外貨建て終身保険とは?仕組みと特徴、為替リスクとは?メリット・デメリットについて解説
マイナス金利やゼロ金利が話題となっており、多くの人々が外貨建ての金融商品を検討しています。そこで、本記事では「外貨建て終身保険」という商品に注目し、その仕組みやメリット・デメリットなどについて詳しく解説します。
本記事のポイント
- 終身保険において、外貨建て保険が増えている
- 外貨建て保険は、保険料の運用を外貨で行うため、予定利率(運用利回り)が高め
- 外貨建て保険には、為替リスクがある
- 保険金は外貨ベースでの保証であるため、日本円で換算した金額は為替レートに左右される
- 外貨建て保険は絶対に損をしない保険ではなく、コストやリスクを十分に踏まえて検討する必要がある
生命保険の予定利率は契約当初の景気や金利動向が反映されている
生命保険の予定利率は、契約当初の景気や金利動向によって決まります。つまり、世の中の経済状況が予定利率に影響を与えるということです。
現在、超低金利の時代にあるため、大手銀行が扱う1年間の定期預金金利はおおむね0.01パーセント程度と極めて低い水準にあります。一方、終身保険の予定利率は、約1パーセント前後と、定期預金よりも高い水準にあります。
しかしながら、金利が上がっても予定利率は契約時の水準のままで据え置かれるため、長期的な視野で見れば、手放しで喜べるほど高いとはいえません。また、低金利の時代にある現在では、終身保険の特徴である貯蓄性が発揮しづらいという問題もあります。
さらに、日銀が打ち出したマイナス金利政策の影響により、円建て終身保険の中には販売中止や保険料の大幅な値上げを余儀なくされた商品もあります。
以上のような背景から、生命保険を検討する場合には、経済状況や金利動向についても注意深く観察し、リスクを抑えた上で適切な商品を選ぶことが大切です。
外貨建ての魅力は運用利回りである
円建て終身保険が低金利時代にあるため、外貨建ての終身保険が注目されています。外貨建て終身保険は、保険料の運用を外貨で行うため、米ドルや豪ドルなど、さまざまなタイプがあります。ただし、同じ商品でも選ぶ外貨の種類によって積立利率などの諸条件が異なるため、確認が必要です。
保険料の運用は外貨で行いますが、払い込みや保険金の受け取りは日本円でも可能です。
外貨建て終身保険の最大のメリットは、円建て終身保険に比べて予定利率(運用利回り)が高いことです。保険には「予定利率(運用利回り)が高い=保険料が安い」「予定利率(運用利回り)が低い=保険料が高い」という法則があります。同じ保障をつけた場合、商品によっては円建て終身保険と外貨建て終身保険で保険料に倍近い差が出ることもあります。
また、保険料の払い込みが終わった後、解約返戻金が100%を超えるタイミングも外貨建て終身保険の方が早いようです。
以上の理由から、外貨建て終身保険はコストパフォーマンスが高いと言われています。
為替リスクとは?
外貨建てといっても終身保険であるため、運用の善し悪しに関わらず外貨での死亡保険金は保証されています。運用に失敗したからといって、死亡保険金まで減ってしまうことはないのです(なかには減ってしまう商品もありますが)。
外貨建て保険には、円建て保険にはない為替リスクがあります。保険金は外貨ベースでの保証であるため、日本円ではありません。具体的には、為替レートの変動によって保険金の額が変わってしまうことがあります。
たとえば、1ドル=100円のときに5万ドルの外貨建て終身保険に入った場合、保険金の受け取り時には以下の3つのケースが考えられます。
・為替レートが変わらない場合・・・1ドル=100円のまま 100円×5万ドル=日本円に換算すると500万円
・円安になった場合・・・例えば1ドル=130円になった 130円×5万ドル=日本円に換算すると650万円
・円高になった場合・・・例えば1ドル=80円になった 80円×5万ドル=日本円に換算すると400万円
同じ保険金でも為替レートによって日本円に換算した金額が変わってしまいます。もし、加入時より円安になっていた場合は、保険料以上の額を受け取ることができますが、逆に円高になってしまった場合は、元本割れしてしまう可能性があるため注意が必要です。
円建てとはしくみが違うため要注意
