりも保険金などの合計受取額が下回ること。
変額個人年金保険の特徴・メリット
保険会社が特別勘定で運用する
変額個人年金保険では、被保険者(保険の対象者)が保険料を一時払い等で支払ったのち、保険会社が預かった保険料を「特別勘定」として運用します。
基本的に保険は「一般勘定」で運用するのが主流です。
特別勘定とは
被保険者が貰える保険金等を運用実績に応じて増減させるために、保険会社が預かった変額保険の保険料を他の保険の資産と分けて管理・運用する勘定のこと。
株式や債券を中心に運用される
どの運用対象に投資して保険料を運用するかは、保険の契約者が選択可能なケースと、あらかじめ決まっているケースがあります。
運用対象は、運用方針が異なる
- 日本株式型
- 日本債券型
- 外国株式型
- 外国債券型
- バランス型
など。
運用実績は契約者への支払いの保険金や給付金に影響し、運用実績が良ければプラスに、悪ければマイナスになります。
積立金はユニットプライスで計算される
変額個人年金保険の契約の積立金額は、ユニットプライス×保有ユニット数(保有口数)で計算されます。
ユニットプライスとは
各特別勘定資産の1ユニット(1口)に対する価格のこと。特別勘定の運用を開始した時点を「100」として指数化したものです。
ユニットプライスの計算にあたっては、特別勘定で運用期間中に生じる諸費用(保険関係費等)が控除されていることが一般的です。
生命保険料控除の対象になる
変額個人年金保険の保険料は、一定の条件を満たせば所得控除の対象となります。
参考
例えば、定額個人年金保険を指す「個人年金保険」の保険料は「個人年金保険料控除」という区分で、毎年の所得税や住民税が節税できます。
変額個人年金保険は、条件を満たせば個人年金保険料控除ではなく、一般の「生命保険料控除」の対象に。
ココに注意
確定申告や年末調整時に、間違えて個人年金保険料控除を申請してしまわないように注意しましょう。
また、すでに他の保険に加入していて生命保険料控除額を使ってしまっている場合は、控除が適用されない点も注意が必要です。
関連ページ:生命保険料控除でいくら戻る?還付金額の計算方法【会社員・個人事業主・パート】
変額個人年金保険と定額個人年金保険の違い
変額個人年金保険も定額個人年金保険も、主な加入目的は「老後の資金準備」という点は同じです。しかし、2つの年金保険には違いがあります。
ここでは、定額個人年金保険の特徴やメリット・デメリット、それぞれの保険がどんな人におすすめなのかをご紹介します。
定額個人年金保険の特徴
定額個人年金保険の特徴は、契約時に定めた予定利率により積立運用がなされることです。保険会社での運用は、預かり保険料を他の保険資産と合同で扱う勘定である一般勘定で行われます。
また、定額個人年金保険の保険料は「個人年金保険料控除」という区分で、一定条件を満たせば所得控除の対象になります。
定額個人年金保険のメリット・デメリット
定額個人年金保険は「老後資金を計画的に準備したいが、株式などの投資商品はリスクが高い」と思っている人におすすめです。
ココがポイント
定額個人年金保険は、将来の年金原資が確定もしくは最低保障されているので安定性があり、途中解約や保険会社の破綻がない限り元本割れのリスクが少ないというメリットがあるからです。
しかし、契約時に定めた予定利率で運用しているということは、インフレリスク※などの予想外の事態には弱いというデメリットも含んでいます。
※物価が上昇し資産価値が目減りするリスクのこと。
超低金利の現代において、元本割れはしなくても、物価が上がれば相対的に資産価値は下がってしまうということは念頭に置いておきましょう。
変額個人年金保険のメリット・デメリット
その点、変額個人年金保険は価格変動幅の大きい金融商品などで運用して運用効果を高められるので、運用実績がいいと受け取る年金の金額もアップして、将来のインフレリスクには対応できる可能性があります。
ココに注意
しかし、変額個人年金保険には、運用実績が下がると元本割れのリスクが生じる点がデメリットの1つとして考えられます。
また変額個人年金保険は、定額個人年金保険と所得控除の区分が異なり「一般生命保険料控除」という区分で死亡保険などの保険料と同じ区分になってしまうことから、節税効果が少なくなってしまう点もデメリットの1つです。
このように、どちらの保険にもメリット・デメリットが存在します。どちらの保険を選ぶほうがよいのかについては他の保険を選ぶときと同様に、ご自身のライフプランや資金計画に合わせて、老後資金の必要金額を算定しましょう。
その上で、変額個人年金保険と定額個人年金保険の特徴や商品内容を理解して、ご自身に合った最適の保険を選ぶことをおすすめします。
変額個人年金保険と投資信託の違いは?
