「自分は大丈夫」は禁物!世界中で増え続けるうつ病などの精神疾患をデータで解説
仕事や家事、育児や介護など、毎日忙しく過ごす現代人は少なくありません。
一方で、うつ病をはじめとした「こころの病」は世界でも増え続けています。
「自分は健康だから問題ない」と感じていても、今や誰でもこころの病になる可能性があり、日ごろからケアや対策を行うことが重要です。
ただし、こころの病について「実際の患者数はどれくらいか」「本当に身近な病なのか」がわからず、実感しにくい方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、日本と世界におけるうつ病を含む精神疾患患者数と、近年の推移をご紹介します。
この記事のポイント
- うつ病をはじめとする精神疾患の患者数は世界的に増加傾向にあり、日本の若年層の自殺の主な原因となるなど、誰もがなりうる身近な病気である。
- 食欲不振や不眠といった身体症状、表情の暗さなどの行動変化といった初期サインを見逃さず、安易な励ましを避けて早期に専門家へ相談することが重要である。
- 精神疾患は治療が長期化しやすいため、傷病手当金などの公的制度の活用に加え、収入減に備える就業不能保険を検討するなど、経済的な対策も不可欠である。
「恥ずべきこと」との認識を持ちがちなこころの病の実状

現在、日本の社会問題のひとつとしても、精神疾患への対策は急がれています。
慌ただしい日常を過ごしているうちに疲れやストレスが蓄積し、いつの間にかうつ病を発症していた、というケースも多くあります。
精神疾患と一口に言っても、入院し数カ月にわたって治療を行うものから、通院で薬の処方を受け、回復を目指すものまで、程度は実にさまざまです。
こころの病の代表、うつ病とは
代表的な精神疾患のひとつである「うつ病」は、脳の働きが低下した状態とされています。
強い不安感や抑うつ気分、集中力やあらゆる意欲の低下、不眠や食欲不振など、日常生活に支障をきたす心理的・身体的症状が続くことが少なくありません。
症状は人によって異なるため、早めに症状に気づいて精神科を受診したり、臨床心理士や公認心理士などによるカウンセリングを受けることが重要です。
ここで問題なのが、特に日本人は「こころの病にかかることは恥ずべきこと」との認識を持ってしまいがちな点です。
友人や同僚のみならず、家族にすら打ち明けることをためらう人も多く、重症化してしまうケースもあります。
精神疾患は、誰もがかかる可能性がある身近な病です。
まずは「自分は大丈夫だ」という思い込みを捨て、ご自身の心身の不調と向き合ってみましょう。
データで見る日本の精神疾患の患者数と傾向
下の表は厚生労働省の調査に基づいた、うつ病などを含む「精神及び行動の障害」の患者数推移です。
■ 「精神及び行動の障害」の患者数推移(2011年~2023年)
入院 | 外来 | |
|---|---|---|
2011年 | 282.3 | 221.2 |
2014年 | 265.5 | 257.7 |
2017年 | 252.0 | 260.9 |
2020年 | 236.6 | 266.6 |
2023年 | 213.1 | 244.6 |
※単位:千人
表からわかる通り、入院患者数が年々減少傾向にあるのに対して、外来患者数は増加傾向にあります。
この背景には、治療薬の進歩や精神科への偏見が薄れたことに加え、「社会的入院を減らし、地域社会での生活を支える」という国の方針転換も影響しています。
かつて「こころの病」は、一部の特別な人がかかるものというイメージがあったかもしれません。
しかし今、精神疾患は、がんや糖尿病などと同じように、誰もがなりうる身近な病気として認識されつつあります。
こころの不調を感じたら、早めに専門家へ相談し、暮らしの中で回復を目指す流れが、日本でも一般的になりつつあります。
日本における若年層の自殺とうつ病の関係
