高額な生命保険(死亡保険)加入時に必要な審査と上限
死亡保険に加入するとき、保険金額をいくらまで設定できるのか考えたことはありませんか?
もちろん万が一の保険ですから、高い保険金を受け取ることができたほうがいいですが、そもそもそんなに高い保険金の死亡保険に加入することはできるのでしょうか。
そこで、
- 死亡保険の保険金の上限
- 上限金額が設定されている理由
を調査をしてみました。
死亡保険金の上限はいくら?
生命保険の死亡保険金には、保険会社ごとに上限が設定されています。では、その上限はいくらなのでしょうか。
死亡保険金の上限を決める際には、次の3つのポイントについて確認する必要があります。
上限額が決まるポイント
- 職業
- 年収
- 年齢
まずは、職業と年収に関する保険金の設定について見てみましょう。
死亡保険金は職業や年収で上限が設定されている
保険金の上限があるケガや死亡のリスクが高い職業とは?
まず職業についてですが、どんな職業に就いていても保険に加入できるかというと、そうではありません。
ココに注意
ケガや死亡のリスクが高い職業に就いている人の場合、加入を断られたり保険金額に上限が設定されることがあります。
以下は、保険金額に上限が設定される代表的な職業です。
職業 | 保険金の上限 |
潜水士 | 3,000万円 |
漁船乗組員 | 3,000万円 |
格闘家 | 3,000万円 |
トラックドライバー | 5,000万円 |
職業の種類や保険金の上限は、保険会社ごとに異なります。
もし上限以上の保険金の保険に加入したい場合、1社だけでなく複数の保険会社で加入すれば、高額な保険金の保険に加入することも可能です。
年収が低いと保険金の上限も低くなる
次に年収についてですが、まず大前提として保険においては一般的に年収の低い人よりも高い人に対してより高額な保険金額を設定することが可能です。
ココがポイント
収入が高ければ高額な保険金の保険に加入することができ、逆に収入が低いと少額の保険金の保険にしか加入することができません。
たとえば、年収400万円の人が年間支払保険料300万円の保険に加入したとしても、保険料の支払いが経済的に難しくなることは簡単に想像できますよね。このように保険会社によっては、被保険者の年収により死亡保険金の上限に制限を設けています。
上限は死亡保険だけでなく、医療保険にも設定されています。入院給付金について、
入院給付金日額は年収の1/360まで
としている保険会社が多く、年収360万円の人なら入院給付金は1万円までという計算です。
子供(未成年者)に一定の制限を設けている保険会社も
保険金の上限は、年齢によっても設定されています。特に子供(未成年)に保険を掛ける場合には、注意が必要です。
平成20年に金融庁がまとめた「未成年者・成年者の死亡保険について」によると、15歳以上と15歳未満とで加入できる保険金額に条件が設定されていることがわかります。
被保険者の年齢 | 保険金の上限 |
15歳未満 |
|
15歳以上 | 特段の制限はしない(被保険者の同意が必要) |
関連ページ:子どもの医療保険はいつから入るべき?加入率・メリットから見る必要性について
高額な死亡保険の契約には告知が必要
このように、保険金額の上限が
- 職業
- 年収
- 年齢
で設定されていることから、高額な保険金の死亡保険に加入するには告知が必要になります。
告知とは
生年月日や性別・身長・体重・現在の健康状態・過去の病歴・治療歴を、保険会社に伝えること。
なお、職業や年収についても告知する必要があるため、以下の情報も健康状態などと一緒に告知します。
- 働いている会社
- 業種や職種
- 年収 など
もし職業や年収、年齢などで保険会社から加入の許可が出なかった場合、保険金額を下げるなどの対応をする必要があります。
ただし、職業や年収での上限については、複数の保険会社で保険に加入することで、通算して高額な保険に加入することも可能なことを覚えておくといいでしょう。
生命保険(死亡保険)の保障額、平均はいくら?
それでは、生命保険(死亡保険)に加入している人は、保障額を平均いくらで設定しているのでしょうか。
出典情報
ここからは、公益財団法人生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」のデータを参考に、保障額の平均を紹介していきます。
関連ページ:20~50代の生命保険料の相場・死亡保険金の平均は?毎月いくら払ってる?