変額個人年金保険は、運用実績により受け取る年金額が変動する商品設計から、同じく株や債券等に投資し利益を得る「投資信託」と似ていますよね。
この変額個人年金保険と投資信託の大きな違いは、
ココがポイント
変額個人年金保険は保険・投資信託は投資である
ということ。
変額個人年金保険は「生命保険+私的年金+投資信託」といった3役を担っている商品とイメージすると、分かりやすいかもしれません。
なので変額個人年金保険は、
- 被保険者の死亡時には死亡保険金が保障されている
- 税金面では保険特有の税金の取り扱い
となります。保険料控除の適用や、相続時の死亡給付金は一定の額まで非課税の対象となるのが特徴です。
対して投資信託はあくまでも投資なので、
- 利益を得れば所得税と住民税がかかる
- 死亡時の保障はない
と保険特有の特徴がありません。
ですが投資信託では、対象者の健康状態に関係なく投資できたりと、それぞれメリット・デメリットがあります。
変額個人年金保険にかかる6つの諸費用
「資産の運用」と「保険」としての役割の両方を担う変額個人年金保険では、保険料以外に多数の諸費用がかかります。
- 契約初期費用
- 保険関係費用
- 運用関係費用
- 年金管理費用
- 解約控除
- スイッチング費用
一般的な投資信託と比較すると、手数料は高め。契約時にはこの点もよく確認しましょう。
⒈ 契約初期費用
保険契約締結時の手数料・費用。
契約時に1.7~6%程度の割合で、一時払保険料から控除されます。
なお、契約初期費用がかからない商品もあります。
⒉ 保険関係費用
契約維持費用、死亡給付金の最低保証等の費用。
年率0.2~3.2%程度の割合で、積立金から毎日控除されます。
⒊ 運用関係費用
特別勘定の運用にかかる費用。
年率0.04~2%程度の割合で、積立金から毎日控除されます。
⒋ 年金管理費用
年金開始後の年金財産管理のための費用。
年金年額に対し、1%程度が1年に一度控除されます。
⒌ 解約控除
契約後一定期間内の解約時に、積立金から差し引かれる金額。
契約から1~10年間程度、所定の額(一時払保険料等)の8~0.4%程度が控除されます。なお、解約控除がかからない商品もあります。
⒍ スイッチング費用
スイッチングとは
契約者がファンドを選択し、積立金の移転を行うこと。
据置期間中に積立金の運用を行う特別勘定を、別の特別勘定に変更(スイッチング)するときには、スイッチング費用と呼ばれる手数料が発生する場合があります。
年間を通して13~16回以上の変更から、1回の変更につき1,000円程度が積立金から控除されます。
変額個人年金保険の詳しい契約条件
次に、変額個人年金保険の詳しい契約条件を見ていきましょう。
保険期間(保障期間)
変額個人年金保険は運用性の高い商品であるため、保険の契約が続く「保険期間(保障期間)」は10~30年と長期になります。
参考
なお保険期間(保障期間)は、生命保険会社によっては「据置期間」「積立期間」と表現されることもあります。
保険料の支払い方法
変額個人年金保険の保険料の支払い方法は、契約時に保険料を一括で支払う「一時払」が一般的です。
保険会社によっては年払・半年払・月払や、一定期間分をまとめて払い込む「前納」を取り扱う場合も。
なお保険料の金額も、保険会社により異なります。
参考
中には、一時払保険料を最低100万円程度から取り扱う会社もあります。
契約可能年齢
変額個人年金保険の契約可能年齢は、加入する保険会社により異なります。
参考
下は0歳から、上は80歳程度まで取り扱っている会社があるなど様々です。
死亡保険金/死亡給付金
変額個人年金保険の保険期間(保障期間)中に被保険者が死亡した場合、被保険者の死亡日時点の積立金を「死亡保険金」として受け取ることができます。
年金の受け取り開始前に死亡した際にもらえる「死亡給付金」は一般の生命保険と同様の扱いになり、契約形態によって異なります。
ココに注意
死亡給付金額については払込保険料の総額を最低保証する商品が多いのですが、最低保証のない商品もあるため注意が必要です。
配当金の種類
予定利率よりも少ない費用で保険を運用できた際、余ったお金を契約者に還元する「配当金」がつく保険があります。
しかし変額個人年金保険は商品の特性上、無配当の商品がほとんどです。
解約返戻金
変額個人年金保険を解約する場合、解約時点の積立金が「解約返戻金」になります。
ココに注意
ですが解約返戻金も運用実績に応じて増減するため、原則、最低保証(元本保障)がありません。
先述した通り変額個人年金保険は、10~30年と長期の運用になります。そのため中途解約は高い解約金がかかることも。
契約してから1~10年ほどは「解約控除」と呼ばれる解約金が、積立金より差し引かれることが一般的。
契約直後に解約した場合は、解約返戻金が総支払保険料を下回る可能性があります。なお解約時点で差益が出ている場合、基本は一時所得として所得税・住民税の課税対象です。
ただし一時払で保険料を支払い、契約時に確定年金を選んでいる場合、契約後5年以内に解約した場合は、金融類似商品として20%の源泉分離課税の対象となります。
変額個人年金保険の年金の種類
変額個人年金保険で選べる年金の種類は、以下の3つです。
①保証期間付終身年金
保証期間中(一般的には5・10・15年)は被保険者の生死に関係なく年金を受け取れ、その後は被保険者が生存している限り年金を受け取れます。
保証期間中に被保険者が死亡した場合は、遺族が残りの保証期間に対応する年金、または残りの保証期間に対応する年金の現価に相当する金額を一時金で受けとることができます。
②確定年金
確定年金は、被保険者の生死に関係なく契約時に定めた一定期間(一般的には5・10・15年)年金を受け取れます。
年金受取期間中に被保険者が死亡した場合は、遺族が残りの期間に対応する年金、または残りの期間に対応する年金の現価に相当する金額を一時金で受けとることができます。
③夫婦年金
夫婦年金は、夫婦いずれかが生存している限り年金を受け取れます。
夫婦連生終身年金とも呼ばれます。夫婦年金には保証期間がついていて、保証期間中に、被保険者の夫婦2人とも死亡してしまった場合には、保証期間の残存期間に対応する年金または一時金が受け取れます。
最初は確定年金や終身年金などで契約したとしても、後から夫婦年金に契約変更することも可能です。
変額個人年金保険はどのように年金を受け取れる?