円から外貨に替える・外貨から円に戻す際は、為替手数料がかかります。そのほか、運用や管理の費用、契約期間中の解約に対する解約控除など、さまざまなところでコストが発生します。これらは終身保険だけでなく外貨建ての個人年金保険でも同じことがいえます。
外貨建て保険は円建て保険とは違う面が多々あり、しくみも複雑です。リスクやコストを理解していないと、あとで「まさか、こんなに契約時の試算から減っているなんて!」という事態になりかねません。
実際、外貨建て保険への加入者が増えるのに従って、トラブルも急増しています。生命保険協会の非公表資料によれば、2017年に寄せられた苦情の件数は5年前と比べて3倍に増えているとのこと。
たしかに運用利回りは魅力ですし、資産を分散させる意味でも外貨を持つことは有効です。しかし、外貨建て保険は絶対に損をしない保険ではありません。為替リスクやしくみを十分に踏まえて検討しましょう。
今の日本の低金利状態からみると、外貨で運用を行う外貨建て終身保険は、円建ての終身保険に比べて運用利回りがよくなっています。ただし、保険金は受け取る時点での為替レートに大きく影響を受けます。したがって、そのとき円安か円高かによって日本円に替えた金額は変わってくることには十分注意することが必要です。
外貨建て終身保険とはなに?もっと詳しく
外貨建て終身保険とは、支払った保険料を外貨ベースで運用する終身保険です。
ここで簡単なおさらいですが、終身保険とはどのような保険でしょうか?
終身保険とは、一生涯、死亡保障が続く死亡保険です。契約が成立してから1年後でも、30年後であっても、被保険者が死亡した場合、所定の死亡保険金が死亡保険金受取人に支払われます。
終身保険は日本円で保険料を支払い、死亡保険金も日本円で支払われるのが一般的です。
ただし、外貨建て終身保険の場合は、日本円を運用通貨に換算する、もしくは運用通貨となる外貨で保険料を支払い、保険期間(保証期間)中は外貨ベースで運用し、被保険者が死亡した場合、死亡保険金を運用通貨の外貨のまま、もしくは運用通貨から両替し日本円で受け取ることになります。
また、途中解約の場合についても、原則は運用通貨の外貨ベースでの解約返戻金となり、両替し日本円で受け取ることも可能ですが、為替相場の変動による為替リスクが存在するため、日本円ベースでは元本を割る可能性が出てきます。
選べる通貨は?
一般的なのは、アメリカドル(米ドル)、オースラリアドル(豪ドル)、ユーロなどが挙げられます。
保険料の払込方法と保険料払込期間について
保険料の払込方法は、一時払や平準払等があります。
銀行窓口販売では、一時払が多く、生命保険会社によっては平準払を扱っている商品もあります。払込方法については、担当者へ確認をするようにしましょう。
一時払い
契約時に保険期間全ての保険料を1回で支払います。一時払で保険料を支払う場合、最低限度の保険料金額が定められていることがあります。また、一度で保険料の支払を終えてしまうため、保険料払込期間は特にありません。
平準払い(月払い、半年払い、年払いなど)
保険料払込期間は契約時の試算によって決定します。
①月払(つきばらい)
毎月1回、1ヶ月分の保険料を支払います。
②半年払(はんとしばらい)
半年毎に6ヶ月分の保険料を支払います。
③年払(ねんばらい)
1年毎に12ヶ月分の保険料を1回で支払います。
保険期間(保障期間)について
外貨建て終身保険という名の通り、一生涯の保険期間(保障期間)です。
外貨建て終身保険のメリット・デメリット
外貨建て終身保険のメリット
予定利率(運用利率)が高い
現在の日本の保険の運用利回り(予定利率)は0.3%です。米ドルであれば、米国債30年(2020年02月18日 終値)直近値2.010 %と日本と比較して運用利回りが高いことがわかります。運用通貨の金利が高いため、高い運用収益が見込めるので、保険料の割引率である予定利率が高くなります。そのため、日本円で運用する商品よりも安い保険料で外貨ベースで大きめの保障を備えることが可能となっています。
外貨で運用することでリスク分散ができる
資産を日本円だけでなく、複数の外貨で持つことで、為替相場変動リスクに備えることができます。
運用通貨に対し契約時と比べ円安となった場合、日本円での受取金額が増える可能性がある
例えば保険料10,000USドルを支払い、運用利率1.563%で10年間の運用した場合、満期保険金は11,677.6USドルとなります。
