20代女性の生命保険・医療保険・がん保険・就業不能保険の選び方
保険の入り方や選び方は、年齢や性別だけでなく生活状況などによって大きく変わります。誰もが納得する加入の仕方や選び方は、存在しません。そこで今回は、20代の女性において「生命保険(死亡保険)」「医療保険」「がん保険」「就業不能保険」の入り方や選び方について解説していきます。
20代のうちは「保険って本当に必要なのだろうか」「日々の生活で精一杯」と感じていらっしゃる方も少なくありません。 この記事を読んでいただき、自分にとってどのような保障が必要なのか考えてみましょう。
保険は人生の3大リスクに備えるもの
一般的に、保険は人生の3大リスクに備えるためのものといわれています。
人生の3大リスクとは、
- 病気・けがのリスク(医療保険・がん保険・就業不能保険)
- 死亡のリスク(生命保険)
- 長生きのリスク(年金保険・学資保険・介護、認知症保険)
であり、どれも経済的損失(負担)が発生する可能性があります。
それでは、20代・女性にとっての3つのリスクの優先順位についてそれぞれみていきましょう。
病気・けがのリスク
「病気やけがのリスク」は、さらに2つに分けられます。
- 病気・けがで入院・手術による医療費等の出費(医療保険・がん保険)
- 病気・けがにより長期的に働けない状態になった場合の収入の減少(就業不能保険)
この2つのリスクは、20代・女性が単身者(独身)・家族の有無を問わず、備えるかどうかを検討すべきリスクです。
健康保険で3割負担になり、高額療養費制度や医療費控除があるとは言っても、病気・けがで入院・通院・手術による医療費の出費は時として負担になる可能性があります。
また、病気・けがが理由で長期にわたって働けないと収入は減少するため、働けない場合のリスクに備えることも検討する必要があります。
死亡のリスク
扶養する家族がいない等の独身(単身者)であるなら、優先順位は低く、備えるとしても、死後整理金としての金額で良いでしょう。
逆に、扶養家族等がいて、世帯の家計をメインで支えているなら死亡した時の影響は大きいので優先順位は高くなります。
長生きのリスク
長期的な視点でみた時に、資産形成含めて「長生きのリスク」は重要ではあります。
ただ、20代・女性が備えるべきリスクとして、「病気・けがのリスク」や「死亡リスク」と比較して「長生きのリスク」は優先順位が一番低いと言えます。
20代・女性が備えるべきリスクは3つ
- 病気・けがで入院・手術による医療費等の出費
- 病気・けがにより長期的に働けない状態になった場合の収入の減少
- 死亡時の葬儀費用・死後整理金や家族の生活費
20代女性の保険の考え方のポイント
今すぐ、自分に何の保険が必要か知りたい方は、必要度診断をしてみてはいかがでしょうか。
診断する必要がないという方は、記事を読みすすめてください。
20代の女性が保険を選ぶ時に考えたいポイントは、これからご紹介する3つです。
ポイント
- 自分に何かあった場合に誰が困るかを考える
- 保険料負担が無理のない範囲で加入する
- 女性特有の病気にも備える
自分に何かあった場合に誰がお金に困るかを考える
保険に入る目的を明確にします。
保険を選ぶ前に、自分が病気・けがをしたり、万が一(死亡)の場合に誰がお金に困るのかを考えてみましょう。
あなたが配偶者や子供、両親などを養っている状態で入院してしまうと、残された家族は生活できなくなるかもしれません。
また、あなたが独身であっても貯蓄が不十分な場合は、病気やケガになったときに入院や手術を受けるお金が捻出できず、自分自身が困ってしまいますよね。
保険に加入する際は「周りが入っているから」「勧められたから」という曖昧な理由で加入するのではなく、いざという時に誰がどのように困るのかを考えた上で加入しましょう。
保険料負担が無理のない範囲で加入する
保険に加入する場合、充実した保障を準備したいと思うかもしれません。
しかし忘れてはならないのは、現在の生活が最も大事であるということです。保険料負担が高額で、日々の生活が困窮してしまっては本末転倒でしょう。