①固定型
毎年、一定の年金額を受け取るタイプです。
毎年受け取る年金額は、年金受取開始時点の年金原資額(積立金額)によって決まりますが、全期間にわたって一定額となります。
参考
保証期間中は第1回年金年額と同額の年金が受け取れ、保証期間経過後は受け取る年金額が毎年一定額ずつ増えていくタイプを取り扱う生命保険会社もあります。
②変動型
毎年受け取る年金額が、増減するタイプです。
年金受取開始後も特別勘定による運用が続くため、運用実績に年金額が連動します。年金開始後の税金は、一般の個人年金保険と同様の扱いになります。契約形態によって取り扱いが異なります。
その他の変額個人年金保険のタイプ
変額個人年金保険の主なタイプとして、他には以下の3種類があります。なお、どのタイプにも解約返戻金の元本保証はありません。
到達目標設定型(ターゲット型)
- 運用実績が目標に到達した時点で確保しておきたい人
契約時に一時払保険料の110%~150%などの目標値を設定して、一定期間経過後に目標値に到達した場合には、運用実績を確保することが可能です。
確保した運用実績により、
- 即時年金受取開始
- 一時金での受取
- 一般勘定への移行
のどれかを選択できます。
目標値に到達せずに据置期間が終了した場合や、年金受取開始前に被保険者が死亡した場合に、元本保証があるタイプとないタイプがあります。
最低保障引き上げ型(ラチェット型)
- 運用により増加した年金原資を減らしたくない人
年金原資や年金受取総額と死亡給付金の最低保証額が、運用実績による積立金の増加に応じて引き上げられるタイプです。最低保障額は一度引き上げられると、仮にその後に運用実績が不調になったとしても、減少することはありません。
一般的に、契約から1年後の判定日に積立金が増加していると、最低保証額が引き上げられます。
この最低保証額が引き上げられることを「ラチェット保証」や「ステップアップ保証」と呼びます。最低保証額が引き上げられた場合には、保険会社から契約者に通知がいきます。
早期年金開始型
- 年金を早く受け取りたい人
契約してから最短1年で、年金受取を開始することが可能です。年金開始後も、引き続き特別勘定で運用が継続します。
仮に年金開始後すぐに被保険者が死亡した場合には、積立金あるいは一時払保険料のどちらか多い金額から、既に受け取った年金総額を控除した金額が死亡保険金となります。
年金の受取方法は、終身年金または確定年金があります。
変額個人年金保険のリスク・注意点
年金額が総保険料を下回る可能性アリ
「特別勘定」の資産は、国内外の株式・債券等で運用しており、運用実績がそのまま保険金額や積立金額・将来の年金額等の増減につながります。
ココに注意
ということは、株価や債券価格の下落・為替の変動により、積立金・解約返戻金は総支払保険料の総額を下回り、損失が発生する可能性があるということ。
中には、運用後の元本保障がある商品もあるため、よく調べてから契約することが大切です。
担当者が有資格者かチェック
変額保険や変額個人年金保険は、変額保険販売資格を有する有資格者でなければ販売ができません。
生命保険会社側は、
- 資産の運用方法
(運用資産の種類や評価方法・資産の運用方針) - 商品の仕組み
(資産の運用実績によって将来受け取る保険金等の額がどのように変動するのかなど)
について、書面を用いて説明することが法律で義務付けられています。
契約時には書面で確認を!
また契約後も、運用実績等について1年ごとに書面を交付することになっています。
不明点があれば担当者に説明を求め、リスクを理解した上で契約するようにしましょう。
まとめ
- 変額個人年金保険は、運用実績によって貰える年金等が増減する商品
- 株式や債券を中心に特別勘定で運用される
- 保険料は生命保険料控除、相続時の死亡給付金は一定額まで非課税枠の対象となる
- 保険料以外に、運用するための諸費用(手数料)が多数かかる
- 中途解約は高い解約金が発生し、元本割れとなるリスクがある
変額個人年金保険は「老後資金が公的年金だけでは不安」「投資リスクを自分で負うことを厭わない」方におすすめです。
投資性の高い商品であるため、まずは独立系ファイナンシャルプランナーに相談してみましょう!