世界保健機関(WHO)のデータでは、G7各国の中で日本は自殺死亡率が最も高いという結果が示されています。
10代・20代の死因第一位が「自殺」となっているのは日本のみという、憂慮すべき事態にあります。
日本の若年層における自殺は、国際的に見ても極めて深刻な状況です。
この背景には、うつ病をはじめとする精神疾患が大きく影響しています。
日本の自殺者全体の動機を分析すると「うつ病」を含む病気の悩みや影響が最も多く、全体の約2割を占めています。
データで見る世界の精神疾患・うつ病の患者数と傾向
現代病とも称されるうつ病を含む精神疾患は、日本だけの問題ではありません。
世界的にも、「こころの病」への対策が重要課題として挙げられています。
うつ病の患者数は世界で3億人以上にのぼる
WHOの報告によると、うつ病に苦しむ人は世界で約3億3200万人にのぼります。
特に、近年の新型コロナウイルスの世界的流行は、人々の精神的健康に大きな影響を与えました。
うつ病や不安障害の有病率を世界的に急増させた要因として、指摘されています。
また、うつ病患者数の割合は全世界人口の約4%に該当し、その多くが正しい診断や適切な治療を受けられていないとの指摘もあります。
世界的に見ても、精神疾患への対策は喫緊の課題です。
アジア・太平洋地域のうつ病患者数は世界全体の約48%
WHOが発表した報告書では、世界におけるうつ病患者はアジア・太平洋地域で世界全体の約48%を占めています。
次いでアメリカ地域が約15%、欧州地域が約12%になっています。
では、日本が属するアジア・太平洋地域の割合はどうなっているのでしょうか。
同地域の国別推計で、うつ病患者数が際立って多いのが中国の約5,482万人です。
同調査では、日本のうつ病患者数は約506万人で中国に続く2位となりました。
3位はフィリピンで約330万人です。
■ アジア・太平洋地域におけるうつ病患者数
順位 | 国名 | 患者数 |
|---|---|---|
1位 | 中国 | 約5,482万人(人口比率4%) |
2位 | 日本 | 約506万人(人口比率4%) |
3位 | フィリピン | 約330万人 |
これを人口比率で確認すると、日本と中国がそろって約4%となります。
この結果に対し、国内の専門家からは「精神疾患を隠しつい我慢してしまう国民性や社会的背景も関係しているのではないか」との見解が示されています。
なお、下記の国はいずれも人口比が6%前後となりました。
- ウクライナ
- エストニア
- アメリカ
- ブラジル
- オーストラリア
- ギリシャ
- ポルトガル など
アジア・太平洋地域以外の国で、うつ病の推計患者数が1,000万人台だったのは下記の国でした。
- インド:約5,668万人
- アメリカ:約1,749万人
- ブラジル:約1,155万人
アメリカにおける精神疾患・うつ病患者の傾向
アメリカは成人の多くが精神疾患の症状を自覚しており、精神科や精神カウンセラーを受診する心理的ハードルが低い国と言われています。
アメリカの保険会社であるブルークロス・ブルーシールズ(BCBS)がアメリカ国内で行った調査結果によると、2016年までの5年間でうつ病と診断された患者数は33%増加しています。
調査対象はBCBSの被保険者の12歳〜64歳の4,100万人ですが、2016年にうつ病と診断され保険請求を行った人の割合は、保険請求者全体のうち4.4%でした。
これを人数に換算すると、900万人以上にのぼります。
年代別でみていくと、12歳〜17歳の増加率63%に次いで、働きざかりの世代を含む18歳〜34歳が47%という結果になりました。
BCBSの報道発表文にて、精神科医のカリン・ホロウィッツ医師は「スマートフォンやパソコンなど、電子機器使用の増加と睡眠障害の組み合わせ」が要因である可能性を記しています。
アメリカにおけるうつ病患者の増加要因とは?