よくあるのは、掛け捨ての保険料が嫌だからといって貯蓄も兼ねた保険に加入するケースです。
確かに貯蓄を兼ねた保険に加入すると、支払った保険料が戻ってくることがあり、損をした感じる可能性は減るかもしれません。
現在はとても低金利な時代ですので、貯蓄型保険の保険料は値上がりしており、生活を過度に圧迫する可能性があります。
限られた収入の中で必要な保障を準備するためには、掛け捨ての保険で保障を準備しましょう。
女性特有の病気にも備える
20代の女性は、乳がんや子宮頸がんなどの女性特有の病気に対する保障を検討しましょう。20代の方ががんに罹患してしまった場合、進行が早く他の年代に比べて完治しにくいという特徴があるからです。
がんが初期の状態で見つかった場合は、早急に治療を開始しなければ、全身に転移する可能性もあります。早期で治療を開始するために必要な資金を確保できない可能性がある場合は、医療保険やがん保険に加入することで、受け取った保険金や給付金を治療費に充てられますね。
20代・女性が優先すべき保険
20代・女性が優先すべき保険は「備えるべきリスク」×「考え方のポイント」の組み合わせで決まります。
「死亡保険」「医療保険」「就業不能保険」「がん保険」を20代・女性にとって一般的な優先順位の高い順番に並べると以下の通りです。
- 医療保険
- 就業不能保険
- がん保険
- 死亡保険
20代の女性は、自分自身が重い病気になった場合や働けなくなってしまった場合の保障を優先させるのがおすすめです。
さまざまな病気に幅広く手厚く備えたい場合は「女性向けの医療保険」もしくは「医療保険+がん保険」の組み合わせがおすすめです。
一方で、がんになった場合の高額な医療費のみに備えたい場合は「がん保険のみ」に加入すると良いでしょう。
それぞれの加入の仕方について詳しく説明していきます。
医療保険の選び方・考え方
医療保険とは、病気やケガで入院をしてしまった場合に給付金を受け取れる保険のことです。
保険期間(保障期間)は、生きている限り医療保障が続く「終身型」と、一定期間だけ保障する「定期型」に分けられます。
子宮筋腫や乳がん等女性特有の病気の保障を手厚くした「女性向けの医療保険」も視野に検討をしましょう。
医療保険の優先順位が高くなるケースとやや低くなるケースと考えられる条件は下記の通りです。
【医療保険の優先順位が高くなるケース】
- 貯蓄がない・もしくは貯蓄をできるだけ崩したくない
- 一人暮らし
- 病気・けがの時に物理的・経済的に頼れる人がいない
- 世帯の家計をメインで支えている、扶養家族がいる
【医療保険の優先順位がやや低くなるケース】
- 貯蓄がある
- 実家で生活している
- 病気・けがの時に物理的・経済的に頼れる人がいる
主契約の選び方
医療保険の主契約は、「入院給付金+手術給付金」型のものと「一時金」型の2つがあります。
「入院給付金+手術給付金」型
入院給付金は「入院日数×入院給付金日額」で計算されます。入院給付金日額は5千円でも大丈夫ですが、1万円あると安心。
入院すると、差額ベッド代や食事代、交通費などさまざまな出費が発生し、高額になる場合があるからです。
入院1日目から入院給付金が出るかどうか、また、1回の入院あたりの給付の限度日数も重要です。最近は入院日数が短くなっているため60日でも十分ですが、120日あると安心できます。三大疾病(がん・心筋梗塞・脳卒中)やなど重い病気で給付日数が無制限になるものもあり、より保障を手厚くすることが可能です。
手術給付金は「入院給付金日額×所定の倍率」で計算されるのが一般的です。保険会社ごと、医療保険ごとに手術の倍率の規定は異なるため、パンフレットやご契約のしおり・約款等を必ずご確認ください。
「一時金」型
一時金型は、入院の日数に関わらず、入院した時点で一定のまとまった金額(一時金)が受け取れる医療保険です。
日帰り入院や1泊2日のような短期入院でも何かとお金がかかるので、まとまった金額が受け取れるのは便利だと言えます。
