払済保険とは?メリット・デメリットや変更のタイミングなどをわかりやすく解説
保険を解約したいけれど、今解約すると損してしまうかも・・・と、迷った経験はありませんか?そのような時は、払済保険に変更する方法が役に立つかもしれません。そこで、払済保険とはどのような保険か、仕組みやメリット・デメリットについて分かりやすく解説します。
払済保険とは?
まずは、払済保険とはどのような保険なのか、その仕組みから確認しましょう。
払済保険の仕組み
払済保険とは、保険料の支払いを中止する代わりに、保障を小さくして保険を続けられる方法を言います。「払済保険」という保険商品が存在するわけではありません。保険料の支「払」いを「済」ませたことにする、と解釈すると理解しやすいと思います。
具体的には、その時点の解約返戻金を変更後の保険の一時払い保険料に充当することで、同じ契約期間で同じ種類の保険を継続させます。保障は当初金額より小さくなりますが、払済保険にすれば、解約せずに保険を続けることができます。
払済保険が対象となる保険とは?
とはいえ、どのような種類の保険も払済保険に変更できるわけではありません。払済保険に変更できる保険は、終身保険、養老保険、個人年金保険など解約返戻金がある保険です。 解約返戻金を元に保険を組み直す形ですから、解約返戻金がない保険は払済保険に変更できませんし、解約返戻金があったとしても、少額の場合は変更できないこともあります。
解約返戻金とは?
解約返戻金とは保険契約を解約したときに、保険会社から保険契約者に支払われる(払い戻される)お金です。
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また、保険によっては解約返戻金があっても払済保険を利用できない場合もあります。では、払済保険に変更すると、契約はどのように変化するでしょうか。終身保険、養老保険、個人年金保険のケースで確認しましょう。
終身保険を払済保険にした場合
終身保険は、死亡した場合や高度障害になった場合に保険金を受け取れる保険です。解約した場合は、解約返戻金を受け取ることができ、解約しなければ解約返戻金は増えていきます。
終身保険を払済保険にすると、その時点での解約返戻金に基づいた保険金額が計算され、当初の保険金より金額が小さくなった保障が生涯続くことになります。解約返戻金は徐々に増えていきます。
養老保険を払済保険にした場合
養老保険は、満期までに死亡や高度障害になった場合に保険金を受け取ることができ、満期までにそのような状態にならなければ、死亡保険金と同額の満期保険金を受け取ることができる保険です。
払済保険にすると、死亡保険金と満期保険金の金額は減りますが、当初契約時の満期まで保障は続きます。終身保険同様、解約返戻金は徐々に増えていきます。
個人年金保険を払済保険にした場合
個人年金保険は、保険料を払い終えると年金形式でお金を受け取れる保険です。払済保険にすると、年金の金額は減りますが、予定通りの受け取り開始日から年金を受け取ることができます。ただし、個人年金保険料控除を受けられる「個人年金保険料税制適格特約」が付帯されている場合は、契約から10年間は払済保険に変更はできません。
払い済み保険のメリット
次に、払済保険のメリットを見ていきましょう。
保険料の負担がなくなる
払済保険に変更した後は、保険料を支払う必要がありません。経済的負担を減らすために、保険を見直したいと思っている場合は、払済保険に変更することは大きなメリットとなります。
解約せずに保険を継続できる
解約すると万一の際の保障はなくなってしまいます。しかし、払済保険であれば保障額が小さくなるものの、保険を続けられますから、万一の際の備えは準備できます。また、解約すると解約返戻金を受け取れるものの、支払った保険料より少ない金額になる可能性が高いです。 何年も契約してきたのに解約して元本割れしてしまったという事態はできるだけ避けたいものです。しかし、保険を継続できれば、このような心配は不要です。
解約返戻金は再び増えていく
払済保険にした後も、解約返戻金は少しずつですが増えていきます。ただし、投資信託などで運用するタイプの変額保険については、相場環境などによって解約返戻金が増減するため、注意が必要です。
払済保険にするタイミングで解約返戻金が計算されますから、タイミングによっては大きく金額が変動するかもしれません。変額保険を払済保険に変更する際は、タイミングには注意しましょう。
払済保険のデメリット
払済保険には、デメリットもあります。次に、デメリットも確認しておきましょう。
特約が消滅する
保険に特約がついている場合、払済保険にすることで特約は消滅します。契約している保険に、どのような特約がついているか、払済保険にする前に確認しておきましょう。また消滅すると困る特約であれば、特約と同じ保障内容の保険に新たに加入することで、保障を備えることができます。
ただし、新たに保険に加入すると告知も必要ですし、希望通りの保険料水準になるとは限りません。払済保険に変更する目的から逸脱していないか、総合的に考える必要はあるでしょう。
なお、余命6ヶ月と宣告された場合に保険金を受け取れるリビング・ニーズ特約は消滅しません。
リビング・ニーズ特約とは
リビングニーズ特約は、被保険者が余命が6ヶ月以内と宣告を受けた時に「死亡保険金」を「生前給付金」として受け取る特約です。
関連記事:リビングニーズ特約は役に立つ?ポイントを押さえて万一に備えよう
契約を元に戻せるとは限らない
払済保険にした後、契約内容を変更前に戻すこともできます。これを復旧と言います。
復旧とは?