この結果を受け、BCBSの最高医療責任者トレント・ヘイウッド氏は、フォーブス誌のインタビューで、うつ病の増加と関連する問題として、「社会的孤立・SNSの使用・競争社会・離婚率の上昇」などを挙げました。
これは、日本国内の精神疾患患者の増加要因とも共通点が多く、ストレス社会で生きる現代人の傾向を表しているともいえるでしょう。
一方でフォーブス誌では、うつ病などの精神疾患患者が増加した背景には、「治療を受けたり症状の診断を受けたりするために、医療機関を受診する人が増えたこともあるのではないか」という見解を示しています。
近年、うつ病を含むこころの病で苦しんだ経験を告白する著名人も多くいます。
歌手のビヨンセやレディー・ガガ、英国のヘンリー王子の告白は、特に大きなニュースになりました。
こうした動きが後押しとなり、これまで医療機関を訪れるまでに至らなかった人も受診するようになったという見方も広がっています。
もしかしてうつ病?サインとなる初期症状・行動をチェックしよう

うつ病は早期に発見し、適切に対処することが何よりも大切です。
しかし、心の不調は本人ですら気づきにくいことがあります。
あなたやあなたの大切な人にあてはまるものがないか、下記のリストで確認してみましょう。
本人の身体にあらわれる初期症状のチェックリスト
ご自身の身体に以下のような症状が続いている場合は、注意が必要です。
- 食欲がない
- 性欲がない
- 眠れない、または過度に眠ってしまう
- 体がだるい、疲れやすい
- 頭痛や肩こり
- 動悸
- 胃の不快感、便秘や下痢
- めまい
- 口が渇く
周りが気づきやすい行動の変化のチェックリスト
本人以上に、周りの人が先に変化に気づくことも少なくありません。
以下は、うつ病の人がとる行動の代表例です。
- 表情が暗い
- 自分を責めてばかりいる
- 涙もろくなった
- 反応が遅い
- 落ち着かない
- 飲酒量が増える
もし、チェックリストに該当するものが多いと感じたら、「まもろうよこころ」などの専門家に相談できるサービスの利用もご検討ください。
うつ病の人に周りができる正しい接し方とNG行動とは
うつ病からの回復には、周囲の理解とサポートが不可欠です。
しかし、良かれと思ってしたことが、かえって本人を追い詰めてしまうことも少なくありません。
ここでは、周りの人ができることと、うつ病の人への正しい接し方について解説します。
うつ病の人にやってはいけないこと
うつ病の人に対しては、以下の行動は極力避けましょう。
かえって症状が悪化する可能性があります。
- 安易に励ますこと
「頑張れ」「気の持ちようだ」といった言葉は、頑張りたくても頑張れない本人を追い詰めてしまいます。 - 原因の追及や説教
「なぜそうなったの?」「甘えているだけだ」などと問い詰めたり、評価したりするのは逆効果です。 - 重要な決断を迫ること
思考力や判断力が低下している状態のため、休職や退職、離婚などの大きな決断は急いで行わず、先延ばしにするよう促しましょう。 - 特別扱いすること
過度に干渉するのも、逆に孤立させるのもよくありません。
本人のペースを尊重し、つかず離れずの距離感で見守ることが大切です。
うつ病の回復に向けて周りができること
- 静かに話を聞く
アドバイスや評価はせず、「つらいんだね」と気持ちを受け止めながら、ただ耳を傾ける(傾聴する)ことが安心感につながります。 - 安心できる環境を作る
「何もしなくてもいい」「ゆっくり休んでいい」というメッセージを伝え、本人が罪悪感なく休める環境を整えましょう。 - 医療機関への受診を促す
「専門家に相談してみない?」と、あくまで提案として優しく受診を勧め、必要であれば病院へ付き添いましょう。
本人の回復を支えながら、支える側が無理をしすぎないよう、意識することが重要です。
一人で抱え込まず、地域の保健所や精神保健福祉センターなどの公的な相談窓口を利用し、家族もサポートを受けるようにしましょう。
治療が長期になりがちな精神疾患への備えとは
日本では、従業員のメンタルヘルスに取り組む企業が少しずつ増えていますが、精神疾患の治療には、数カ月からときには年単位の時間がかかることも少なくありません。
治療期間中は収入が途絶えますが、会社員などの健康保険の被保険者であれば傷病手当金を受け取ることができます。
また、医療費は高額療養費制度により、自己負担の上限額が定められており、超過分については払い戻しを受けることができます。
ただし、上記のような公的制度だけでは生活が苦しくなるケースもあり、経済的な不安がかえって症状を悪化させる一因にもなりかねません。
もし不安であれば、万が一働けなくなった際の収入減少を補うことができる就業不能保険への加入も検討してみましょう。
関連記事:働けなくなったときの備え!就業不能保険の必要性とメリット・デメリットを解説
まとめ
うつ病をはじめとする精神疾患は、決して特別な病気ではなく、誰にでも起こりうる身近なリスクです。
「自分は大丈夫」という思い込みを捨て、日頃からストレスケアや初期症状のチェックを行うことが、あなた自身と大切な人を守る第一歩になります。
また、精神疾患は治療が長期化しやすいため、心身のケアだけでなく経済的な備えも欠かせません。
傷病手当金などの公的制度を確認しつつ、不足分をカバーする就業不能保険の活用なども視野に入れ、万が一の時も安心して治療に専念できる環境を整えておきましょう。
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