契約時の為替相場が1ドル=110円である場合、日本円の保険料金額は1,100,000円。
満期時に1ドル=113円となっていた場合、満期保険金の円換算額が1,319,568円となります。
外貨建て終身保険のデメリット
為替相場の変動リスクがある
例えば保険料10,000USドルを支払い、運用利率1.563%で10年間の運用した場合、満期保険金は11,677.6USドルとなります。
契約時の為替相場が1ドル=110円である場合、日本円の保険料金額は1,100,000円。
満期時に1ドル=90円となっていた場合、満期保険金の円換算額が1,050,984円と日本円での保険料金額に対してマイナスになる可能性があります。
手数料などの諸費用がかかる
為替手数料や契約維持手数料、管理手数料など、保険会社によって異なりますが、各種の手数料が発生します。
死亡保険金や解約返戻金とその税金について
死亡保険金について
外貨建て終身保険の死亡保険金の受取は、死亡保険金受取人から生命保険会社へ連絡し、保険会社所定の死亡保険金請求書を取り寄せ、死亡診断書等の必要書類を用意し提出することで請求が可能になります。
以下の表は契約形態ごとに死亡保険金にかかる税金の種類です。
保険料を支払う人 | 被保険者 | 保険金受取人 | 税金の種類 |
本人 | 本人 | 配偶者または子 | 相続税 |
配偶者 | 本人 | 配偶者 | 所得税 |
配偶者 | 本人 | 子 | 贈与税 |
死亡保険金の税金について詳しくは下記の記事をご参照ください。
関連記事:死亡保険金はいくらから税金がかかる?かからない?損をしない生命保険の契約形態
解約返戻金について
終身保険は保険料の払込に伴い、解約返戻金が徐々に上がっていく保険契約になります。そのため早期に解約をした場合、解約返戻金が払込保険料総額を下回ることが一般的です。
解約返戻金は、一時所得の扱いになります(2020年2月時点)。これは、解約までに払い込んだ保険料の累計額<解約返戻金の場合に一時所得として所得税がかかることを指します。基本的な計算式は、下記の通りとなります。
[ 解約返戻金 - 支払保険料総額 - 50万円(特別控除)] x 1 / 2 = 課税対象額
払った額に対して増えた額が50万円以内なら課税されないこと、一方50万円を上回っても、増えた分の半額分が課税対象になるという意味で、預貯金などより、節税効果があると言われます。一時所得は、その他の所得との総合課税となり、個人毎に税率等が異なるためご注意ください。詳細は税理士または税務署に必ずご確認をお願いいたします。
関連記事:終身保険の解約返戻金と保険料との関係、税金までおさえるべきポイントをわかりやすく解説
外貨建て終身保険では、死亡保険金も解約返戻金のどちらも運用通貨である外貨のまま受け取ることも、日本円に換算して受け取ることも可能です。ただし、税金については外貨のまま受け取ったとしても、受け取った外貨を円換算して確定申告等を行うことになるためご注意ください。その場合に使う為替レートは受け取った受取金の種類とかかる税金の種類によって異なってきます。
受け取ったお金の種類 | 税金の種類 | 為替レート | 基準日 |
死亡保険金 | 相続税・贈与税 | 最終TTB | 支払事由該当日(被保険者の死亡日) |
所得税 | 最終TTM | ||
解約返戻金 | 源泉分離課税 | 最終TTB | 効力発生日 |
源泉分離課税ではない | 最終TTM |
まとめ
本記事では、外貨建て終身保険について解説してきました。最後に、外貨建て終身保険のメリット・デメリットをおさらいしましょう。
- 予定利率(運用利率)が高い
- 外貨で運用することでリスク分散ができる
- 運用通貨に対し契約時と比べ円安となった場合、日本円での受取金額が増える可能性がある
- 為替相場の変動リスクがある
- 手数料などの諸費用がかかる
外貨建て終身保険に限らず外貨建て保険は、一般の生命保険と比べて商品性が複雑であるため、情報収集がキモとなってきます。また専門家のアドバイスなども聞きたいところです。コのほけん!ではお金の専門家である独立系ファイナンシャルプランナーの無料相談を提供しております。この機会に是非、お気軽にご利用ください!