特約の選び方
医療保険には様々な特約を付加できます。
代表的なのは、がんになった場合に一時金を受け取れるがん特約です。付加することでがんに対する保障を手厚くできますが、がん保険と保障内容が被る可能性があります。さらに、医療保険を解約するとがん保障もなくなってしまう点に注意が必要です。
そして、先進医療特約を付加するのもおすすめです。特定の先進医療を受けた場合に発生する自己負担をカバーしてくれる特約です。
先進医療で発生した医療費は全額自己負担。場合によっては、数百万円単位の自己負担が発生する可能性があるため、先進医療特約をつけることで医療費が高額になっても貯蓄を切り崩さなくて済みます。
その他、入院前後の通院代を保障する通院特約などもあります(入院して退院後の通院のみ保障する特約もあります)。
コのほけん!20代・医療保険加入者の男女別平均保険料月額データと入院給付金日額の平均データ
コのほけん!20代・医療保険加入者の男女別平均保険料月額は下記の通りです。
女性 | 男性 |
3,807円 | 2,840円 |
入院給付金日額については、公益財団法人生命保険文化センターの2種類の調査データを参照します。
令和元年度「生活保障に関する調査」(令和元年12月発行)によると、
20代・女性の疾病入院給付金日額の平均「7,575円」で、最多は「5,000円〜7,000円未満」です。※疾病入院給付金日額(民保(かんぽ生命含む))
2021(令和3)年度「生命保険に関する全国実態調査」(2021年12月発行)だと、
20代・女性(配偶者)の疾病入院給付金日額の平均「6,970円」で、最多は「5,000円〜7,000円未満」です。※疾病入院給付金日額(民保(かんぽ生命含む))
就業不能保険の選び方
就業不能保険とは、病気やけが等で働けない状態が長期的に続く時の収入の減少をサポートする保険です。保険会社や商品によっては、鬱をはじめとする精神疾患等で働けない場合も保障される場合もあります。
就業不能保険の優先順位が高くなるケース・やや低くなるケースについて、医療保険と同じ条件になります。
その他、貸与型の奨学金(教育ローン)やローン購入の返済がある人なども就業不能保険の優先順位を高めにして申込の検討をしてください。
関連ページ:就業不能保険の選び方・見直し方
がん保険の選び方
がん保険とは、生まれて初めてのがん(悪性新生物)に罹患した場合や、がんによる入院や手術、通院、特定の治療を受けることで、保険金や給付金を受け取れる保険です。ひとくちにがん保険と言っても、主契約の保障内容や付加できる特約は、保険会社によって大きな差があります。
女性は特に15歳から39歳のがん患者であるAYA世代において20歳以後のがんの症例の約80%が女性で、年齢に従って増加していくことが分かっています。そのため、医療保険と同様、女性向けのプランの検討も良いでしょう。
医療保険に加入していれば「がん」も病気のひとつであるのでカバーされるので、医療保険や就業不能保険と比べて優先順位は下がります。
「がん家系」や「女性特有のがん」という単語が少しでも気になる場合はご検討いただいた方が良いかもしれません。ご自身が、どのようながん保険に加入したいかを考えた上で選びましょう。
関連ページ:AYA世代(アヤセダイ)とは-女性のがん保険の必要性
主契約の選び方
がん保険の主契約には以下のような種類があります。
- 診断一時金(診断給付金):がんと診断された場合にまとまった保険金を受け取れる保障
- がん入院給付金:がんによって入院した場合や手術を受けた場合の保障
- がん治療給付金:放射線治療やホルモン治療など特定の治療を受けた場合の保障
例えば、医療保険とセットで加入し、すでに入院保障が手厚い場合は、治療給付金や診断一時金が受け取れるタイプに加入することで、バランスよく備えることが可能です。
また、医療保険に加入していない場合は、入院給付金を受け取れるタイプのがん保険に加入するという方法があります。