払済保険にした後、契約内容を変更前に戻すことができる
復旧できる期間は1〜3年など変更後一定期間であり、その期間を過ぎると元に戻せません。ただし、復旧するにしても健康状態について告知が必要ですし、払済保険にしていた期間中の保険料の払込みも必要です。利息の支払いが必要なこともありますし、商品によっては、復旧できないこともあります。必ずしも元通りの契約に戻せるわけではないという点は、認識しておく必要があるでしょう。
保障が小さくなる
払済保険に変更すると保障が小さくなります。減額された保険金で問題ないか、よく考える必要があります。もし保険金を減額することに不都合があるなら、一定期間のみ保険料の安い掛け捨てタイプの保険でカバーする方法もあるでしょう。
解約控除がかかる場合がある
保険によっては、一定期間を経過せず解約すると解約控除という費用が発生する場合があります。払済保険にする場合も、同様に解約控除が発生する場合があります。解約返戻金はその後も増えていくとはいえ、保険料支払い中はそもそも元本割れしている状態ですから、解約控除でさらに解約返戻金が減った状態から、スタートし増えていくことになります。思ったよりコストがかかったということがないよう、払済保険に変更する前にどの程度のコストがかかるのかは確認しておきましょう。
払済保険に変更するタイミングとは
払済保険への変更を考えるタイミングとしては、保険料の支払いが経済的に厳しくなった時、保険の見直しをする時などがあげられます。保険料の支払いが厳しい場合は、払済保険にすることで家計負担は大きく減ります。
しかし、今後も必要な保障であれば容易に変更するのは危険です。たとえば死亡時の保障なら、払済保険にすることで保障が減額された分は、定期保険や収入保障保険などで補う必要があるでしょう。個人年金保険なら、iDeCoやつみたてNISAで老後資金を準備する方法もあります。また、医療保障の特約がついているなら、新しく別の医療保険に入り直す必要が出てくるかもしれません。
いずれにせよ、別途保険料が発生したり、貯蓄するための資金が必要になります。払済保険にすることが、ベストの解決策かどうか総合的に考える必要があります。
一方、生活スタイルや家族構成が変わり、必要な保障が変わったなら払済保険が有効になるかもしれません。それまでのように大きな保障が不要であれば、保障を減らすことで、無駄な保険をなくせます。
また、よく聞くのが、運用目的で保険に加入し、その後、このまま続けるのが良いのかどうか疑問に思い、見直しを検討しはじめたというケースです。貯蓄代わりとして保険を活用すれば資産運用もできると勧められ契約したものの、その後、この契約は正しかったのかどうか疑問に思い始めるのです。
保障が必要であれば、見直しの対象にはなりませんが、保障の必要はなく100% 運用目的で加入した保険で、保険の必要性に疑問を持っているのであれば見直しのタイミングかもしれません。
必ずしも払済保険にすることが正しい解決法になるとは限りませんが、疑問を持っているなら、払済保険にできるかどうか、できるならどのタイミングで変更できるかを確認すると良いでしょう。
まとめ
払済保険は、保険料の支払いをストップさせ、かつ保障を継続させられる便利な方法です。 しかし、デメリットの影響も小さくありません。払済保険にすることを検討するなら、まずは、現在の契約を払済保険にできるのか、できるのであれば、払済保険にした場合の保険金額や解約返戻金などを保険会社に問い合わせて情報収集しましょう。
払済保険にする目的と払済保険にしたことによる良い影響も悪い影響も両方の側面を照らし合わせた上で、払済保険にするかどうか判断してください。その際は、今回お伝えしたメリットデメリットを参考にして書き出してみると、問題が整理され判断しやすくなると思います。