AYA世代のがんの傾向-女性のがん保険の必要性
本記事では報告書から15〜39歳のAYA世代に多く見られるがんとその特徴を説明していきます。
本記事のポイント
- AYA世代のがんは癌腫と上皮内癌が多い
- 25歳以降のAYA世代のがんの増加は女性特有のがんが多い
- 25歳以降の女性に多く見られる上皮内がんは子宮頸癌と乳癌である
- 女性特有のがんへの対応策として年齢、性別に応じた治療と支援が必要である
そもそもAYA世代とは?
AYA世代とは、思春期・若年成人(Adolescent&Young Adult)の頭文字から名付けられました。AYA世代のがん患者は主に15歳から39歳のがん患者のことを指します。
AYA世代の基本情報については、「AYA世代(アヤセダイ)とは-女性のがん保険の必要性」の記事をご参照ください。
報告書からみるAYA世代のがんの特徴
AYA世代のがんは、25歳を過ぎると飛躍的に増加し、30歳から39歳で発症しているものが40歳未満のがん全体の約70%、AYA世代のがんに限ると約75%を占めていました(図3)。また、20歳以後のがんの症例の約80%が女性で、年齢に従って増加していくことが分かりました(図4)。AYA世代では、「甲状腺癌、その他の頭頸部癌、気管・気管支・肺の癌、乳癌、泌尿生殖器癌、消化管癌、その他及び部位不明の癌」に該当する「癌腫」と、SEERの「AYAがん分類」には該当する分類がない「変換不能例」が約80%を占めていました。「変換不能例」のうち上皮内癌等について「局在」と「組織型」をもとに再分類を行った結果、変換不能例の97%が再分類後に「癌腫」に該当し、「癌腫」のうち子宮頸部上皮内癌が最多で、次に乳房上皮内癌の順でした。
※ 出典:国立がん研究センター「院内がん登録 小児・AYA世代がん集計について」~小児がん中央機関による初めてのデータのまとめ~がん診療連携拠点病院等院内がん登録2016-2017年小児AYA集計報告
以上は報告書からの引用です。
それではこの内容を説明していきます。
AYA世代のがんの特徴その1、癌腫
AYA世代のがんの特徴として、まず「甲状腺癌、その他の頭頸部癌、気管・気管支・肺の癌、乳癌、泌尿生殖器癌、消化管癌、その他及び部位不明の癌」という癌腫(がんしゅ)であることが挙げられます。
癌腫(がんしゅ、Canser , Carcinoma)とは、上皮を構成する細胞の上皮細胞から発生するがん(上皮性腫瘍)です。
代表的なものには、肺がん、乳がん、胃がん、大腸がん、子宮がん、卵巣がん、喉頭がん、咽頭がん、舌がん等があります。
なお、非上皮性細胞から発生する肉腫(にくしゅ、 sarcoma)は、骨や筋肉などの非上皮性細胞から発生するがんです。
癌腫とはタイプが違いますが悪性腫瘍に含まれます。
代表的な肉腫には、骨肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、線維肉腫、脂肪肉腫、血管肉腫があります。
AYA世代のがんの特徴その2、変換不能例
ふたつめの特徴としてSEERの「AYAがん分類」で分類することができない「変換不能例(へんかんふのうれい)」が約80%を占めていました。
SEER(シーア、Surveillance, Epidemiology, and End Results Program)とは1971年に公布された米国がん法(National Cancer Act)により、がん対策に必要なデータを収集、分析、普及するしくみのことです。
このしくみの中で提唱された「国際小児がん分類」と「AYAがん分類(AYA Site Recode/WHO 2008 Definition)」という分類に従ってこの報告書の集計が行われています。
このSEER「AYAがん分類」で「変換不能例」の中の「上皮内がん等」を「局在(がんの罹患部位)」と「組織型分類(がんの組織の状態による分類)」で再分類したところ、変換不能例の97%が再分類後に「癌腫」に該当し、「癌腫」のうち子宮頸部上皮内癌がもっとも多く、次に乳房上皮内癌が多いことがわかりました。
このことから報告書では下記のように結論づけています。
したがって、25歳以降のがんの急激な増加は、女性における子宮頸癌と乳癌の増加によるものと考えられます。すなわち、AYA世代のがんは、25歳までとそれ以降で、病気の種類が大きく異なっているため、AYA世代のがん対策を考える際には、このような性別、年齢によるがんの種類の違いも考慮するべきと考えられます。
※ 出典:国立がん研究センター「院内がん登録 小児・AYA世代がん集計について」~小児がん中央機関による初めてのデータのまとめ~がん診療連携拠点病院等院内がん登録2016-2017年小児AYA集計報告
つまり、AYA世代は25歳前後でがんの種類が大きく異なっており、年齢、性別に応じたきめ細やかな治療と支援などが必要となってきます。
その中で、25歳以降に子宮頸癌と乳癌が増加するAYA世代の女性への支援は必要不可欠と言えます。
まとめ
- AYA世代のがんは癌腫と上皮内癌が多い
- 25歳以降のAYA世代のがんの増加は女性特有のがんが多い
- 25歳以降の女性に多く見られる上皮内がんは子宮頸癌と乳癌である
- 女性特有のがんへの対応策として年齢、性別に応じた治療と支援が必要である
以上のことから、AYA世代の20歳から39歳の女性は女性特有のがん罹患のリスクが高いということがわかります。年齢が進むごとに罹患率が上がることがわかっているのですから、がん保険など早めに備えておけると安心ですね。