がん以外での入院では保険金を受け取れなくなりますが、保険料を低く抑えて、がんによる高額な治療費が発生するリスクに備えることが可能です。
そして、主契約を選ぶ際の注意点は、上皮内がんの保障がでるかどうかを確認すること。上皮内がんとは、上皮組織内にできた初期のがんで、がん保険でも給付の対象外の場合があります。
一方で、子宮頸がんの6割が上皮内がんと言われています。さらに20代の場合はがんの進行が早いため、早期に治療をして病変を取り除かなければ、取り返しのつかないことになりかねません。上皮内がんも保障の対象であるがん保険に加入することで、金銭面で苦労することなく早急に治療を開始できるでしょう。
関連ページ:医療保険を選ぶなら?終身と定期の違いやメリット・デメリットについて
特約の選び方
がん保険の特約の中でも、働けなくなった場合の保障である就業不能保障特約をつけると安心です。がんの治療は退院後も通院が続くことがあり、すぐに復職できるわけではありません。就業不能保障特約を付けることで、通院期間中に復職できなかったとしても、毎月一定額の保険金を受け取って生活することができます。
関連ページ:がん保険の特約の種類はどんなものがある?特約の選び方を解説
コのほけん!20代・がん保険加入者の男女別平均保険料月額データと入院給付金日額の平均データ
コのほけん!20代・がん保険加入者の男女別平均保険料月額は下記の通りです。
女性 | 男性 |
2,091円 | 2,299円 |
入院給付金日額については、公益財団法人生命保険文化センターの調査データを参照します。
2021(令和3)年度「生命保険に関する全国実態調査」(2021年12月発行)だと、
20代・女性(配偶者)の疾病入院給付金日額は平均「9,733円」で、最多は「10,000円〜15,000円未満」です。※がん疾病入院給付金日額(民保(かんぽ生命含む))
生命保険(死亡保険)の選び方
20代の女性にとって、生命保険(死亡保険)は最も優先順位が低い保険となります。
ただし全く必要が無いわけではありません。配偶者や子供などの家族の生活が、あなたの収入によって支えられている場合は、死亡保障が必要でしょう。その場合の保障額は、子供が独立するまでの生活費を目安に、残された家族に支給される「遺族年金」がいくらもらえるのかも確認した上で、保障を準備しましょう。
※1 遺族年金:国民年金や厚生年金に加入している人が亡くなった場合、残された家族に毎月一定額の年金が支給される制度
コのほけん!20代・生命保険(死亡保険)加入者の男女別平均保険料月額データと入院給付金日額の平均データ
コのほけん!20代・生命保険(死亡保険)加入者の男女別平均保険料月額は下記の通りです。
女性 | 男性 |
7,951円 | 2,843円 |
入院給付金日額については、公益財団法人生命保険文化センターの2種類の調査データから参照します。
令和元年度「生活保障に関する調査」(令和元年12月発行)によると、
20代・女性(配偶者)の死亡保険金額の平均「749万円」で、最多は「500万円〜1,000万円未満」「1,000万円〜15,000万円未満」です。※生命保険加入金額(民保(かんぽ生命含む))
2021(令和3)年度「生命保険に関する全国実態調査」(2021年12月発行)だと、
20代・女性(配偶者)の死亡保険金額の平均「884.6万円」で、最多は「500万円〜1,000万円未満」です。※生命保険加入金額(民保(かんぽ生命含む))
まとめ
今回は、20代の女性が保険に加入する時に検討すべき優先順位を解説しました。
ご自身が一家の大黒柱でない限りは、医療保険やがん保険など自分自身が病気になってしまった時の保障を優先させましょう。
一方で、医療保険やがん保険にも様々な種類があることはお伝えした通りです。ご自身だけで選びきれない時は、お近くのファイナンシャルプランナーに相談してみてください。現在のファイナンシャルプランナーは、保険を押し売りすることはなく、生活背景や家族形態などあなたの状況に合ったプランを提案してくれます。