世帯で見る死亡保険金(死亡保障額)の平均
世帯の普通死亡保険金額(生命保険に共済等を含めた額)の平均は2,027万円と、前回の調査から228万円ほど減額しています。これは、長生きリスクが意識され死亡保障だけでなく生存保障も重視する様になったことや、一世帯あたりの構成人数の減少および単身世帯の増加をしていることなどが影響していると考えられます。
年齢別で見る死亡保険金(死亡保障額)の平均
世帯主年齢別で見る普通死亡保険金額の平均は、以下のとおりです。
世帯主年齢 | 普通死亡保険金額の平均 |
29歳以下 | 1,754万円 |
30~34歳 | 2,516万円 |
35~39歳 | 2,525万円 |
40~44歳 | 2,714万円 |
45~49歳 | 2,980万円 |
50~54歳 | 2,296万円 |
55~59歳 | 2,312万円 |
60~64歳 | 2,033万円 |
65~69歳 | 1,478万円 |
70~74歳 | 1,460万円 |
75~79歳 | 1,058万円 |
80~84歳 | 876万円 |
85~89歳 | 1,104万円 |
90歳以上 | 684万円 |
世帯年収で見る死亡保険金(死亡保障額)の平均
世帯年収別で見る普通死亡保険金額の平均は、下記のようになっています。
世帯年収 | 普通死亡保険金額の |
200万円未満 | 689万円 |
200~300万円未満 | 735万円 |
300~400万円未満 | 1,040万円 |
400~500万円未満 | 1,322万円 |
500~600万円未満 | 1,702万円 |
600~700万円未満 | 1,830万円 |
700~1,000万円未満 | 1,949万円 |
1,000万円以上 | 3,339万円 |
生命保険の保険金額に上限が設定されている理由
では、なぜ生命保険の保険金額には上限が設定されているのでしょうか?そこには「モラルリスク」という問題が深く関わっています。
高額な死亡保険はモラルリスクが高い
生命保険の保険金額に上限が設定されている理由のひとつに、高額な契約はモラルリスクが高いというのがあります。
モラルリスクとは
保険業界用語で保険金、給付金の不正取得を目的とする道徳的危険があること。
生命保険でモラルリスクが高いものとして、最も注意すべきものが「保険金詐欺や殺人などに生命保険が利用される」ケースです。
生命保険協会では、生命保険制度が健全かつ公平に運営されるように、以下のような対策がされています。
- 契約内容登録制度の実施
- 契約内容照会制度の実施
- 支払査定時照会制度の実施
- 不正請求対応の推進
- 警察との連携の強化
- 暴力団排除条項の約款への導入
- 「保険金不法取得目的の保険契約の無効」を約款に規定
このような対策と一緒に各保険会社で保険金の上限を設定し、モラルリスクが高いと予想される契約を制限しています。
ココがポイント
保険金に上限を設定してモラルリスクが高い契約を制限することで、不要な保険金の支払いを避けることができますので、結果的に保険契約者全体を守ることにもつながります。
関連ページ:生命保険の選び方・見直し方
交通事故や事故死など保険金詐欺・殺人が実際にあったケース
では、モラルリスクが高いことが原因で起こった事例には、どのようなケースがあったのでしょうか。
実際に起こった交通事故や事故死の詳細を見てみましょう。
平成2年 群馬県のケース
H2/12、次女(10歳)を自分の車に乗せ、雑木林まで連れて行き、手で首を圧迫して殺害(既遂)、遺体を雑木林に遺棄した。
捜査当局は、容疑者が3年前に掛けていた災害死亡時2,000万円(普通死亡時1,500万円)の生命保険金を借金の返済に充てよう(未遂)として計画的に犯行を企てたとみている。
平成10年 福島県のケース
H10/6に、妻に約2億円、息子に約7,000万円、加害者が経営する会社関係者に約1億4,000 万円の保険金(共済金を含む)を掛けたうえで、関係のない2名を道連れとして計5人を乗せたワゴン車を道路左側の壁に激突させて、計11社から約4億1,000万円を詐取しようとしたが、殺害の目的を遂げず重軽傷を負わせるにとどまったため、車両保険金および入院給付金約700万円を詐取した(詐取は既遂)。
平成16年 栃木県のケース
H19/2に妻を絞殺した事件との関係で、H16/2に、次男(7歳)が居住していた県営住宅の4Fから転落死して、約8,000万円(共済金7,000万円、生命保険金1,000万円)を受け取った点についても捜査されている模様。
関連ページ:誰でも生命保険(死亡保険)の受取人になれる?保険金受取りの税金や手続きについて解説
関連ページ:死亡原因が自殺の場合は生命保険はどうなる?死亡保険金が支払われるケースとは?
まとめ
生命保険の保険金額には、上限があります。
ココがポイント
上限を定める基準は保険会社ごとに異なる場合がありますが、職業、年収、年齢で設定しているところが一般的です。
上限を設定する 主な理由は、モラルリスクが高い契約を制限することです。そうすることで、交通事故や事故死などの保険金詐欺や殺人を未然に防いだり、保険契約や保険契約者を守ることにもつながります。また、支払いの継続性や、保険集団における公平性の観点等からも、職業や年齢等で保険金額の上限が設定されることがあるのです。
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